スマート開業事例 ~ 3万社への営業から導き出した行動概念をマニュアル化し「型化」するサービス。株式会社Gifted(ギフテッド) 杉田 恵美氏

冒頭

人材業界大手のリクルートグループに11年間在籍し、TOP営業として数多くの企業の人事戦略策定や採用活動体制構築、各種研修などに携わってきた杉田 恵美氏。リクルートグループ全社トップガンアワード2010最優秀賞、リクルートグループHRベストプラクティス2006コンテスト最優秀賞、拠点四半期ギネス売上記録、社長賞受賞など輝かしい実績を誇る。そんな杉田氏は今回、形骸化が進むOff-JTとOJTをつなぐ、現場再現性の高い新しい教育サービスで、教育および組織の「脱属人化」を実現するべく2015年4月に起業した。
社名 株式会社Gifted
代表 杉田 恵美 (Sugita Emi)
所在地 東京都中央区
開業時期 2015年4月
事業内容 人材教育、育成に関するプログラムの開発、マニュアルの作成、システム開発

※ 当記事内でご案内している事業計画書のサンプルは、インタビュー内容をもとにドリームゲート事務局にて独自に作成したものになります。実際に事業計画書の数字とは異なる事をご了承ください。

1:開業した経緯 ~知り合いの不動産会社の社長から「こんなサービスを作ってほしい」という要望が。起業に踏み切る。

私はリクルートグループで11年間、人材業界に携わってきました。採用活動の戦略策定から採用代行の支援、そして人事評価作成支援コンサル、そして各階層研修提供、人材定着支援などなど。そのなかで、とある知り合いの不動産会社の社長からいただいたアプローチがきっかけで、思いがけず起業に踏み切ることになりました。 「当社は人材の育成には何よりもお金をかけて研修もたくさんやっている。しかし、ある時ふと営業現場を見て、研修でやっていることが何も現場に活かされていないということを思い知り愕然とする。当社の営業ノウハウの伝達は、各マネージャーの資質に依存せざるを得ず、マネジメントのレベル差が激しすぎて人が定着しない。この状況から脱却するための新しいサービスを作ってほしい。」 その声が弊社のサービス開発のきっかけでした。それまでは正直、自分が起業なんてと考えもしませんでしたが、その社長が熱心に誘ってくださったおかげで、もしかしたら自分の今までの経験で、世に価値提供できることがあるのかもしれないと思い始めたのです。 社員が定着しない大きな要因になっているのは「仕事で成果が出せないから」。 成果が出なければ当然、会社に居づらくなります。クオリティの高い研修や、マネージャーがマネジメントに専念している環境を用意できれば良いのですが、そうした余裕がある会社は昨今限られます。世の中のマネジメント職の7割がプレイングマネージャーですからね。そうすると、社員研修もそこそこで、いきなり現場に出されて「仕事は見て覚えろ」となる。 そのようなOJT至上主義の会社や、Off-JTを積極的に行っているものの、外部研修は再現性が低いため効果を実感できない、内部研修をするにも、ロープレなど属人的な手法をとる会社がほとんどで、教育全体が手詰まりになっていると感じました。 そのような状況を打開するサービス・価値を提供するべく起業に至りました。

2:提供するサービス

私が考えたのは「型化」。つまり、仕事のやり方の型・ベースを徹底的に身に着けるという事です。 大げさなことではありません。スポーツの世界では当たり前のことです。初めて野球部に入部したとします。普通であれば、まずはオーソドックスな素振りをひたすら反復するでしょう。 日本には「守・破・離」という言葉があります。師匠についてまず型を覚える、これが守。型が身についたら、今度は自分なりのやり方に変えていく、これが破。そして師匠から受け継いだ型と自分なりの型が出来上がって、初めて型から「離れて」、やがてパフォーマンスの最大化に行き着く。仕事もこの通りだと思います。 「破・離」に導くための「守」の定着・浸透がまず必要なのです。 そのために、具体的に「ストーリーマニュアル制作」と「テストラーニングアプリ導入」という2つのサービスを提供します。営業活動をストーリー化して、それをテスト形式で身につけさせていくというのが基本的な流れです。マニュアルというと「マニュアル人間」などと、否定的なイメージでとらえられることが多いですが、ギフテッドの「ストーリーマニュアル」は徹底的に、自考力強化にこだわった「脱・マニュアル人間」マニュアルといえるものになっています。そして、定着・浸透のカギを握るのがもう一つの特長である、「高い現場再現性」です。 また、テストラーニングでは、ストーリーマニュアルをもとにケーススタディ形式の現場再現性にこだわったテストを作成。モバイルアプリに落とし込み、自動追試機能、誤答部分に符号するマニュアル自動表示機能などで、学校教育さながらの、その反復量が特徴的な仕組みとなっています。 最終的に、個々人の思考・行動パターンを根本的なところから変えていくことを目的としており、実際にある企業では、TOP営業が月1件の受注だったのに対し、弊社プログラムを受けた新人が月4件受注をたたき出すという成果も出てきています。 現場再現性の高いストーリーマニュアルだからこそ、社員全員に定着・浸透し、社内のいたるところで「破・離」、つまり新たなイノベーションが起き続け、それがまたテストラーニングによって組織に浸透する。そのサイクルで組織の成長が加速していくのです。

3:開業で準備したこと ~資本金は300万。事業計画書は1枚にまとめて、知人の会社に間借りして会社をスタート。

前述の不動産会社社長から相談された課題を解決するべくサービスを練り上げていく過程で、さまざまな業界大手の経営者の方にもお話を伺う機会がありました。 すると、業界・企業規模問わず人材教育について共通の悩みをもっていることが見えてきたのです。 ようやく「よし、これでやっていこう」と決断できた瞬間でした(笑)。 資本金は300万円でスタートしました。 リクルートを退職する前に、百戦錬磨で創業支援をしていらっしゃる知り合いのコンサルタントの方に事業計画書も見てもらったのですが、そこで指導してもらったのは、分厚い計画書にするのではなく、簡潔に1枚にまとめるという事でした。机上のお絵かきは所詮机上の空論だよと。その言葉は、今一緒に役員としてやっている、起業家としても尊敬する南風盛さん(ハエモリ企画CEO兼当社取締役)もずっと言っていたことだったので、すっと心に刻まれ、これからとるべき行動は何なのかが明確になった瞬間でした。 3C図、5force、SWOT分析など基本的なところだけ押さえた事業計画書に仕上げました。これならいつでも自分の事業について説明ができます。金融機関などに融資やベンチャーキャピタルに出資を仰ぐ際の事業計画書ではなく、そのまま営業現場にも使える、実践的な計画書ですね。それをもって、お客さまの待つ営業現場の場数を増やして、その事業計画書をブラッシュアップし続けています。 そして、最も重要なのはキャッシュフローの管理という事も教えてもらいました。とにかく資金がつきないようにするのが肝要という事で、資金計画は念入りに作成しました。 当社の場合は設立時にどうしてもシステムという大きな投資が必要でしたので。黒字倒産だけは避けるよう、細心の注意を払っています。 会社事務所は設立当初は知り合いの会社のフロアを間借りさせていただき、始めることができました。今でもその会社さんにはとても感謝をしています。 また、前職の尊敬する先輩から話をいただき、クラウドカンパニーという創業支援の会社からご支援いただいています。この会社は元ソフトバンクアカデミア1期生の方が起こした会社で、主に事業の方向性のブレストや、知財分野のご指導をしていただいています。弊社サービスは複数特許出願準備を進めており、このご支援があったからこそだと考えています。

4:開業後の営業活動 ~お客さまの本当の課題とニーズは、営業機会の数だけ明確化されていき、サービス改善に伴い、ホームページも営業開始5ヶ月で刷新するほど。お客さまのニーズを一つ一つ叶えていく楽しさに没頭していきました。

弊社のサービスの特性上、システム構築から仕事が始まりました。起業前からシステムコンサル会社のハエモリ企画さまの南風盛社長(現:当社役員)と何度も打ち合わせを重ね、その時最高だと思ったサービスを付けていきました。開業3か月後サービスも形になってきたので、営業を開始しました。 営業手法は大きく分けて2つ。1つ目はご紹介。今までリクルートで出会った企業さまへの訪問や、昔から可愛がってくださった尊敬する大先輩などからいただく紹介。FacebookなどのSNSを最大限活用しました。 2つ目は、新規の営業アポ取りです。新規の営業アポはとても勉強になりました。大手求人サイトに出ている会社をリストアップし、とにかくテレアポを行いました。 開業して気付いた事は、お客さまから求められている事と自分が考えていた事のギャップの大きさです。本当に欲しいニーズ、サービスにたどり着いていなかったので、素直にお客さまからどんなニーズがあるのか、どんなシステムなら導入したいかを、教えて頂くようにしました。今もですが、いただいた企業なお客さまの意見と事業計画書を照らし合わせ、何度も何度も自分たちの存在価値サービスの定義づけを行っています。 弊社のサービスは決して安いものではないので、受注・入金までではある程度期間がかかると覚悟していましたが、約半年後の9月になって、初めて売上の入金ということになりました。これはすごくうれしかったですね。売上というものを通して、企業の提供している価値を認めてもらえた、ようやく社会に認められたという感覚でした。

5:開業後 はじめての経営~経理・帳簿づけ

経理業務については、税理士さんだけは最初から有料で顧問契約しました。とにかく、プロに監視してもらいたかったというのが理由です。顧問料はかなり安くしてもらったのですが、毎月きちんと指導して頂いています。税理士さんからの指導内容ですが、具体的にはキャッシュフローの管理ですね。 予測損益計算書を作って、それと実際のお金の動きを見ながら経営をしています。計画と結果の管理が重要です。経理ソフトとしては「弥生会計 オンライン」も導入しました。起業家応援キャンペーンで14カ月も無料で使えるというので、まずはお試しという事で使っています。やはり知名度が圧倒的ですよね。あと、会計ソフトというとすごく高額なものというイメージがあったのですが、実際は年間でも3万円程度ということで安心しました。税理士さんからもお勧めされたので間違いないと思います。 事業を始めたばかりなので、経費もあまり使っていないのですが、大きいのはシステム開発費などでしょうか。固定費も通信費と税理士さんへの顧問料くらいです。 開業後に驚いた事の1つに、たくさんDMが送られてきます。法人登記すると、その情報をリスト業者が収集して、新規法人向けにいろいろな会社や士業の方が案内を送ってくるようですね。ただ、どのDMも同じような内容で、正直あまり目を通していないですね。そのなかでも、会社運営のマニュアル的なものがあって、それだけはいつもカバンに入れて持ち歩いていました。

6:これからの展望・事業戦略

これからやりたい事は2つあります。 まずは、今後機械化・ロボット化していく未来に向けた人間の果たすべき役割の再定義及び最大化に挑戦したいと思っています。2030年、超高齢社会への突入・少子化の影響で、労働人口が減少の一途を辿ることが確実視されています。そこでロボット技術の進歩が待望されており、ロボットが足りない労働力を担うことが、海外との競争力を高める有力な施策と位置づけられています。しかし、PDCAを含む上流の仕事や、サービス業における接客・営業の職種など、まだまだビジネスを加速させるにあたり、人間ならではのIQ-EQ(応用力・感受性)が必要であると考えます。人材教育を通して、人間しか担えない役割を明確に定義、最大化し、ロボットと人間の理想的な共存にギフテッドは寄与したいと考えております。 もう一つは、日本の古き良き生活スタイル・文化を復活させたいという事を考えています。今は欧米型のライフスタイルや働き方に偏重しすぎていると感じます。日本的家庭の良さもあるはずです。そのためには週休3日の正社員、あるいは在宅勤務の正社員制度などがあれば、主婦はもっと効率的に働けるようになります。新しいワークバランス・ライフスタイルを確立させたいというのも、私の目標の1つです。