事業計画書サンプル&解説集~飲食業編~
お菓子の販売とお菓子教室を横浜で開業した松本美佐さんの事業計画。

冒頭

横浜市営地下鉄ブルーライン上永谷駅から徒歩8分ほどの住宅街にあるお菓子教室を経営している女性起業家、松本 美佐氏。

服部栄養専門学校を卒業後、ベルギーの和食店、製菓材料メーカーの商品企画を経て、2002年から週末起業としてお菓子教室を開講。フードコーディネータ資格とフランス菓子製菓技術を取得し、2007年にはキッチンスタジオ「横浜ミサリングファクトリー」をオープンしました。

もともとはお菓子の製造・小売業もかねてスタートしたものの、お菓子教室のほうが盛況となったためスクールビジネスをメインに。他にも法人向け商品開発・コンサルティング・イベント、お菓子作りの本を執筆したり、家庭用ゲームソフト用のレシピ開発や、最近では小規模スクール運営者向けの生徒管理システム「テトコ」の開発するなど、多彩なご活躍をされていいます。
※テトコは2015年夏頃にリリース予定

そんな様々なサービスを展開している松本氏に、開業時の事業計画についてインタビューしてきました。これから店舗型ビジネスで開業を検討している方、特に飲食関連の事業を考えている方には、とても参考になる内容です。

社名 横浜ミサリングファクトリー(個人事業)
代表 松本 美佐(Matsumoto Misa)
所在地 神奈川県横浜市
事業内容 食育お菓子教室、フランス菓子教室、料理教室起業支援(起業スクール)、製菓関連商品・メニュー開発、お菓子のオーダーメイド販売。
URL http://www.misaling.net/
売上高 800万円
開業資金 600万円
(自己資金300万)
(公庫融資300万)
安全率 1期目開始時:2.2
3期目終了時:5.6

安全率とは
安全率とはドリームゲート事務局で作成した概念で、手持ち資金÷月経費という計算で割り出した指数になります。
例えば、安全率が 5 の場合、5か月は売上・収益がなくても会社の運転資金が持つ、という意味になります。起業後は売上が思うようにあがらず、開業資金を消化していく時期が続くことが多く、資金ショートして廃業してしまうか、売上が伸び始め資金繰りが好転して廃業危機を乗り越えられるかの境目が、開業後1~2年目に多いことが、ドリームゲート事務局と弥生株式会社での共同アンケート調査によりわかりました。
つまり開業時に如何に手元資金を手厚くもってスタートできるかが、会社の生存率を左右します。しかもそれは1~2ヶ月分の運転資金で生存率が大きく異なるという結果が出ているため、ドリームゲートでは安全率を意識して開業しようという啓蒙活動をしております。

※ 当記事内でご案内している事業計画書のサンプルは、インタビュー内容をもとにドリームゲート事務局にて独自に作成したものになります。実際に事業計画書の数字とは異なる事をご了承ください。

1:開業費用の計画~開業資金は自己資金300万円と借入300万円をあわせて計600万。しかし開業経費が500万ほどかかり・・・

私が開業したときに用意していた自己資金は300万円で日本政策金融公庫からも300万円を借りて、合計600万円でスタートしました。

開業費用は、内装費で200万、設備費で200万円、店舗契約費用で80万円。あとは備品、原材料の購入などで20万円ほどかかったので、合計で500万円が開業経費になります。

1年目の想定年商は堅く見積もって600万円、月50万円の売上を目指す計画でした。

開業費の内訳は以下のとおりです。

●初期仕入れ費用 10万円
●店舗契約費用など 80万円
●店舗内装工事費など 200万円
●厨房機器・空調機器など 200万円
●事務用品など 10万円

初期仕入れ費用

原価率は15~20%で想定していました。料理教室の原材料費としては、このくらいに抑えたいところでした。

店舗契約費用など

店舗として借りたのは、店舗は「上永谷駅」徒歩8分にあるビルの2階で、広さは85平米(25坪)で家賃は駐車場込みで月12万円。周囲の相場としては坪1万円くらいだったので、破格の安さでした。良い物件に巡り合えてラッキーでしたね。

まったくのスケルトン状態だったので、内装工事や調理設備、床の底上げなどを含めて、内装費が合計で400万円ほどかかりました。業務用の冷蔵庫や調理台などの設備、器具類に200万円、残り200万円が内装や電気ガスなどの工事費です。内装費は知り合いなどを頼って、かなり安く仕上げてもらいました。空調は残置物があり購入せずにすませました。

店舗用品など

ファックス、プリンター、電話機、事務用品等で10万円ほどかかりました。開業時に広く声をかけ、テーブル、椅子、エアコン、洗濯機、棚、食器類などなどを友人知人から貰い受け、費用をかけずに多くの備品を揃えることができました。

手持ち資金

開業資金として調達した600万円から開業経費を引いた100万円が残りの手持ち資金となります。計画では1か月50万円の売上ですが、原価を除いて、家賃や自分の給与(役員報酬)、光熱費などの経費は売上に関係なく固定で月30万円ほどはかかるので、3か月分の運転資金でスタートしたことになります。

2:起業前に考えていた計画~1期目の事業計画は堅く見積もって年商600万円。

1期目の年商は600万円という事業計画でした。もう少し細かい数字で計画書は作成していましたが、これは資金を借りるために、堅実に見積った計画しです。

経費の計画は、以下の通りです。月次で示します。

●原価 8万円
●人件費 無し
●役員報酬 15万円
●家賃等 12万円
●水道光熱費 3万円
●広告宣伝費 1万円
●その他の営業諸経費 2万円
●公庫借り入れの返済 4万円

上記のような経費計画で月の支出は45万円となり、利益は5万円残ります。

原価

目標月商50万円で原価率15%の設定なので、約8万円としています。

人件費

最初は自分一人で運営するつもりでしたので0です。

役員報酬

最低限の生活費として月15万円としました。

水道光熱費

店舗の光熱費ですね。電気やガス、水道もたくさん使うので、毎月3万円ぐらいの支出になると試算しました。

広告宣伝費

たまにチラシをまく程度で、月に1万円とました。口コミや出張でイベントなどを行い、極力宣伝費はかけない計画です。

その他の営業経費

月1万円としたのは、インターネットの回線費や電話代、ホームページのサーバ代などですね。

借入金の返済

開業費用として300万円を借りています。6年で返済として、毎月4万程度を返す計算です。

3:実際の1期目はどうだったか~1期目の売上は目標年商に対して7割と低迷。ありがたいことにゲームソフト用のレシピ開発受託や法人向けコンサルティングなども手掛けることができラッキーだった創業期。

当初はお菓子を製造・販売もしていました。それなりの売上になりましたが、かかる労力を考え、教室業が安定してきた4期目くらいから販売はやめ、教室に専念することにしました。結果的には1期目の売上は目標の7割程度の、420万円ほどでした。もともと週末起業という形でお菓子教室をやっていたこともあり、その時の生徒さんが来てくれましたが、それでも目標には遠く及びませんでした。

当初のお菓子教室の会費は1人3000円~6800円ほどで、月100名の生徒さんが来てくれるという計画で、ターゲットは子どもと本格的な製菓技術を身に付けたい方でした。フランス菓子教室は単価が高く、教室の特徴が認知されるまでには時間がかかりました。途中2回ほど会費の値上げも行ないました。

パティシエになりたいという子供の生徒さんが多く、横浜市内だけでなく、都内からも通ってくる方もいました。年齢層も下は3才から上は大学生まで。

実際に私の教室に通っていた子が製菓専門学校に進みました。本格的な設備を備えた子供専門のお菓子教室をやっているところが他に無かった事が大きいですね。私の教室が日本初だったかと思います。

それでも経営的に1期目、2期目と苦しい時期が続きました。途中で資金がショートしそうになり、追加で150万円ほど追加融資も受けました。ゲームソフト用のレシピ開発や法人向けのコンサルティングなどの売上もあり、それでなんとか乗り切ったという感じです。今は7期目ですが、経営的に安定してきたのは、つい最近という感じですね。

そうしてコツコツ続けてきた成果か、今はフランス菓子教室の生徒さんがとても増えています。教科書や図書館に入れる書籍を出版しているところからのお声掛けで、お菓子作りの本も制作しました。全3冊のセットで初版3000部だったのですが、そのうち第一巻は増刷もかかり、合計6000部くらい売れたようです。

4:健全な経営を実現して生き残るためのポイント~経営的に辛い時でも、相談できる相手がいる事は重要。

私が経営に困ったときは、横浜企業経営支援財団というところによく相談しにいきました。そこでいろいろな指導を受けられたのが、苦しい時期を乗り切れた最大の要因かもしれません。会計業務も税理士さんなどに依頼する余裕がないので、自分でパソコンソフトを使って行っていましたし、決算や確定申告なども自力でやっていました。そうした課題も上記の経営支援財団のようなところで相談すれば、丁寧に教えてくれるので、とても助かりました。横浜は起業支援系の施設や団体がたくさんあり充実しているエリアだと思います。そういう意味では東京都内よりも恵まれた環境かもしれません。

また、開業時にはお菓子の製造・小売というビジネスも考えていたのですが、早々に教室ビジネスに特化したのも経営が継続できている理由の1つだと思います。菓子販売業は片手間では中途半端になり、売上も上がらないため、スクール業に専念することに決めました。

最近は新規事業として、個人運営の教室向けに生徒管理システム「tetoco(テトコ)」を開発・販売を計画しています。もともと自分の教室で使うためのシステムを探していたのですが、使い勝手のよい個人向けに適した顧客管理システムがなく、それなら自分で作ってしまおうと考えたのがキッカケです。開発初期費用はクラウドファンディングや横浜市の助成事業に選定され、賄うことができました。システム開発者、デザイナーさんと収益分配という契約のプロジェクトを組みました。リリース予定は2015年夏頃で、テトコの利用料は初期費用1万円、月額3000円程度を考えています。おかげさまでクラウドファンディングでは目標100万円に対して160名超の方から120万円が集まりました。実際に教室運営している当事者の目線で開発しているということで、そこに期待して頂いているようで、発売前ですが問合せもたくさんいただいています。

自身の経験から女性の経済的自立というのは、自分の中でも大きなテーマになっています。小規模な教室ビシネスをやっている女性って多いんですよね。ピアノ教室とか料理教室とかを自宅の一部で開催しているケースは多いと思います。そうした女性のビジネスが少しでも楽になればと思って、上記の「teteco(テトコ)」も開発しています。