【飲食店用】収支計画書のつくり方と無料テンプレート

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/03/25 

収支計画書とは、事業の収入と支出を見積もって、将来の利益や資金繰りを予測するための重要な書類です。飲食店の場合、売上や原価、人件費、家賃などの経費を考慮して、収支計画書を作成する必要があります。

カフェなどの飲食店を開業する際には、事業計画書を作成します。事業計画の重要な部分である収支をより具体化したものが収支計画です。しかし、収支計画書の作成は、はじめての方にとっては難しく、どこから手をつけてよいか分からず困ってしまうことも少なくありません。

当記事では、飲食店における収支計画書のつくり方を、無料のテンプレートや記入例を使って解説します。収支計画書の作成によって、事業の目標や課題を明確にし、成功に近づけることが可能です。ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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飲食店の開業に事業計画書が必要な理由

事業計画書とは「事業の概要や目的・市場分析・販売戦略・組織体制・財務計画」などをまとめたもので、融資を受ける際には必須の書類になります。

1)プランやアイデアを明確化するため

飲食店を開業するには、自分のプランやアイデアを明確にすることが大切です。どんなコンセプトで、どんなメニューやサービスを提供するのかを考えましょう。また、どんなお客様に来てもらいたいのか、どれくらいの価格設定や利益率を目指すのかなども具体的に考える必要があります。

事業計画書を作成することで、自分のプランやアイデアを整理し、客観的に評価できます。また、事業計画書を作成する過程で、自分の強みや弱み、市場のニーズや競合の動向などを確認でき、プランやアイデアをより魅力的にブラッシュアップ可能です。

2)強みと弱みを把握するため

飲食店を開業するには、自分の強みと弱みを把握することが重要です。強みと弱みを知ることで、自分の立ち位置や差別化ポイントを明確にできます。また、強みを活かし、弱みを補うための戦略を立てることもできます。

自分の強みと弱みを把握するためには、SWOT分析を活用すると便利です。SWOT分析とは、「Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)」の頭文字をとったもので、自分の内部環境と外部環境を分析する方法です。SWOT分析をおこなうことで、自分の事業にとって有利な要因や不利な要因を整理し、事業計画に反映できます。

3)資金調達のため

一般的に飲食店の開業資金には1,000万、ドリームゲートの調査によると、その後の運転資金には155万/月程度の費用がかかるとされています。自己資金だけでは足らず、多くの方が日本政策金融公庫や銀行をはじめとする金融機関からの融資を検討しています。融資を受けるには、事業計画書が必須です。

事業計画書を提出することで、事業の内容や将来性を金融機関にアピールできます。また、収支計画書は、融資の可否に大きく影響します。収支計画書を作成することで「自分の事業がいつから黒字になるのか」「どれくらいの利益が出るのか」「どれくらいの返済能力があるのか」などを、具体的に数値で示すことが可能です。

収支計画書を作成する際には、現実的で信頼できる数字を用いることが重要です。過度に楽観的な数字や根拠のない数字は、金融機関に不信感を与えることになります。

参考)飲食店の事業計画書で重要な資金計画のたて方、書き方を解説

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事業計画書と収支計画書の違い

事業計画書と収支計画書は、どちらも事業の計画や予測を示す書類ですが、違いがあります。事業計画書は、事業の全体像を示す書類で、全体についてまとめたものです。

収支計画書は、事業計画書の一部で、財務計画のなかでももっとも重要な書類です。収支計画書は、事業の収入と支出を見積もって、将来の利益や資金繰りを予測するための書類です。事業の成否を判断する基準となるため、詳細に作成する必要があります。

参考)事業計画書とは?何を書けばいい?必要な12項目と3つのポイントについて解説!

飲食店における収支計画の作り方

飲食店の開業時には、収支計画を立てることが必要となります。収支計画によって事業の目標や課題を明確にし、成功に近づけることが可能です。飲食店の収支計画を立てるためには、以下のような開業時に必要な資金や、開業後に必要なランニングコストを把握する必要があります。

1)開業資金と月々の運転資金とは

収支計画書をつくる最大の理由は、事業にかかるお金を「見える化」することです。飲食店を開業し、運営していくには想像以上に多額の資金が必要になります。

開業時に必要となるのは、店舗の保証金や改装工事といった初期費用だけではありません。「設備費・光熱費・家賃・人件費・原価」などの必要経費を計画書に落とし込んでみると、初期費用以外の金額の大きさをあらためて実感できるでしょう。これらの出費を回収して、さらに利益が出る収支計画をつくる必要があるため、必然的に事業計画も実現可能性の高いものにブラッシュアップされます。

2)飲食店にまつわる開業資金を計算する

飲食店にまつわる開業資金には、以下のようなものがあります。

①物件取得費

飲食店を開業するには、店舗の敷金・礼金・保証金など多額の費用がかかります。物件取得費は、立地や広さ・物件の状態などによって異なりますが、後から変更するのは大変な要素になるため、慎重に検討しましょう。

②内外装工事費

飲食店の内装や外装を整えるために必要な費用です。コンセプトやデザイン、工事の規模などによって異なりますが、多額の費用がかかることが多くなります。

③設備費

厨房やエアコンなどの設備を購入するために必要な費用です。費用は設備の種類や数量、新品か中古かなどによって異なります。自己資金が少ない場合には、居抜き物件を利用するなどの工夫が必要です。

④そのほかの開業諸経費

食品衛生責任者や飲食業許可などの取得費用や保険料のほか、こまごました開店準備費用などがかかります。そのほかの開業諸経費は、飲食店の規模や内容によって異なりますが、事前にしっかりと把握して、漏れのない資金計画を立てるようにしましょう。

参考)J-Net21イタリア料理店の開業費用例

参考:ドリームゲート「飲食店の事業計画書で重要な資金計画のたて方、書き方を解説」

3)飲食店にまつわる運転資金を計算する

飲食店にまつわる運転資金には、以下のようなものがあります。

①家賃

店舗の賃料や管理費などの費用です。家賃は、立地や広さ、物件の状態などによって異なります。家賃は固定費のため後から削減することができません。店舗は集客にも大きな影響をおよぼす要素のため、慎重に決定しましょう。

②水道光熱費

電気やガスなどの使用料です。水道光熱費は、使用量や料金プランなどによって異なりますが、飲食業の形態によっては大きな金額になります。

③人件費

従業員の給与や社会保険料などの費用です。人件費は、従業員の人数や賃金水準、雇用形態などによって異なります。

④広告費

宣伝や集客のために必要な費用です。広告費には、チラシやホームページの作成費用、SNSの運用費用、ポータルサイトへの登録費用などが含まれます。

⑤仕入れ費用

食材や飲料などの仕入れ費用です。仕入れ費用は、仕入れ先や仕入れ量、仕入れ時期などによって異なります。

4)飲食店の売上計算の仕方

飲食店の売上計算には、以下のような要素が関係します。

①客単価

1人あたりの平均的な注文金額です。客単価は、メニューの価格設定やサービスの内容などによって異なります。客単価を高めるには、付加価値の高いメニューやサービスが必要です。

②席数

座席の数です。席数は、物件の広さやレイアウトなどによって異なります。席数を増やすためには、空間の有効活用や席の配置など工夫が必要です。

③回転数

1日あたりの席の回転数です。回転数は、客層や営業時間などによって異なります。回転数を高めるためには、サービスのスピードや予約管理などを工夫することが必要です。

④満席率

飲食店は、営業中であってもすべての席が埋まっているわけではありません。たとえば、20席ある店舗で16席が埋まっていれば、「16席÷20席=満席率80%」となります。

飲食店の売上計算は、これらの要素を掛け合わせることでおこなうことができます。具体的には、以下のような式で表します。

1日の売上=客単価×席数×回転数×満席率

以下のようなケースを想定して売上を計算してみます。

・客単価:1,000円

・席数:20席

・回転数:3回

・満席率:80%

・月の稼働日:25日

この場合、売上は以下のように計算できます。

月の売上=1,000円×20席×3回×0.8×25日=1,200,000円

このように、飲食店の売上計算は、客単価や席数などの要素を変化させることで、予測や目標設定をおこなうことができます。

5)損益計算

損益計算では、売上から経費や減価償却費を差し引いて、「営業利益」を求めることで、事業の純粋な損益を計算できます。営業利益は、以下のような式で表すことができます。

営業利益=売上-経費(売上原価+販売費・一般管理費)-減価償却費

以下のような条件の場合、損益計算(営業利益)はどのようになるでしょうか。

売上 1,200,000円
経費 800,000円

(内訳:原価320,000円、人件費240,000円、家賃120,000円、水道光熱費24,000円、広告費60,000円、その他経費36,000円)

減価償却費 90,000円

この場合、損益計算(営業利益)は以下のように計算できます。計算結果から事業の収益性や健全性を判断可能です。

営業利益=1,200,000円-800,000円-90,000円=310,000円

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収支計画書をツールでかんたんに作成する

収支計画書の作成は、非常に重要です。しかし、はじめて作成する場合には、時間や手間がかかり大変な作業となります。そんな場合には、ドリームゲートの「事業計画作成サポートツールがおすすめです。

開業資金や売上見込み・経費を入力するだけで、収支計画の作成とダウンロードが可能です。12業種で、成功している健全企業の安全率をもとに、あなたの計画の健全度をランク別に判定してくれます。

1)開業資金が足りているかをかんたん計算

開業時に用意している資金の額と、その用途を設定することで、開業資金が足りているかをかんたんに計算できます。

開業資金は「自己資金・借入・そのほか」の3つに分けて入力します。売上設定で、1年目の売上見込みを入力すれば、開業資金が足りているかが自動計算され、資金調達の必要性や方法を判断できます。

2)運転資金となる経費をかんたん計算

2年目・3年目の予想売上や経費を設定すれば、先輩経営者の実績データをもとに年間利益も自動計算されます。

経費は「原価・人件費・家賃・水道光熱費・広告費・そのほかの経費」などを自分で設定可能です。運転資金となる経費を計算することで、かんたんに利益や資金繰りの状況を把握できます。

3)収支計画書をダウンロード

上記までの予測売上や経費を設定するだけで、健全な事業かどうかを自動判定可能です。このツールでは、安全率という指標を用いて、事業の健全性をランク別に判定します。

安全率のランクに応じて、事業の改善点や注意点のアドバイスも表示されるため参考になるでしょう。かんたんな操作だけで、オリジナルの収支計画書を無料で作成しダウンロードもできます。

飲食業向けの事業計画書サンプルと解説

お菓子作りが好きな方のなかには、自分のお店を持ってお菓子を販売したり、お菓子教室を開いたりしたいという夢を持つ方も多いのではないでしょうか。

そこで本項では、お菓子の製造販売とお菓子教室を横浜で開業し、多彩なサービスを展開している女性起業家の事業計画書をサンプルとしてご紹介します。

参考:ドリームゲート「事業計画書サンプル&解説集~飲食業編~お菓子の販売とお菓子教室を横浜で開業した松本美佐さんの事業計画」

1)開業計画

■栄養専門学校を卒業後、ベルギーの和食店や製菓材料メーカーの商品企画を経て、2002年から週末起業としてお菓子教室を開講

■フードコーディネーター資格とフランス菓子製菓技術を取得し、2007年に個人事業としてキッチンスタジオをオープン

■ もともとはお菓子の製造・小売業もかねてスタートしたものの、お菓子教室のほうが盛況となったためスクールビジネスをメインに

■その後、法人向け商品開発・コンサルティング・イベント、お菓子のレシピ本を執筆。また、家庭用ゲームソフト用のレシピ開発や、小規模スクール運営者向けの生徒管理システムを開発するなど多彩なサービスを展開

■自己資金300万円+日本政策金融公庫300万円=合計600万円でスタート
■開業費:500万円

・初期仕入れ費用 10万円

・店舗契約費用など 80万円

・店舗内装工事費など 200万円

・厨房機器・空調機器など 200万円

・事務用品など 10万円

2)事業計画

■1年目の目標年商:600万円(月50万円✕12ヶ月)

■月の運転資金:45万円

●原価 8万円
●人件費 0円
●代表者報酬
15万円
●家賃など 12万円
●水道光熱費 3万円
●広告宣伝費
1万円
●そのほかの営業諸経費 2万円
●公庫借入れの返済
4万円

※個人事業の場合、代表者報酬は経費に計上できませんが、じっさいに必要な資金になるため記載しています

■利益:月5万円✕12ヶ月=60万円

3)1期目の結果

■1期目の売上は目標年商600万円に対して70%程度の420万円と低迷

■1期目・2期目と苦しい時期が続き、追加融資150万円を受ける

■経営的に安定したのは最近(7期)

もともと週末起業という形でお菓子教室を開いていたこともあり、そのときの生徒さんが来てくれました。しかし、それでも目標には遠く及びませんでした。

当初はお菓子を製造・販売もしておりそれなりの売上になりましたが、かかる労力を考え、教室業が安定してきた4期目から販売はやめています。その後は教室に専念することにしました。

4)健全な経営のポイント

松本さんの健全な経営のポイントは、以下のようなものです。

■経営が苦しいときに、専門家や公的機関などの相談できる相手がいることは重要

■最初からいろいろと手を出すとすべてが中途半端になってしまう可能性が大きいため、自分の得意分野や強みを活かし、ほかと差別化することで、競争力を高める

■事業計画書を定期的に見直し、修正することで、事業の方向性や目標を明確にする

■自分の苦手分野や弱みを補うために、外部の専門家や協力者と連携することで、事業の幅を広げる

ツール利用で事業の健全性を確認しよう

収支計画書を作成することで、事業の健全性を確認できます。しかし、初心者の方にとっては難しいケースが多くなるでしょう。そこで、ドリームゲートの「事業計画作成サポートツール」の利用をおすすめします。同ツールでは、かんたんに収支計画書を作成できて便利です。

ツールを利用することで、以下のようなメリットがあります。

■売上見込み・経費などを入力するだけで、自動的に収支計画書を作成してくれる
■安全率という指標で、事業の健全性をランク別に判定してくれる
■オリジナルの収支計画書を無料でダウンロードできる。

ツールを使えば、事業の収支計画をかんたんに作成可能です。また、事業の健全性も確認できます。ぜひ、活用して、飲食店の開業に向けた準備を進めてください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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