大手不動産会社から起業し、57万件の物件情報、10万件の口コミが集まるサービスに成長。住まい分野でナンバーワンのWebサービスを!

公開日: 2015/03/30  最終更新日: 2019/11/22

株式会社グルーヴ・アール

代表 川島 直也 kawashima Naoya

事業内容 不動産メディアサービス企画、立案、運営
所在地 東京都渋谷区
事業計画書の安全率 9.76
(383位/1万位中)
ギャップ率 10.0

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冒頭

大手不動産会社の社員だった川島直也氏と仲根臣之介氏が2009年9月に起業した株式会社グルーヴ・アール。同社は、不動産に特化したWebサイト構築やマーケティング、マンションの情報サイト「MANSION REVIEW」、不動産一括査定サイト「家いくら?」などを運営するベンチャーだ。
創業準備に1年もの期間をかけ、メイン事業である「MANSION REVIEW」の立ち上げに際しては、実に7万枚もの物件写真を撮影したという。そして現在創業から4年目を迎え、「MANSION REVIEW」に掲載されている物件情報は57万件、口コミ10万件以上で、月間ユニークユーザー30万超という規模に成長している。今回は同社の代表を務める川島氏に、事業計画をテーマとしたお話しを伺った。

1:事業内容
会社員時代にお客様から聞いた不動産にまつわる不便さ、情報の少なさを解消すべく起業。

当社は、私、川島と仲根が一緒に設立したベンチャーで、起業前は2人とも三井不動産リアルティという不動会社に勤務していました。現在はマンション情報サイト「MANSION REVIEW」、不動産売却時の一括査定サイト「家いくら?」、不動産会社に特化したWebサイト作成などを行っており、不動産ポータルサイトや不動産会社が主なクライアントとなっています。

メイン事業である「MANSION REVIEW」は、マンションとアパートの情報サイトです。住んでみないとわからないような居住者の口コミ情報、不動産会社しか取得できなかった取引相場情報等のこれまで取得できなかった不動産情報を一般ユーザーに提供することで、住み替えのミスマッチをなくし、不動産会社とユーザーの距離を縮めることを目的としています。

例えば、3000万円という価格で売られている中古マンションがあったとして、それが過去にいくらで取引されたかがわかれば、現在の価格が妥当かどうか判断しやすくなりますよね。こうした情報は不動産業者間でしかやり取りされていなかったのですが、「MANSION REVIEW」で、独自に情報を収集、データベース化し、価格履歴表として公開しています。

人生でもっとも高価な買い物といわれる不動産ですから、消費者はどんな細かな情報も知りたいと思っているものの、現状の不動産に関する情報は、ほとんどが供給サイドからの一元的な情報なのです。「お隣さんはどういう人なのか?」、「耐震はどうなっているのだろう?」など、気になる点があったとしても、なかなかそのような情報を得る手段・サービスはありませんでした。

不動産会社で働いている時、お客様が希望物件に住む住民たちの口コミ情報を知りたがっていることを強く感じてました。また、インターネットの発展により、さまざまな情報をユーザー同士が共有する文化が当たり前になってきました。不動産に関してもそうした口コミ情報が簡単に取得できるようになれば、不動産取引がより納得のできるものになり、ひいては不動産事業がより活性化し、ユーザーと不動産会社のwin-winの関係をサポートできる。そう考え始めたのが、起業のキッカケです。

2014年3月に、不動産・住宅情報サイト「HOME’S』を運営する株式会社ネクストさんと事業提携を締結しました。「MANSION REVIEW」のユーザーに向けて、「HOME’S」の売買物件・賃貸物件の情報を提供。この提携により、ユーザーに提供出来る情報の幅が広がりました。

今後は、住まいに関するWebサービス、情報量ナンバーワンのWebサービス会社を目指し、地域情報やインテリア情報など、「住まい」とつながってがっていく事業領域をカバーしていきたいですね。

2:創業プロセス・苦労したこと
自己資金の590万円でスタートするが、1年待たずに運転資金が枯渇。日本政策金融公庫や制度融資を活用して危機を乗り切る。

大学時代から起業したいと思っていました。起業に関しては不安よりも、チャレンジすることへのワクワク感のほうが大きかったですね。仲の良かった同期の仲根に「起業したい」と相談を持ちかけると、彼も二つ返事で「やろう」といってくれました。

とはいっても、不動産販売ではなく、Webメディア運営のビジネスを考えていたので、いろいろ勉強することもあるだろうと判断。1年の起業準備期間を設けることを決めました。

最初の事業計画書は1カ月ほどをかけ、10ページくらいのものをつくりましたね。まだ2人とも会社員ですから、勤務後とか、休日にブレストを繰り返しました。

起業前は、「MANSION REVIEW」の広告が、それなりに売れるだろうと想定していました。しかし、実際にスタートしてみると、非常に厳しいことがわかりました。一般的に不動産会社の広告に対する費用対効果は、資料請求数・問い合わせ数で判断します。例えば、賃貸だと月家賃の3~4パーセント位が問い合わせ1件辺りの広告費の相場です。仮に10万円の部屋だと4000円くらいですね。

一方、新築マンションだと販売価格の0.01~0.05パーセントになります。しかし、この資料請求を集めるために必要なユーザー数がシビアで、相当のメディアパワーがないと難しいことがわかりました。起業前に立てた計画では、1年目の売り上げは2000万円を予測していたのですが、ふたを開けてみると、計画値に対しての達成度は10% 以下でした。

もう1つの失敗は、サービスのリリースが遅れたことです。起業してから「MANSION REVIEW」が立ち上がるまで、7カ月ほどかかってしまった。そして、立ち上げ後すぐに営業に走ったのですが、当初はまったく広告が売れずに口座残高が底をつきかけました。

スタートアップ資金は2人の貯蓄を合わせて590万円。最初に借りたオフィスの家賃は6万円で、それ以外の光熱費やサーバ代などを合わせても月10万円もあれば会社は維持できたのですが、それでも会社の銀行口座の残高が10万円を切るところまでいきました。

そこで、新しい収益源として不動産会社向けにホームページ制作の受託営業を始めました。これが着実な売り上げにつながったのです。

また、ホームページ受託の受注実績を担保に、自治体の制度融資や日本政策金融公庫などから借り入れをして、新たに680万円の運転資金を確保。これでなんとか資金ショートを防いで乗り切りました。

先述のとおり、1年目は大赤字でしたが、3年目には年商2500万円となり、黒字転換しました。2014年は5期目となるのですが、今のところ収支はトントンというところでしょうか。

3:お金に関する考え方
会計ソフトを活用しながら自分で帳簿付け。

会計に関しては、開業時から弥生会計を利用しています。弥生会計を選んだのは、その時に相談していた税理士さんから勧められたからですね。

基本的にインターネットビジネスは仕入れなどがないので、仕訳項目もさほど多くない。記帳代行を税理士さんなどに依頼するくらいなら、自分でやったほうが節約になると考えて、当時は会計ソフトを使って自分達で行い、決算処理だけ税理士さんにお願いしていました。

当然、自分たちで会計処理をしているので、経営上の数値予測は2カ月くらい先までは見えていました。キャッシュフローは把握できていますから、あと何カ月でショートするかはわかっていました。なので、自社サービスでの広告売り上げが見込めないと判断して、すぐ別の売り上げ創出や資金調達に動けたのです。起業して9カ月目頃が一番厳しかったのを覚えています。この時です、残高が10万くらいしかなかったのは(笑)。

借り入れを申し込んでも、お金が入金されるのはかなり先なので、その当時の資金繰りは本当に綱渡りでしたね。資金繰りのために自分たちの給与は後払いにしたことも。25日が給与日だったのですが、売り上げが月末に入ってくるので、末日にせざるを得なかったのです。

それでも、ホームページの受託制作による売り上げ余力ができてきたので、その余力を「MANSION REVIEW」のコンテンツ制作費や自社サイトの宣伝広告費などに投資してサービスを育ててきました。今では、「MANSION REVIEW」の運営が事業の主力になっています。

4:これから起業する方へのメッセージ
やってからわかることのほうがはるかに多い。チャレンジするなら早いうちに。

先日、「HOME’S」さんとの事業提携がスタートしましたが、今後もそうしたコラボレーションを進めていきたいと考えています。また、ほかのメディアと記事やコンテンツを相互提供する取組もしています。ドリームゲートさんで取材されたあるベンチャーさんなどとも、そうした取り組みを水面下で進めています。

まだまだこれからの弊社のような会社が言うのは、おこがましいのですが、これから起業したいという方には、「まずはやってみることが一番の近道」と言いたいです。やってからわかることのほうがはるかに多いですから、面白いと思えることがあれば、ぜひチャレンジしてください。悩むよりも、一歩踏み出してみることが大事だと思います。

起業するということは、世間が思っているより、リスクは小さいと思います。日本は豊かな国ですし、起業支援サービスもたくさんあるので、起業は生きるか死ぬかということではないです。ただ、年齢が高くなって家族などができると、経済的なリスクが高まりますから、起業したいと考えているのなら、身軽な若いうちに、始めたほうがいいと思います。