スマート開業事例 ~ 走りたくなるランニングコースが簡単に見つかるWebサービス「Runtrip」。株式会社ラントリップ 大森 英一郎氏

冒頭

大学時代に箱根駅伝ランナーとして活躍し、リクルートグループに入社。さらに観光系事業会社で離島の集客全般を経験した後、観光とランニング双方の課題解決を目指し、2015年5月に株式会社ラントリップを設立した大森 英一郎氏。ランニングブームが盛り上がる中、「ランナーによるランニングコース紹介」という斬新なコンセプトで注目を集めているベンチャーだ。しかしその設立背景には、さまざまな苦難、そして多くの人との出会いがあったという。
社名 株式会社ラントリップ
代表 大森 英一郎 (Oomori Eiichiro)
所在地 東京都渋谷区
開業時期 2015年5月
事業内容 Webサービス「Runtrip」運営

※ 当記事内でご案内している事業計画書のサンプルは、インタビュー内容をもとにドリームゲート事務局にて独自に作成したものになります。実際に事業計画書の数字とは異なる事をご了承ください。

1:開業した経緯 ~ランナーにとっては道が大事。それなら道が地域資源になるのでは?というアイデアを思いつく。

大学4年生で箱根駅伝に出場。大学卒業後はリクルートグループの企業へ就職し、求人広告や人材コンサルティングサービスの営業に従事しました。お陰さまで色んな経営者との出会いに恵まれ、「30歳までに起業しよう」と志した。そのため、中小企業で経営について学びたいと考え、神奈川県横須賀市にある観光関連企業に転職しました。そこでは、猿島という無人島の活性化に向けた企画・集客を担当。

そこで、観光業の課題が見えたんです。 例えば地域活性を目指そうとした場合、イベントなどでの局所的な集客成功が凄いかのような風潮があります。しかしそうした集客は、地域の疲弊に繋がってしまうこともあります。私は、需要を平準化した集客が必要なのではないかと考えました。では、何ができるのか。そこで頭に浮かんだのが、地域資源としての“道”の活用です。道はどこにでもあり、活用にあたって投資を必要としませんから。

また、昨今はランニングブームですが、ここにも1つ大きな課題があると感じていました。ランナーの良し悪しがタイムや順位といった数字でしか語られない点です。しかし数字は年齢に伴っていつか超えられなくなる瞬間がある。では数字以外のモチベーションを持つことができれば、ランニングは生涯スポーツとしてもっと広まるのではないかと考えました。そこで、各地にあるいい道(=コース)を求めて旅をする「ラントリップ」という新しいスタイルを普及させることで、観光とランニング、双方の課題に対する解決策となるのではと思いました。

2:起業・開業で準備したこと ~東京都主催のビジネスプランコンテストに出場し支援対象に採択された事で、開業が一気に現実化した。

日本のランナー人口は約1000万人とも言われていて、東京マラソンなども今や大人気で1日で160万人もの人が集まる大イベントです。 これだけ盛り上がっているので、ここには大きなビジネスチャンスがあることは確信していました。 「ランナーによるランニングコース紹介」という事業イメージは、2013年頃に思いつきました。しかし、当時の私はWebサービスの開発・運営について何も知りません。

そのため、まず手始めに取り組んだのは、とにかく業界の人たちと話す機会を持つことでした。 20~30人と話したでしょうか。事業に共感してくれる人を探しました。そんな中、あるチャンスが訪れます。それが、2014年に開催されたTOKYO STARTUP GATEWAYという東京都主催のビジネスプランコンテストでした。まだサラリーマンとして働いていたのですが、このコンテストに出場したところ支援対象として採択して頂き、起業に踏み切れました。さらにこのコンテストを通じて、エンジニアなどの協力者も見つかりました。フリーランスはもちろん、就業中なので休日に手伝ってくれるという方までいました。なかには、1ヶ月有給休暇を取得して開発に携わってくれた方もいました。これは本当に嬉しく感じました。 そうして、ビジネスコンテストの開催から5ヶ月後、2015年4月に会社を退職し、その翌月に株式会社ラントリップを設立しました。

開業資金はビジネスコンテストでの支援金と私の貯金から。会社の登記手続きなども全て自分で行いました。手続きの仕方や書類の書き方などは、ネットで検索するとたくさん情報が出てくるので、初めてながら無事に会社を設立できました。

3:起業・開業後の営業活動 ~著名なランナーの方に声掛けしてコースを集めた。最初はとにかく良質なコンテンツ作りに集中。

開業後は当然ですが、「Runtrip」の開発に取り組みました。同時に、コースを投稿してくれるコースディレクター探しにも着手しました。著名なランナーさんに声をかけて、地道にコースの情報を集めました。 最初はマネタイズよりも、ユーザーにとって価値のあるサービス作りに注力しようと考えたんです。サービスは開業後2カ月目の2015年7月に正式リリース。すでに30名以上のコースディレクターが集まっています。

もちろん、開業に当たっての環境整備も欠かせません。とにかくお金をかけないようにしました。オフィスは知人のオフィスを間借りさせてもらいました。必要な印刷物などはコンビニエンスストアに置いてあるコピー機がネット経由での印刷に対応しているので、それを利用しています。サーバーはAWSです。あとは、パソコンさえあればどこでも仕事ができます。数字管理や経理業務には「弥生会計 オンライン」のようにクラウド型で、素人でも使いやすいサービスもありますし、便利な時代ですよね。

4:開業後 はじめての経営 経理・帳簿づけ

経理業務については、最初から税理士さんにサポートしてもらっています。ただし、最低限の情報はやはり自分でも把握したいので、「弥生会計 オンライン」も導入しました。他のクラウド版会計ソフトなども比較検討しているのですが、使いやすさではやはり弥生が良かったです。なにより起業家応援キャンペーンで14カ月も無料で使えるというのは大きいです。 まだ事業を始めたばかりということもあり、勘定項目なども多くありません。まずは交通費や打合せで利用したカフェなどの飲食代、あとは開発費でしょうか。そうした経費情報を「弥生会計 オンライン」で入力しています。使い方はとても簡単でマニュアルとかは見ずに使いはじめました。サポートもあるので安心という点と、専門知識がゼロでも使えるのが嬉しいですね。

あとは入力したデータがすぐグラフになって表示される機能も便利ですね。ビジュアルで全体感をさっと把握できるのが良いです。 正直、会計については苦手意識もあったのですが、それも自分でやってみて払拭できました。開業した当初は、正直に言って「数字管理を行わなければいけない」ことすら頭にありませんでしたから。経理業務というのは、どうしても面倒に感じてしまいます。

とはいえ、後回しにするほど大変になります。なので、とにかく操作が簡単で使いやすくて、時間が短縮できるということが、何よりのメリットですね。まずは自分で入力することで、一通り経理業務に慣れてきたので、今後は、口座情報の自動取得やクレジットカードとの連携も、是非使っていきたいです。

5:これからの展望・事業戦略

現在はまず国内のランナーと国内の道を繋いでいく段階です。次に2020年の東京オリンピックに向けて、訪日外国人ランナー向けのサービス展開も考えています。最終的にはグローバルなサービスに育てたいです。 現在、コース投稿はコースディレクターと呼ばれる一部のユーザーのみが行っていますが、いずれ全ユーザーにその幅を広げていく予定です。ローカルランナーの持つ情報はとても貴重なもの。

実際に走ったことのある人でなければ見えないもの、地元の方しか知らないことにこそ価値があると考えています。ローカルランナーとその地を訪れた人が繋がれる世界観を目指しています。何よりもランナーにとって何が価値を持ち、求められているのか。それを一番に考え、よりよいサービス運営に取り組んでいきたいです。