飲食店の成功を支える新規開業資金の魅力と留意点を融資のプロが解説
飲食店を開業し、自分の店を持つことを夢見る方は多いでしょう。しかし、理想のお店を実現するには、多額の開業資金が必要となります。
「自己資金が足りない」「融資はハードルが高い」そんな悩みをお持ちの方が多いのも現実です。そこで、ぜひ知っていただきたいのが、日本政策金融公庫の「新規開業資金」です。
新規開業資金は、飲食店を含むさまざまな業種の新規開業を支援する公的な融資制度で、「融資限度額が大きい」「金利が低い」「返済期間が長い」など多くのメリットがあります。女性や若者、シニアの方などに向けた優遇措置も充実しており、はじめて融資を受ける方でも利用しやすい制度です。
当記事では、新規開業資金の概要や利用方法、審査にとおるためのポイントなどを、融資のプロの視点から分かりやすく解説します。資金調達の不安を解消し、夢の実現に向けて、当記事をぜひ参考にしてください。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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目次
1.新規開業資金とは
飲食店の開業資金を調達する方法はさまざまですが、公的融資制度である「新規開業資金」は、これから事業をはじめる方にとって、とくに魅力的な選択肢のひとつです。融資限度額が大きく、低金利で、返済期間も長期に設定できるなど、多くのメリットがあります。
1)日本政策金融公庫の創業融資制度が拡充
以前は「新創業融資制度」がありましたが、2024年4月から名称が変わり「新規開業資金」として制度が拡充されました。
対象者 | 新たに事業をはじめる方や、事業開始後おおむね7年以内の方が対象 |
融資限度額 | 設備資金と運転資金を合わせて最大7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金で最大20年以内、運転資金で最大10年以内と、長期にわたって返済することができ、据置期間も5年以内で設定可能 |
利率 | 基準利率をベースに、さまざまな条件に応じて特別利率が適用されます。たとえば、女性や若者、シニアの方、再挑戦者、中小企業経営力強化に取り組む方などは、優遇金利の適用を受けることができます |
参考:【スタートアップ必見】日本公庫の新規開業資金の変更ポイントを解説!
参考:日本政策金融公庫の創業融資が大進化【元公庫融資課長が解説】
2)3つの優遇制度がある
新規開業資金には、より有利な条件で融資を受けられる、3つの優遇制度があります。
女性、若者/シニア起業家支援関連 | 女性、35歳未満または55歳以上の方を対象とした制度です。優遇金利が適用されるため、より低い金利で融資を受けることができます。 |
新規開業資金(再挑戦支援関連) | 過去に事業の廃業などをした経験のある方が、再挑戦する場合に利用できる制度です。運転資金の返済期間が、通常の10年から最長15年まで延長されるため、無理のない返済計画を立てることができます。 |
新規開業資金(中小企業経営力強化関連) | 中小企業の会計に関する基本要領または指針を適用している、または適用予定の方で、一定の要件を満たす場合に利用できる制度です。優遇金利が適用されるため、資金調達コストをおさえることができます。 |
3)飲食店の場合
飲食店を開業する場合は、原則として、新規開業資金に類似した制度である「生活衛生新企業育成資金」の対象になります。。
個人事業主でも、新規設立法人でも、飲食店を開業する場合は、日本政策金融公庫の融資の利用を検討してみましょう。
飲食店は、初期費用が比較的高額になりがちです。店舗の賃貸費用や内装工事費、厨房設備費など、多額の資金が必要となります。新規開業資金を利用することで、これらの費用を賄い、スムーズに開業準備を進めることができます。
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2.飲食店が新規開業資金を利用するメリット
新規開業資金のメリットは、どの業種でも共通していますが、とくに飲食店を開業する場合は、より大きな恩恵を受けることができます。
1)融資限度額が大きい
飲食店は、一般的に、無店舗型ビジネスと比較して開業資金が多く必要となります。店舗の賃貸費用や内外装工事費、厨房設備費など、多額の資金が必要となるケースが多いでしょう。新規開業資金は、最大7,200万円まで融資を受けることができるため、自己資金が不足している場合でも、十分な資金を調達できる可能性があります。
ただし、必ずしも融資限度額の上限まで借りられるとは限らない点に注意が必要です。融資額は、事業計画の内容や経営者の経験、信用力などを総合的に判断して決定されます。
日本政策金融公庫だけでは十分な金額の融資が受けられない場合は、銀行や信用金庫など民間金融機関との協調融資を勧められる場合もあります。
2)利息が低い
飲食店は、ITやコンサルティング事業などと比べて、利益率が低い傾向にあり、少しでも利息をおさえることが重要となります。新規開業資金は、基準利率に加えてさまざまな条件に応じた特別利率が適用されるため、ほかの金融機関から融資を受けるよりも、低い利息で資金調達できる可能性があります。
また、新規開業資金では、「据置期間」を設定できます。据置期間とは、元金の返済を猶予する期間のことです。据置期間中は、利息だけを支払えばよいため、開業当初の資金繰りが安定しやすくなります。
3)返済期間が長い
飲食業界は、参入障壁が低いため、多くの事業者が参入してきます。そのため、競争が激化しやすく、廃業率も高い業種のひとつとなっています。
新規開業資金は、返済期間が最長20年と長いため、長期的な視点で返済計画を立てることができます。飲食業は開業1年内での廃業率が3割で、黒字化が困難なため、返済期間が長いことは大きなメリットといえます。
開業当初は、顧客を獲得したり、従業員を育成したりするなど、さまざまな課題に直面することが予想されます。返済期間が長ければ、経営が安定するまでの時間を確保することができ、無理のない返済計画を立てることができます。
4)用途の制限が少ない
新規開業資金は、開業のために必要な資金であれば、幅広い用途に利用できます。店舗の賃貸費用や内装工事費、厨房設備費などの設備資金はもちろんのこと、食材の仕入れ費用や人件費、広告宣伝費などの運転資金にも利用できます。
飲食店の場合、内装工事費用をはじめ食器類や家具の購入費用、光熱費、人件費など、幅広い費用が発生します。新規開業資金は、これらの費用をまとめて調達できるため、資金繰りが楽になります。
また、事業開始前の費用にも利用できます。たとえば、開業準備のための市場調査や従業員募集、研修費用などに充てることができます。
一方、補助金や助成金は、資金使途の制限が多いので、申請を検討している場合には注意が必要です。
5)審査が柔軟である
新規開業資金は、政府系金融機関である日本政策金融公庫が取り扱う融資制度であるため、民間金融機関と比べて審査が柔軟であるといわれています。飲食店経営に実績がなくても、熱意や事業計画の内容が評価されれば、融資を受けられる可能性は大いにあります。
6)無担保・無保証も可能
新規開業資金は、無担保・無保証で融資を受けることが可能です。一般的に、金融機関から融資を受ける場合は、担保や信用保証協会の保証(法人の代表者が連帯保証人)が必要となり、心理的なハードルが高くなります。
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3.飲食店が新規開業資金を利用する際の注意点
新規開業資金は、飲食店開業の夢を叶えるための強力な武器となりますが、利用する際には、いくつかの注意点をおさえておく必要があります。メリットだけでなく、デメリットや注意点も理解したうえで、計画的に資金調達を進めていきましょう。
1)審査に時間を要する
新規開業資金は、政府系金融機関である日本政策金融公庫が取り扱う融資制度であるため、ビジネスローンなどと比較して、審査に時間を要する傾向があります。ビジネスローンのなかには、即日融資が可能なものもありますが、新規開業資金の場合は、申請から融資実行まで、数週間から数カ月かかることもあります。
これは、日本政策金融公庫が、事業計画の内容や経営者の経験、信用力などを慎重に審査するためです。そのため、飲食店の開業を計画している方は、時間に余裕を持って、資金調達の手続きを進める必要があります。
とくに、開業の直前に資金が不足して、慌てて新規開業資金の申請をすることは避けなければなりません。資金調達は、開業準備の初期段階から計画的におこない、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
2)設備資金と運転資金の上限がちがう
新規開業資金の内訳は、設備資金と運転資金の2種類に分けられます。設備資金とは、店舗の建設や厨房設備の購入など、開業のために必要な事業設備の取得に充てる資金のことです。一方、運転資金とは、食材の仕入れや人件費、光熱費など、事業を継続して運営するために必要な費用の確保に充てる資金のことです。
新規開業資金では、設備資金と運転資金で、それぞれ融資限度額が設定されています。融資限度額は、設備資金7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
飲食店を開業する場合、厨房設備や内装工事など、多額の設備資金が必要となるケースが多いですが、運転資金も軽視することはできません。開業当初は、顧客を獲得するまでにある程度の期間が必要となるため、十分な運転資金を確保しておくことが重要です。
新規開業資金を利用する際は、設備資金と運転資金のそれぞれの限度額を理解し、事業計画に合わせて適切な資金調達をおこなうようにしましょう。
4.飲食店が新規開業資金を利用する方法
新規開業資金の利用を検討しているのであれば、具体的な申請方法や提出書類について理解しておく必要があります。スムーズに手続きを進めるために、以下の内容を参考に、事前に準備を進めておきましょう。
1)申請方法と流れ
新規開業資金の申請は、以下の流れでおこないます。
① 電話か窓口で融資相談
まずは、日本政策金融公庫の支店に電話連絡、もしくは窓口へ直接訪問し、融資の相談をおこないましょう。融資制度の内容や、自身の事業計画に合った融資プランなどを相談できます。
② 申請
融資の相談後、必要書類をそろえて、日本政策金融公庫に申請します。申請書類は、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードすることもできますし、窓口で入手することもできます。インターネット申込みであれば、365日24時間申請可能です。
③ 面談
申請後、日本政策金融公庫の担当者と面談をおこないます。面談では、事業計画の内容や資金繰り、返済計画などについて説明する必要があります。また、担当者から質問を受けることもありますので、事前にしっかりと準備しておきましょう。
④ 融資の実行
面談後、審査にとおれば、融資が実行されます。融資の実行は、指定された口座への振込でおこなわれます。
⑤ 返済の開始
融資実行後、計画に基づいて返済を開始します。返済は、毎月、指定された口座から自動引き落としでおこなわれます。
2)必要書類
新規開業資金の申請には、以下の書類などが必要です。
借入申込書 | 日本政策金融公庫所定の様式に必要事項を記入します。インターネット申込みの場合は不要です |
創業計画書 | 事業の内容、資金計画、収支計画などを具体的に記載した書類です |
賃貸借契約書 | 店舗を借りている場合は、賃貸借契約書のコピーが必要です |
見積書 | 厨房設備など、高額な設備を購入する場合は、見積書のコピーが必要です |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなど、顔写真つきの本人確認書類が必要です |
そのほか | 状況に応じて、公庫が求める書類が必要です |
必要書類の内容によっては、追加で書類の提出を求められることもあります。事前に担当者に確認しておくと、スムーズに手続きを進めることができます。
参考:創業融資(新規開業資金)の必要書類まとめ。日本政策金融公庫の手続き方法についてもくわしく解説
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5.飲食店が新規開業資金の審査を通過するためのポイント
新規開業資金の審査を通過するためには、以下のポイントをおさえましょう。
1)自己資金比率を高める
新規開業資金の審査では、自己資金の割合はとくに決まっていません。しかし、自己資金比率が高いほど、審査にとおりやすくなる傾向があります。自己資金比率とは、開業に必要な総投資金額にしめる自己資金の割合のことです。
一般的に、自己資金比率は30%以上が望ましいとされており、日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査」によれば、平均調達額にしめる自己資金の割合は23.8%となっています。
自己資金が不足している場合は、手持ちの資産を現金化することも検討しましょう。
参考:「自己資金は3割必要」ってホント!? 元・銀行支店長が教える、創業融資の必勝法②資金計画
参考:日本政策金融公庫「創業計画Q&A自己資金はどれくらいあればよいですか?」
2)ほかの資金調達も検討する
新規開業資金以外にも、さまざまな資金調達方法があります。借りられる資金は、なるべく多く確保しておくことが重要です。
民間銀行の融資 | 民間銀行でも、創業融資に力を入れているところもありますので、確認してみましょう |
補助金、助成金 | 飲食店開業に関連する補助金や助成金制度があります。とくに厚生労働省管轄の助成金は、従業員を雇用する際に、対象となるケースが多いので、要チェックです |
クラウドファンディング | インターネットをつうじて、不特定多数の人から資金を調達する方法です |
生命保険の契約者貸付 | 生命保険に加入している場合、契約者貸付を利用できます |
3)信用情報に傷があれば回復させる
信用情報に傷があると、新規開業資金の審査に悪影響をおよぼす可能性が高くなります。公共料金や税金、クレジットカード、ローンの支払いなどを延滞しないように注意しましょう。
心当たりや不安がある場合は、信用情報機関に問い合わせてみましょう。直近で税金や国民健康保険・国民年金などの滞納がある場合には、支払いをしてから申込みをしましょう。
4)融資希望額を適正にする
融資希望額は、事業計画に基づいて、適正な金額を設定しましょう。日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査」によると、開業時における金融機関からの借入れ額は、平均768万円となっています。そのため、700万円台から1,000万円程度までが適正な融資希望額となるでしょう。
5)現実的な事業計画を立てる
事業計画は、実現可能な内容である必要があります。売上目標や利益目標などを過大に見積もると、審査に悪影響をおよぼす可能性があります。
参考:融資が決まる、事業計画書の書き方【元日本公庫の融資課長が監修】
6)事業に必要な許認可を取得する
飲食店を開業する際には、業務形態によりますが、食品衛生責任者や防火管理者、飲食店営業許可や深夜酒類提供飲食店営業開始届の取得など、さまざまな許認可等などが必要になることがあります。これらの許認可などは、融資後に提出してもよい場合が多いですが、事前に取得準備を進めておきましょう。
7)開業前か開業後3カ月以内に申請する
新規開業資金は、開業前か開業後3カ月以内に申請するのが最適です。開業後長期間経つと、実績を重視されるため、審査のハードルが高くなります。
6.事業計画書の作成なら「DREAM GATE」
当記事では、飲食店の新規開業資金について解説しました。新規開業資金は、飲食店を開業するにあたって、非常に有効な資金調達方法です。当記事を参考にして、ぜひ新規開業資金の利用を検討してみてください。
融資の申込みには事業計画書(創業計画書)の作成が不可欠で、はじめての方にとっては、非常に大変な作業になります。
そこで最後に、事業計画書の作成に役立つツールをご紹介します。「DREAM GATE(ドリームゲート)」の事業計画書作成ツールは、無料で利用できる作成支援ツールです。飲食店を含む11業種に対応しており、ブラウザ操作だけでかんたんに事業計画書を作れます。
作成した事業計画書は、Excelファイルなどでダウンロードできるので、修正もかんたんです。無料で使えるので、まずは試してみましょう。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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