SWOT分析で事業の解像度と説得力を高める事業計画書の書き方とは
事業をはじめるにあたり、綿密な計画を立てることは成功への第一歩です。とくに、金融機関からの融資や投資家からの資金調達を目指す際には、事業計画書の完成度がその成否を大きく左右します。
数多くの事業計画書が存在するなかで、ひときわ説得力を持ち、関係者の共感を呼ぶためには、客観的な視点と深い洞察に基づいた分析が不可欠です。そのための強力なツールとなるのが「SWOT分析」です。
本記事では、SWOT分析を事業計画書に効果的に取り入れる方法について解説します。事業の解像度を高め、第三者に対する説得力を飛躍的に向上させるための具体的な方法について、詳細に説明しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次
1.SWOT分析とは
SWOT分析は、事業を取り巻く内部環境と外部環境を以下の4つの要素に整理し、事業の現状を客観的に把握するためのフレームワークです。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
SWOT分析は、飲食店・小売業・サービス業など、業種を問わず活用でき、戦略策定の基礎となります。
1)Strength(強み):自社の優位性
強みとは、競合他社と比較して自社が優れている点、独自の資源や能力のことです。飲食店であれば「ほかにはない独自のメニューを提供できる」「地域に根差した長年の実績がある」「顧客からの評判が高い」などが挙げられます。
小売業であれば「専門性の高い品そろえ」「独自の仕入れルートを持っている」「顧客データに基づいたきめ細かいサービスを提供できる」などが考えられるでしょう。
さらにサービス業であれば「高度な専門知識を持った人材が豊富である」「特許などの独自の技術を持っている」「顧客満足度が高い」といった点が強みとなり得ます。これらの強みを明確に認識し、事業計画書で具体的に示すことで、自社の競争優位性を効果的にアピールできます。
2)Weakness(弱み):改善すべき課題
弱みとは、競合他社と比較して自社が劣っている点、改善すべき課題のことです。飲食店であれば「店舗の立地が悪い」「人手不足が深刻である」「集客力が低い」などが考えられます。
小売業であれば「オンライン販売の体制が整っていない」「商品の回転率が低い」「在庫管理に課題がある」などが挙げられるでしょう。また、サービス業であれば「ブランド力が低い」「価格競争力が弱い」「新しい技術への対応が遅れている」などが弱みとして認識されます。
これらの弱みを率直に認め、事業計画書でどのように改善していくのかを示すことで、課題解決への真摯な姿勢を示すことができます。
3)Opportunity(機会):市場・外部環境の追い風
機会とは、市場の変化や社会的なトレンドなど、自社にとって有利に働く外部環境の要素のことです。飲食店であれば「健康志向の高まり」「近隣に大規模な商業施設がオープンする」「インバウンド需要の増加」などが機会となり得ます。
小売業であれば「EC市場の拡大」「高齢者層の増加」「サステナビリティへの関心の高まり」などが考えられます。サービス業であれば「ITの進化」「働き方改革の推進」「政府による特定産業への支援策」などが機会となり得るでしょう。
これらの機会を捉え、どのように事業に取り込んでいくのかを具体的に示すことで、成長可能性をアピールできます。
4)Threat(脅威):リスクや競合の存在
脅威とは、市場の変化や競合の出現など、自社にとって不利に働く外部環境の要素のことです。飲食店であれば「競合店の増加」「原材料価格の高騰」「消費者の節約志向の強まり」などが脅威となり得ます。
小売業であれば「ECサイトの台頭」「同業他社との価格競争の激化」「法規制の変更」など、サービス業であれば「新規参入企業の増加」「顧客ニーズの多様化」「景気後退」などが脅威になり得ます。
これらの脅威を認識し、それに対してどのような対策を講じるのかを示すことで、リスク管理能力の高さをアピールできます。
5)クロスSWOT分析とは
クロスSWOT分析とは、SWOT分析で抽出した4つの要素を掛け合わせ、より具体的な事業戦略を導き出すための分析手法です。
- 「強み」を活かして「機会」を最大化する戦略(積極戦略)
- 「強み」を活かして「脅威」を回避・軽減する戦略(差別化戦略)
- 「弱み」を克服することで「機会」を活かす戦略(改善戦略)
- 「弱み」を最小限に抑えつつ「脅威」の影響を避ける戦略(防衛戦略)
クロスSWOT分析では、上記のような視点から戦略を検討します。
クロスSWOT分析の結果を事業計画書に盛りこむことで、より深掘りされた戦略を示せるため、説得力の向上に繋がります。
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2.事業計画書にSWOT分析を取り入れるメリット
事業計画書にSWOT分析を取り入れることは、経営分析の経験がない方でも自社の状況を容易に理解し、客観的に整理するうえで非常に有効です。また、明確な分析に基づいた事業計画書は、金融機関や投資家からの信頼が得やすく、資金調達の成功にも繋がります。
1)経営分析未経験でもかんたんに取り組める
SWOT分析は、専門的な知識や複雑な分析手法を必要とせず、基本的なフレームワークにしたがって情報を整理するだけで、自社の現状を把握できます。4つの要素に分類するというシンプルな構造であるため、経営分析の経験がない方でも比較的容易に取り組むことが可能です。
ワークショップ形式でチームメンバーと意見を出し合いながら分析を進めることも有効であり、多角的な視点を取り入れることで、より精度の高い分析が期待できます。
2)自社や市場環境を整理するのに役立つ
SWOT分析をおこなう過程で、自社の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)について、さまざまな角度から検討することになります。これにより、普段は見過ごしがちな自社の潜在的な強みや弱み、市場の変化や競合の動向などをあらためて認識できます。
これらの情報を整理することで、自社の立ち位置や進むべき方向性を明確にできます。また、客観的なデータや事実に基づいて分析をおこなうことで、主観的な判断による誤りを防ぐ効果も期待できます。
3)金融機関などへの説得力が上がる
金融機関や投資家は、事業計画書を通じて、事業の実現可能性や成長性、収益性などを評価します。SWOT分析が適切に実施され、その結果が事業計画の内容に反映されている場合、事業者が自社の状況や市場環境を客観的に理解し、それに基づいた戦略を立てているという印象を与えることができます。
これにより、計画の実現可能性に対する信頼性が高まり、資金調達の成功に繋がりやすくなります。また、リスクに対する認識と対策が示されている点も、評価を高める要因となります。
3.事業計画書にSWOT分析を取り入れる際の注意点
SWOT分析は強力なツールである一方、その効果を最大限に引き出すためにはいくつかの注意点があります。事業計画は必ずしも単純化できるものではないため、分析者の主観が入りこむ可能性も考慮する必要があります。また、分析結果を具体的な行動計画に落としこむことが重要です。
1)事業計画は必ずしも単純化できない
事業を取り巻く現実は複雑であり、SWOT分析の4つの要素に明確に分類できない要素も存在します。
たとえば、「高い技術力」は強みであると同時に、それを活用できる市場が限られている場合は弱みにもなり得ます。また、現時点では脅威として認識されていないものの、将来的に影響を及ぼす可能性のある潜在的なリスクも存在します。
したがって、SWOT分析の結果はあくまで事業を理解するための出発点であり、すべてを網羅しているわけではないという認識を持つことが重要です。分析の結果を鵜呑みにするのではなく、多角的な視点から検討を重ね、より深く事業について考察する必要があります。
2)客観性を欠く場合がある
SWOT分析をおこなう際、とくに自社の強みや弱みを評価する際に、担当者の主観や願望が入り込みやすい傾向があります。
たとえば、じっさいにはそれほど優位性がないにもかかわらず、「独自の技術がある」と過大評価したり、目を背けたい課題を「とくに問題はない」と矮小化したりするケースが見られます。このような認知バイアスが働くと、客観的な分析結果が得られず、事業計画の根拠が脆弱になってしまいます。
客観性を保つためには、複数の担当者で意見交換をおこなったり、第三者の視点を取り入れたりするなどの工夫が必要です。また、可能な限り客観的なデータや事実に基づいて分析をおこなうように心がけましょう。
3)具体的な行動計画に落とし込まないと意味がない
SWOT分析は、あくまで現状分析のためのツールであり、それそのものが事業を成功に導くわけではありません。分析結果を事業計画書に記載するだけでなく、その結果を踏まえた具体的な戦略や、目標達成までの道のりを示すことが重要です。
たとえば、強みをどのように活かして機会を捉えるのか、弱みを克服するためにどのような具体的な施策を実行するのか、脅威に対してどのような対策を講じるのかなどを明確に記述する必要があります。SWOT分析の結果と具体的な行動計画が整合性の取れた形で示されていることで、事業計画書の説得力は格段に向上します。
4.事業計画書にSWOT分析を落とし込む方法
事業計画書のすべての項目で、SWOT分析の結果を直接的に活用できるわけではありませんが、各項目を検討する際の重要な視点となります。創業動機、事業内容・マーケティング戦略、市場環境・競合分析、事業の見通しといった主要な項目において、SWOT分析の結果をどのように反映させるべきかについて解説します。
1)創業動機
事業をはじめるに至った背景や理由を示す創業動機においては、SWOT分析で明らかになった「機会」を強調することが効果的です。
市場ニーズの高まり、技術革新の波、法規制の緩和など、外部環境のどのような変化が創業のきっかけとなったのかを明らかにしましょう。そして、その機会をどのように捉え、事業として実現しようとしているのかを具体的に説明することで、事業の必然性や将来性を示すことができます。
単なる思いつきや個人的な動機だけでなく、なぜ「今」なのかを客観的な市場の動向を踏まえて示すことで、計画の説得力が増します。
参考:日本政策金融公庫の創業計画書「創業の動機」欄のポイント
2)事業内容・マーケティング戦略
事業内容・マーケティング戦略においては、提供する商品やサービス、顧客獲得方法などを示します。SWOT分析で特定された自社の「強み」を最大限にアピールすることが重要です。
競合他社にはない独自の技術や高品質な製品、優れた顧客サービスなど、自社の強みが顧客に対してどのような価値を提供するのかを具体的に説明しましょう。このことによって、自社の競争優位性を明確に示すことができます。また、ターゲット顧客のニーズと自社の強みを結びつけ、効果的なマーケティング戦略を展開していく方針を示すことも重要です。
3)市場環境・競合分析
市場環境・競合分析においては、事業を取り巻く市場の規模や成長性、競合の状況などを分析します。SWOT分析で明らかになった「機会」だけでなく、「脅威」についても言及することが重要です。
市場の成長性や潜在的なニーズといった機会を捉えつつ、競合他社の動向や市場の変化といった脅威をどのように認識し、それに対してどのような対策を講じるのかを示すことで、リスクに対する備えがあることをアピールできます。
客観的なデータや市場調査の結果などを活用しながら、自社を取り巻く環境を多角的に分析し、それに基づいた戦略を立てていることを示すことが重要です。
4)事業の見通し
将来の売上高や利益などの予測を示す事業の見通しにおいては、SWOT分析で認識された「弱み」についても考慮に入れる必要があります。
弱みが事業の成長に与える影響を認識し、それに対する具体的な改善策やリスク軽減策を提示することで、現実的な事業計画を示すことができます。楽観的な予測だけでなく、潜在的なリスク要因とその対策を示すことで、計画の信頼性が高まります。
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事業計画書の作成は、事業の成功に向けた重要なステップですが、多くの経営者や起業家にとって、時間と労力を要する作業となります。とくに、SWOT分析のような専門的な分析を取り入れ、それを効果的に事業計画書に落としこむには、一定の知識やノウハウが求められます。そこでおすすめしたいのが、ドリームゲートの事業計画書作成サポートツールです。
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