会社設立(法人化)における事業計画書とは【業種別テンプレートあり】

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/07/31  最終更新日: 2024/08/06

会社設立を検討している方にとって、事業計画書の作成は避けて通れない重要なステップです。しかし、はじめて法人化を目指す方にとっては、何から手をつけていいのかわからないことも多いでしょう。

事業計画書とは、会社のビジョンや戦略を具体的に示す文書であり、融資の申請や投資家への説明に不可欠なものです。

本記事では、初心者の方にも理解しやすいように、事業計画書の基本的な書き方やポイントを解説します。
また、業種別のテンプレートも用意しているため、参考にしていただければ幸いです。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.会社設立時の事業計画書の役割

会社設立を検討している方にとって、事業計画書の作成は避けて通れない重要なステップです。とくに法人の場合には、役員の経歴やそれぞれの得意分野なども重要な要素となります。また、経費や売上などの数値も、個人事業以上に複雑で、厳密な予測と計画が求められます。

1) 資金調達

会社設立において重要なステップのひとつが資金調達です。資金がなければ事業ははじめられず、運営を続けることも困難です。事業計画書は、銀行や投資家に対して、自社のビジネスビジョンや計画を示すための重要なツールとなります。

資金調達を成功させるためには、事業計画書に具体的な資金計画や収益見込みを詳細に記載することが求められます。これにより、融資を受けるための説得力を持たせることができます。

また、事業計画書には、市場分析や競合分析を含めることが重要です。市場分析では「ターゲット市場の規模や成長性、顧客のニーズ」を明確にし、競合分析では「主要な競合他社の強みや弱み」を把握することで、自社の優位性をアピールします。

2) 事業ビジョンの明確化

事業計画書を作成する過程で、自社のビジネスのビジョンやミッションを明確にできます。ビジネスの目的や目標を具体的に記述することで、経営の方向性が定まり、長期的な目標の設定が可能になります。ビジョンを明確にすることで、日々の経営判断が一貫性を持つようになり、ぶれることなく進むための指針となるでしょう。

さらに、ビジョンが明確であれば、従業員やパートナーとのコミュニケーションもスムーズになり、チーム全体が同じ方向を向いて働くことが可能になります。また、ビジョンを共有することで、従業員のモチベーション向上や組織の一体感を高める効果も期待できます。

3) 事業イメージの共有

事業計画書は、ビジネスの全体像を示すためのものであり「従業員やパートナー・投資家」など、さまざまなステークホルダーとビジネスのイメージを共有するために役立ちます。事業計画書には、ビジネスモデルやマーケティング戦略、運営計画などが詳細に記載されているため、関係者全員が同じ情報を共有し、一致団結して目標に向かって進むことができるのです。

具体的には、事業計画書を通じて「どのような商品やサービスを提供するのか、ターゲット市場はどこなのか、どのようにして顧客を獲得するのか」などを明確に示すことができます。また、運営計画では、日々の業務の進め方やスケジュールを具体的に記述することで、効率的な運営をサポートします。これにより、関係者全員が同じ目標に向かって効率的に働くことができるのです。

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2.事業計画書の書き方

事業計画書は、会社設立に欠かせない重要な文書です。以下の9項目に沿って詳細に記載することで、ビジネスのビジョンや計画が明確になり、関係者との信頼関係構築につながります。

① 創業の動機

なぜこのビジネスをはじめるのか、その背景や目的をくわしく説明します。これにより、自分のビジネスに対する情熱や信念が伝わり、関係者の共感を得ることができます。

参考) 日本公庫の創業計画書【創業の動機】欄の良い例・悪い例

② 経営者の略歴など

これには、学歴や職歴、業界での経験や実績などが含まれます。経営者のバックグラウンドを明示することで、信頼性の向上につながります。

参考)日本政策金融公庫の創業計画書【経営者の略歴等】の書き方と記入例

③ 取扱商品・サービス

商品の特徴や利点、競合との差別化ポイントなどを明確に示すことで、ビジネスの強みをアピールします。

④ 従業員

従業員の人数や役割、採用計画などを明示することで、チームの構成や運営体制を明確化します。これにより、ビジネスの運営がスムーズにおこなわれることを示します。

⑤ 取引先・取引関係など

信頼できる取引先があることを示し、ビジネスの信頼性を高めます。

⑥ 借入の状況

借入金の使途や返済計画を明確に示すことで、資金管理の健全性をアピールします。

⑦ 必要な資金と調達方法

初期費用や運転資金の詳細、資金調達の計画を明示することで、ビジネスの実現可能性や安定性を示します。

⑧ 事業の見通し(月平均)

月平均の売上や収益予測を具体的に示し、ビジネスの成長可能性をアピールします。事業計画書の中でも重要なパートになるため、できるだけくわしく記載しましょう。

⑨ 自由記述欄

最後に、自由記述欄を活用して、ビジネスに対する思いや追加情報を記述します。ここでは、ビジネスの将来ビジョンや戦略、特別な取り組みなどを自由に述べることができます。

以上の9項目を詳細に記述することで、事業計画書は、ビジネスの方向性や戦略を明確にし、関係者との信頼関係を築くための強力なツールとなります。

創業の動機については、上野氏のYouTubeが参考になります。

3.業種別記入例

事業計画書は、業種ごとで記載するポイントが異なります。ここでは、それぞれの業種ごとの事業計画書【記入例】をもとにポイントを解説します。

1) 飲食業の特徴

飲食業の事業計画書では、とくに以下の点に注意するとよいでしょう。

①立地の重要性

飲食業は立地がビジネスの成功に大きく影響します。具体的な場所や周辺環境を詳細に記述し、その選定理由を説明します。

②メニューと価格設定

提供するメニューや価格設定を詳細に記述し、ターゲット顧客層に合わせた戦略を示します。

③衛生管理とスタッフ教育

衛生管理やスタッフ教育の計画を具体的に記述し、安全で高品質なサービスを提供するための取り組みを説明します。

参考) 【記入例あり】飲食店向けの創業計画書の書き方とは?例文を使って徹底解説!

2) 小売業の特徴

小売業の事業計画書では、以下の点に重点をおくことが重要です。

①商品ラインナップ

提供する商品やサービスの詳細を記述し、ターゲット市場や顧客ニーズに合わせたラインナップを示します。

②販売戦略

オンラインおよびオフラインの販売戦略を詳細に記述し、顧客獲得のための具体的なマーケティング方法を示します。

③在庫管理

在庫管理の計画を具体的に記述し、効率的な運営をサポートするためのシステムや方法を説明します。

参考) 創業計画書作成のコツ【小売業編】と小売業起業者の成功談

3) 美容業の特徴

美容業の事業計画書では、以下の点に注意するとよいでしょう。

①サービス内容

提供する美容サービスの詳細を記述し、他社との差別化ポイントを強調します。

②顧客ターゲット

ターゲット顧客層を明確にし、そのニーズに合わせたサービスやマーケティング戦略を示します。顧客の属性により、マーケティング手法(SNS、ネット広告、チラシ、看板など)の工夫が必要なため、できるだけ具体的にターゲットを想定しましょう。

③スタッフ教育と設備

スタッフの教育計画や設備投資の計画を詳細に記述し、高品質なサービスを提供するための取り組みを説明します。

参考) 美容室の事業計画書サンプルから見る、作り方のすべて

4) 建設業の特徴

建設業の事業計画書では、以下のポイントを説明し、アピールしましょう。

①プロジェクト管理

プロジェクト管理の計画を具体的に記述し、スケジュールや予算管理の方法を説明します。仕事の受注先なども含めて計画しましょう。

②安全管理

安全管理の計画を詳細に記述し、労働者の安全を確保するための取り組みを示します。近年、建設業界のコンプライアンスは非常に厳格化されているため、しっかりと関連法令を確認して計画しましょう。

③技術力のアピール

会社の技術力や過去の実績を具体的に記述し、信頼性をアピールします。

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4.会社設立の方法

会社設立を目指す際には、その具体的な手順や、必要な手続きを理解することが重要です。適切な準備をおこない、スムーズに法人化するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

参考) ドリームゲート「会社設立の手続きがすべてわかる、要点まとめ」

1)会社設立の流れ

会社設立の最初のステップは、会社の基本事項を決定することです。これには「会社の名称、所在地、事業目的、資本金、役員構成」などが含まれます。これらの基本事項を決定した後、定款を作成します。定款は会社の基本ルールを定めた重要な文書であり、株式会社の場合には公証人役場で認証を受けることが必要です。

定款認証が完了したら、次に設立登記の申請をおこないます。設立登記は、会社の設立を法的に認めてもらうために必要な手続きです。法務局に必要書類を提出し、登記が完了すると、正式に会社が設立されます。会社の設立日は、法務局に登記を申請した日となります。

2)会社設立後におこなう3つの手続き

会社が設立された後にも、さまざまな手続きをおこなう必要があります。まずひとつ目は、税務署への届け出です。ケースによってことなりますが、必要な書類を提出することで、適切な税務処理がおこなわれるようになります。

次におこなう手続きは、社会保険や労働保険など各種保険、年金の加入手続きです。従業員を雇用する場合は、社会保険や労働保険に加入する義務があります。これにより、従業員が適切な保障のもとで働くことができるようになります。

さらに、地方自治体に対して、地方税(法人事業税など)関連の手続きをおこないます。必要書類やフォーマットは自治体によってちがうため、各自治体のホームページを確認してみてください。

3)会社設立の書類作成

会社設立には、多くの書類作成が必要です。まず、先に述べた定款は非常に重要です。定款には「会社の名称や所在地、事業目的、資本金、発行可能株式総数」などの基本情報を記載します。また、定款には、株主総会や取締役会の運営方法などの細かい規定も含めなくてはなりません。定款が完成したら、公証人役場で認証を受けることが必要です。

次に、設立登記の際に必要な書類として、設立登記申請書があります。会社の基本情報や定款のコピー、出資者・役員の同意書などの書類を法務局に提出し、設立登記が完了することで、会社が正式に設立されます。

さらに、税務署への届出書類も準備が必要です。届出書類には、法人設立届出書や青色申告承認申請書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書などがあります。これらの書類を提出することで、適切な税務処理がおこなわれるようになります。

また、社会保険や労働保険の加入手続きの際には、健康保険・厚生年金保険新規適用届や雇用保険適用事業所設置届などの書類が必要です。

5.会社設立についてよくある質問

会社設立を考えている方々にとって、さまざまな疑問が浮かぶことは自然なことです。このパートでは、よくある質問に対してわかりやすく説明します。これらの質問に対する理解を深めることで、スムーズに会社設立のプロセスを進められるようになるでしょう。

1)会社設立時の費用はいくら?

会社設立には一定の費用がかかりますが、その金額は会社の形態や規模によってことなります。株式会社の設立にはおよそ21~25万円、合同会社の設立には7~10万円ほどかかります。

さらに、会社設立手続きを、専門家に依頼する場合の費用も考慮する必要があります。たとえば、司法書士や行政書士に手続きを依頼する場合、その報酬として10万円から20万円程度かかります。

総合的に見ると、会社設立にかかる費用は30万円から50万円程度が目安となります。ただし、設立する会社の規模や業種、地域によってはこれ以上の費用がかかる場合もあります。

参考)ドリームゲート「会社設立費用は約7万円から!費用・手続き・法人の種類についての総まとめ」

2)会社設立の資本金はいくら必要?

資本金は会社設立において非常に重要な要素であり、事業を開始するための運転資金としても機能します。

以前は株式会社を設立するために、最低資本金として1,000万円が必要とされていましたが、現在では1円からでも設立が可能です。ただし、じっさいに事業を円滑にスタートさせるためには、十分な資本金を用意することが望まれます。

一般的に、設立する業種や事業計画によって適切な資本金の額は異なります。たとえば、飲食業や小売業などの初期投資が大きい業種では、数百万円から数千万円の資本金が必要となるケースもあります。

一方で、IT業やコンサルティング業などの比較的初期投資が少ない業種では、数十万円から数百万円程度の資本金でも設立が可能です。資本金は、銀行や投資家からの信用を得るためにも重要な要素となるため、事業計画をしっかりと練り、適切な金額を設定することが大切です。

3)有限会社と株式会社の違いは?

廃止された最低資本金制度において、株式会社の最低資本金が1,000万円であった一方、有限会社は300万円が必要でした。ただし、2006年の新会社法施行により、有限会社の新設は不可となり、既存の有限会社は特例有限会社として存続しているのみとなっています。

新会社法が施行される前は、有限会社と株式会社の設立条件と特徴に大きな違いがありました。株式会社は資本金が1,000万円以上と高額なため、社会的な信用を得やすいという利点がある一方で、小規模な事業をはじめたい人には設立のハードルが高く不向きでした。

しかし、新会社法の施行により、株式会社の設立条件が緩和されたため、株式会社設立のメリットが増し、有限会社の形態を維持する必要性が減少しました。この結果、有限会社の新規設立廃止が決定されたわけです。

6.会社設立の第一歩は事業計画書から

会社設立の第一歩は、しっかりとした事業計画書の作成からはじまります。事業計画書を作成することで、ビジネスの方向性を明確にし、資金調達や関係者とのコミュニケーションが円滑に進むようになります。しかし、はじめての方にとって事業計画書の作成は、非常に労力と時間がかかり大変な作業です。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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