創業時の事業からあえて撤退。「仕事で遊べる人を増やす」という理念のもと、新規事業にチャレンジの日々。

公開日: 2015/03/19  最終更新日: 2019/11/22

株式会社オールフェスタ

代表 大久保 道和

事業内容 Web、IT関連サービス。ECサイト運営。インターン事業「はたらくえん」の運営。
所在地 東京都港区
売上高 約2000万円(2011年)
事業計画書の安全率 8.72
(ランキング 671位/1万中)

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1:事業内容
アフィリエイト事業で起業。初年度から大儲け。しかし、あえて撤退。理念を形にするためにチャレンジの日々。

東京は麻布十番。閑静な住宅街にオフィスを構える株式会社オールフェスタ。「仕事で遊べる人を増やす」という理念のもと、学生に仕事の楽しさを学んでもらうインターン事業を中心に、ECサイトの運営やWebデザイン、コンテンツ制作などのクリエイティブな仕事を行っています。

2007年に創業しましたが、最初に手がけていたのはアフィリエイト関連の事業。元々は金融系のシステムエンジニアとして4年半ほど働き、インターネットの広告代理店に転職。そこでお世話になった副社長に導かれる形で起業しました。

最初に手がけたのはアフィリエイト事業です。当事はアフィリエイトが流行っていたこともあり、初年度の売上げは1億円。利益も半分以上残りました。しかし、徐々にバブルがはじけて、2年目で7000万、3年目で5000万円と売上げが落ちていきます。

そもそも起業してやりたかったことは違うんです。「ロマンを追う前にソロバンを追う」まさにこの精神で、大儲けしたアフィリエイト事業からは撤退。売上げ的には急減することになりますが、それでも本来やりたいもののために次の目的にシフトしていきました。

今は「仕事で遊べる人を増やす」という理念のもと、インターンの学生にさまざまな仕事を体験してもらう「はたらくえん」という事業を中心にしています。40名程度のインターンがいますが、インターンを開始して最初の3ヶ月間だけ月1万円のお金をもらって、彼らがやりたいと思う仕事をサポートする、というビジネスです。4カ月目以降は無料で、みんな好きなことをやっています。

ライター志望やデザイナー志望などクリエイティブなに仕事をやりたい学生が多いのですが、中には変り種として「ダーカウ」というスポーツの普及をやっているのもいます。

ダーカウというのはベトナムのスポーツで、向こうでは国民的なスポーツなのですが、バトミントンのシャトルのようなものを蹴鞠のように足で蹴って行います。そのダーカウを日本で普及させようと「日本ダーカウ協会」ってのを立ち上げたのが、ウチでインターンしていたM君。まだまだ無名ですが、彼はその普及に人生をかけて情熱的に活動してますね。

そんな感じで、仕事って好きなことを楽しくやるのが一番だと思うんですよ。生活の半分くらいは仕事に費やす時間なんで、それを嫌々やるというのは人生つまらないはずです。でも、みんなは「仕事がつらいもの」という感じで、特に学生は就活に疲れきっていて、就職するのが目標のような風潮で。そういう仕事に対する偏見から変えていきたい、というのが自分達の事業です。

もうひとつ、2年目に立ち上げた入浴剤を売るECサイトが年商1000万円くらいにまで成長して、「はたらくえん」の事業とあわせて、今はトントンくらいですね。

2:創業プロセス・苦労したこと
何も知らずに起業。本当に1円で会社が作れると思っていた。

とにかく、起業したときは何も知りませんでした。法律が変わって資本金が最低1000万必要だったのが1円でも作れるになったと聞いて、本当に会社は1円あればできるものだと思ってたくらい(笑)。あとで、登録免許税やら代行手数料やらで、なんだかんだで40万円くらいかかると知ってビックリしました。

実は会社を起こす3ヶ月前から、個人事業としてビジネスはスタートさせていました。あまり詳細な計画も立てず走り出したのですが、前職でお世話になった副社長が立ち上げた会社のオフィスの一角を借りて仕事をもらったりしての船出でした。

それで、株式会社 を作って本格的に事業を始めるにあたって、200万円もあれば3ヶ月は持つだろうという見込みで、資本金は200万にしました。そのときにやっていた仕事のギャラが3ヶ月後には入金される予定だったので、それをあてにしての計算でした。

しかし、会社を作るのにお金がかかることすら知らなかったのと、最初から人も雇って社会保険にも入って。税理士さんとも顧問契約しましたし、麻布十番に家賃18万円の事務所 を借りて、その敷金・礼金・前家賃で100万近くの出費があり…。

そんな感じで、最初に用意した200万はあっという間になくなりましたね。3ヶ月どころか、2ヶ月目で早くても資金ショートしそうになりました。

それで、あわてて予定していた支払いを跡に延ばしてもらったり、自分の預貯金を運転資金に回したりして、なんとかしのぎました。この時は怖かったですね。

とにかくビジネスを続けるためには、お金が生命線です。はじめの躓きで、痛いほど感じました。今思うと、きちんと資金計画も立てずに起業したのは、怖いもの知らずというか無謀でしたね。

3:成長の軌跡
アフィリエイト事業が大当たり。しかし、バブルがはじけた。

ビジネス自体は、最初の年はとてもうまくいきました。当時アフィリエイトが流行っていたというか、バブルっぽい感じでしたので、月の売上げが1000万を超えることもあり、初年度の売上げは1億円にもなりました。社員は3名でやっていたので、経費もほとんどかからず、ボーナスも100万とか150万とか、平気で出してましたね。しかし、2年目で風向きがかわって売上げが落ち始めました。社員も7名くらいになっていて経費も増えていったので、利益はどんどん少なくなって、3年目になるとかなり厳しい状況になりました。

もともと、アフィリエイト事業は勉強のために始めた事業でした。ゼロから売上げを作った実績が皆無だった自分が「起業なんてできるのか?」という疑問がありました。お金の作り方をしらない男が経営なんてやっていけるのか…。自分のビジネスセンスを試す場でもありました。もし、ここで売上げを作れなかったら、もう一度サラリーマンに戻って仕切り直しする決意もあり、必死に取り組みました。

結果的に、運良く実績と共に少々の自信も得ることができましたが、売上げを作る大変さを味わいました。そして、まだまだ売上げはあったものの、目的を達成したアフィリエイト事業からは徹底しました。

それで売上げがゼロに近い状態になるのですが、人件費や家賃などのコストを徹底的に削って、次の目的である、「リピートを増やす」仕組みを勉強しようと2年目にECサイトを立ち上げました。

アフィリエイト事業って常に新規客を取り続けないと維持できないモデルだったので、常にお客さまを捕まえないといけないという恐怖感で一杯だったんですよね。

立ち上げ初年度で年商1000万くらいになりましたが、地道に続けていった成果で固定客もついて、リピート率は80%にもなりました。アフィリエイト事業とは真逆のモデルです。規模は小さいけど、確実にお客さまがついてきてくれる事業。手ごたえを感じました。

そのあと、2011年に立ち上げたのが、「はたらくえん」です。当初は中途採用のビジネスマンをターゲットにしていたのですが、社会人だと「確実に転職できるのか」とか「仕事につける保証はあるのか」とかニーズが切実なんですね。そこが、仕事の楽しさを伝えるという思いと食い違って、うまくいきませんでした。

そこで、ターゲットを学生にシフトしたところ、反響が大きかったんです。口コミで次々と学生が来るようになりました。これはニーズがある、ということで、今は学生向けの事業として続けています。

「はたらくえん」は学生がやりたい仕事を、ウチのリソースを使って好きなことをやるほかに、他の会社 から引き受けて仲介するという仕組みなのですが、初めは知り合いの小さい会社ばかりだったのが、1年続けて、今は大きい会社からも仕事の依頼を受けられるようになりました。まだまだこれからですが、この事業をもっと大きくしたいですね。

4:お金に関する考え方

自計化のきっかけ・・・

会計については、最初 から「弥生会計」というソフトをつかって自分達でやってました。何も知らずに起業しましたから、人に任せるということは考えず自分でやろうと思ってました。特に初めの3ヶ月間くらいは、毎日毎日、売上げや経費を見てました。

最初の年はとても業績が良かったと話しましたが、「こんなにうまくいくわけがない。」ということで、逆に恐怖感でいっぱいでした。いつ売上げが落ちるか…気が気でなくて、毎日数字を見てないと不安で仕方なかったという感じです。

それでも、創業当事に徹底して数字に向き合ったおかけで、会計に関する知識や感覚が身についたと思います。今は創業メンバーの一人が経理担当として会計をやってもらってますが、自分も数字はちゃんと頭に入れるようにしています。

会計力があれば重要な経営判断もできる・・・

アフィリエイト事業から撤退して売上げが急減することになったのですが、数字の感覚はつかめていたので、手持ちの資金と経費を計算して、なんとか新しい事に挑戦できるという見込みは立てられました。経営にとっては赤字というか、お金が減り続ける状況は恐怖以外の何者でもないですが、数字を客観的に見ていられることで、その恐怖感には打ち勝てると思います。アフィリエイト事業を通して「売上げの作り方」は会得できたので、資金管理さえできれば、後は黒字になるまで売上げを上げる自信はありました。こういう感覚は実際にやってみないとつかめないと思いますが、経営者にとってはとても重要な資質だと思います。

開業計画サポートツールについて・・・

簡単に計画が作れるのは面白いですね。シミュレーションというか、リアリティーのある計画書ができるというのは、起業初心者にとっては、とても便利だと思います。自分も起業時に甘い計画というか見通ししかなかったので苦労しました。こういうツールを活用して、何度も計画を練り直して実戦に臨むべきだと思います。

創業時の借入れについては、私は借入れなしでもやっていける計画にしておかないと、後々大変になると思います。とくにWebとかIT関連ビジネスというのは、大きな設備投資も必要ありませんし、主な経費も人件費と家賃くらいなので、お金をかけずに事業ができますから。

ただ、起業時にお金が借りやすいというのも後々知りました。なので、いっそ最初に出来るだけたくさん借りて、絶対に失敗しない覚悟で望むかですね。

編集部より・・・

今回のインタビューでは、大久保氏が開業時に計画していた資料などを拝見させて頂いた。それをもとに開業計画サポートツールで計画書を作成してみたところ、安全率が8.72という非常に高い数字になった(ちなみにランキングは671位/1万人中)。「開業リポート2012」の調査では、この業界の健全企業の安全率は7.57となっている。成功する経営者が、如何に数字に慎重であるかが伺える。

「Web・モバイル」の事業計画書のサンプルを見る

※この計画はインタビュー時の内容を元に構成したもので、実際の経営上の数字とは異なります。

5:メッセージ
仕事についての意識を変えたい。仕事は楽しくやろう。

当社の理念は「仕事で遊べる人を増やす」というものですが、そういう世の中になっていくための音頭をとる会社でありたいです。そうなったら日本も変わると思いません?そしたら世界も変わると思いません?そのためにも事業を継続していくということ、長く続けることはすごく意識しています。最低でも100年続けないと。だから自分達の理念に共感できる人との出会いを大切にしています。事業縮小のおり、やむを得ず辞めてもらった元社員とも今でも仲良くしています。人と人との出会い、つながりというのはとても貴重なものだと思います。

自分自身も就職活動をしていて自己分析などをしていて、そのときにいろいろと考え抜いて、使命を見つけました。「起業」は通過点でしかありません。社長になりたかったわけでもありません。ただ素直に自分がやりたいことをやっているだけですね。だから毎日が楽しい。

起業して5年になりますが、大変だったことはたくさんありますが、苦労と思ったことはないですね。好きなことをやっているから、苦労を苦労と感じないのかもしれません。

これから起業する人に伝えたいことは「自分の生きたいように生きる、自分の心に素直に動く」というのが大事です。目先のことにあたふたしないように、人生の目標をしっかりと見定めて、挑戦してもらいたいですね。絶対そっちのほうが楽しいですから。