スマート開業事例 ~ あらゆるスペースを貸し出すシェアリングエコノミーサービス「スペースマーケット」。株式会社スペースマーケット 重松 大輔氏

冒頭

NTT東日本を経て、イベント写真撮影やオンライン販売を事業とするウェブ系写真サービス会社に参画。新規事業で立ち上げたウェディング事業での結婚式写真ネット購入サービスは、全国で年間約3万組の披露宴で導入されるに至り、2013年には東証マザーズへの上場を経験した。当該事業を進めるなか、重松氏は平日における結婚式場の利用率の低さに着目。そこからシェアリングスペースのアイデアに至り、2014年1月に株式会社スペースマーケットを設立。シェアリングエコノミーへの国内の機運が高まる時期に的確にサービスを投下。現在に至るまで勢いある事業を展開してきたその背景には、重松氏の堅実な歩みがあった。
社名 株式会社スペースマーケット
代表 重松 大輔(Shigematsu Daisuke)
所在地 東京都新宿区
開業時期 2014年1月
事業内容 スペースシェアのマーケットプレイス「スペースマーケット」の運営

※ 当記事内でご案内している事業計画書のサンプルは、インタビュー内容をもとにドリームゲート事務局にて独自に作成したものになります。実際に事業計画書の数字とは異なる事をご了承ください。

1:開業した経緯 ~経営視点から感じた、空きスペースの“もったいなさ”。シェアリングスペースは必ず事業になると確信した

前職では、ウェディング事業を新規で立ち上げ「グロリアーレ」というサービスを展開していました。簡単に説明すれば、結婚披露宴の写真をネットで購入できるサービスです。通常、結婚式の写真は届くまでに2~3ヵ月と、非常に日数がかかります。参列者としては早く見たいと思うのが当然。そこで、インターネットから披露宴写真を一覧で確認でき、かつ購入できるサービスがあればと考えました。
結果ニーズは高く、全国の約3万組の披露宴で導入。参列者が4回参加すると1度は触れるサービスへと成長しました。当時、私は営業を担当していて、度々各地の結婚式場へ行くことが多かったのですが、その現場での気づきが、ビジネスアイデアと起業につながっています。

結婚式場は土・日・祝日がメインですから、営業に行くのは平日。すると式場はどこも空いているんです。後々、担当者に聞いてみても課題だとのことでした。そこから、ふと気がついたのが土・日・祝日の会社のオフィス。スペースが空いていて、これは非常にもったいないと。普段広報や人事と多岐にわたる業務に携わっていたので、物事を経営者目線で見るクセがついていたんですね。そこで、社のセミナールームを解放してみると、会社や学生団体などさまざまな借り手がつきました。その手応えから、例えば会議室や映画館、または古民家などはどうか? と、次第に既存施設のニーズや利用状況を検証するようになったんです。

考えを巡らす日々が続き、ある日のこと。目を引いたのがアメリカでのシェアリングエコノミービジネスの台頭でした。ちょうど3年前ですが、すでに大きなトレンドとなっていて、Airbnbの派生のようなシェアリングサービスも続々と。それぞれビジネスの成長速度も早く刺激を受けたのと、「この波は必ず日本にも来る」と感じ、先ほどの“空きリソース”をビジネスとして起業を決意しました。

2:起業・開業で準備したこと ~ネットワークを武器にスピーディな起業準備を実現。

起業までに要したのはおよそ3ヶ月。2014年の1月からのスタートを考えていたので、スピード感を重視した準備でしたが、幸いにして予定通り実現することができました。

資本金は自分の蓄えで賄うことにしたものの、まず課題となったのが人材。次に登記などの事務処理や、資本政策。そこで大きな助け船となったのが、実は妻なんです。妻はVCであるため、起業にまつわる知識はもちろんのこと、エンジニア(共同創業者・現CTO)やネット界隈に実績を持つ会計事務所ともつながりを得ることができました。

最初のオフィスは、ご縁からVOYAGE GROUPが運営するフリーシェアオフィス「BOAT」に入居しました。振り返れば、早期から事業に専念できる環境にあったと感じています。棚や椅子など、オフィス設備についても、移転する会社から譲り受けたもので賄ったので、ほぼイニシャルコストを掛けずにスタートを切ることができました。

3:起業・開業後の営業活動 ~追い風を最大限に生かしたスケールアップを実現すべく、取り組んだコスト極小化。

起業当初は、私とエンジニアの二人でした。片方はシェアスペースの営業を行い、片方はサービスサイトの開発に取り組むといった体制です。営業では、前職や友人・知人など、とにかくツテを辿ってシェアスペースの獲得を進めていきました。電話営業が苦手だったせいもあるのですが、それに反して、確保できたスペースは結婚式場やオフィスはじめ、古民家、お化け屋敷、野球場など。非常にバラエティに富んだ内容で、サービスの強みにすることができました。

そして、起業から3ヶ月。2014年4月に「スペースマーケット」をローンチしました。
当時は国内でシェアリングエコノミーやユニークアベニューの価値観が徐々に波及しはじめた時代。加えて、多彩なスペースをユーザーが自由な用途で利用できるマーケットプレイスは海外にも事例がなく、次第にウェブやTVに取り上げていただくようになっていきました。そういった追い風もあり、ローンチから3ヶ月後には資金調達もでき、ベストなタイミングで事業を進めることができました。

事業が成長するにつれ、前職で経理を担当していた女性やアルバイトで働いていた学生、また、CTOのつながりのエンジニアなど、日増しにメンバーが増えていきました。皆それぞれにユニークかつ優秀なキャリアを持っていて素晴らしいチームが構成されていく一方で、オフィスは手狭に。そこで、移転したのが現在のオフィスビルです。きっかけは資金調達・事業提携を目的にしている「RISING EXPO 2014」というビジネスプランコンテストでした。そこで優勝することができ、副賞が賃料の半額免除だったんです。そこから、さらにメンバーが増え、社員とアルバイト含め約20人になったころ、5階から現在の6階のオフィスに移転し今日に至ります。この移転についても、アニメ系のクラウドソーシング会社の居抜きをそのまま活用することができたので、ほとんどコストはかかっていません。通常内装や設備を整えるのであればおそらく1,000万円近くかかるところですが、それを数万円で済ませることができました。

これまで、イニシャルやランニングにしても、極力コストを抑えて事業に向かうことにかなりこだわってきました。経営者としての信条である「利益を生まないことにコストはかけない」を実践し、今でもそこは徹底しています。

4:開業後 はじめての経営 経理・帳簿づけ

経理業務については、できる限り任せられる体制づくりをしていました。経営者自らがそこに時間を割いていると、事業に集中できなくなると考えていたからです。最初のお話でも少し触れましたが、経理業務経験者の初期メンバーと、会計事務所にお手伝いいただきながら対応していました。

ただ、事業拡大にあたって本格的に体制を整える必要が出てきたので、現在はさらに経理に強いメンバーにコミットしてもらい、管理本部をつくり対応しています。

「弥生会計スタンダード」の導入は、顧問の税理士さんから勧められたのがきっかけです。会社の規模が伸び、サービスフェーズも変化していくなかで、「使いやすさを重視した会計ソフト」を求めていたのですが、導入して非常によかったと感じています。

以前は、勘定科目の統一や総勘定元帳の会計データの適切な抽出に難を感じていましたが、弥生会計スタンダードでデータ抽出が直感的に、また財務分析においてもスムーズに行えるようになりました。効率よく正確に経理業務を行うためには、弥生会計スタンダードのように、簡単に扱うことができ操作性のよい会計ソフトが最適だと思いますね。

5:これからの展望・事業戦略

現在で総スペース数は10,000件以上を数え、月ベースで数千名のユーザーが利用しています。ちょうど、これまでの分析からユーザー傾向が把握できてきたところなので、今後はよりさまざまなニーズに添うスペースの確保に注力し、2019年までには50,000件を達成できればと考えています。

また、「キッチン付きスペース」の利用が今のトレンドになっているのですが、例えば忘年会だったり、ユーザーが求めているのはイベントの開催地なんですね。そこに対して場所だけではなく、ケータリングサービスなど、イベント開催に付随するさまざまなサービスを包括的に提供できるプラットフォームづくりも進めています。

将来的なビジョンとしては、「世の中にチャレンジャーを増やせる会社」であること。起業におけるオフィスも、イベントでの開催地も、何かをするためにはまず場所探しが必要です。しかし、準備が手軽でないと、当初の気持ちを失くしてしまうことがあります。そこに対して、当社のスペースマーケットは大きく貢献できるサービスですので、「自分の思い描いたチャレンジを誰もが簡単に行える環境」をつくっていきたいですね。

そして、無人島や廃校、古民家、公民館など、地方には上質なスペースが数多く眠っています。インバウンドや都心の方など、人の流入を地方に向けさせる魅力的な仕組みをつくり、地方創生にも寄与していきたいと考えています。