赤字の居酒屋を再生。開業費用をかけずにビジネス拡大。

公開日: 2015/03/30  最終更新日: 2019/11/22

株式会社Asoviva

代表 仲本 悠太

事業内容 飲食店の経営、コスト削減コンサルティング
所在地 東京都台東区
事業計画書の安全率 5.70
(735位/1万位中)

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冒頭

もともと上場企業のFC会社で事業企画などをやっていた仲本氏。30才で退職した後、知人の起業を手伝ったりシンガポールでキャラクタービジネスに関わったりとユニークな経歴の持ち主だ。2011年9月に起業し、現在は2店舗の経営している。赤字店舗を譲り受け再生するという手法で起業した仲本氏に、儲かる飲食店経営の秘訣を伺ってきた。

1:当社の事業内容
赤字の居酒屋をそのまま引き継いで経営。徹底的な経営改善で黒字店舗に再生。

末広町(秋葉原)と武蔵新城のある居酒屋を経営しています。末広町は20坪で38席。武蔵新城は33坪で75席という大きな店です。元々大手居酒屋チェーンが直営していた店ですが、赤字で手放したいという話しがあり、私が引き取って立て直しました。こうした話しは表には出てないので、FCの仕組みとは少し違うのですが、保証金などの費用だけで店の経営権を譲り受けました。一店舗あたり、700万円ぐらいです。この規模の店をゼロから立ち上げるとなると、規模にもよりますが物件取得費混みで、スケルトンで2000万、居抜きでやるとしても1000万はかかるところを、その半額以下の投資で済みました。

実は大手チェーンなどでも赤字で困っている店を抱えているところは多いと思います。大手といえども、優秀な人材は常に不足しています。そうした店を再生させるというのはビジネスチャンスだと思っています。

赤字店を再生させるといっても魔法のようなことはしていません。まずは、徹底的に店の状態を分析します。特にお客様から不満がでないように作り変えます。スタッフの意識改革ですね。お客様が入店したらすぐ声をかける、待たせない、料理の時間がかかる場合はちゃんと事前に伝える、などです。

上手くいってない店というのは、こうした当たり前の接客が出来ていない事が多いです。これらを改善するだけでも違います。料理・商品の見直しも重要ですが、全商品を見ていくのは時間もかかり大変です。それよりも接客の改善と、提供している料理一品一品をきちんとやれているか。品質に問題があるのにそのまま出そうとすれば作り直しをさせる。こうした事を徹底させます。これも当たり前の事ですよね。飲食店の経営でポイントなのは、どんなに商品力があっても、結局は人だと思います。

こうした改善のほか、例えば光熱費を見直したりもします。細かい事ですが、使っていない照明はこまめに消す。水道も出しっぱなしにしない。飲食店では意外と光熱費がかかりますから、そうした節約は効果的です。資金に余裕があれば、LED照明などに変えるのも良いでしょう。電気代を計算すればどのくらいで元が取れるかはすぐわかりますから。

私の経営している店は、夜の営業がメインです。平日だと一回転、週末で1.5回転程度。客単価は3000円程度ですが、2店舗とも黒字です。赤字店舗を再生させるのに、3か月もあれば十分ですね。売上も条件がそろっていれば、1.5倍までもっていくことには自信があります。

2:創業プロセス・苦労したこと
自己資金800万円で開業。最初に出した店が大失敗。

もともと飲食店で働き始めて、それから店長、スーパーバイザー、最後は経営企画の仕事をしていました。転機となったのは30才。当時勤めていた会社を退職して、知人の起業を手伝ったり、シンガポールでキャラクタービジネスに関わったりしていました。

30才を前にして、なんとなく起業しようという思いがあったものの、いろいろと寄り道していた感じです。日本に戻ってきてから、仲間と一緒に何かしようという話しになって、2011年9月に起業しました。

実は最初に手掛けたビジネスは居酒屋でなく、お菓子のワゴン販売というものです。ショッピングセンターとかデパートで、1坪程度のスペースに出す形式のお店。これが失敗でした。

何が問題だったかというと、営業する場所を探すのが大変。1つの場所で1か月くらい営業して、また次の場所に移動するという事をしていたのですが、その次がなかなか決まらない。当然、営業していない期間も人件費などがかかるので、その分が赤字になります。利幅が大きい商品でもないので、稼働率の低さは致命的でした。これはすぐ見切りをつけて、3か月ほどで撤退しました。

その後、もう一つ失敗をしています。とある人からの紹介で神田にあった豆腐料理の店を引き継いだのですが、これも上手くいきませんでした。御茶ノ水駅や小川町駅など周囲に3駅もあり、オフィス街がすぐそばという立地的には申し分なかったのですが・・・。いろいろな悪条件が重なり、それが響いて遠のいた客足を回復させるのが難しかったというのが原因です。この店は時間をかけて改善していく、あるいは看板も変えて新装開店するなどすれば再生できたかもしれませんが、資金的な余裕もなくて諦めました。

あとの2店舗、末広町と武蔵新城の店は順調ですが、とにかく最初の失敗で一年目の決算は大赤字。今、2期目も半年ほどたちますが、どうにか立て直すことができ、より大きいビジネスにチャレンジしようといろいろと計画中です。

スイーツのネット販売なども実はスタートさせています。あとは飲食業のコンサルティングビジネスもしたいですね。

3:成長の軌跡
飲食業界はマクロで見ると縮小しているが、ミクロな視点、商圏単位で考えればまだまだチャンスあり。

飲食業界は市場全体でみると厳しい状況が続いています。日本の人口そのものが減っているので当然なのですが、一方、首都圏の人口は増え続けています。日本全体ではなく商圏単位でみれば、チャンスはまだまだあると思います。

都内の駅前で飲食店のないところは無いでしょう? かならず何店か営業しているはずです。つまり、お客さんはいるので、そのお客さんを自分の店に呼び込めば良いだけです。まあ、言葉で言うのは簡単ですがね。そういう気持ちを持ち続ける事が大切です。

飲食業界の経営指標で有名なものに「FL比率」というものがあります。Fはフード=材料費、Lはレイバー=人件費で、FL比率が売上に対して55~60%以内程度が良い経営の目安と言われていますが、私はこれにR=家賃を足して、FLR比率が70%以下になるようにすべきと考えています。

居酒屋にかぎっていえば、最近は低価格を売りにしているチェーン店と、ご指名でお客様が訪れるような店に二極化しています。例えば、低価格のチェーン店は駅前の一等地で、とにかくたくさんのお客さんを入れることで上手くいっています。こういった店は家賃が高いところに出しているので、人件費を削減することでバランスをとっています。例えば注文はお客様にタッチパネルの端末で行ってもらうことで人件費を極限まで下げています。ただ、こうした仕組みは大手チェーンだから出来ることでしょう。

逆にご指名でお客様が訪れるような店を作るのであれば、まずは家賃を出来るだけ低く抑えるべきでしょう。家賃が低いというのは、駅から遠かったり、地下深くやビルの高層階にあるようなところでしょう。そうした店はお客様がわざわざ足を運ぼうとしなければ、なかなか訪れる事はありません。

そのかわりに、わざわざ来てくれたお客様が感動するような料理や接客を売りにします。こうした店では、材料費は従来より高めにするのが、最近の傾向です。材料費=原材料の品質は、そのまま付加価値につながるからです。

「このお値段でこんなに豪華な料理が食べられるなんて」と言うような驚きがあれば、お客様はリピートしてくれるでしょう。居酒屋に限って言えば、中には原価率が40~50%なんて店もあります。とにかく良い料理を出すことで、お客様の支持を得て、ご指名で来店してもらえれば店は儲かるという訳です。

人件費も切り詰めないほうが良いでしょうね。人件費を極端に下げてオペレーションが回らないような状態はナンセンスです。お客様に不満を与えない最低限の体制は確保して、きちんと接客すべきです。繰り返しですが、接客がダメな店は、いくら料理が良くても上手くいかないでしょう。

あとは販促費ですが、売上の1~2%程度に抑えたいです。もっとお金をかけている店も多いでしょうが、最近はネットで調べて来客と言う方が多いので、ネットメディアを抑えておけば十分でしょう。ぐるなびとか食べログと契約して広告を出すくらいですね。

あとは光熱費が5~6%くらいでしょうか。これはどうしてもかかる経費ですが、電気代などは照明を変える、空調を新しいものにするだけでもかなり抑えられます。こうした小さい積み重ねが利益の出る店を作るためには大事ですね。

4:お金に関する考え方
自分で会計をするのは当たり前。リアルな数字の感覚を常にもっていることが大事

会計、数字に関しては自分で見ています。前職の経験から得意なので。これも繰り返しになりますが、ざっくりでもシミュレーションしておくことがとても大事です。もっとも日々の記帳や経理処理は人に任せても良いとは思いますが、最初はきっちり自分で行い把握した方が良いでしょう。わかっている人は良いですが、数字で物事を把握する癖がこれで付きますので。社長は経営、特に売上を伸ばしたり新しいビジネスを考えたりすることに集中すべきです。最近はさまざまなアウトソースサービスや便利やサービスも揃ってきているので、会社の運営に必要な業務は大半が外部から調達できると思います。必要な人材をすべて抱えるのは大変でしょうから、外部のリソースを活用してスマートな経営体制にするというのが私の理想で、実際にそうして会社を経営しています。

飲食の事業計画書のサンプルを見る

※この計画はインタビュー時の内容を元に構成したもので、実際の経営上の数字とは異なります。

開業計画サポートツールについて・・・

実はちょうど資金調達を計画中です。24ページほどの事業計画書を作成して銀行と交渉中です。計画書では、5期目までの月次収支計画も作りました。計画書は2カ月くらい考え込んで、3~4日ほど集中して作りました。

もともと経営企画をやっていたので、事業計画書を作るのは得意ですね。店舗の経営シミュレーションも1時間もあればできます。意外とこうした試算をしていない人が多いと思いますが、ざっくりでも良いので絶対にすべきです。具体的に数字が出てくれば、店をどう経営していくべきかおのずと見えてきます。もちろん、じっくり時間をかけて試算しても良いです。とにかく、どれだけ具体的に考えられるかが大事ですね。

事業計画サポートツールというのは初めて知りました。Excelなどに慣れていない人は、こういうツールで概算を把握するのはとても良いことだと思います。あらかじめ経費の比率が自動計算で出てくのも良いですね。これを見ただけでも、どこにどれだけコストが発生するかが一目でわかります。飲食なら、原価率と人件費のウェイトが大きくて、ついで家賃や販促・広告費ですよね。どこを削ってどこのコストを手厚くするか、経営者視点からいろいろと想像しながら使うと面白いと思います。

5:メッセージ
覚悟がなかったらやらないほうがよい。自分を過信しないこと。

これから起業・開業を目指す人に言いたい事は、まず「覚悟がなければやるな」という事です。一旦始めたら簡単には辞められないでしょう。大きなお金を借りたりすれば尚のこと、ビジネスを続けて返して行くしかありません。サラリーマンに戻って返済出来る程度の負債なら良いですが、飲食業などは最低でも数百万円単位のお金がかかります。さらに数千万円の借入をすることも普通です。そうしたお金を背負ってやっていくしかないという覚悟がなければ、やらないほうが良いでしょうね。

もう一つ伝えたい事は、「自分が一番だと思うな!」ということ。これは自分自身の失敗経験も踏まえてのことですが、ビジネスをはじめる前は成功する事・上手くいくことしか考えないものです。しかし、実際はそうではありません。

飲食店であれば、ただ料理が美味しいだけではダメ。料理に自信がある人は、その自信に過信につながることもあるでしょう。とにかく客観的・冷静に自分を見られる事が大事です。

飲食業を目指している方、実際に経営しているけど悩んでいる方は、ぜひ私に会いに来てほしいですね。飲食業での事業計画の作り方などは教えられると思います。もちろん無料です(笑)。