無担保の創業融資を勝ち取る方法を融資のプロが解説
新たな事業を立ち上げたいと考えている起業家にとって、資金調達は事業成功の鍵を握る重要な要素です。とくに、担保や保証人なしで融資を受けられる「無担保・無保証」の創業融資は、多くの起業家にとって魅力的な選択肢となるでしょう。しかし、その特性を十分に理解せず審査に臨むと、思わぬ落とし穴にはまる可能性も否定できません。
そこで本記事では、融資のプロフェッショナルが、無担保の創業融資を勝ち取るための具体的な方法と、知っておくべき注意点を詳細に解説していきます。あなたの起業を成功に導くための一助となれば幸いです。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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目次
1.そもそも無担保とは
「無担保」という言葉は、借入れに際して土地や建物といった物的資産を担保として提供する必要がない状態を指します。一般的に、金融機関は融資の返済が滞った場合に備え、不動産や有価証券といった担保を求めることが少なくありません。しかし、創業期の企業の場合、十分な担保資産を保有していないことがほとんどであるため、無担保での融資は起業家にとって非常に大きなメリットとなり得ます。
無担保と混同されやすい言葉に「無保証」がありますが、これらは明確に異なる概念です。無保証とは、融資を受ける際に、連帯保証人などの人的保証を必要としないことを意味します。つまり、無担保が資産を担保とするか否かを指すのに対し、無保証は返済を保証する人物の有無を問うものです。
創業融資において、個人事業主が融資を受ける場合は、ほとんどのケースで「無保証」(保証人なし)となります。一方、法人で融資を受ける際は、従来は経営者本人が連帯保証人となる「経営者保証」を求められるのが一般的でした。しかし近年では、「経営者保証」を不要とする制度が広がってきており、法人でも「無保証」の融資を受けることも可能です。
現在、政府は中小企業の成長支援を目的として、無担保・無保証での融資を積極的に推進しています。とくに、創業期の中小企業や小規模事業者に対する支援策として、日本政策金融公庫などを通じた無担保・無保証融資の制度拡充が進められているのです。
これは、資金調達の障壁を低減し、起業家がより挑戦しやすい環境を整備しようとする国の意向が反映された動きといえるでしょう。この流れは、今後も継続されることが予想されます。
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2.無担保で受けられる創業融資
起業を志す方々にとって、無担保で資金を調達できる創業融資は、大きなチャンスとなるでしょう。ここでは、無担保での融資が可能な主要な制度について、その特徴や活用ポイントをくわしく掘り下げていきます。
参考:日本政策金融公庫での創業融資の申し込みの全てを融資の専門家が徹底解説
1)日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府が全額出資する政府系金融機関であり、中小企業や個人事業主への資金供給を主な目的としています。創業支援にも力を入れており、多くの起業家が最初の資金調達先として利用を検討する金融機関です。公庫の提供する創業融資制度のなかには、無担保・無保証で利用可能なものが多数存在し、その柔軟性が大きな魅力となっています。
日本政策金融公庫の創業融資制度、とくに「新規開業・スタートアップ支援資金」などは、要件を満たせば無担保・無保証での利用が可能です。これは、一般的な金融機関の融資と比較して、起業家にとって非常に有利な点といえるでしょう。
担保となる資産がない、または保証人を立てることに抵抗がある場合でも、公庫の融資は強力な選択肢となり得ます。公庫は、起業家の熱意や事業計画の具体性、そして将来性を重視する傾向にあるため、しっかりと準備をすれば無担保・無保証での融資も十分に実現可能です。
2)信用保証協会付き融資
信用保証協会付き融資は、金融機関が融資をおこなう際に、信用保証協会がその債務を保証することで、企業の信用力を補完する制度です。創業期の企業や担保資産が不足している企業でも、信用保証協会の保証を得ることで、金融機関からの融資を受けやすくなります。
日本政策金融公庫と並び、創業融資を検討する際に重要な選択肢となるのが、信用保証協会付き融資です。地域の信用保証協会を通じて、民間金融機関からの融資を受けることが可能となります。
この制度は、金融機関が融資を決定する際のハードルを下げる効果があり、創業間もない企業にとっては非常に有効な資金調達手段となるでしょう。多くの地方銀行や信用金庫がこの制度を活用しており、地域の金融機関との取引実績を築くうえでも有用な選択肢となります。
一般的に信用保証協会付き融資を利用する際には、経営者保証が付されるケースが多いですが、物的担保を不要とすることは十分に可能です。とくに創業融資の場合、担保物件を保有していない起業家が大半であるため、信用保証協会もその点を考慮してくれます。
ただし、法人への融資における経営者保証については、その原則的な見直しが進められているものの、実情としては求められる場合が多いことを理解しておくべきです。それでも、担保なしで融資を受けられるメリットは大きく、資金調達の選択肢を広げるうえで重要な役割を果たすといえます。事業計画の具体的な内容と、返済能力を明確に示すことができれば、担保なしの融資を実現できる可能性はさらに高まるでしょう。
3.無担保だけではなく無保証で融資を受けるポイント
法人で融資を受ける際に、無担保に加え、無保証で融資を受けられれば、起業家にとって理想的な資金調達方法といえます。しかし、そのためには金融機関が納得するだけの準備とアピールが不可欠です。
ここでは、無担保だけでなく無保証での融資を勝ち取るための具体的なポイントを解説します。これらの要素を徹底的に準備することで、あなたの融資成功の可能性は飛躍的に高まるでしょう。
1)具体的な事業計画書を準備する
無担保・無保証での融資を実現するためには、何よりも事業計画書の質が問われます。事業計画書は、あなたの事業がどのように収益を生み出し、融資を返済していくのかを具体的に示すための重要なツールです。
市場分析、競合分析、ターゲット顧客、具体的なサービスや商品の内容、販売戦略、マーケティング戦略など、あらゆる側面から事業の実現可能性と成長性を論理的に記述することが求められます。金融機関の担当者は、事業計画書を通じて、あなたのビジネスモデルの妥当性や将来性を判断するため、細部にいたるまで練り上げられたものであることが必要です。
2)現実的な資金繰り計画書を準備する
事業計画書と並んで重要な書類が、資金繰り計画書です。資金繰り計画書は、事業開始後、いつ、どれだけの資金が必要となるのか、どのように資金を調達し、返済していくのかを具体的に示す書類です。売上予測に基づいたキャッシュイン、仕入れや人件費、家賃などのキャッシュアウトを詳細に予測し、資金ショートを起こさない現実的な計画を提示することが求められます。
とくに、創業期は想定外の出費が発生しやすい傾向にあるため、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。金融機関は、資金繰り計画書を通じて、あなたの返済能力と事業の持続可能性を評価します。
3)3割程度の自己資金を確保する
無担保・無保証での融資を希望する場合、自己資金の確保は非常に重要な要素となります。一般的に、創業融資においては、融資希望額の3割程度の自己資金を用意することが望ましいとされています。
自己資金は、起業家の本気度を示すだけでなく、事業に対するリスクテイクの姿勢を金融機関にアピールする材料にもなるからです。十分な自己資金があることで、事業が軌道に乗るまでの運転資金の確保や、予期せぬ事態への対応力が向上し、結果として金融機関からの信頼を得やすくなります。
4)創業者の個人資産を確保する
直接的な担保にはなりませんが、創業者の個人資産の状況も、金融機関が融資を判断するうえで考慮する要素のひとつです。これは、万が一事業がうまくいかなかった場合でも、返済能力が皆無ではないという安心材料となるためです。
預貯金や有価証券、不動産など、開示できる範囲で個人の資産状況を整理し、いざというときの対応力を示すことができれば、交渉の場において有利に働く可能性があります。
5)無保証を交渉する
融資の交渉において、創業者自らが「無保証」を訴える姿勢は非常に重要です。金融機関は、リスクを最小限に抑えたいという本質的な考えを持ちます。そのため、原則として保証を求める傾向にあります。
しかし、経営者保証免除特例制度のように、経営者保証を不要とする制度も存在します。まずは制度の特性を理解し、そのうえで自社の事業計画の優位性を明確に伝え、無保証での融資が可能であると積極的に交渉していくべきです。
民間銀行の融資では、経営者保証が一般的です。しかし、国の施策として経営者保証ガイドラインが策定され、合理的な理由があれば保証を不要とすることが可能になりました。ガイドラインに則り、自社の事業が健全であり、担保や保証がなくても十分な返済能力があることを、具体的なデータや計画書を用いて論理的に説明し、積極的に無保証を交渉する姿勢が求められます。
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4.無担保・無保証の融資の注意点
無担保・無保証の融資は、担保や保証人が不要なため、経済的・心理的負担が小さくなっていることが特徴です。しかし、いくつかの注意点も存在します。注意点を理解せずに安易に飛びつくと、後の事業運営に支障をきたす可能性も否定できません。ここでは、無担保・無保証の融資を受ける際にとくに留意すべき事項について解説します。
1)金利が高い
一般的に、無担保・無保証の融資は、有担保や保証人付きの融資と比較して金利が高めに設定される傾向があります。無担保・無保証の融資は金融機関にとって、貸し倒れリスクが高いと判断されるため、リスクの補填として金利に上乗せされるのが実情です。
融資を受ける際には、金利負担が事業の収益性や資金繰りに与える影響を十分に検討し、返済計画に無理がないかを確認することが重要です。わずかな金利差でも、長期的な返済期間を考えると総返済額に大きな影響を与える可能性があります。
2)経営判断の鈍化
無担保・無保証の融資は、一見すると非常に有利に見えますが、その反面、経営判断の緊張感を失わせるリスクもはらんでいます。返済義務がない、あるいは返済に対するプレッシャーが少ないと感じてしまうと、事業に対する真剣さや責任感が希薄になり、結果として無計画な経営に陥る可能性があるからです。
借入れた資金は、あくまで将来的な返済義務をともなうものであるという認識を常に持ち、責任感を持って経営に取り組むことが不可欠です。資金の使い道を明確にし、無駄な支出をなくし、常に効率的な事業運営を心がけましょう。
3)踏み倒しは危険
無担保・無保証の融資であっても、返済義務がなくなるわけではありません。借入れた資金は、たとえ担保や保証がなくても、契約に基づいて返済しなければならない債務です。返済を怠る、いわゆる「踏み倒し」をおこなうことは、法的な責任を問われるだけでなく、社会的信用を著しく損なう行為となります。
融資の返済を滞納したり、踏み倒したりした場合、その情報は信用情報機関に記録されます。この信用情報は、新規融資やクレジットカード・住宅ローンの審査など、あらゆる金融取引において不利に働くことになります。一度信用情報に傷がつくと、その回復には長い時間がかかり、ビジネスの拡大や個人の生活にも大きな悪影響を及ぼすことになるでしょう。
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