飲食業界特化の人材紹介・求人広告事業で大躍進!伸び悩んだクックビズの創業時代

公開日: 2015/03/16  最終更新日: 2019/11/22

クックビズ株式会社

代表取締役 藪ノ 賢次

事業内容 飲食業界特化の人材紹介・求人広告事業の運営
所在地 大阪府大阪市北区芝田

冒頭

今回取材に訪れたクックビズ株式会社は、飲食業界に特化した人材サービスを強みとしていて、クックビズという求人広告メディアサイト運営や人材紹介サービスを展開しています。2007年に法人化して、急成長を続ける同社の1年目はどうだったのか?PDCAという形で話を聞いてきました。

1:Plan 開業前の計画はこうだった
専門学校とのタイアップからスタートした、飲食業界向け人材紹介サービス

 

「クックビズ」という事業を開始したのは2007年12月です。目標とした売上は1000万円ほどでした。

私は学生からそのまま起業したのですが、初めに手掛けたのは携帯電話の販売代理事業です。ウィルコムの大阪支店にいきなり飛び込みで「携帯を売らせてくれ」と頼んで始めました。Airエッヂなどでモバイルデータ通信市場を圧倒していた時期で、ウィルコム同士通話無料という新しいサービスを開始した直後でもあり、面白いように売れました。

ただ、携帯電話をいくら売っても、キャリアが儲かるだけなので、販社や代理店ではなくて、自社商品やサービスを持ちたいという気持ちがありました。それでクックビズをはじめたわけです。

クックビズの立ち上げ資金は、携帯電話販売事業でためた500万円を資本金にして、株式会社としてスタートしました。メンバーは自分と、妻と、飲食業界経験のある取締役の3人です。

当初は、求人票を学校の掲示板に貼って求人情報を告知していたのですが、土日や休講の日も見られるように、2008年3月からWebメディアもスタートしました。

2:Do しかし現実は、実際は・・・
順調な滑り出しと思われたが、リーマンショックに、取締役の退職で経営危機。

採算をとるためには売上が1000万円は必要という計算でしたが、1年目の年商は645万円ほどでした。事業継続に必要な最低限の運転資金が毎月50万円ほどだったので、そのラインは超えていましたが、自分の給与はこの売上からは取れない水準でしたので、経済的には厳しかったですね。

ただし、1年目でそれなりに売上があったこともあり手応えは感じたので、これを本気でやっていこうと決心して2年目を迎えました。

しかし、2年目は1年目に比べさらに売上が伸び悩みました。売上が600万円と前年割れして、300万円くらい赤字がでてしまいました。資本金は500万円ですから、赤字300万円というのは大きいです。

2年目は金銭的にも精神的にも本当に苦しかったですね。1年目である程度手ごたえがあったのと、ウィルコムの携帯電話販売事業での成功体験から、慢心していたのが原因です。特に深い考えもなく2年目には自分の月給を10万円以上あげました。これはミスだったと思います。実際、2年目に上げた自分の給料は払える状態でなく、未払いの状態が続きました。

さらに、創業時の取締役がやめてしまったのはつらかったです。起業したばかりのベンチャーに優秀な人材なんてめったにきませんから、創業メンバーが抜けてしまうというのは、経営的に大打撃で、実際彼が抜けたことで売上が思うように伸びませんでした。役員といっても彼と私と妻の3人ではじめたビジネスで、そこから営業マンが1人いなくなったわけですから。

それからは、夫婦2人でしばらくやっていくことになるのですが、こうなると会社というより家族経営の事務所ですよね。人材を新たに採用しようにも、そうした雰囲気では入社してくれる方もなかなか見つからなくて苦労しましたね。

3年目は本当に勝負というか、これでダメだったら撤退するしかないという正念場になりました。

3:Check こうしておけば良かった
己のマネジメント力を反省、生き残りをかけた3年目。自分でなんでもやろうと思うな。でも会計は絶対自分で!

1、2年目でうまくいかなかった理由としては、調子にのって自分の給料を上げてしまったり、リーマンショックの影響もありますが、組織のマネジメントがうまく出来ていなかったことです。

2年目に辞めてしまった取締役、サポートしてくれた妻には、「どうしてこんなこともできないんだ」とつらく当たってしまっていたところもあり、マネジメントというものが根本的にわかっていませんでした。

その時にやはり自分に責任があるということを認識するとともに、自身のマネジメント自体に問題があると気づき、2年目、3年目は、改めて、「採用とは何か」「会社のビジョン」「チームのつくりかた」のような本をあさるように読みました。

私は学生から起業して社会人経験や、組織を見る経験もない状況ではありましたが、マネジメント・組織作りの課題についてはもっと早くに気づいて、改善できていればよかったと思います。

会計については自分で最初からやっていたのはよかったと思います。今でも仕訳とか細かくチェックして自身で打ち込んでいます。

管理部門は来年から本格的につくろうと考えていますが、今は現金出納帳などもすべて自分で管理していています。基本的には会社の数字はすべて細かく把握しています。

創業時からお世話になっている会計事務所は、関西では有名なところなのですが、その事務所の社長さんから「仕訳や帳簿はまず社長自身がやるべき」と指導してもらっていて、それを実践しています。

社長がリアルタイムの数字を把握できていない状態は、倒産リスクがあると思います。営業に走り回っていて、気づいたら通帳に残高がない…なんて状況になったら金策は間に合いませんから。

振り返ってみて、1年目、2年目の苦境を乗り越えた転機は、「すべて自分のせいと考える。でも自分で何もかもやろうとしない。」ということです。

会社を経営していると、日常的にさまざまな経営課題が降り掛かってきますが、それらの課題を他人のせいとか業界のせいとか景気のせいとか、他責的に考えては何も解決しないということです。

まずは、自分自身に矢印を向けることがすごく大事だと思います。周囲にいる先輩経営者にもしつこいくらいに言われるのですが、会社が伸びないのは、基本的には社長個人の問題です。

それを世の中や従業員、ビジネスモデル、業界のせいにしてしまいがちなのですが、それは間違った認識でした。

4:Action 俺は一年目をこうして切り抜けた
経営者としての仕事に専念して売上が急成長

2年目に赤字を300万円以上も出てしまった上に、マネジメントに失敗してしまったがために、人材関連のサービスを手掛けているにも関わらず、自社の採用活動もうまく進めることができず、個人商店のような状態に後戻りしてしまいました。

3年目に突入したときには、正直もう後がないような状況に追い込まれており、本当の意味での正念場でしたが、3期目は売上が1000万円まで伸びて、利益も200万円くらい出すことが出来ました。

4年目以降も、順調に業績を伸ばし続け、今期の計画は年商2億円、社員も20名の体制になり、自社内においては2年連続社員定着率100%を実現、大阪と東京に2拠点を持てる組織にまでなっています。

最初の苦境を切り抜けてこうした成長軌道に乗れたのは、「自分で何もかもやろうとしない」という気づきを得てからです。

自分で何でもやってしまうと、組織にする意味が無いし、組織が育ちません。あくまで主役はスタッフで、最終的には自分の責任と腹を括りながらも、組織で経営課題に取り組むようになれれば、自然と経営は安定して企業として成長していくと思います。

当社では営業、管理、ファイナンス、Webマーケティングの4領域を、ひとつひとつ組織化して、会社が回っていくように取り組んでいます。そうすると、社長は何もしなくてもよくなりますから、少しずつ自由な時間が増えていくのが、経営者の醍醐味ですね。

この気づきを得るまでに、私は3年間かかりました。その間は会社は伸び悩みましたが、経営者としてのマネジメント・組織作りに注力して、なんとか、3期目は黒字にこぎつけることが出来ました。

あと、業績が苦しかった時期を乗り越えられたもう一つの理由は、メンタルですね。

元々、私は学生から起業したのでそんなに贅沢もしてなかったのと、最初から自分でビジネスをはじめて、帳簿もきちんとつけていたので、お金がなくなってしまう恐怖心には強いと思います。サラリーマンである程度成功していて貯蓄もある方が起業すると、みるみるお金が減っていく事が怖いと思いますが、自計化していればそうした恐怖心にも耐性がつくと思います。

事業では、お金は出たり入ったりするのは日常です。特にビジネスの立ち上げ期、投資段階では資金がどんどんなくなるのは当たり前ですから。

昨年の9月には第三者割当増資を実施し、ジャフコから3000万円増資いただくことが出来ました。

この増資を成功させるためにと中期経営計画もしっかりと作りこみました。増資を受けたのは、借入金だけだと組織拡大に必要な資金余力が足りなかったためです。

人材業界はまだまだイノベーションの可能性があると思っています。新規で目立ったプレイヤーはリブセンスさんでしょうか。他は皆同様のビジネスモデルで戦っていますよね。ある意味、リクルートが完成させてしまったビジネスモデルの中で競争しているのがこの業界です。

5:メッセージ
起業はポジティブに。リスクを恐れないで挑戦してほしい。

起業に関してはポジティブに考えています。満を持して起業しない方がいいでしょうね。まずは走り出すこと。

サラリーマンとして輝かしい戦歴を残してから起業すると、周りからも期待されるし、誰より自分が一番期待してしまいます。そうすると逆に、失敗に対する不安感が大きくなってしまう。

自分は就職せずに、ある意味ニートのような状態から起業しているので、業界知識などはなかったが、リスクに対しての恐れがなかったというのは大きいと思います。

とはいっても、リスクを恐れない事とリスクを考えない事は別です。自分は1年目、2年目でとても苦労しました。これから起業する方、まず出来るだけ精緻な事業計画書をつくって、起業後はしっかりお金の管理をする事をおすすめします。うまくいかないのは当然で、計画どおりにお金なんて稼げないですから、そういう悪いシナリオも普通にあるという覚悟で臨むべきです。