個人事業主が日本公庫の融資申込み前にチェックしておきたい3つのポイント

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/06/03 

日本政策金融公庫の融資は、開業前後で実績のない個人事業主にとって、事業をスタートするために欠かせない資金調達手段です。

しかし、日本公庫の創業融資の成功率は50~60%ほどといわれており、ポイントを把握するなど十分な準備が必要です。そこで当記事では、個人事業主向けに、日本政策金融公庫の融資制度をわかりやすく解説します。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主の創業・設備投資や資金繰り円滑化などを支援するために設立された政府系金融機関です。

民間の金融機関がおこないにくい融資を補うことを目的にしており、金利が低く、返済期間が長いことが特徴です。さらに、無担保・無保証で融資を受けられる制度もあり、創業間もない事業主でも利用しやすい環境が整っています。

2.個人事業主が受けられる融資制度

日本公庫では、個人事業主向けにさまざまな融資制度を用意しています。目的に合わせて最適な制度を選択することで、資金調達をスムーズにおこなうことができます。

ここでは、創業者向けの創業融資制度である「新規開業資金」と「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」について解説します。

1)新規開業資金

新規開業資金は、創業間もない事業主向けに、事業資金を融資する制度で、ビジネスに必要な運転資金や設備資金などを借りることができます。

主な特徴

●無担保・無保証で融資を受けられる(開業後税務申告2期未満の方など)

●創業間もない事業主でも利用しやすい

●金利が低い(開業後税務申告2期未満の方は金利が0.65%引下げ)

●返済期間が長い

●上記の長期低金利により、返済負担を軽減し資金繰りを楽にできる

融資対象

●開業後おおむね7年以内の方

(とくに開業後税務申告2期未満や、条件に当てはまる方は有利な条件で利用可能)

●事業の目的が明確で採算性が期待できる事業

●設備資金や運転資金などが対象

融資限度額

●最大7,200万円(運転資金は最大4,800万円)

返済期間

運転資金10年以内、設備資金20年以内

うち据置期間(金利のみ返済期間)5年以内

2)新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)

「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、女性、39歳未満の若者、55歳以上のシニアが創業する際に、事業資金を融資する制度です。

新規開業資金よりも低金利などの優遇措置が設けられており、より有利な資金調達が可能になります。女性・若者・シニアの創業に関するセミナー開催や、情報発信も手厚くおこなわれており、創業に必要な知識やノウハウを学ぶことも可能です。

金利以外の条件は「新規開業資金」とほとんど同じですが、一般的な創業以上に起業を後押しするムードがあり、国の施策として市場活性化の取り組みとしておこなわれています。

融資対象

●開業後おおむね7年以内の「女性や39歳未満の若者、55歳以上のシニア」

●事業の目的が明確で採算性が期待できる事業

●設備資金と運転資金などが対象

融資限度額

●最大7,200万円(運転資金は最大4,800万円)

返済期間

運転資金10年以内、設備資金20年以内

うち据置期間(金利のみ返済期間)5年以内

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3.個人事業主が融資を受けるための流れ

日本公庫における融資の流れは、以下のようになります。申込みから融資決定までは最短で2週間程度ですが、一般的には1ヶ月程度を予定しておきましょう。民間金融機関にくらべてスピーディーな対応もメリットのひとつです。

基本的に必要資金の見積書・納品書など、日本公庫が求める書類をすべて提出した後に、融資決定および融資入金になります。早めに書類を準備するように心がけましょう。

1)融資申込み

まずは、日本公庫のホームページまたは窓口で、必要な書類を確認しましょう。担当窓口は、事務所・営業所所在地の管轄支店になるため、事前相談や問い合わせは管轄支店でおこなうようにしましょう。申込み書類などは、オンラインでダウンロードすることも可能です。

申込みはホームページからおこなうことも可能です。しかし、はじめての場合には管轄支店で事前相談および申込みをしておくと、さまざまなアドバイスを受けることができるようになります。申込み後の流れがスムーズになるでしょう。

2)面談

融資申込みが受理されると、融資担当者との面談がおこなわれます。

面談では、融資担当者からの質問に応じて、事業内容や資金計画などをくわしく説明する必要があります。もっとも重要な必要書類である「創業計画書・収支計画書」の内容を中心に質問されるため、しっかりと回答できるように準備しておきましょう。

面談は、融資担当者に事業内容や資金計画について理解してもらう場となります。「計画どおりに事業が軌道にのるか?」「事業計画は問題なく実現できるか?」などが確認されるため、しっかりとした準備が必要です。

参考

創業融資の面談を成功させる準備とは?よくある8つの質問と回答例

3)審査と手続き

面談後、融資担当者とは別の審査担当者が事業内容や資金計画などを審査します。必要資金を確認する「見積書や納品書」など、必要書類がすべてそろってから融資決定となるため、早めに準備しましょう。

面談の時点で書類がそろっていれば、2週間程度で審査結果がわかり、審査に通れば融資契約を締結します。融資の決定は「満額承認・減額承認・否決(否認)」でおこなわれ、承認された場合には、融資契約書や借用証書など必要書類が送られてきます。これらの書類に記入し、署名捺印して日本公庫に提出すれば契約成立です。

4)融資実行と返済開始

融資契約が締結されると、指定の口座に融資金が振り込まれます。一般的には融資実行後、おおむね1~2ヶ月後から返済スタートになります。返済スタート時期を遅らせたい場合には、「据置期間を最大5年以内」で設定できるため、かならず事前に相談しておきましょう。

1年程度の据置であれば認めてもらえるケースも多くなり、資金繰りがきびしい創業期には非常に大きな助けとなります。

4.融資申込みの必要書類

日本公庫から融資を受けるためには、以下の書類を準備する必要があります。

※融資制度や個々の状況によって、必要な書類が異なる場合があります。詳細は、日本公庫のホームページまたは窓口でご確認ください。

①借入申込書(郵送の場合)

融資制度ごとに所定の書式があり、日本公庫のホームページまたは窓口で入手できます。インターネット申込みの場合には、Web上で必要事項を入力するため、不要になります。記載事項に誤りがないように注意しましょう。

②創業計画書

フォーマットや記載例が、ホームページまたは窓口で入手できます。事業内容、市場分析、競合分析、マーケティング戦略、経営計画などを明確に記載しましょう。事業計画書は、融資審査において重要な判断材料となるため、十分に内容を把握して作成しましょう。

創業計画書の作成には事業計画書作成ツールの利用が便利です。ブラウザ上で必要な情報を入力することで、日本公庫に提出する創業計画書を作成できます。

③本人確認書類

運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、本人確認できる書類が必要です。コピーではなく、原本を用意しましょう。

④預金通帳

事業用の通帳が必要です。創業融資の場合には、自己資金や開業資金、水道光熱費・通信費などの入出金履歴を確認できるものが必要です。さまざまなお金の流れを書類上で確認するため、日本公庫が求める預金通帳が必要になります。

⑤直近2年分の源泉徴収票または確定申告書

収入状況を確認するための書類です。コピーではなく、原本を用意しましょう。

⑥印鑑証明書

融資契約を結ぶ際に必要で、発行から3ヶ月以内のものを提出します。融資契約書に押印する実印の証明書類になります。

⑦そのほか

必要資金額を証明するための「見積書・納品書・領収書」など日本公庫が求める書類が必要です。許認可が必要な事業をおこなう場合には、許認可証の提出も必要になります。上記以外にも書類が必要になる場合があるため、事前相談などで確認しておきましょう。

書類を準備する際の注意点

●すべての書類に漏れなく記入・押印しましょう
●提出前に内容に誤りがないことを確認しましょう
●裏面にも情報がある場合は表裏の両方をコピーしましょう(運転免許証など)

融資申込みの際に上記以外にも準備しておくべきもの

●事業計画書の説明資料(チラシやパンフレットなど日本公庫の担当が理解しやすいもの)
●資金繰り表など
●担保・保証に関する書類(必要な場合)

日本公庫の融資は、個人事業主にとって非常に有効な資金調達手段です。上記の情報を参考に、しっかりと準備をして、融資獲得を目指しましょう。

参考

創業融資(新規開業資金)の必要書類まとめ。日本政策金融公庫の手続き方法についてもくわしく解説

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5.個人事業主が融資申込み前にチェックしておきたい3つのポイント

日本公庫への融資申込み前には、以下の3つのポイントをチェックしておきましょう。

●実現可能な事業計画とそれを示す創業計画書
●事業資金の10%以上の自己資金が必要(3割程度が望ましい)
●税金やローンの滞納などがあれば融資がきびしくなる

参考:ドリームゲート「創業融資の審査で落ちる7つの理由【元日本公庫融資課長が監修】」

1)事業計画

開業時に創業融資を受ける際には、売上実績がないため、事業計画をもとに融資審査の判断がされます。そのため、創業融資では「事業計画書」の内容が非常に重要です。

創業計画書には、「事業内容・市場分析・競合分析・マーケティング戦略・経営計画など」を明確に記載する必要があります。しかし、はじめての申込みで「何を書いたらよいかわからない」という方も多くいらっしゃいます。

そんな場合には、「事業計画書作成サポートツール」がおすすめです。

かんたんな質問に答えるだけで、先輩経営者のデータが反映された業種ごとの「創業計画書・収支計画書」が作成できます。作成後は、エクセルファイルなどでダウンロード可能なため、修正もかんたんにおこなえます。
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参考:ドリームゲート「事業計画書作成サポートツール」

2)自己資金

創業融資では、基本的に希望融資額の10%以上の自己資金が必要とされています。しかし、実際には30%以上の自己資金が望ましいでしょう。開業という目標に向かって目標を立て、コツコツと自己資金を貯めた過程が評価されるためです。預金通帳などで、その過程が確認されるため、一時的に借りた「見せ金」などはNGです。

自己資金は、融資審査において重要な判断材料となります。事業規模や開業に必要な額を確認して、計画的に貯めていきましょう。

※2024年4月1日以降、自己資金10%以上の要件は、制度概要から削除されています。しかし、スタートアップ以外の一般的な業種で開業する場合には、実質的に自己資金10~30%程度は必要と考えておきましょう

自己資金と認められるもの

・いままでに貯めた給与や賞与(貯金)
・相続で取得した資金
・退職金
・生命保険などの解約金
・開業前に事業のために使った資金(みなし自己資金)

自己資金と認められないもの

・事業に使う予定ではない資金
・借りた資金(親兄弟から借りた資金も含む)
・タンス預金などの現金
・出どころが書面などで説明できない資金

参考:ドリームゲート「日本政策金融公庫の融資はいくらまで借りられる?!自己資金と融資額の目安も紹介」

3)信用情報

信用情報は、融資審査において重要な判断材料となります。「税金・クレジットカード・借入金の滞納・遅延」や「自己破産など債務整理」の履歴が信用情報として確認されます。

これらの情報は5~10年程度、いわゆるブラックリストとして残っており、基本的に融資は困難になります。ブラックリストに載っているが、資金調達したい場合には、専門家への相談を検討しましょう。

以下のような信用情報があると、融資を受けにくくなる可能性があります。

・過去に遅延・滞納したことがある

・債務整理をしたことがある

・現状多額の借金がある

信用情報を確認するには、以下の方法があります。

・信用情報機関に照会請求をする

・クレジットカード会社に照会請求をする

日本公庫では、融資申込み前に、信用情報を確認することを推奨しています。不安がある場合には、かならず確認しておきましょう。

6.日本公庫の審査で注意すべきポイント

日本公庫から融資を受けるためには、審査をクリアする必要があります。審査では、以下の点にとくに注意しましょう。

1)創業計画書

事業内容などをわかりやすく記載しましょう。事業計画書は、融資審査においてもっとも重要な判断材料となるため、以下の点を盛り込んだ、説得力のある事業計画書を作成しましょう。

・事業の背景と目的
・事業の内容
・市場環境
・競合優位性
・ビジネスモデルの検証
・マーケティング計画
・事業目標
・収支計画(売上、利益計画)
・資金計画
・想定リスクと対応策

参考:ドリームゲート「事業計画書のテンプレート5選。じっさいに起業した人の事業計画例も解説【元日本公庫の融資課長が監修】」

2)面談

面談では、事業内容や資金計画などを説明する必要があります。面談は、融資担当者が事業内容や資金計画についてくわしく理解するための場となります。以下の点に注意して、面談に臨みましょう。

・簡潔でわかりやすく説明する
・自信を持って話す
・質問には正直に答える
・説明資料を準備しておく
・時間厳守

面接でよく聞かれる質問

・事業内容について
・市場分析について
・競合他社について
・マーケティング戦略について
・収益計画について
・資金計画について
・リスク管理について
・そのほか、創業計画書に記載していることの深堀り

日本公庫の融資審査は、厳格におこなわれます。しかし、上記2つのポイントをしっかりと準備しておくことで、審査を有利に進めることができます。

融資を受けやすい事業計画書を作成するには、専門家に相談するのもよいでしょう。また、面接対策として、模擬面接をおこなうのも効果的です。しっかりと準備をして、融資獲得を目指しましょう。

当記事の監修者である上野光夫氏のYouTubeでは「創業融資の面談で聞かれること6選」を紹介していますので参考にしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=wYhw0EGlWBo

7.日本公庫のよくある質問

日本公庫のホームページで紹介されている「よくある質問」を一部紹介します。多くの方が疑問に思うことが記載されているため参考にしましょう。

1)融資の相談や申込みはどこですればいい?

融資の相談や申込みについては、事業所所在地を管轄する支店が担当しています。担当支店が不明な場合には、お近くの支店にお問い合わせください。

2)融資の対象となる資金とは?

開業などの事業に必要な「運転資金」や「設備資金」が対象になります。

事業資金であれば、商品仕入や手形決済などのための運転資金、店舗の新築・増改築、機械や車両購入などの設備資金と幅広くご利用いただけます。

※業種などによって異なるケースがあるため、くわしくは担当支店にお問い合わせください

3)借入れの金利はどのくらい?

融資制度、税務申告の有無や回数、返済期間、担保・保証の有無などによって異なります。詳細は、日本公庫のホームページまたは窓口でご確認ください。

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8.個人事業主が融資獲得するために

日本公庫などの金融機関から融資を受けるためには、事業計画書が非常に重要です。事業計画書で、事業内容や資金計画などを明確に示すことによって、金融機関に対して事業の採算性や返済能力をアピールできます。

説得力のある事業計画書を作成することで、融資審査を有利に進めることができます。しかし、事業計画書の作成は事業主にとって負担が大きく時間や労力が必要です。

事業計画書の作成に割く時間がないとお悩みの方には、ドリームゲートの「事業計画書作成サポートツール」がおすすめです。「事業計画書作成サポートツール」は、事業内容や資金計画などを記入することで、自動的に事業計画書を作成できます。

また、日本公庫に提出する創業計画書もブラウザ上から必要な情報を入力するだけで作成し、エクセル形式でダウンロードできます。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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