美容室の融資が成功するカギとは?業界の実態と融資獲得のポイント
美容師としての経験を積み、自分のお店を開業したいと考えたとき、開業を成功させるには美容室の経営ポイントを十分に理解した説得力のある事業計画書を作り、十分な資金を確保することが重要です。
この記事では、美容室開業希望者が融資を受けるための条件やポイントを日本政策金融公庫の新規開業資金に沿って解説します。
美容業界の実態をふまえながら、審査通過のための事業計画書の作成方法や、美容室向けサンプル、融資事例なども紹介するので参考にしてください。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次
美容業界の実態と自己資金や開業資金の必要額
日本政策金融公庫総合研究所の「2022年度新規開業実態調査」によれば、開業者全体の自己資金平均額は2019年262万円・2022年271万円、資金調達額は2019年1,237万円・2022年1,274万円、金融機関からの借入額2019年847万円・2022年882万円となっています
参考:「2022年度新規開業実態調査」
美容室の開業には1,000万円程度の資金が必要とされていますが、すべてを自己資金で用意するのはなかなか厳しいでしょう。
そのような場合に活用できるのが、日本政策金融公庫の新規開業資金です。新規開業資金は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資制度です。
美容業界の実態は「競争が激化」
2000年以降、美容施設数は微増傾向にあり、美容師数は増加傾向にあります。2017年時点では、約25万件の事業所が存在し、約52万人の美容師が業務に従事しており、施設あたりの従業者数は約2.1人とそれぞれほぼ横ばい状況となっています。施設あたりの従業員数が増加している背景には、従業員数を要する比較的大きなチェーン店の増加があげられます。
これに対して、家計の「パーマ代」にかける支出は縮小傾向にあり、2010年は2,859億円だったのに対し2017年度においては2,113億円と約26%以上減少しています。そのため、2012年頃から美容室同士の競争は激化し、客単価の下落などから美容室経営が厳しくなっているようです。
パーマ需要の減少による客単価の下落や競争の激化から、白髪染め専門店や訪問美容室、美顔、ネイルケア、まつ毛パーマ、エステ、ヘッドスパなどといった新たな業態や付加価値を備えた美容室が増加しています。
参考:J-Net21 美容院
融資や開業に向けて準備すべきこと
美容室の開業には多額の資金が必要ですが、十分な資金を融資で調達するためにも、以下の3点のポイントをおさえておきましょう。
- 必要な自己資金を確保する
- 信用情報に問題がないかを確認する
- 事業計画を立て必要な資金を明確にする
自己資金を確保する
自己資金とは、「自分で貯めた事業に使う予定の資金」のことをいいます。そのため、通帳に入っていても事業に使う予定のないお金は自己資金とはなりません。自己資金の最も典型的なものは、それまでに給与等をコツコツと貯めた資金です。
親からの返済不要の援助金などは自己資金とみなされる場合もありますが、タンス預金(500円玉貯金など)や出どころの不明な預貯金などは自己資金として認められないので注意してください。
なお、その他として、退職金や相続で得た資金、保険の解約金、国債や株券等の有価証券も自己資金として認められることがあります。
信用情報を確認する
個人の信用情報の履歴にネガティブな情報が登録されている場合(支払いの遅れや未払い、破産など)には、融資を受けるのが難しくなります。
また、家賃や公共料金、カードの支払い、携帯電話料金の支払い、住宅ローン、税金などについて支払いの遅れや未納がある場合も借入れが難しくなることがあります。
これらのような定期的に支払いが必要なものについては、融資を申込する1年以上前からきちんと期日通りに支払っておく必要があります。
事業計画を立て必要な資金を明確にする
希望する額の融資を受けるには、綿密かつ実現可能性の高い計画を作る必要がありますが、そのためには一般的にどの程度の資金が必要となるかを把握しておかなければなりません。
ただ漠然と「たくさん融資してほしい」では、審査の通過は厳しくなるので、ある程度の相場を理解した上で、自分にあった計画を作る必要があります。
以下は、美容室の開業資金と収益見込みのモデルケースとなります。(なお、実際の開業では下記の開業資金の他に3~4月分程度の運転資金が必要となります)
<開業資金例>
<収益モデル例>
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
美容室開業者が受けられる融資とは?
美容室の開業に利用できる融資には、民間金融機関からの信用保証協会の保証付き融資や、自治体が主催する制度融資、日本政策金融公庫のような政府系金融機関による融資と多くの種類があります。
それぞれで融資の要件や上限額が異なるため、あらかじめ自己資金額や計画の内容にあわせて、利用できそうな融資制度を絞り込んでおきましょう。
1. 政府系金融機関
日本政策金融公庫の新規開業資金は、開業前および開業後一定期間を経過するまでの方が利用できる融資制度であり、もっとも多くの創業者に利用されています。
最大7,200万円までの融資を無担保・無保証で利用できますが、申し込みの際には一定の自己資金などの条件が必要となります。
<利用できる方>
次のすべての要件に該当する方
- 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
- コロナ禍の今だからこそ、お客さまがより安心してくつろげる場をつくり、居心地のいいたくさんの癒しを提供したいと思い、創業を決意。
- 創業にあたっては、美容室での約14年間の勤務経験や集客・営業方法のスキル、前職場のオーナーや同業の先輩たちの協力が得られたことが大きな力となった。
- はじめは事業計画書の作り方をまったく知らなかったが、日本政策金融公庫の担当者のサポートを受けながら、満足のいくものを作ることができた。
- 都内の有名サロンで約15年間勤務し、美容師として技術面のみならず、営業・経営面でも多くの経験を積み重ねた中で、この経験やノウハウを生まれ育った小田原に還元し、お客さま一人ひとりの人生に関わることで地域貢献したいという想いから創業を決意。
- 勤務しながらの準備ということで時間的余裕がない中での創業となったため不安もあったが、美容業生活衛生同業組合の会員となったことで、創業計画書へのアドバイスや日本公庫の融資を利用する際の金利優遇などを受けることができた。
- 現在は、ホームページやSNSの活用、店頭でのノベルティ配布などにより順調に来店客数が増え、創業当初に立てた年間売上計画を開業後の3カ月で達成できた。
- 勤務先の美容室で約13年の経験と4年間の店長経験の中で培った店舗運営のスキルを地元の徳島に戻って活かしたいと考え、創業を決意。
- 創業準備中に新型コロナウイルス感染症が流行し、一時は創業を見合わせたものの、コロナ禍での対応を通して、自身の技術・接客に一層自信が持てたこともあり、創業に踏み切れた。
- 想定通りに準備が進まず、焦りを感じていた中で、日本政策金融公庫の担当者から困難な状況を配慮してもらい、オンライン面談によって審査を行うなどの対応をしてもらえたことや、地元の金融機関や商工会議所の担当者を紹介してもらえたたことで、スムーズに手続きや資金調達を進められた。
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
※ ただし「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」等、一定の要件に該当する方については、本要件を満たすものとします。
<資金使途>
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
<融資限度額>
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
<返済期間>
各融資制度に定めるご返済期間以内
<利率(年)>
基準利率 2.15~3.25%(令和6年4月現在、税務申告を2期終えている方の場合)
<担保・保証人> 原則不要
※原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっています。
2. 自治体による制度融資
「制度融資」とは、都道府県や市町村などの自治体と国の機関である信用保証協会、市中の金融機関が一体となって中小企業や創業者が借入れをしやすくするための、いわばパッケージ型の融資制度です。
それぞれの役割は、以下のとおりとなります。
制度融資におけるそれぞれの役割
対象機関 | 制度融資での役割 |
行政(都道府県等) | 制度融資の設計と運用 |
金融機関 | 自分の資金で融資をする |
信用保証協会 | 融資について公的な保証をする |
制度融資は、郵便局を除くほぼすべての金融機関を経由して使えるため、自分の気に入った金融機関を窓口にできます。
ただし、具体的な制度の内容は各自治体により異なります。
3. 民間金融機関
民間の金融機関の代表的なものとしては、銀行(都銀と地銀)、信用金庫があります。
「銀行」は、その規模により都銀と地銀にわけられ、都銀が全国を対象とした営業を行っているのに対し、地銀では都道府県単位での比較的狭いエリアを営業範囲としているところに主な違いがあります。
これに対して、「信用金庫」は、信用金庫法により設立された地域金融機関です。
「相互扶助を目的とした協同組織である」、「地域内における中小・零細企業を対象としている」、「融資は原則として組合員に対して行われる」といった特徴があります。
これらいずれも融資の貸し出しを行っていますが、信用保証協会などの保証機関の保証がつかない融資(プロパー融資)は審査のハードルが高い傾向にあります。
融資以外の資金調達方法
金融機関の融資以外の資金調達方法として、クラウドファンディングやエンジェル投資、創業者向けの補助金・助成金などがあります。
クラウドファンディング
「クラウドファンディング」とは、インターネットを通じ経営の趣旨や考え方に賛同した人から資金を集める方法です。自社の商品やサービスを購入してもらうという方法が一般的ですが、最近では融資や出資を利用した方法も行われています。
クラウドファンディングによる資金調達には、「比較的簡単に実施できる」、「早期に資金や見込み客を集められる」といったメリットがありますが、「実際にやってみないと集められる金額の見込みが立たない」、「掲載サイトへの手数料がかかる」などのデメリットもあります。
エンジェル投資家
「エンジェル投資家」とは、その企業の理念や成長性に賛同し、有望な経営者や起業家に支援を行う個人投資家のことをいい、「投資を通じて企業のファンになってもらえる」、「迅速な調達ができる」などのメリットがあります。
しかし一方で、「多額の資金の調達が難しい」、「エンジェルを見つけるのが難しい」といったデメリットもあります。
助成金や補助金
補助金等は、国や地方自治体が一定の企業に対し、事業で必要となる費用の一部を補助するものであり、返還不要で利用できるため、獲得できた場合には資金繰りを大きく改善できます。
なお、補助金や助成金には通常の企業だけでなく、創業者でも利用できるものや、各自治体が行っているものも数多くあるため、計画的に活用することで、融資を受けた以上の効果を得られます。
参考:各自治体の補助金・助成金
資金調達方法について、上野氏のYouTubeが参考になります。
審査通過のポイントは?
創業者が十分な資金の調達をするには、「現実的」、「実現可能性が高い」、「数字の裏付けにもとづいた」事業計画書を作成する必要があります。
事業計画書を作成することのメリットや、審査通過に向けた事業計画書作成におけるポイントをみていきましょう。
事業計画書作成のメリット
コンビニの約5倍といわれるほど競合が多いとされる美容業界で、開業時に希望の資金を調達するには、明確に戦略を記載した事業計画書が不可欠です。
事業計画書を作成する具体的なメリットとしては、以下のものがあります。
① 事業の内容を客観視でき、今後にやるべきことが明確になる
事業計画書を作ることで、ビジネスプラン全体や今後にすべき細部の作業を客観的に見つめ直せます。頭の中で考えるだけではまらないことも、紙に書き出してみることで、漏れや間違いに気づきうまく整理できることもあります。
② 他人と計画のイメージを共有できる
計画の内容を口頭だけで人に伝えることは困難ですが、これを事業計画書というツールにすることで、他人と計画のイメージを共有でき、資金の調達や事業への協力をしてもらいやすくなります。
③ 金融機関などから資金調達が可能になる
日本政府金融公庫などの金融機関から融資を受けるときだけでなく、エンジェル投資家から出資を受ける場合や補助金の申請をする際にも、事業計画書の作成・提出は欠かせないものです。
また、金融機関側では、計画の内容を見て融資の判断をするため、希望額の融資を獲得するには、金融機関の納得する事業計画書を作れるかどうかが重要なポイントとなります。
事業計画書作成のポイント
金融機関では、美容室の競合が激化していることを理解しています。また、開業後すぐに安定した顧客を獲得することは難しいことや、開業してからの一定期間については低い売上げ・利益となることも承知しているため、それらを前提としたうえで希望額を獲得するには、以下のポイントを踏まえた計画となるようにしましょう。
① 立地や従業員の規模、自己資金額と比較して、借入額が大き過ぎないこと
一般的に、融資を受けやすい金額は、自己資金額の3~4倍程度とされているので、この基準をベースにして借入額を計算すると、適正な額の計画となります。
なお、融資額を膨らませるために、不要な設備や経費を入れるのは減額の元となるだけでなく、計画全体の信ぴょう性を損ねることになるので注意してください。
もし、自己資金が極端に低い場合には、ある程度の資金が貯まってから申し込むということも検討しましょう。
② 計画通りの売上げを上げるための工夫や仕組みが計画に記載されていること
現在はカットやパーマという従来のサービスだけで生き残ることは難しくなっているため、「ネイルケアやネイルアートなど周辺サービスを含めたサービスを提供する」、「他で扱っていない特別な施術をする」などの明確な差別化ができていることが重要です。
③ 数字の根拠を明確にする。
売上げや利益の計画は表面的な数字があっていればよいというわけではなく、その内容が根拠にもとづいて積み上げられたものでなければなりません。
たとえば、見込みの売上げを100万円/月としたのであれば、「想定する客単価はいくらなのか?」、「見込んでいる来客数は何人なのか?」などは当然として、それ以外にも「なぜ、その人数の集客ができるのか?」、「予定した利益できちんと返済できるのか?」ということも説明できる必要があります。
美容室の創業成功事例
以下では、日本政策金融公庫の事例集から3つの事例を取り上げご紹介します。
事例1 積み重ねたキャリアを活かした最良の癒しを提供する美容室
参考:こっしーのおみせ| 全国創業事例集[story] | 日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
事例2 生まれ育った小田原でプライベートサロンを開業
参考:ITO hair(イトヘアー) | 全国創業事例集[story] | 日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
事例3 男女別の専門スタイリストが担当するプライベートサロン
参考:Add.hair(アッドヘアー)| 全国創業事例集[story] | 日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)
美容室向けの融資には新規開業資金がおすすめ
近年、美容室業界は競争が激しくなっており、事業を成功させるには開業資金だけでなく、その後の運転資金にもゆとりをもった資金調達が必要となっています。
また、金融機関が納得のできる事業計画書を作成するには、ビジネスプランや収支計画において、単なる思い付きレベルのものではなく、美容業界の状況や本人の経験を踏まえた、他と差別化できるものや、返済が可能なことを示す計画を作ることが求められます。
しかし、これらの条件を満たす事業計画書の作成が難しいという方も少なくないでしょう。
そんな時には、ドリームゲートの「事業計画作成サポートツール」をお試しください。
このツールでは理美容業をはじめとした12業種について、ブラウザ上で簡単に事業計画書を作成できます。また、作成した計画書は途中でも保存可能。作成後は、CSV形式、Excel形式、PDF形式でデータをダウンロードできます。
創業計画書の作り方にお困りの方は、ぜひ、ご利用ください。
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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