収支計画書の無料テンプレートと使い方【元日本公庫融資課長が監修】

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/03/25  最終更新日: 2024/04/26

収支計画書は、売上や経費・利益といった事業の成否を決定する要素をまとめたものであり、事業計画書のなかでもとりわけ重要なパートとなります。また、金融機関は、この内容から事業の構成や可能性、返済の可否などを読み取るため、根拠の薄い計画では満足のいく融資を獲得することはできません。そのため、しっかりと収支計画の構造や記入すべきポイントを押さえておく必要があります。

はじめて収支計画書を作成する方にとっては難しく感じる部分もあるかと思います。しかし、優れたテンプレートを使うことで、かんたん・正確に収支計画書を作成することが可能です。

当記事では、収支計画書のテンプレートの使い方や記載のポイントについて、各項目ごとに解説いたします。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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収支計画書とは

「収支計画書」は、事業から発生する収入と支出を項目別に記載した書類です。その内容は、主に以下の項目から構成されています。

・収入

・固定費

・変動費

・入出金・前月、次月繰越

ドリームゲートの事業計画作成サポートツールでは、業種別にテンプレートが分かれています。そのため、業種に特有な項目の見落としもありません。また、ブラウザ上で数値を入力するだけで、収支計画をかんたんに自動で作成しエクセルでダウンロードすることができるため、収支計画書作成の労力を減らすことが可能です。

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無料の収支計画書テンプレート【開業資金総額の把握】

収支計画書のテンプレートでは、さまざまな項目を入力します。しかし、これらは単に記入すればよいわけではなく、それぞれの内容が審査に大きく結びついていますのでそれぞれがどのような意味をもっているのかを考えたうえで記入する必要があります。
ドリームゲートが提供する収支計画書無料ツールでは、業種ごとに先輩経営者の開業費用平均値が自動で適用されるので、まだ細かな開業費用が出ていない人も収支計画を立てられます。もちろん自身で開業費用を入れることも可能です。

1. 自己資金を入力する

自己資金とは、事業のために自分で準備できるお金を指し、いわゆる「元手」にあたります。しかし、すべてのお金が自己資金になるわけではありません。自己資金として認められないお金も存在するため注意しましょう。

<自己資金となるもの>
・これまで給与などを貯めてその履歴が通帳や給与明細などからわかる資金(預貯金など)
・事業のために先に支払った資金
・相続により取得した資金
・退職金
・親、兄弟などからもらったお金
・他人から出資してもらった資金
・現物出資

<自己資金として認められないもの>
・事業に使う予定ではない資金
・一時的な見せ金
・タンス預金(500円玉貯金など)
・出どころの説明ができない資金
・ほかからの借金

また、信用保証協会などがおこなう制度融資においては一定の自己資金が必要とされていることが一般的です。そのため、このような融資を利用する場合には、「条件を満たした額となっているか?」といった点にも注意する必要があります。

見せ金とは、自己資金に見せかけるために一時的に借りた資金のことです。このような見せ金は審査の際にかんたんに見破られてしまいます。もし、見せ金であることがばれた場合には、その融資は当然に否決されます。また、その後の融資にも大きな悪影響をおよぼすため、おこなわないようにしましょう。

また、 親、兄弟などからもらったお金は返済義務がないため自己資金となりますが、借りたお金は自己資金とはなりません。

参考)自己資金なしで創業融資を受ける5つの方法と注意点


2. 借入額を入力する

ここでは金融機関などからの借入予定額を記入します。具体的には、日本政策金融公庫、信用保証協会、そのほかの金融機関からの借入れや、ローンの利用額などが該当します。

借入額が多いほど審査にとおりにくくなってしまいます。また、返済原資の確保も難しくなるため、自己資金額とのバランスも考えたうえでの決定が重要です。一般的な融資の目安は、自己資金額の2~3倍程度とされているため、これを参考に資金計画を立てることをおすすめします。

参考)日本政策金融公庫の融資はいくらまで借りられる?!自己資金と融資額の目安も紹介

3. その他の資金を入力する

「その他の資金」には、親や親戚、友人からの借入れがある場合に記入します。前述したようにここでの借入れとは返済義務のあるものを指します。そのため、贈与や出資などの返済義務のない資金は含みません。もし、そのような資金がある場合には、自己資金として取り扱います。

無料の収支計画書テンプレート【売上】

「1年目の売上見込み」を記入します。売上の見込みは、「1カ月分の売上を計算し、それに12を掛けて算出する方法」と「毎月ごとの売上を計算してそれを合計する方法」の2つがあります。

無料の収支計画書テンプレート【費用内訳の把握】

次に開業費用などを入力します。開業費用は、「費用・事務所店舗費用」、「什器備品費用」、「その他費用」について入力が必要です。

最初に先輩経営者のデータを参考に自動計算された数値が入力されていますので、それを参考に自身の開業費用でわかっている部分はその数値を入れていくとよいでしょう。

1. 開業費用・事務所店舗費用

「事務所店舗費用」としては、開業時に契約する店舗や事務所関連の費用が該当します。

店舗賃貸契約費 店舗や事務所を借りる際、仲介会社などに支払う費用です。家賃の1カ月程度が相場となりますが、物件によっては0となるものもあります。
店舗保証金 店舗や事務所を借りる際に発生する保証金です。家賃の6~12カ月程度が相場ですが、飲食店の場合は通常の事務所よりやや高い傾向にあります。
店舗前家賃 店舗や事務所を借りる際、前家賃として1カ月程度を支払います。
工事費など 店舗や事務所を借りる際に必要となる内・外装工事の費用です。工事費は業者によって差があるため、複数の業者から見積りを取るようにしましょう。

2. 開業費用・什器備品費用

「什器備品費用」には、店舗や事務所内の機器、棚、机などの費用が該当します。

厨房機器、空調機器 店舗や事務所で事業に必要な機材のうち、主なもの(厨房機器や空調設備)。
店舗用品 店舗や事務所で使用するテーブルや椅子、棚など。
オフィス用品 店舗や事務所で使用する机や椅子、書棚、レジスターなど。
OA関連機器 店舗や事務所で使用するパソコンや電話、FAX、コピー機など。
そのほか文具、事務用品 文房具や細かい事務用品など。

3. 開業費用・その他費用

事業をはじめるにあたって必要な原材料などの初期仕入費用、会社設立費用などが該当します。

初期仕入費 事業をはじめるにあたって必要となる原材料などの初期仕入費用。
会社設立費用、開業諸経費 会社設立に必要な各種経費(法人設立費用や登録免許税、印鑑など)。なお、法人設立費用や登録免許税は、会社の種類により異なるため注意が必要です。

収支計画書でをダウンロードしてエクセルで確認

最後に収支計画書をエクセル形式でダウンロードし、詳細にチェックします。売上や費用の項目については、状況に応じて内容を変更すると、より精度が高くなります。

以下では、主な項目についてチェックポイントを解説します。

1. 仕入額は売上額に比例するかどうか

飲食店や物販業では一定の仕入原価が決まっているため、売上と原価率が比例したものとなっているかに注意します。もし、売上と仕入が比例する場合は、売上にあわせて変動させますが、サービス業のように比例しない場合は、実態にあわせて推移させます。
なお、売上や仕入先が複数ある場合には、それぞれについて書き分けて記入します。

2. 役員報酬や従業員の人件費はいくらなのか

役員や従業員がいる場合には、役員報酬と従業員給与を記入します。通常、これらは定額の固定費となりますが、パートやアルバイトを雇う場合には、勤務シフトや出勤日に応じて給料を決めるため変動費となります。

原則的に、役員や従業員は各種社会保険への加入が必要となるため、支払う給与額にもとづいて保険料を見積り、福利厚生費に記入します。

個人事業の場合は最終的に残った利益が事業主の給与となります。

3. 毎月発生する経費はいくらなのか

従業員給与以下の項目では、家賃や宣伝広告費などの各費用について金額を入力します。

これらは売上に関係なく発生する固定費となりますが、旅費交通費や外注費などのように、金額が変わるものや不定期に生じるものもあるため注意してください。

地代家賃や支払報酬のように金額が契約により定められているものについては、契約書の金額を使って記入する必要があります。

また、減価償却が発生するため、このような物品を購入したときには資産に計上するとともに、適切な減価償却費を収支計画書に計上する必要があります。

なお、2024年3月31日までに取得して事業で使用しはじめた資産については、「少額減価償却資産の特例」を利用することができます。少額減価償却資産の特例は、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した際、費用を一括で経費にできる制度(上限は1年につき300万円)です。制度の範囲内であれば費用計上することができますが、超える額については資産計上したうえで、減価償却費を計上する必要があります。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/pamphlet/zeisei_leaflet_r6.pdf

4. 借入金があるなら支払利息はいくらなのか

利息の支払欄には、これから借入れる予定の金額を計算して入力します。利息の計算は「(借入金額×利率)/12」により計算します。利率は日本政策金融公庫や制度融資のホームページに掲載されているため、最新のものを使用しましょう。

なお、融資の際に元金の据え置きを利用するケースがあります。この場合、元金は一定期間据え置きされても利息は据え置きとならないため、借入れの翌月分から計上する必要があります。

日本政策金融公庫金利一覧表

5. 単発で発生する費用はいくらなのか

事業を継続するうえでは、家賃などの毎月定額の固定費が発生します。また、固定費だけでなく、単発業務の支払報酬や一時払いの保険料など、年に1回もしくは数回しか発生しない費用もあるため、これらについても見落としがないように注意してください。

とくに宣伝広告費については、ホームページの作成時だけでなく、毎月の保守管理費がかかることがあるため、月によって大きく変動する可能性があります。

収支計画書テンプレートを使用する4つのメリット

収支計画書をテンプレートで作成した場合には、手計算で生じやすいミスを防ぐことが可能です。また、集計にかかる手間を大幅に減らせるなどの効果も期待できます。以下では、テンプレートを利用した場合の4つのメリットをご紹介します。

1. 正確な計算・集計ができる

テンプレートを利用することで、正確な計算や集計をすることができます。収支計画書の内容は連動する部分が多いため、一か所変えるとそのほかの項目も修正が必要です。しかし、自動計算機能を使えば、正しい数字を入力するだけでよいため、検算や見直しにかかる労力を大きく減らすことができます。

2. 的確な分析ができる

正確な計算・集計をすることにより、精度の高い分析をすることが可能となります。また、各項目の数字を入れ替えることで、結果の比較をすることも可能です。分析や比較は、ビジネスビジョンのブラッシュアップに役立つとともに、目標とする数字との間にどのくらいの乖離があるかを把握することにもつながります。

3. ミスが減少する

テンプレートには計算式が組まれているものが多く、必要な数字を入力するだけではじめて収支計画書を作成する方であってもスムーズに作成可能です。また、作成途中での計算ミスや集計の間違いを防ぐことができます。

4. 計画の可視化につながる

計画の作成時は、目の前のことに集中するあまり、計画全体の大きなズレや間違いに気づきにくくなってしまいます。しかし、テンプレートを用いて計画を作成することで、全体の計画を俯瞰的に見ることができるため、アイデアの追加や見直しを効率よくおこなうことができます。

収支計画書テンプレートを使用する際の注意点

テンプレ―トによる収支計画書の作成には以上のようなメリットがあります。しかし、万能というわけではありません。テンプレートを使う際の注意点も存在するため、これらを理解したうえで利用する必要があります。

1. 計算式を変えたり削除したりしない

テンプレートの自動計算は便利な機能ですが、ときには無意識に計算式を変えてしまったり、削除してしまったりすることもあります。「テンプレートは正確だ」と思い込んでしまうと、このようなミスが生じたときに、そのまま見逃してしまう可能性があります。テンプレートを使用する場合でも、必ずチェックをし、計算式に変更を加えていないか、単位が揃っているかなどに気をつけることが必要です。

間違えてしまったときに元に戻れるよう、何回かバックアップを取っておくとよいでしょう。

2.必要な情報の見落としの危険がある

テンプレートに記載されている項目や情報は、あくまで代表的なものです。そのため、事業内容によっては特殊なケースを追加したり修正したりしなければなりません。また、計画で使う情報についてさらに詳細な収集や分析をしなければならないこともあります。とくに、売上については業種ごとに計算方法が異なるため、状況にあった計算や見積りをすることが重要となります。

収支計画はテンプレートを使って確実なものを

収支計画書は、事業計画書のなかでも今後の事業の内容を数値として表したパートであり、計画の見込を判断するうえで重要なものとなります。

収支計画書の作成は数字の計算に基づくものが多くなっています。そのため、慣れていない方にとっては負担の大きな作業となるでしょう。しかし、テンプレートを利用すれば、必要最低限の入力によって、自動計算できるため、作成の労力と計算ミスを減らすことができます。

ドリームゲートでは、代表的な12業種について収支計画書のテンプレートを用意しています。計算が自動でできるだけでなく、他企業との比較・分析も可能なため、計画作りのサポートに役立ててください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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