不動産業を成功に導く創業計画書の書き方と記入例を融資のプロが解説

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2025/01/30 

「不動産業で起業したいけど、創業計画書の書き方が分からない」

「自分の強みをどうアピールすればいいんだろう?」

そんな悩みをお持ちではないでしょうか。当記事では、不動産業のなかでも、とくに賃貸仲介に焦点をあて、創業計画書の書き方と成功のコツを具体的な記入例を交えながら分かりやすく解説します。

金融機関の融資担当者が重視するポイントを押さえ、説得力のある創業計画書を作成し、創業融資を成功させることで、夢を実現させましょう。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
プロフィールを見る>>

1.創業計画書とは

創業計画書は、あなたの事業構想を具体的に示す重要な書類です。単なる融資のための資料ではなく、事業の道しるべとしての役割も担います。

1)創業計画書の役割と目的

創業計画書は、起業家が自身の事業構想を具体的に表現し、実現可能性を検証するためのツールです。金融機関からの融資を受ける際に必要となるだけでなく、事業の道筋を明確化し、成功へと導くためのガイドとしての役割も担います。

具体的には、以下の目的で作成します。

事業内容の明確化 事業アイデアを整理し、具体的なサービス内容、ターゲット顧客、収益モデルなどを明確化します。
実現可能性の検証 市場分析や競合調査を通じて、事業の成功可能性を客観的に評価します。
資金調達の資料 融資を受ける際に、金融機関に事業内容や返済計画を理解してもらうための資料として使用します。
経営の指針 事業開始後の目標設定や進捗管理、経営判断の拠り所となります。

参考:創業計画書とは

2)創業計画書と事業計画書の違い

「創業計画書」と「事業計画書」は、どちらも事業に関する計画を記した書類ですが、作成する目的や用途が異なります。

創業計画書は、主に新規事業を立ち上げる際に作成するもので、事業の全体像を把握し、実現可能性や資金調達を検討することに重点が置かれます。

一方、事業計画書は、既存事業を含む事業全体の計画を策定する際などに作成するもので、より詳細な経営戦略や数値計画が含まれます。

3)創業融資の重要性

不動産業のなかでも、とくに賃貸仲介業は初期費用が比較的少なく済む業種です。しかし、賃貸仲介業であっても、事務所の賃料や設備投資、広告宣伝費など、ある程度の資金が必要となります。自己資金だけで賄うことが難しい場合は、金融機関からの融資が不可欠です。

創業融資を受けることで、事業に必要な資金を確保できるだけでなく、金融機関のサポートを受けることもできます。金融機関は、事業計画の策定や資金管理、経営課題の解決など、さまざまな面で起業家を支援してくれる貴重なパートナーとなるでしょう。

起業後1~2年後に融資を受ける際には実績で融資審査されますが、創業融資は将来性で審査されるため、非常に借りやすくなっています。また、日本政策金融公庫の創業融資であれば、無担保・無保証人での利用も可能です。

2.不動産業の創業計画書の書き方と記入例

創業計画書は、あなたの事業に対する情熱と、成功への道筋を金融機関に伝えるための重要なツールです。賃貸仲介業をはじめるにあたっては、どのような点に注意して作成すればよいのでしょうか?
具体的な記入例を交えながら、項目ごとにくわしく解説していきます。

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1)創業の動機

なぜ不動産業(賃貸仲介業)で起業しようと思ったのか、そのきっかけや理由を具体的に記述しましょう。

記入例)

以前より、住まい探しは人生における大きな転換期であり、お客様にとって非常に重要な決断であると考えておりました。前職の営業職で培ったコミュニケーション能力を活かし、お客様一人ひとりのニーズに寄り添った丁寧なサービスを提供することで、地域社会に貢献したいと思い、不動産業(賃貸仲介業)での起業を決意いたしました。

参考:日本政策金融公庫の創業計画書「創業の動機」欄のポイント

参考:日本公庫の創業計画書【創業の動機】欄の良い例・悪い例

2)経営者の略歴等

あなたの経歴やスキル、人柄が、事業の成功にどのように活かせるのかをアピールしましょう。不動産業での経験はもちろんのこと、ほかの業界での経験も、あなたの強みとして活かせる場合があります。

「宅地建物取引士」「マンション管理士」「賃貸不動産経営管理士」など不動産業に関係する資格を取得している場合は、忘れずに記載しましょう。

記入例)

〇〇大学経済学部卒業後、株式会社△△に入社。法人営業として5年間勤務し、新規顧客開拓や顧客との信頼関係構築に注力してまいりました。また、宅地建物取引士の資格を取得し、不動産取引に関する専門知識を習得しております。これらの経験と知識を活かし、お客様に最適な物件をご紹介することで、地域社会に貢献したいと考えております。

参考:日本政策金融公庫の創業計画書【経営者の略歴等】の書き方と記入例

3)取扱商品・サービス

不動産仲介は参入障壁が低くライバルが多いため、自社が他社とどうちがうかを具体的に伝える必要があります。

①取扱商品・サービスの内容

■賃貸仲介

マンション、アパート、戸建住宅など、どのような種類の物件を取り扱うのかを具体的に記述します。

■付帯サービス

入居者向けのサービス(24時間サポート、リフォーム相談など)や、オーナー向けのサービス(賃貸管理、物件管理など)を提供する場合は、その内容を記載します。

記入例)

単身者からファミリー層まで、幅広いお客様を対象に、マンション、アパート、戸建住宅など、さまざまな種類の賃貸物件の仲介をおこないます。また、入居者様向けには、24時間対応のトラブルサポートや、提携業者によるリフォームサービスを提供いたします。オーナー様向けには、入居者募集から契約手続き、家賃管理、物件メンテナンスまで、ワンストップの賃貸管理サービスを提供いたします。

②セールスポイント

セールスポイントは、とくに重要です。

「地元に長く住み、地域の土地事情や住民のニーズを熟知している」

「前職で培った不動産業界でのネットワークを活用し、他社では取り扱いが少ない魅力的な物件を多数取りそろえている」

「米国留学の経験を活かし、外国人のニーズに合った物件を紹介できる」

など具体的に記載しましょう。

③販売ターゲット ・販売戦略

販売ターゲットは対象エリアの人口動向や不動産需要、賃料、物件価格などのトレンドをしっかり分析し決定します。

不動産業はまだまだDXが遅れている市場なので、販売戦略ではインターネットやVR・ARなどの新しい技術を取り入れるとよいでしょう。ターゲットとする顧客層を明確化し、その顧客層に効果的な販売戦略を具体的に記述します。

記入例)

当社の主な販売ターゲットは、単身者、DINKs、ファミリー層といった、20代から40代の年齢層のお客様です。これらの顧客層にアプローチするため、インターネット広告やSNSを活用した情報発信、地域情報誌への掲載、オープンルームの開催など、多角的な販売戦略を展開いたします。

④競合・市場など企業を取り巻く環境

不動産業はマクロ経済の影響を受けやすい性質があるため、不動産市場や日本経済の状況を分析することが重要です。そのうえで、競合他社の状況や市場動向を分析し、自社の優位性を明確に示しましょう。

記入例)

当社が事業を展開する〇〇エリアは、近年人口が増加傾向にあり、賃貸住宅需要も高まっています。しかし、競合となる不動産会社も多く、顧客獲得競争が激化しております。そこで当社は、地域密着型のサービスとIT技術を活用した顧客体験の向上を図ることで、他社との差別化を図り、競争優位性を築いてまいります。

4)取引先・取引関係等

取引先との関係性や、今後の見込みについて具体的に記述しましょう。

記入例)

複数の不動産管理会社と提携しており、安定的に物件情報を確保できる体制を構築しております。また、地域密着型のサービスを展開することで、オーナー様からの信頼も厚く、専任媒介契約の締結も見込まれております。

5)従業員

従業員の採用計画や人材育成について記述します。

記入例)

当初は、私を含め3名で事業を開始いたします。従業員には、宅地建物取引士の資格取得を支援するなど、人材育成にも力を入れてまいります。

6)お借入れの状況

既存の借入状況を、すべて正確に記載します。カードローンや、リボ払いなども、必ずすべて記載しましょう。

7)必要な資金と調達方法

必要な資金とその調達方法について具体的に記述します。自己資金の割合が高いほど、金融機関からの評価も高まります。

記入例)

事務所開設費用、設備投資費用、運転資金として、合計〇〇万円の資金が必要となります。自己資金〇〇万円と、金融機関からの融資〇〇万円で調達する計画です。

8)事業の見通し

将来的な売上目標や収益目標を具体的に示します。不動産仲介なら、「1取引あたりの平均単価x取引数」という単純な数式で明確に表しましょう。

9)自由記述欄

事業に対する熱意や将来展望などを自由に記述しましょう。

記入例)

地域社会に貢献できる企業を目指し、お客様に寄り添ったサービスを提供することで、地域No.1の賃貸仲介会社へと成長していきたいと考えております。

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3.創業計画書に説得力を持たせる3つのコツ

創業計画書は、ただ作成すればよいというものではありません。金融機関の担当者に「この人に融資したい」「この事業は成功するだろう」と思わせるような、説得力のある内容でなければなりません。

では、どのようにすれば説得力のある創業計画書を作成できるのでしょうか?  ここでは、不動産業の創業計画書でとくに重要な3つのコツを紹介します。

1)なるべく代表者自身が書く

創業計画書は、あなたの事業に対する情熱やビジョンを伝えるためのものです。そのため、可能な限り代表者自身の手で作成することが重要です。

専門家に依頼して作成したとしても、事業に対する想いや具体的な計画は、代表者自身が一番理解しているはずです。自分の言葉で想いを伝えることで、金融機関の担当者に熱意が伝わり、事業への理解を深めてもらうことができます。

また、代表者自身が作成することで、計画内容の深い理解につながり、事業に対する責任感も高まります。

2)客観的なデータを元に書く

創業計画書は、夢物語を語る場ではありません。実現可能な目標を設定し、それを達成するための具体的な計画を、客観的なデータに基づいて示す必要があります。

市場規模や競合の状況、顧客ニーズなどを分析し、根拠のある数値計画を立てることが重要です。過大な目標を設定したり、根拠のない楽観的な見通しを立てることは、かえって金融機関の担当者からの信頼を失うことになります。

また、金融機関は、融資した資金が確実に回収できるかどうかを重視しています。そのため、返済計画についても、無理のない計画を立てることが重要です。

3)すべて正確な情報を書く

創業計画書には、虚偽や曖昧な情報は一切含めてはいけません。すべての情報を正確に記載することが、金融機関からの信頼を得るために不可欠です。

過去の経歴や借入状況など、不利な情報であっても、正直に開示することが重要です。隠蔽しようとしたことが発覚した場合、信用を失うだけでなく、融資を断られる可能性もあります。

金融機関は、信用情報を照会することで、過去の借入状況や返済状況などを把握できます。嘘をつくよりも、正直に情報を開示し、誠実な対応を心がけることが重要です。

4.創業計画書とあわせて提出すべき資料

創業計画書だけでは、金融機関に十分な情報を伝えることができない場合があります。そのため、創業計画書と一緒に、補足資料を提出することが重要です。ここでは、不動産業で創業する場合に提出するとよい資料を紹介します。

1)不動産関連の許認可・資格の証明書

不動産業を営むためには、宅地建物取引業免許が必要です。ただし、不動産賃貸業なら免許・資格は必要ありません。自分がおこなう事業内容を明確にして、必要な許認可や資格を早めに確認しておきましょう。

宅地建物取引士など不動産関連の資格を保有している場合は、その証明書も提出しましょう。これらの書類は、事業の信頼性を高めるために有効です。

2)月別収支計画書・資金繰り計画書

創業計画書では、年間の収支計画を記載しますが、月別収支計画書や資金繰り計画書を提出することで、より詳細な資金計画を金融機関に示すことができます。これらの資料は、事業の収益性や資金繰りの安定性を評価するために重要です。月別収支計画書に関しては、必須と認識しておきましょう。

3)自社製品・サービスの詳細資料

賃貸仲介業の場合は、取り扱う物件情報やサービス内容をまとめた資料を提出するとよいでしょう。物件の写真や間取り図、サービス内容の説明などを記載することで、事業内容をより具体的に理解してもらうことができます。

4)市場調査や競合分析の資料

市場調査や競合分析の結果をまとめた資料を提出することで、事業計画の根拠を明確に示すことができます。地域の賃貸市場の動向や、競合他社の状況などを分析し、自社の優位性をアピールしましょう。

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6.事業計画書の作成なら「ドリームゲート」

当記事では、不動産業、とくに賃貸仲介業における創業計画書の書き方について解説しました。創業計画書は、単なる融資のための書類ではなく、事業を成功に導くための羅針盤としての役割も担います。事業に対する情熱を込めて、具体的な計画を立て、説得力のある創業計画書を作成しましょう。

しかし、はじめて創業計画書を作成する場合、多くの手間と時間がかかってしまいます。また、説得力のある創業計画書を作成するのは大変です。そこで、「ドリームゲート」の事業計画書作成サポートツールをご紹介します。このツールを使えばブラウザ操作だけで、上質な事業計画をつくれます。

自己資金を準備している間に、事業計画を立ててみましょう。無料で使えますので、まずは試してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
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資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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