創業融資の返済期間はどう決める? 分かりやすく解説
創業融資を受ける際、「いくら借りるか」と同じくらい重要なのが「返済期間をどう設定するか」という点です。返済期間は、毎月のキャッシュフロー(資金繰り)の安定性を直接左右し、事業の成長速度にも影響を与えます。総支払利息を減らしたい理想と、資金繰りの不安を解消したい現実的な課題との間で、最適なバランスを見極めることが成功の鍵となります。
本記事では、公的なルールからキャッシュフローを最大化する戦略まで、創業融資の返済期間を決定するための具体的な要素とシミュレーション方法を、ビジネスの視点から解説いたします。ぜひ参考にしてください。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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目次
1.返済期間を決めるルールと目安
事業を円滑に進めるためには、まず金融機関がどのようなルールに基づいて、返済期間を設定しているかを理解しておくことが不可欠です。とくに日本政策金融公庫(以下、日本公庫)の創業融資制度における期間の枠組みは、事業計画を策定する際の前提知識となります。
1)日本公庫が求める返済期間
日本公庫が定める融資の返済期間は、民間金融機関と比較して非常に長期に設定されています。具体的には、事業の基盤となる設備資金については最長で20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金については原則10年以内(うち据置期間5年以内)が上限とされています。
これは、創業期の企業や中小企業の資金繰りの安定を重視し、月々の返済負担を軽減することで事業の継続を支援するという日本公庫の政策的な役割を反映したものです。この長期の期間設定を最大限に活用し、事業計画に無理のない返済スケジュールを組みこむことが大切です。
2)日本公庫の創業融資をかんたんに説明
日本公庫の創業融資は、新たに事業をはじめる方や事業開始後間もない方を対象とした融資制度です。代表的なものとして「新規開業・スタートアップ支援資金」などが挙げられます。
これらの制度は、実績のない創業期の企業に対して、運転資金や設備資金を提供することで、その挑戦を後押しすることを目的としています。事業計画の実現可能性や、自己資金の状況などが審査の重要なポイントとなり、返済期間の設定もその一環として厳しくチェックされます。
参考:日本政策金融公庫の創業融資が大進化【元公庫融資課長が解説】
3)資金使途(設備/運転)による期間の違い
融資の返済期間は、その資金の使い道(資金使途)によって明確に区別されます。設備資金は、店舗の内装や機械装置といった長期にわたり利益を生み出す資産への投資であるため、その耐用年数に合わせて長期間(最長20年)の返済が認められるのが特徴です。
一方、仕入れや人件費、広告宣伝費などの運転資金は、比較的短期間で回収される費用であるため、返済期間も短期間(最長10年)に設定されるのが原則です。資金使途を正確に分け、それぞれの期間設定の根拠を明確にすることで、金融機関に対する計画の具体性と信頼性が向上するでしょう。
4)融資の返済期間が短いことのメリットとデメリット
返済期間を短く設定すること(短期返済)は、総支払利息をおさえたいという考えからくるものです。確かに、期間が短くなれば支払う利息の総額は大幅に減少するというメリットが得られます。
しかし、その反面、毎月の返済額が増加し、創業期の不安定な時期にキャッシュフローを著しく圧迫するリスクをともなうことを理解しておきましょう。売上計画がわずかに下振れしただけで、資金ショートの危機に直面する可能性があります。
そのため、短期返済を希望する場合でも、想定外の事態に備えて、事業の成長を止めずに無理なく返済できる期間に設定しなければなりません。リスクヘッジの必要性を十分に検討することが重要です。
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2.創業融資の返済期間を決定する要素
最適な返済期間を設定するためには、公的なルールだけでなく、自社の事業計画と収益予測に基づいた具体的な数値を検証しなければなりません。事業の実現可能性と資金繰りの安定を両立させるために、以下の要素を慎重に検討することが求められます。
日本政策金融公庫の場合、返済期間は借入申込書に希望を記入しますが、担当者との面談のときに改めて協議することになります。
よくある間違いが「念のためにできるだけ長期にしたい」と希望することです。担当者から「自信がない人だ」と思われかねません。希望する返済期間は、収支予測等に基づいて論理的に説明することが重要です。
1)事業計画と収益予測をつくる
返済期間を決定する最大の要素は、作成した事業計画と収益予測です。希望的観測を排除し、売上・経費・利益の予測に基づき、毎月の返済に充てられる資金余力、すなわちキャッシュフローを正確に算出します。
売上が見込みを下回るような悲観的なシナリオでも、事業の成長を止めずに無理なく返済可能かを検証することが、資金繰り圧迫の不安を解消する鍵となります。審査では、このキャッシュフローが返済を賄えるだけの十分な余裕があるかどうかがもっとも重視されるでしょう。
2)融資の金利と総返済額への影響を考慮する
固定金利・変動金利、および適用利率といった融資の金利を確認し、返済期間を短縮した場合と長期化した場合で、支払う利息の総額がどれだけ変化するかをシミュレーションします。
一般に、返済期間が長引くほど、利息を支払う期間も長くなるため総利息が増える傾向があるでしょう。この金銭的な負担の増加と、月々の返済額が少なくなることによる資金繰りの安定という2つの要素を比較検討し、自社にとってもっともバランスのよい点を見極めることが肝心です。
3)事業の特性と収益化までの期間をシミュレーションする
事業の特性、たとえば初期投資の規模や、じっさいに収益が上がりはじめるまでのリードタイム(期間)を考慮に入れることも重要です。早期に収益が見込めるビジネスモデルであれば短期返済も検討しやすいでしょう。
一方で、初期に大きな資金が必要なビジネスモデルの場合は、元金据置期間を活用するなど、事業特性に合った期間設定が重要となります。これにより、初期の資金繰りへの影響を最小限におさえることができるのです。
3.キャッシュフローを安定させる返済原資戦略
金融機関は、借り手が本当に返済できるのかを客観的な指標で評価しています。この審査の視点を理解し、それに合わせた戦略的な返済計画を立てることで、キャッシュフローの安定性を最大化することが可能になります。
1)返済原資は「利益+減価償却費」で計算する
融資担当者が返済能力をチェックする際の鉄則として、返済原資は「利益(税引後当期純利益)+減価償却費」で計算されることを理解しておきましょう。これは、減価償却費が会計上は費用となるものの、じっさいには現金の支出をともなわないため、手元に残る資金として扱われるからです。
金融機関は、この返済原資が年間返済額に対して十分な余裕を持っているかを確認します。これを「DSCR(デット・サービス・カバレッジ・レシオ)」と呼びます。この計算が、無理のない返済期間を決める土台となるため、事業計画書ではこの返済能力を明確に示すことが必要です。
2)【リスク回避】元金据置期間(猶予期間)の上手な活用法
創業期は想定外の初期費用や、売上の立ち上がりの遅れなどにより、一時的に資金繰りが厳しくなる可能性があります。「短期的な資金繰りへの不安」を解消するための有効な手段が、元金据置期間(返済猶予期間)です。
この期間中は利息のみの支払いに留まり、元金の返済が猶予されます。とくに、事業が軌道に乗るまでの期間を見越して据置期間を設定することで、初期のキャッシュアウトを最小限におさえ、事業に必要な投資や運転資金に資金を集中投下できます。
3)競合下の低価格戦略と事業成長を両立させる返済プラン
市場参入初期には、競合との価格競争により、一時的に収益性が低くなる戦略を採用せざるを得ないケースも考えられます。返済計画を立てる際には、このような初期の収益が低い時期を見越して据置期間を設定し、その後の価格戦略の変更や事業拡大によって収益を改善し、初期投資の回収タイミングを確保するかを明確にすることが重要となります。
たとえば、事業計画書に具体的な収益改善の道筋を示すことで、金融機関に対しても、短期の収益低下が返済能力に与える影響は限定的であることを伝えられます。
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4.失敗しない最適な返済期間のシミュレーション
最適な返済期間は、事業特性やキャッシュフローに基づいて導き出されるものであり、単なる「希望」であってはなりません。ここでは、具体的なシミュレーションを通じて、自社が許容できる返済プランを見つけ出す方法を解説します。
1)業種ライフサイクルと収支計画のバランス
返済期間の決定には、事業がどのようなライフサイクルをたどるかを予測することが重要です。たとえば、ITやオンライン教育事業の場合であれば、「初期投資→会員数増加期→安定期」というライフサイクルに合わせることになるでしょう。初期投資期間には元金据置期間を設け、会員数増加期に合わせて返済額を段階的に増やすなど、収支計画の変動に合わせた柔軟な返済期間と額のバランスをシミュレーションすることが成功の鍵となります。
2)事業が許容できる毎月返済額の算出
融資希望額(例:800万円)と目標返済期間(例:3〜5年)を念頭に置きつつ、まずは事業の収益予測に基づいたキャッシュフローから「最大返済可能額」を逆算する方法がもっとも現実的です。
悲観的な収益予測であっても、毎月最低限残る資金余力(返済原資)から、事業継続に必要な内部留保などを差し引いて、毎月確実に返済に充てられる金額を算出します。この算出された「最大返済可能額」を基準に、逆算で最適な返済期間を導き出すことで、資金繰りを圧迫する不安を解消できるでしょう。
3)柔軟な返済プラン(売上連動型など)に関する知識と交渉術
民間金融機関のなかには、特定の条件下で売上連動型のような柔軟な返済方式を提供する制度も存在します。売上が少ない時期には返済額をおさえ、好調な時期に多く返済することで、資金繰りの波を吸収できるメリットがあります。
このような柔軟なプランを交渉する際には、具体的な収支計画や市場調査の結果を根拠資料として準備し、「このプランであれば、事業の成長を早め、結果的に早期完済につながる」という論理的な説明をすることが、金融機関の理解を得られやすくなります。
5.融資審査に通る返済計画書の作成と最終チェック
最適な返済期間が決定したら、その内容を金融機関に提出する事業計画書に、説得力のある形で落としこむ必要があります。
1)専門家が教える、説得力のある返済計画書の書き方
創業計画書に記載する返済計画は、単に期間を示すだけでなく、自己資金との整合性や、「この融資を受けることで事業がどのように成長し、その結果、確実に返済が可能になるか」という論理的な根拠を明確に示す記述のコツが求められます。
返済計画の根拠となる収益予測の数字を、市場規模や競合分析に基づいた客観的なデータで裏付けることが、金融機関の納得感につながるでしょう。
2)計画見直し:日本公庫と銀行、リスケジュールに関するルールの違い
万が一、事業計画どおりに収益が上がらず、返済が厳しくなった場合のために、リスケジュール(返済期間の再設定)に関する知識を持っておく必要があります。日本公庫は、民間銀行と比較して、リスケジュールに比較的柔軟に対応する傾向があります。
一方で、民間銀行は、貸し倒れリスクを避けるため、日本公庫よりきびしい対応となるケースが少なくありません。この日本公庫と民間銀行での対応の違いを知っておくことは、事業の予期せぬ停滞時に、どの金融機関に相談すべきかを判断するために非常に重要となります。
6.事業計画書をつくるなら事業計画書作成ツールがおすすめ
創業融資の審査を成功させるためには、論理的かつ説得力のある事業計画書と、それを裏付ける詳細な収支計画が不可欠です。
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