ユーザーのモバイルデバイスを素敵に変身させるアクセサリー販売でヒット商品を続々リリース!取り扱いアイテムは1000点以上。オンリーワン商品でV字回復した経営改革とは。

公開日: 2015/03/30  最終更新日: 2019/11/22

株式会社INNOVA GLOBAL

代表取締役 藤嶋 京子 fujishima kyoko

事業内容 モバイルデバイス用アクセサリーの輸入販売業
所在地 東京都港区
事業計画書の安全率 3.02
(1380位/1万位中)

上記の安全率は取材時に伺った数値をもとに事務局にて試算したものだ。小売業で健全企業の平均安全率は1.76だが、それよりずっと高い数字になっているが、そのポイントは2つ。1つは原価率の低さによる粗利益率の高さと、もう一つはデザイン制作などの受託仕事の利益が大きい事。それにより創業初期のキャッシュフローがとてもよく高い安全率を実現している。原価率を抑えて、かつ複数のビジネスを持つことでリスクヘッジするなどは健全経営のコツとも言えるだろう。

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冒頭

無機質なモバイル端末や周辺機器を愛着あるものに変える、高いファッション性とデザイン性を備えたアクセサリーを販売する株式会社INNOVA GLOBAL。2006年に、輸入雑貨販売を事業内容としてスタートした同社。業界に先駆けて、ファッショナブルなスマホ関連アクセサリーを日本に持ち込んだ企業だ。

自社ECサイト「Idea4Living」でヒット商品を続々リリース。楽天市場では当該カテゴリーランキングの上位30位のうち、20商品を同社が占めるといった快進撃で業界内に知られるようになり、2010年には全国の携帯キャリアショップや家電量販店などへの卸売業もスタート。現在、卸売・小売ともに急成長を続けている。しかし、ここまでの道のりは、決して順風満帆ではなかった。今回は同社の代表取締役である藤嶋京子氏に、起業から現在までのお話を伺った。

1:事業内容
「スマホ×ファッション』のパイオニア! 世界中から“面白い”、“オシャレ”なものを集め、ユーザーへお届け!

2006年に起業し、2014年の9月で10期目を迎えます。現在の主な事業は、海外メーカーのスマホやタブレットなどのケースや衝撃吸収フィルム、充電池やケーブルをはじめとしたモバイル端末周辺機器アクセサリーの卸売小売業です。もともとは、輸入雑貨の小売業からスタートしましたが、2008年からiPhoneケースの専門店を目指し、現在のラインナップに特化しました。全国各地の家電量販店や大型雑貨店、キャリアショップなどへの卸売、また、楽天市場、Yahoo Shopping、Amazon JAPANなどECモールでの通販も行っています。デパートから「スマホアクセサリーは新しい取り組みなのでぜひお店を開いてほしい」との依頼を受け、伊勢丹、東急百貨店、小田急百貨店で期間限定ショップも運営して参りました。

モバイル端末が生活の必需品として定着した現代、当社の扱う商品の特徴は、ユーザー各人のアイデンティティとなるようなアクセサリーであること。例えば、iPhone専用ケースでいうと、iPhone3が発売された2008年当時、ケースはまだ端末を保護するだけの役割で、ユーザーのセンスやこだわりにフィットするデザイン性を追求したものはありませんでした。“洋服を着替えるようにiPhoneも着替えよう”という発想で「iPhoneブティック」を提案しました。スマホユーザーが急増する中で、この分野は爆発的に普及していくと確信し、取扱商品の方向性を定めました。

事実、iPhone4の発売を期に、iPhoneはファッション雑誌などでも大体的に取り上げられ、オシャレに敏感な女性の間に急速に浸透していきました。このようなトレンドを受けて、ケース以外にも、なかなかファッション性を帯びたものがなかったUSBケーブルやバッテリーなどの周辺機器に対しても、コーディネートの一部として活用できるラインアップを充実させてきました。現在では、欧米、アジア限らず、世界中のメーカー、30社以上から輸入していて、iPhone、Androidの色柄別を含めればケースは数百種類、周辺機器を併せれば1000点以上のアクセサリーを取り扱っています。

今期の商品コンセプトは、「モバイル端末とファッションの親和性の追求」です。例えば、アメリカと台湾で展開しているMohzy(モージー)というメーカーのクラッチバッグ型のPC/タブレットバッグとMicro USBケーブルがありますが、タブレットバッグとして今までに見た事のないくらいゴージャスで、普段のクラッチバッグとしても活用できるファッション性を持ち合わせています。そして、USBケーブルは、編み込みがオシャレなのですが、それだけではなく、実は一点一点がハンドメイドなんです。無機質なモバイル端末や周辺機器だからこそ、より愛着を感じていただけるように、高いファッション性やデザイン性を持つアクセサリーが必要だと考えています。

今後も引き続き、世界中のメーカーから、ユーザーのさまざまなライフシーンにマッチし長く愛用していただける、また、オンリーワンのラインナップ充実を図っていきます。また、デジタルデバイスの領域は今後、「Google Glass」に代表されるウェアラブル端末に確実にシフトしていきます。例えば、フィットネス系アプリとウェアラブル端末を連携させるエコシステムが拡大され始めています。各データをシェアできるようになるため、より快適に健康管理ができるSFのような世の中になっていきます。各業界と共創し、これからも、ユーザーのニーズに応えられる商品を提供していきたいですね。

このような事業を展開してきたのは、私自身、世の女性たちと同様にファッションが大好きだからです。世界中にある “面白い”や“オシャレ”なものを集めたいというのが、ビジネスアイデアになりました。

2:創業のプロセス
名古屋の国際交流会での出会いが起業へとつながる転機へ。

昔から起業に対して強い意志は持っていたわけではありません。ただ、学生の頃から自分の力で何かをしたいという思いは強かったと思います。起業に関しては、出会いが大きいですね。私はもともとデザイナーとして働いていて、自動車メーカーで車のボディカラーや内装のテキスタイルを担当していました。仕事はやりがいがあり、充実した日々でしたが、しだいにグローバルな活動をしたいと考えるようになり、職を辞して新たな活動の場を求めました。その後、幅広い視野を培えるようマーケティング会社に転職したのですが、この時期に転機となる出会いが訪れます。それが、共同経営者であり、現在、当社の会長を務めるマイケル・チャン氏との出会いです。

当時、マイケル氏は大手通信キャリアのビジネス推進部で働いていましたが、私同様、グローバル・スケールでの活動を将来の目標に据えていました。そこで、意気投合し、ビジネスアイデアを話し合ったというのが、起業のきっかけです。この出会いの後、私たちのビジョンに賛同してくれる2名のパートナーも加わりました。1人はシステムエンジニアで、もう1人はカスタマサポートの専門家。いつの間にか素晴らしいスタートアップ・チームが生まれていました。

「ITを活用し世界をつなぎ、グローバルチームで流通革命を起こしたい。」が、私達の創業理念でした。私達は「自分たちは何ができるか」話し合い、役割分担をして目標を決め、出来る事から始めました。

そうして、2006年、すべての準備が整い、いよいよ起業を決意しました。各自の貯蓄から250万円を資本金にあてて、会社を設立。地元の名古屋での創業でした。

創業して数カ月間はデザイン制作や翻訳の委託などで売上をつくってランニングコストを賄いながら、自社事業である輸入雑貨の小売業の準備を進めました。そうして、2007年1月に楽天市場に「Idea4Living」を開店。当時は、iPod/iPod nanoケースなども扱っていましたが、輸入雑貨や家電などが中心でした。

事業は思いのほかスムーズに立ち上がりました。1年目の年商は2000万円強、2年目は3倍増となり、数字的には好調でした。そして、3年目の2008年にiPhone3Gが発売されました。翌年、会社を東京に移転しました。

移転後、楽天市場のアクセサリーカテゴリのランキングでは、30位中に当社の扱う商品が20商品もランクインしたことがあります。これがソフトバンクさんの目にとまって、問合せを受けたのが卸売業のきっかけでした。2010年初頭のことですね。ここから量販店などに商品を卸す事業もスタートしました。

3:起業後に苦労したこと
事業拡大が裏目に出て苦境へ。事業計画を見直し、社内変革を断行して苦境を乗り越えた

この卸売業は当社にとってさらなる飛躍のチャンスでしたが、ここで大きな失敗がありました。一層の事業拡大を目指し、小売業と平行して、ファブレス型メーカーとしての転身を図ろうとしたことです。

これから拡大していくであろうAndroid端末アクセサリーのマーケットに先手を打って、シェアを獲得していくという大きな挑戦でした。しかし、走り出してみると私のマネジメント能力を超えてしまい、うまくはいきませんでした。

振り返れば、失敗した原因は2つ挙げられます。ひとつは「製販不一致」です。あまりにマーケットでのシェア獲得を急務としたため、営業先を拡大しながら製造を行っていたせいで、安定した納品ができませんでした。

また、あらゆるユーザーのニーズに応えるべく、多種多様なラインアップを揃えようとしたことも失敗の原因です。製造個数も機種・色柄毎に違うことから、原価計算どおりにいかず、大きな無駄が生じました。ふたつ目は「ライフサイクルの早さ」です。スマホ元年と言われた当時、端末メーカーはシェア獲得のため、四半期に一度というめまぐるしいペースで新端末を発表しました。端末が旧型となればケース類などのアクセサリーは店頭から売り場を失いました。そのタイミングが的確に掴めず、大量の返品を受けたこともありました。

当時、スタッフ数は現在(2014年6月時点)のおよそ倍。ファブレス型メーカーへの転身のために大型融資も受けていたので、非常にリスキーな状況でした。なんとか、この現況を打開するためにと、講じた3つの対策があります。それは、「経費削減」、「製品の選択と集中」、「少数精鋭の強靭な組織体制」です。

「経費削減」は、それまでのスタッフ数と役員報酬をそれぞれ40%削減、物流コストを見直し45%削減、物流サービスの効率化では新システムを導入し30%削減しました。

「製品の選択と集中」は、扱う商品を見直し取捨選択。もっともイノベーティブなものだけを選び、徹底的なマーケティングと販売強化を行って、前年比130%の売り上げを達成しました。

最後の「少数精鋭の強靭な組織体制」は、社内のコミュニケーションを密にしながら、個々のスタッフの専門性を磨くことに力を入れました。

この経営変革にかかった時間は約1年間。創業以来、当社における最大の取り組みになりましたが、これが奏功し、再び事業を軌道に乗せることができました。その後は、卸売業・小売業ともに順調に拡大しています。

開業から現在までを振り返って改めて実感することは、「着実に無理のない事業を」ということですね。当社の当面の年商目標としては、10億円を掲げています。数年以内には実現したいと考えていますが、しっかりと入念な計画を立て、達成を目指していきたいです。

事業計画といえば、開業計画NAVIの事業計画書ツールは、簡単に経費や利益のシミュレーションができるのが便利ですね。私は起業後にビジネススクール等で経営を学びましたが、難しい経営理論や会計の知識はさておき、まずは簡単に数値の感覚をつかめるというのはいい訓練になると思います。

ちなみに私が財務計画において参考にした書籍は下記のとおりです。経営に困るといつも原点に立ち戻る気持ちで、こうした本を紐解きます。

参考にしている書籍
ドラッカーの『経営者の条件』、『想像する経営者』、『星野リゾートの教科書』、『バランス・スコアカード活用の経営指導法』、『ざっくりわかるファイナンス』

4:お金に関する考え方
自ら会計を学ぶことは、お金の動きを体感し、社の隅々を把握することにつながる。

創業当初、信用金庫から保証協会の保証付で300万円、2年目には250万円、4年目に800万円、5年目に1500万円の融資を受けています。

最初の融資は仕入れなどが目的ですが、2年目と4年目の融資については専門家によるアドバイスによるものでした。銀行に勤めている友人が創業時から資産表など財務まわりをチェックしてくれていて、「そろそろ、金融機関の実績を築いたほうがよいのでは」と、アドバイスをもらい実行しました。そうして金融機関への実績と信頼を築くことができ、徐々にレバレッジを効かせられるようになっていきました。

会計については、6期目から会計事務所の先生に記帳を委託させていただいていますが、5期目までは、私が会計ソフトを使用して処理していました。

最初は、「経理と財務との違い」、「決算書の読み方」、「貸方や借方の概念」などを、理解するのに時間はかかりましたが、『ゼロから始める経理の本』という書籍から学び始め、会計事務所の先生のご指導を賜りながら、着実に会計業務やキャッシュフロー計画をこなせるようになってきました。

この期間は、とても貴重な時間だったと感じています。それは、お金の動きを自ら体感でき、隅々まで社のことを把握できるようになっていったからです。財務計画をつくるのも、そういった基礎を把握し、初めて可能になるものです。当初は、多くの商品を流通させたいがため、現金ギリギリまで仕入れを行ってしまい、万が一の事態に備えておいた私個人の定期預金を、泣く泣く解約したこともありましたが、このような失敗をしながら“自計”を学んだことは、現在の当社の礎になっています。

5:これから起業する方へのメッセージ
チャレンジ精神だけではなく、それを支える入念な計画がビジネスと会社を大きくする。

先日、読んで感銘を受けた書籍からの引用となりますが、まず、“やってみたい“、“好きだから”という気持ちで起業することは素晴らしいことです。しかし、経営者には、その気持ち以上にどのような会社を目指していくか? ということが重要になります。

ですから、ビジネスアイデアを固めると同時に、会社として強固な体制を築けるような取り組みも、早い時期にしっかりと行ってもらいたいと思います。経営者となれば、事業経営のみではなく、リーダーとしてのマネジメント力など、会社を成長させるため、非常に多くの能力が求められます。

それは、会社が大きくなればなるほど大きなウェイトを占めますし、事業をスムーズに拡大させるためにも不可欠なことです。究極をいえば、「経営者不在でも成り立つ会社」ということでしょうか。優良企業を目指して、小さな成功を積み重ね、前に進むことが、大きく飛躍していく鍵になると確信しています。