収支計画書の項目や書き方のポイント!【無料作成ツールも紹介】

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/04/25 

収支計画書は、事業における財務健全性を確認し、将来の成長を予測するために不可欠な書類です。しかし、その重要性による複雑さから、多くの起業家や事業主が正確な収支計画書の作成に苦労しています。

本記事では、収支計画書の基本的な項目と効果的な書き方のポイントをわかりやすいテンプレートの記入例とともに紹介します。

本記事を通して、収支計画書の作成方法を理解し、自身の事業計画に即して適用できるようになります。無料で収支計画を作成できるツールも紹介するので参考にしてください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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収支計画書とは

収支計画書は、事業運営において極めて重要な書類のひとつです。事業計画書の一部として、「売上」「費用」「利益」に関する目標数値を、じっさいの現金の動きに焦点を当てて示すものです。収支計画書は、事業によって生じる収入と支出を具体的に予測し、その結果、どの程度の利益が生じるかを見積もるために作成されます。

収支計画書の作成は、事業運営における資金の流れを把握し、計画的な経営をおこなううえで非常に有用です。作成により、事業者は資金繰りを適切に管理し、必要な資金調達を計画的におこなうことができます。また、金融機関から融資を受ける際には、収支計画書の提出が求められることが多く、融資審査の重要な資料となります。

国税関連の書類(貸借対照表や損益計算書などの書類)とは異なり、収支計画書には保存義務や具体的な保存期間が定められていません。

しかし、収支計画書の重要性は国税関係の書類と同様に非常に高くなっています。事業運営の指針となるほか、社内での情報共有資料や、将来の事業展開を見据えた際の基礎資料としても活用されています。

さらに、収支計画書は事業の財務健全性や成長性を外部に示すためにも不可欠な書類です。収支計画書は、「予測」と「計画」を組み合わせたものであり、事業の将来性を具体的に示すために、適切な作成と管理が求められます。

参考:

収支計画書の無料テンプレートと使い方【元日本公庫融資課長が監修】

損益計算書との違いは「過去」か「未来」か

収支計画書とよく比較されるのが損益計算書です。

損益計算書は、事業活動によって生じた収益と費用、そしてそれによって算出される利益または損失を記録した財務報告書です。

損益計算書は、主に過去の取引を基にして作成されます。損益計算書は過去に発生した売上や支出を、じっさいに支払われた領収書や請求書などに基づいて計上し、企業の財務状態や経営成績を振り返る目的で用いられます。

一方で、収支計画書は将来を見据えた書類であり、将来発生するであろう収入と支出を予測し、それに基づいて計画を立てることを目的としています。収支計画書は、事業の売上目標や必要経費、そしてそれによって期待される利益を見積もり、事業戦略の策定や資金繰りの計画に役立てられます。

このように、損益計算書が「過去の振り返り」に焦点を当てた書類であるのに対し、収支計画書は「将来の見通し」を基に事業の方向性を定めるためのものです。事業計画や経営戦略を立てるうえで、両者は補完関係にあり、効果的に組み合わせることでより精度の高い事業運営が可能となります。

収支計画書作成の目的

収支計画書作成の根本的な目的は、事業運営における現金の流れを把握し、管理することです。

損益計算書は、じっさいの現金の流れを理解するために用いられます。収支計画書を通じて、収入と支出を将来にわたって予測し、事業の資金計画を立てることが可能です。結果として、事業者は、計画に沿った現金が常に手元にある状態を確保し、予期せぬ資金不足による事業の停滞や危機を避けられます。

収支計画書は、とくに金融機関からの融資を受ける際に重要となる書類です。金融機関は、事業の将来性や資金繰りの安定性を評価するために、収支計画書を確認します。収支計画書により、事業が将来にわたって収益を上げ、融資金を返済できる能力があるかどうかを判断するのです。

また、事業者自身も、収支計画書を作成する過程で、自社のビジネスモデルや財務構造を再評価し、必要に応じて戦略の修正や資金調達の計画を立てられます。

創業時にはとくに注意が必要

とくに創業時は、収支計画書の作成と管理に細心の注意を払う必要があります。

起業初期は、売上を確保する前に人件費や家賃、仕入れ代金などの経費が先行して発生することが通常です。そのため、この時期は特に資金繰りが厳しくなり、収支計画書による厳密な資金管理が求められます。売掛金の入金や仕入代金の支払いは、損益計算のタイミングとは異なるため、損益計算書上では利益が計上されていても、じっさいには手元に現金がないという状況におちいることがあります。

このような状況を避けるためには、収支計画書による現在の収支の把握と、手元にある現金の管理が不可欠です。創業時には、事業計画に基づいた収入と支出の見積もりを慎重におこない、事業の成長段階に応じた資金計画を策定することが重要です。また、予期せぬ出費や売上の変動に対応できるよう、適切な資金繰りの予備計画を立てることも求められます。

創業時において、収支計画書の作成は、単なる形式的な作業ではなく、事業成功のための基礎となる極めて重要なプロセスです。資金繰りに困ることなく、事業を健全に成長させていくためには、事業計画に基づいた現実的かつ柔軟な収支計画の立案が求められます。

収支計画書の記入例から解説

収支計画書の作成は、事業運営における資金繰りと将来の経済活動を予測するうえで不可欠です。ここでは、収支計画を立てるために必要な3つのステップを具体的に解説します。これらのステップは、効率的かつ現実的な収支計画を策定するための基礎となるものです。

1.原価率や粗利益率から売上高を計算

売上高を計算する第一歩として、業界内での原価率や粗利率の平均値を調査し、これを基に自社の売上高を算出します。

原価率とは、売上高に対する売上原価の割合を指し、これにより直接的な製品のコストがどの程度、売上を占めているかがわかります。

一方、粗利率は売上高に対する売上総利益の割合で、販売価格から直接的なコストを引いた後の利益の割合のことです。

原価率と粗利率を合わせると100%になるため、両者のバランスから売上高を計算できます。

2.固定費

収支計画書において重要な部分のひとつが固定費の計算です。

固定費とは、売上の増減にかかわらず一定期間において発生する変わらない費用のことを指します。固定費には、役員報酬、人件費、家賃、水道光熱費、広告宣伝費などが含まれます。

これらの費用は、事業の規模や業種によって異なりますが、事業運営において必ず必要になります。そのため、正確に計算し計画に含める必要があります。

そのほかの固定費としては、荷造運賃、旅費交通費、減価償却費、ライセンス料、消耗品費、支払保険料、通信費、接待交際費、研修費、支払手数料などが考えられます。これらを総合して固定費を把握し、収支計画に組み入れることが重要です。

3.借入金と利息

収支計画書作成時において、特に注意を払う必要があるのが、借入金とそれにともなう利息の計算です。

事業運営の初期段階では、外部からの資金調達をおこなうことが一般的です。借入れにおいては、月々の返済可能額を見積もり、それに基づいて借入金額を決定します。

自己資金の2倍程度を目安に借入金額を設定し、返済期間や利息率を考慮して毎月の元金と利息の返済額を計算することで、資金繰りの計画を立てることができます。この過程で、将来の収益予測と資金調達計画のバランスを取りながら、事業の安定した成長を目指すことが重要です。

収支計画書の作成は、事業の成功に向けた重要なステップです。これらのステップを踏むことで、実現可能な事業計画と現実的な財務計画を立てることが可能となり、事業の持続可能性を高めることができます。

収支計画書の主な項目

収支計画書の作成に際して決まったフォーマットは存在しないため、事業の特性や運営上の要件に応じて、項目の追加や変更ができます。以下に挙げる5項目は収支計画書における一般的な内容であり、これらを基礎として、事業者自身のニーズに合わせたカスタマイズをおこなうことが重要です。

  1. 収入(売上やそのほかの収入)
  2. 固定費(家賃、光熱費、人件費、通信費、リース料など)
  3. 変動費(仕入原価、外注費など)
  4. 入出金(普通預金、定期預金、定期積金、借入、返済など)
  5. 借入金返済

①収入(売上やそのほかの収入)

収入は収支計画書のもっとも基本的な項目であり、主に事業から得られる売上高や、そのほかの収入源(利息収入、不動産からの賃貸収入など)を含みます。売上高の予測には、市場分析や過去の実績、業界の平均値などを基にした計算が必要です。この項目に正確な数字を記入することで、事業の収益性を正しく評価し、将来の収入を予測することが可能になります。

②固定費(家賃、光熱費、人件費、通信費、リース料など)

固定費は、売上の増減にかかわらず一定期間内に発生するコストを指します。これには、事務所や店舗の家賃、光熱費、人件費、通信費、機器のリース料などが含まれます。固定費の正確な計算と管理は、事業の財務状態を安定させ、利益を最大化するために不可欠です。固定費の把握により、事業運営のための最低限必要な収入水準を明確にすることができます。

③変動費(仕入原価、外注費など)

変動費は、売上高に直接関連し、その量に応じて増減するコストです。たとえば、製品の仕入原価、製造に関わる外注費、販売促進のための広告費などが変動費に該当します。変動費を正確に計算し、管理することで事業の収益性を向上させ、コストを効率的にコントロールすることが可能となります。

④入出金(普通預金、定期預金、定期積金、借入、返済など)

入出金は、事業運営における現金の流れを示す項目で、普通預金の増減、定期預金や定期積金、借入金の増加や返済などを記録します。この項目により、事業の資金繰り状況を把握し、資金の過不足を予測することができます。

⑤借入金返済

借入金返済は、事業により発生した負債の返済計画を示します。借入金額、返済期間、利息率などを基に計算され、事業の財務負担を予測します。この項目を通じて、返済能力を評価し、財務健全性を維持するための計画を立てることができます。

収支計画書の各項目は、事業の財務計画と将来予測の基礎となります。各項目を正確かつ詳細に記入することで、事業者は自社の財務状況を適切に管理し、事業計画の実現可能性を高めることができるのです。

収支計画書をかんたんに作成してダウンロード

収支計画書をいきなりつくるのは大変ですが、ドリームゲートではブラウザ上で数値を入れていけば収支計画書を作成できてExcel形式でダウンロードできる無料のツールを提供しています。

以下の12業種に基づいて、ブラウザ上でかんたんに収支計画書を作成することができます。計画書は作成途中でも保存可能で、完成後はCSV、Excel、PDFの形式でダウンロードできます。※ご自身の業種がない場合は近しいものを選ぶことで作成可能です。

  • 飲食業:数名のアルバイトやパートを含む十数名で運営される飲食店のビジネスモデルを基にした計画書作成をサポート。
  • 小売業(店舗型):アルバイトやパートを含む十数名で運営される店舗を持つ小売ビジネスモデルのための計画書作成をサポート。
  • Web・アプリ開発:数名のチームでWebサービスやモバイルアプリを開発・運営するビジネスモデルの計画書作成をサポート。
  • ネットショップ:数名でECサイトの運営をおこなうビジネスモデルに基づく計画書作成をサポート。
  • ITシステム開発:数名でITシステムの開発業務をおこなうビジネスモデルのための計画書作成をサポート。
  • マッサージ・整体:数名でマッサージや整体、リフレクソロジーのサービスを提供する店舗運営ビジネスモデルの計画書作成をサポート。
  • 不動産業:数名で不動産の売買や賃貸仲介サービスをおこなうビジネスモデルに対する計画書作成をサポート。
  • デザイナー業:フリーランスのデザイナー活動に基づくビジネスモデルの計画書作成をサポート。
  • 建設業:一人親方や数名で工事を請け負うビジネスモデルに関する計画書作成をサポート。
  • ライター業:フリーランスで活動するライター向けのビジネスモデルにおける計画書作成をサポート。
  • 理美容業:数名のスタッフで実店舗を開設するビジネスモデルに対する計画書作成をサポート。
  • 運送業:数名で小規模な物流サービスを提供するビジネスモデルのための計画書作成をサポート。

以下は、収支計画書を作成してダウンロードするための手順です。

1.開業資金と売上設定

事業をスタートさせるためには、まず開業資金の額とその用途を明確に設定する必要があります。

開業資金は、自己資金、金融機関からの借入れ、そして親戚や友人からの支援など、「そのほか」の資金を含む3つのカテゴリに分けて考えることが必要です。自己資金は開業のために用意された預貯金を指し、借入れは一般的に自己資金の上限額までと考えられています。1年目の売上見込みを設定することで、事業の初期段階での収益性を予測します。

2.開業費用

開業資金をもとに、必要な開業費用を計算します。この費用から開業資金を差し引いた残りが「開業資金残り」として、事業開始後の運転資金となります。開業費用は主に事務所や店舗の賃貸契約、什器備品の購入、そのほかの初期費用に分かれており、これらを計画することで、事業開始に必要な総資金を見積もることが可能です。

3.開業後の売上げ見通し

事業開始後1年目から3年目までの売上と、1カ月当たりの経費を入力します。このプロセスでは、売上額に応じて業種ごとに設定された経費が自動で計算されるため、事業の利益予測をかんたんにおこなうことが可能です。経費には人件費、賃貸料、光熱費、広告宣伝費などが含まれます。

4.現金収支計画書をダウンロード

以上の手順を完了することで、自身の事業に合わせた収支計画書が完成し、これをダウンロードすることができます。完成した収支計画書には、今後必要になる可能性のある項目も含まれているため、将来の事業ビジョンをより具体的にイメージするための基礎となるでしょう。

収支計画書作成のポイント

収支計画書を作成する際には、財務の安全性・健全性を確保しつつ、将来的な成長性を見据えることが重要です。以下に挙げるポイントは、収支計画書をより効果的なものにするために特に注意を払うべきポイントとなります。

固定費の見直し

固定費は、売上高にかかわらず一定期間内で発生する変わらないコストです。固定費には家賃、人件費、光熱費などが含まれます。収支計画を作成する際には、固定費が適正な水準にあるか、削減できる余地はないかを検討することが非常に重要です。

売上を伸ばす努力ももちろん必要ですが、固定費を削減することで利益率を改善できる場合もあります。効率的なコスト管理は事業の持続可能性を高めるために不可欠です。

粗利益率は適正か

粗利益率、つまり売上高にしめる売上総利益の割合は、事業の収益性を示す重要な指標です。適正な粗利益率を設定することは、損益分岐点となる売上高の設定にも大きく影響します。

粗利益率が高い場合は、売上高が少なくても固定費を賄うことができますが、逆に低い場合はより多くの売上が必要となります。そのため、実態に合った適正な粗利益率の設定は、事業計画の現実性を高めるうえで欠かせません。

売上げの波を考慮する

どの業界にも、季節や特定の期間による売上の波(繁忙期と閑散期)が存在します。これらを考慮して売上高の予測をおこなうことは、資金繰り計画の精度を高めるうえで非常に重要です。特に事業開始直後は、これらの波を正確に予測し、軌道に乗るまでの資金繰りを慎重に計画する必要があります。

中長期的な計画を立てる

収支計画書は、単年度の予算だけでなく、中長期的な視点で作成されるべきです。少なくとも3年先までの収支計画を立てることで、長期的な目標を設定し、それに向けたビジネス戦略を策定することが可能になります。この長期計画は、事業の成長戦略を明確にし、関係者間での目標共有を促進する役割も果たします。

収支計画はツール利用で的確に

収支計画書の作成は、事業の将来性を見極め、資金繰りを効率的に管理するための重要なステップです。その重要性から、正確な収支計画書の作成は複雑で時間を要する作業になりがちです。このような課題を解決するため、特に初心者の事業者にとって有効な方法となるのが収支計画作成ツールの利用です。

収支計画作成ツールの利用により、必要な項目の入力から計画書の構造に至るまで、スムーズかつ的確に収支計画を作成することが可能になります。テンプレートの記入例を参考にしながら、自分の事業に合わせた調整をおこなえるため、はじめて収支計画書を作成する方でもかんたんに取り組むことができます。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
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