創業融資に制度融資はおすすめ? メリットと注意点を起業のプロが解説

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2026/02/08 

新たに事業を立ち上げる起業家にとって、資金調達は事業の成否を分ける極めて重要なプロセスとなります。そのなかでも、地方自治体が主導する「制度融資」は、金利の低さや据置期間の長さから有力な選択肢として注目されています。

しかし、そのしくみや日本政策金融公庫の融資との違いを正確に理解していなければ、思わぬ時間を費やすリスクもはらんでいます。そこで本記事では、制度融資の基本から、賢い活用方法や注意点までを専門的な視点でくわしく解説します。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.そもそも創業融資とは

創業融資とは、新たに事業を開始する方や、創業して間もない事業者を対象とした特別な融資制度を指します。通常、銀行などの金融機関は実績のない相手への貸し付けに慎重ですが、国や自治体は経済活性化を目的に、実績が乏しい状態でも資金を供給するしくみを整えています。

代表的なものには、政府系金融機関である日本政策金融公庫による融資と、今回解説する地方自治体の「制度融資」の2種類が存在します。これらは、担保や保証人が不要な枠組みも多く、起業家が最初に検討すべき資金調達手段といえます。

2.制度融資とは

制度融資の全体像を把握するためには、まずその独自の協力体制を理解する必要があります。民間金融機関が単独でリスクを取ることが難しい創業期において、自治体が後押しをすることで融資を実現させるしくみが制度融資の大きな特徴です。

1)制度融資の基本的なしくみ

制度融資は、地方自治体、民間金融機関、そして信用保証協会の三者が緊密に連携することで成立する融資制度です。自治体が融資の条件を決定し、利子や保証料の一部を補助するなど、起業家は有利な条件で資金を借入れることが可能になります。

とくに注目すべき点は、自治体が「この事業を応援する」というお墨つきを与える形になることです。このことにより、起業家が直接信用金庫などに申込むよりも、はるかに融資のハードルが下がる傾向にあります。多くの地方自治体は、地域内の起業数増加を政策目標として掲げています。そのため、創業支援にも積極的な姿勢を見せており、創業融資はほかの融資メニューに比べても実行されやすい環境が整っています。

2)事業者の目的にあわせた制度がある

制度融資の魅力は、創業支援だけにとどまらず、事業のライフサイクルに応じた多種多様なメニューが用意されている点にあります。

制度融資は、新規事業の立ち上げに限った制度ではありません。ほかにも、近年課題となっている親族内や第三者への事業承継を支援するための資金、さらには海外市場への販路拡大を目指すための展開資金、生産性向上のための設備投資資金など、目的に合わせた最適な制度を選択できます。これにより、事業者は自身のフェーズに合致した優遇措置を享受しながら、中長期的な視点で財務基盤を固めることができるのです。

3)条件は制度によって千差万別

制度融資の内容は、各自治体の政策方針や予算状況によって大きく異なります。金利水準や融資限度額、返済期間、さらには自己資金の要件に至るまで、地域ごとに独自のルールが設定されているのが実情です。

そのため、自身の事業所が存在する、あるいは設立予定の地域の制度を詳細に比較検討することが欠かせません。たとえば、特定の業種や女性・若者の起業に対して、さらに手厚い優遇措置を設けている自治体も少なくありません。

4)東京都なら東京都中小企業制度融資『創業』

具体的な例として、東京都が提供している融資制度である「創業」を挙げると、その手厚さがよく分かります。この制度は、これから都内で創業しようとする方や、創業から5年未満の事業者を幅広く対象としています。

融資限度額は3,500万円と高額に設定されており、返済期間も設備資金であれば10年以内(据置期間を含む)と、長期的な経営計画を立てやすい設計がなされています。さらに信用保証料の一部を負担してくれるケースがあり、初期コストを抑えたい起業家にとって、極めてメリットの大きい制度設計がなされていることが特徴です。

参考:東京都中小企業制度融資『創業』

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3.創業融資で制度融資を使う際の注意点

制度融資は非常に魅力的な手段ですが、その利便性の裏側には起業家が事前に知っておくべき留意事項がいくつか存在します。メリットばかりに目を向けるのではなく、デメリットや制約についても正しく理解しておくことが、スムーズな資金調達の鍵となります。

1)制度融資はプロセスが煩雑

制度融資の最大の壁は、融資実行までの手続きが非常に複雑で、多くの時間を要する点にあります。前述のとおり、自治体、金融機関、信用保証協会の三者が関与するため、それぞれの窓口で審査や面談を受ける必要があります。

自治体での事前相談から始まり、金融機関への申込み、そして信用保証協会による最終的な保証審査という段階を経るため、最短でも2ヶ月から3ヶ月程度の期間を見込んでおかなければなりません。スピード感を重視する事業展開を考えている場合、このリードタイムの長さを覚悟しておくべきでしょう。

2)まずは日本公庫を検討すべし

効率的な資金調達を考えるのであれば、制度融資よりも先に日本政策金融公庫(以下、日本公庫)の検討をおすすめします。日本公庫は制度融資に比べて審査のプロセスがシンプルであり、融資までの期間も1ヶ月程度と比較的短いのが一般的です。また、日本公庫は「新規開業・スタートアップ支援資金」などを通じて、制度融資よりも多くの業種が対象となるため、より幅広いビジネスモデルに対して柔軟に対応してくれる傾向があります。

さらに、近年増えているバーチャルオフィスを利用した起業に関しても、両者には違いが存在します。制度融資では経営実態の確認が非常にきびしくおこなわれるのに対し、日本公庫ではバーチャルオフィスでの起業であっても、柔軟な判断をおこなう傾向があります。

参考:新規開業・スタートアップ支援資金

3)制度融資は結局は信用保証協会の枠

誤解されがちですが、制度融資とは「自治体が直接お金を貸してくれる制度」ではなく、あくまで「信用保証協会の保証が付いた民間金融機関からの融資」に過ぎません。つまり、将来的に大きな資金が必要になった際、信用保証協会の保証枠を使い切っていると、それ以上の借入れが困難になる恐れがあります。

一方で、保証協会を介さない「プロパー融資」であれば、その制約はありません。最初から信用金庫などと直接良好な関係を築き、実績を積んでおくことで、将来的なプロパー融資への道筋を立てやすくなるという考え方もあります。

4)都道府県と地方自治体で別の融資制度がある場合も

制度融資の検討時に混乱しやすいのが、都道府県が実施するものと、市区町村が実施するものの重複です。たとえば、東京都には東京都の制度融資がありますが、それとは別に港区や新宿区といった自治体が独自に実施している制度融資も存在します。

多くの場合、これら2つの制度を同時に併用することは認められておらず、どちらか一方を選択しなければなりません。一般的に市区町村の方が、利子補給などの条件がよい場合が多いものの、融資限度額が小さめに設定されていることもあるため、自身の必要資金額に合わせて慎重に選択する必要があります。

5)本店所在地の移転は慎重に

制度融資を受けている期間中に、事業拡大などの理由で本店所在地を別の自治体へ移転する場合には注意が必要です。自治体の制度融資はその地域に納税し、経済に貢献することを前提とした優遇措置であるため、エリア外への転出は想定されていません。

移転したからといって即座に一括返済を求められることは稀です。しかし、転出先の自治体で新たに融資を受ける際に、旧所在地で完済していないことがネックとなり、追加融資が否決される可能性が高くなることを念頭に置いておくべきです。

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4.制度融資の申込み方法

東京都の事例を参考に、制度融資の具体的な申込みの流れを解説します。このフローを概観すると、制度融資の可否を握る実質的な主導権がどこにあるのかが明確に理解できるでしょう。

参考:東京都中小企業制度融資「お申込み条件」

1)利用する制度融資を探す

まずは自身の事業内容や創業フェーズに合致した制度を探すことから始まります。東京都の場合、産業労働局のウェブサイトなどで条件を確認し、まずは最寄りの商工会議所や自治体の相談窓口で、自身の事業が要件を満たしているかどうかの事前診断を受けることが一般的です。ここで事業計画の妥当性や、自己資金の準備状況について専門的なアドバイスを受けることができます。

2)指定金融機関に申込みをする

次に、その制度融資を取り扱っている「指定金融機関」を選び、融資の申込みをおこないます。すべての銀行が、すべての制度を扱っているわけではないため、事前の確認が必要です。

窓口では、自治体が発行する紹介状や推薦書に加え、精緻な事業計画書や決算書類一式を提出します。この際に金融機関を窓口として、信用保証協会への保証申込みも同時におこなわれます。

3)信用保証協会の審査が行われる

書類が受理されると、金融機関を通じて信用保証協会へ保証の依頼が送られます。制度融資の審査においてもっとも重要なのはこのステップであり、保証協会の担当者による面談がおこなわれることも珍しくありません。

彼らは、事業の継続性や返済能力をきびしく精査します。自治体の推薦があるとはいえ、保証協会が「No」といえば、融資が実行されることは決してありません。

4)信用保証協会が保証を承諾したら融資を実行

保証協会から「信用保証書」が発行されると、ようやく金融機関との間で金銭消費貸借契約が締結されます。

契約締結があってはじめて、指定した口座に資金が振り込まれることになります。申込みから実行までの一連の流れを振り返ると、制度融資の成否は、最終的には信用保証協会の判断に委ねられていることがよく分かります。

5.事業計画書の作成はサポートツールがおすすめ

制度融資であれ、日本公庫であれ、融資審査を通過するためにもっとも重要なのは、客観的で説得力のある事業計画書を作成することにほかなりません。

しかし、はじめて起業する方がゼロから完成度の高い計画書を作成するのは非常に困難な作業といえます。そこでおすすめしたいのが、専門的な知見が凝縮されたサポートツールの活用です。

ドリームゲートが提供している「事業計画書作成ツール」を利用すれば、ブラウザ上の直感的な操作だけで、金融機関の担当者が重視するポイントをおさえた計画書をかんたんに作成できます。複雑な数値計画も、ガイダンスにしたがって入力するだけで自動的に整理されるため、融資の成功率を飛躍的に高めることが可能です。

無料で利用できるサービスですので、まずはこのツールを使って、自身のビジネス構想を具体的な形に落としこむことから、はじめてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
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