日本公庫の融資に落ちた!今からでも間に合う対処法と原因
日本政策金融公庫の創業融資については「審査に通りやすい」「ほとんどの人が融資を受けられている」とお考えの方もいるようです。
しかし、日本公庫の融資はそんなにかんたんなものではありません。
じっさいには約半数近くの人が審査に落ちているともいわれています。
たしかに日本公庫の融資は創業者に配慮しているため、通常よりもかんたんな手続きや有利な条件で利用できます。
しかし、イコール審査が緩いということではありません。
そのため、しっかりと対策をしないと融資が否決される可能性もあります。
当記事では、日本政策金融公庫融資の審査に落ちる原因と具体的な対策について解説します。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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融資審査に落ちる確率は5割!?審査落ちする5つの原因
日本政策金融公庫の融資の審査通過率について正式に公表された資料はありません。しかし、利用者からの聞き取りによれば約50~60%程度が通過率とされています。
つまり、約半数の方が審査に落ちている計算となります。失敗の原因としては以下のものが考えられます。
原因1.自己資金不足
日本政策金融公庫の創業者支援制度である「新創業融資制度」では融資希望額の1/10の自己資金要件がありましたが、2024年4月1日よりはじまった新しい「新規開業資金」を利用する場合には自己資金要件がなくなりました。
しかし、自己資金がゼロで融資を受けられると考えるのはキケンです。
一般的には、じっさいの融資金額は総投資額の約70〜80%が限度とされてきています。そのため、仮に創業に必要な金額が1,000万円であれば必要な自己資金額は100万円ではなく、200~300万円用意するほうがよいでしょう。融資金額は、差額の700万円〜800万円とするのが妥当です。
また、日本公庫側でもその事業のためにどれだけ資金を貯める努力をしたかを重視しています。この点からも自己資金が多いほど審査にとおりやすいといえるでしょう。
ただし、自己資金の確認は過去6カ月以上にさかのぼり、通帳のお金の出入りを確認しておこなわれます。それまでに貯めた経緯を通帳の内容で説明できるようにしておくことが重要です。
参考:
創業融資の審査で落ちる7つの理由【元日本公庫融資課長が監修】
原因2.信用情報に問題がある
日本公庫ではCICなど個人信用情報を通じて、申込人の信用情報を確認しており、このことは借入申込書の注意書きにもしっかりと明記されています。そのため、信用情報に債務の遅延情報や破産情報などが登録されている場合には、融資が否決される可能性が高くなります。
また、日本公庫では公共料金や家賃、税金、クレジットローンなどの定期的に支払うべき債務の滞納や遅延についても厳しくチェックしています。
一般的に過去6カ月~1年以内に複数回の支払の遅れや未納がある場合には、融資を受けることが非常に困難となります。なかには、支払いが1回遅れただけで融資が否決されたケースもあるため、事前にこのような履歴をつくらないよう注意してください。
参考:
個人の信用情報が原因で、融資を断られることはありますか? | 起業・会社設立ならドリームゲート
原因3.事業の内容や計画に問題がある
新規開業資金を利用する際には、必ず創業計画書を提出する必要があり、その内容は融資審査に大きな影響を及ぼします。したがって、内容が実現性のないものであったり、根拠の弱いものであったりする場合は、融資の否決や減額につながります。
一般的に創業計画書については、以下の3点を満たしていることが必要です。
・計画の内容(とくに売上と返済利益)が実現可能性の高いものとなっていること
・計画の内容を裏付ける根拠や資料が明確になっていること
・前後の記載を通じて内容や金額などに整合性があること
たとえば、事業計画書では「開業の翌月から1,000万円の売上と100万円の利益を達成する」となっているとします。しかし、その根拠が「できるまで頑張る」や「SNSで知り合いにアプローチする」では根拠のある計画はいえません。日本公庫に信用してもらうためには「どのくらいの人数にアプローチするのか?」、「その結果、何人に購入してもらえる見込なのか?」、「実現のために具体的に何をするのか?」ということが明確になっている必要があります。
ドリームゲートでは、事業計画書の作成に役立つサポートツールを無料で提供しています。
かんたんな操作で質の高い計画を作成することができるため、もし、事業計画書の作成や根拠づくりが難しいという場合には、お気軽にご利用ください。
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原因4.開業予定の事業に精通していない
以上のほかに、創業融資の審査で重視される項目があります。
それは「開業予定の事業に関する経験」です。これは「斯業(しぎょう)経験」とも呼ばれます。以前の日本公庫の創業融資では6年以上の経験が条件とされていました。
この点は現在緩和され、表面上は経験年数が問われなくなっています。しかし、「斯業経験がどの程度あるのか?」や「どのような業務をおこなってきたのか?」は審査の重点項目となっています。
具体的にどの程度の経験年数があればよいのかについては明らかにされていませんが、3年程度の年数があった方がよいでしょう。
また、「その期間のなかでどのような業務に携わっていたのか?」、「どのような実績があるのか?」もポイントとなります。
飲食店であれば、「調理や接客の経験とスキルがある」というのは当然ですが、それだけでは足りません。そのほかにも経営で必要となる仕入管理や、資金管理に関する経験などもあった方が有利となります。
もし、十分な斯業経験がない場合には、「融資申込みまでにさらに経験を積む」、「経験豊富な従業員を雇う」、「フランチャイズに加盟して開業する」などで対応することも検討しましょう。
原因5.過剰な融資希望額
日本公庫の融資審査の確率を高めるには、以下の2点に注意する必要があります。
・申込額が過大でないこと
・利益で返済できる金額であること
前述したように、日本公庫で融資が承認されやすい金額の目安は「総投資額の70〜80%程度」とされています。この目安を大きく超えてしまう場合には、日本公庫に融資頼みの事業と捉えられやすくなってしまうでしょう。それだけでなく、計画を作成するうえでも返済を賄うだけの売上や利益を生み出すのが難しくなります。
利益については、借入額に応じた返済ができるだけの額(返済可能利益)を確保できる必要があります。返済可能利益は次の計算式で算定することができます。
「返済可能利益=経常利益∔減価償却費」
※個人事業の場合は経常利益ではなく、すべての経費を支払った残りの額となります。
たとえば事業計画書上での経常利益が10万円/月、減価償却費/5万円の場合を想定してみましょう。返済可能利益は15万円/月となるため、仮に5年で返済する計画の場合は15万円×12カ月×5年=900万円となります。
ただし、この場合は減価償却期間が5年以上で、毎月5万円の償却ができる設備があることが条件となります。
参考リンク
日本政策金融公庫の融資はいくらまで借りられる?!自己資金と融資額の目安も紹介
審査に落ちたらやるべき3つのこと
融資審査に失敗したときに、何の反省や対策も考えないのでは、次回の融資でも同じ結果となってしまいます。そうならないためにも、融資に失敗したときには以下の3点に注意して次回に向けた対策をすることが重要です。
①失敗の原因を明確にし再審査の準備をする
融資に失敗しても、明確な理由を教えてもらえるとは限りません。そのため、何が問題だったのかを自分で考える必要があります。
失敗の原因としては、自己資金不足・信用情報に問題がある・事業計画の内容が不充分などが考えられます。しかし、複数の原因が混在している場合もあります。
審査に落ちた本人では、失敗の原因を冷静かつ客観的に分析することが難しい場合もあります。もし、自分だけで原因がわからないという場合には専門家に相談して原因の究明や対策を立てることをおすすめします。
なお、専門家に相談する際には借入申込書や事業計画書、通帳を準備するとともに、面談でどのような受け答えをしたのかや信用情報の状況などを隠さず伝えるようにしましょう。
②半年以上あけて再審査に申込む
一般的に、融資に失敗した後の再申込みには半年程度の期間をあけた方がよいとされています。また、時間的な余裕があるのであれば、1年以上期間をおくのが好ましいでしょう。
このように期間をあける理由としては、「短期間での申込みでは否決の原因となった問題が十分に解決できていないため」ということが大きくなっています。また、日本公庫の側でもそのような目で見ている可能性が高いといえます。
つまり、再申込みをする際にはある程度の期間をあけることも大切ですが、それ以上にその期間のなかで問題が解決できているかが重要となります。
③ほかの金融機関の融資を検討する
日本政策金融公庫の融資に落ちた場合でも、自治体の制度融資を利用することは可能です。
日本公庫と信用保証協会では、申込みや審査に関する情報の交換がないため、日本公庫の申込みに失敗した場合でも、それが制度融資に影響することはありません。
しかし、制度融資においても審査のポイントは日本公庫とほぼ同様となります。日本公庫での失敗の原因を解消せずに申込んだ場合には、同じ結果となる可能性が高いことに注意する必要があります。
参考リンク:
創業融資における信用保証協会の役割とは?|資金調達のプロが公庫と徹底比較
審査通過のための5つの対策
以下の対策をおこなうことで、日本公庫の融資審査を通過する確率を高めることができます。
対策1.自己資金比率を上げる
自己資金の割合が多いほど少ない借入額で済ますことが可能です。それだけでなく、融資審査でも有利となるため大きな額の融資が可能となります。
なお、家族や親族から贈与された資金、相続や退職金で得た資金、融資前に事業のために支出した資金などは自己資金となります。しかし、タンス預金や見せ金、ほかからの借入金、親から借りた資金などは自己資金にならないため、その出どころがわかる形で自己資金を準備する必要があります。
対策2.面談の準備をしっかりとする
日本公庫の創業融資では必ず担当者との面談がおこなわれます。このときの受け答えや、説明の仕方が悪いと融資の審査に影響することになります。
面談は事業計画書の内容や通帳の履歴に沿っておこなわれます。しかし、計画に書いてある基本的なことが答えられない、通帳に記載された資金のなかに不審なものがあるといった場合は大きな減点の対象となってしまいます。事業のビジョンや起業の動機、売り上げの根拠や数値の説明などを事業計画書にもとづきながら説明できるようにしておきましょう。
参考リンク:
創業融資の面談を成功させる準備とは?よくある8つの質問と回答例
対策3.根拠のある事業計画書を作成する
事業計画書はさまざまな項目について記載しますが、そのすべてについて明確な根拠が示されている必要があります。
たとえば売上については、「過去の勤務時の経験から〇〇円程度を見込んでいる」などのあいまいなものでは足りません。「単価〇円の商品を〇人に販売する。その際の集客はチラシ〇枚の配布により〇人、専門雑誌への広告掲載により〇人、以前の勤務先の顧客〇人へのアプローチにより〇人、ネットによる広告により〇人を予定しており、集客率(コンバージョン)としては各2%を見込んでいる」などのようにそれぞれの根拠を明らかにして数字を積み上げることが必要です。
参考リンク:
事業計画書の書き方、作成例、テンプレを解説【元日本公庫融資課長監修】 | 起業・会社設立ならドリームゲート
対策4.担保や経営者保証を提供する
日本公庫の新規開業資金は、無担保無保証の制度です。そのため、基本的に担保や保証人は不要ですが、代表者が連帯保証人となる場合には、金利が0.1%低くなります。金利を低くしたい場合には検討してみてもよいでしょう。
なお、金額にもよりますが通常の金融機関からのプロパー融資を利用する場合には、原則、担保や経営者保証が必要となります。利用を考えている場合には、担保・経営者保証を検討しておく必要があります。
対策5.専門家のサポートを受ける
融資はかなり特殊な手続きです。些細に思えることでも、「知らなかった」や「勘違いしてた」ということは通用しません。
融資申込前に家賃や公共料金の支払いに遅れがあるだけで融資が否決される場合もあります。また、法人で開業する際に物件の契約名義が個人のままでは問題となるなど、専門家や経験者でなければわからないことも多くあります。
事業計画書において、借入金に見合う利益がしっかりと確保できているかなども見落としがちな点のため注意しましょう。
このように融資では普通であれば問題とならない点が重要となることが少なくありません。「この程度は大丈夫だろう」と安易に考えず、経験豊富な専門家のアドバイスを受けることが成功の鍵となります。
融資担当者の判断基準はどこにある?
日本公庫の創業融資における審査官のチェックポイントや判断基準を理解しておくことで、よりよい事業計画書の作成や面談での対応が可能となります。
事業計画
創業融資において、もっとも重要な資料となるのが「事業計画書(創業計画書)」です。
事業計画の作成では、記載項目をただ埋めるだけでなく、日本公庫の担当者が「この人に貸したい」と思わせる計画をつくれるかどうかがポイントとなります。
とくに「事業計画書の内容に実現性がある」、「実現性を裏付ける根拠が示されている」、「前後の内容や説明に矛盾がない」ことは非常に大切です。これらは計画作成をおこなううえで、必ず守るべきものとなります。
ドリームゲートでは、WEB上で事業計画書の作成がかんたんにできるサポートツールを無料で提供しています。また、計画の作成だけでなく、関連業種との比較・分析もおこなえるため、根拠のある計画作りをすることが可能です。
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返済能力
融資の返済が可能な計画となっているかは、事業計画書のなかでもとくに重要な項目となります。
通常は「経常利益∔減価償却費」の合計が返済額を上回っているかで判断されます。しかし、常に収支が黒字の計画となっている必要はありません。
たとえば、毎月の返済額が10万円のケースで、開業開始月の収支が30万円の赤字であったとします。このケースでは、その時点で50万円の現預金(返済キャッシュ)があれば問題なく返済できることとなります。
しかし、同じケースで返済キャッシュが5万円しかない月が存在する場合には、その月の返済ができないことになります。このような事業計画書は、評価されないことに注意しておきましょう。
返済能力を判断する際には、その月の収支が黒字か赤字かということよりも、返済できるキャッシュがあるのかどうかが重要となります。最低でもキャッシュ不足とならないような計画をつくることが大切です。
自己資金
前述のとおり、日本公庫の新規開業資金を利用するには自己資金の要件はありません。
しかし、じっさいに借りられる金額は総投資額の70〜80%程度ということが多くなっています。このことから考えると、自己資金が多いほど大きな額の融資を利用しやすくなるといえるでしょう。
また、自己資金は事業のためにどの程度努力して準備してきたかを見る指標ともなります。長期にわたってコツコツと貯めてきた資金については、高く評価してもらうことが可能です。
事業計画書は審査通過のカギ
日本公庫の創業融資では、事業計画書の作成・提出は必須の条件です。また、その内容についても審査の結果に大きく影響します。
事業計画書の内容は「創業の動機」、「過去の経歴や資格」、「取引先や取引条件」、「必要資金の集め方と使い方」、「今後の収支の見込み」から構成されます。とくに収支部分の売上については「実現可能性・根拠・整合性」の3点を満たしているかどうかがポイントとなります。
しかし、はじめて事業計画書をつくる方には、これらすべてを満たす計画をつくるのが難しいことも少なくないでしょう。そのため、計画の作成に悩む場合には、適切にフォーマットされたツールを使うことをおすすめします。
ドリームゲートでは、もれのない計画をつくれるサポートツールを無料で提供しています。WEB上のかんたんな操作で利用できるだけでなく、関連業種との比較・分析も同時にできるため、緻密で根拠にもとづいた計画作りをすることができます。
↓創業融資が可否になる理由について、上野氏のYouTubeで解説しています。
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