創業融資が減額される理由はナニ?起業のプロが大公開
起業という夢の実現に向けて、多くの方が最初に検討するのが創業融資です。しかし、希望どおりに満額融資を受けられるとは限りません。むしろ、さまざまな理由から減額されてしまうケースも少なくありません。
本記事では、創業融資が減額される具体的な原因を、起業の現場を知り尽くしたプロの視点から徹底的に解説します。最後まで読めば、満額融資を目指すために、何が重要なのか、どのような点に注意すべきなのかを深く理解することが可能です。本記事が、あなたの起業計画を成功へと導く一助となれば幸いです。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
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目次
1.融資では減額されることがある
創業融資を申込む際、「満額融資が当然」と考えている方もいるかもしれません。しかし、金融機関にとって融資は事業であり、リスクをともないます。提出された事業計画や申請者の状況を慎重に審査した結果、希望どおりの額にならないことは決して珍しくありません。
融資の判断は、申請額の多寡だけで決まるものではなく、事業の実現可能性や返済能力など、多角的な視点からおこなわれます。「満額かゼロか」という二者択一ではなく、審査の結果、一部減額された金額で融資が実行されることも十分にありえるのです。この点を理解しておくことは、今後の資金調達戦略を立てるうえで非常に重要になります。
2.創業融資で減額される原因
創業融資が減額される原因は多岐にわたります。ここでは、具体的なケースを挙げながら、その理由を解説していきます。
1)資金計画に関する原因
①自己資金が不足している
金融機関は、融資希望者の自己資金の額を非常に重視します。自己資金は、事業に対する本気度を示す指標であり、万が一の際の担保となる側面も持ち合わせているからです。
「貯金が少ないから融資を受けたい」という考え方では、金融機関からの信頼を得ることは難しいでしょう。一般的に、総必要金額の2割から3割程度の自己資金が目安とされています。十分な自己資金を準備することは、満額融資への第一歩といえるでしょう。
②融資希望額が大きすぎる
事業計画に対して、融資希望額が明らかに大きすぎる場合も減額の対象となります。根拠のない過大な資金調達は、事業の実現可能性を疑われる要因となるため注意が必要です。
必要な資金を精査し、その内訳を明確に示すことが重要です。金融機関は、提出された事業計画書に基づいて、本当にその金額が必要なのかを厳しくチェックします。
③設備投資が過大
初期投資のなかでも大きな割合をしめる設備投資ですが、その金額が過大であると判断されることがあります。たとえば、事業規模に見合わない高価な設備を導入しようとしている場合や、リースやレンタルで済むものをあえて購入しようとしている場合などが該当します。
本当に必要な設備なのか、よりコストをおさえる方法はないのかを検討し、合理的な設備投資計画を立てる必要があります。
④運転資金の回転期間が長過ぎる
運転資金は、事業を運営していくうえで必要となる資金です。そのなかでも、売掛金の回収期間や在庫の保有期間が長い場合には、資金繰りが悪化するリスクが高まります。
金融機関は、運転資金の回転期間を分析し、資金繰りの安定性を評価します。売上金の回収期間を短縮したり、在庫管理を徹底したりするなど、効率的な資金運営を計画することが重要です。
⑤融資枠の超過
日本政策金融公庫などの公的な融資制度には、融資限度額が設定されています。希望額がその上限を超えている場合は、満額融資を受けることはできません。制度の融資枠を事前に確認し、その範囲内で現実的な資金計画を立てる必要があります。
⑥創業してから時間が経過している
創業融資は、原則として事業を開始して間もない時期の資金調達を支援する制度です。一般的に、創業する前か創業後3カ月以内を目安に申請することが推奨されています。
創業から時間が経過し、ある程度の期間事業をおこなっているにもかかわらず、赤字など具体的な成果が見られない場合、金融機関は事業計画の実現可能性に疑問を持つ可能性があります。
⑦資金使途が不明瞭
融資資金を何に使うのかが明確でない場合、金融機関は融資を実行することを躊躇します。事業計画書には、資金使途を具体的に、かつ詳細に記載する必要があります。
たとえば、「〇〇の購入費用」「△△の人件費」など、費目ごとに金額を明示することが重要です。曖昧な記載は、資金の不正利用を疑われる原因にもなりかねません。
2)事業計画に関する原因
①事業計画書の内容が不透明
事業計画書は、金融機関が融資判断をおこなううえでもっとも重要な書類のひとつです。その内容が曖昧で、具体性に欠ける場合、事業の実現可能性を評価することができません。
市場分析、競合分析、SWOT分析などをしっかりとおこない、客観的なデータに基づいて論理的に事業の将来性を説明する必要があります。
②収支計画が不十分
売上予測、費用計画、利益計画などをまとめた収支計画は、返済能力を判断するうえで非常に重要です。根拠のない楽観的な予測や、費用の見積もりの甘さは、金融機関の信頼を損なう可能性があります。市場調査や過去のデータなどを参考に、現実的で詳細な収支計画を作成する必要があります。
③特定の取引先に依存している
特定の取引先に売上の大部分を依存している場合、その取引先の状況が悪化すると、自社の経営も大きな影響を受ける可能性があります。金融機関は、このようなリスクを懸念します。複数の取引先を確保したり、新たな販路を開拓したりするなど、売上構造の安定化を図ることが重要です。
④フランチャイズ事業である
フランチャイズ事業は、一定のノウハウやブランド力を活用できるメリットがある一方で、本部へのロイヤリティの支払いが発生するなど、独自の収益構造を持つため、金融機関によっては審査が慎重になる場合があります。フランチャイズ契約の内容や、可能な限り本部の経営状況などをしっかりと説明する必要があります。
⑤事業内容が斬新すぎる
革新的なビジネスモデルは、将来性に期待できる反面、実績がないため、リスクが高いと判断されることがあります。とくに、保守的な金融機関や担当者の場合、革新的なビジネスモデルを理解することが難しく、融資を敬遠される恐れがあるかもしれません。
信用金庫など地域密着型の金融機関を利用する場合は、地域の特性や金融機関の得意分野も考慮に入れるとよいでしょう。たとえば、IT関連の事業であれば、渋谷などIT企業が集積する地域に拠点をおくことも有効な戦略のひとつです。
⑥提出書類に不備がある
事業計画書以外にも、住民票、印鑑証明書、確定申告書など、創業融資にはさまざまな提出書類が必要です。これらの書類に不備や不足があると、審査が滞るだけでなく、融資じたいが見送られる可能性もあります。事前に必要な書類をしっかりと確認し、漏れのないように準備することが重要です。
3)経営者に関する原因
①経験・実績が不足している
起業する事業に関する経験や実績が乏しい場合、経営手腕に不安を持たれることがあります。過去の職務経歴やスキル、資格などを具体的に示し、事業を成功させるための能力があることをアピールする必要があります。
もし経験が不足していると感じる場合は、専門家のアドバイスを受けたり、セミナーに参加したりするなど、積極的に知識やスキルを習得する姿勢を見せることも重要です。
②個人の信用情報に問題がある
経営者個人の信用情報は、融資審査において重要な要素のひとつです。過去にクレジットカードの支払い滞納や、自己破産などの経験がある場合、融資を受けることが難しくなる可能性があります。日ごろから信用情報を適切に管理することが重要です。
③面談時の態度に問題がある
金融機関の担当者との面談は、融資の可否を左右する重要な機会です。自信のない態度や、事業内容を十分に説明できない場合、担当者に不安感を与えてしまう可能性があります。事業への熱意や将来性をしっかりと伝え、誠実な態度で臨むことが重要です。
④複数の会社を経営している
すでに複数の会社を経営している場合、それぞれの会社の経営状況や財務状況が審査の対象となります。既存の事業が不安定で、借入れが多い場合などは、新たな融資を受けることが難しくなります。
⑤役員報酬が著しく低い
役員報酬を極端に低く設定している場合、生活費が不足し、事業資金に手を付けてしまうのではないかと懸念されることがあります。また、事業に対するコミットメントが低いと見なされる可能性もあります。したがって、合理的な役員報酬を設定することが重要です。
4)そのほかの原因
①申請時期による予算制限
公的な融資制度には、予算枠が設定されている場合があります。申請が集中する時期や、年度末など予算残高が少なくなっている時期には、審査が厳しくなることがあります。早めの準備と申請を心がけることが重要です。
②景気や政策による審査基準の変動
経済状況や政府の政策によって、金融機関の融資姿勢や審査基準が変動することがあります。たとえば、景気が悪化している時期には、リスク回避の傾向が強まり、審査が厳しくなることがあります。最新の経済情勢や金融政策の動向を把握しておくことも重要です。
③必要な許認可がない
事業をおこなううえで必要な許認可を取得していない場合、事業の継続性に疑問を持たれ、融資を受けることができません。事前に必要な許認可を確認し、確実に取得しておく必要があります。
④過去に破産など債務整理をしている
過去に自己破産などの経験がある場合、金融機関からの信用は著しく低下します。一定期間は、融資を受けることが非常に困難になることを、覚悟しておく必要があります。
⑤税金などの滞納をしている
税金や社会保険料の滞納は、金融機関からの信用を大きく損ないます。融資審査においては、納税証明書などの提出が求められるため、滞納がある場合は、速やかに解消する必要があります。
⑥本店住所を短期間で何度も変更している
本店住所が短期間に何度も変更されている場合、事業の安定性や継続性に疑問を持たれることがあります。明確な理由がない頻繁な住所変更は、金融機関に不信感を与える可能性があります。
⑦賃貸物件に問題がある
オフィスや店舗として使用する賃貸物件が、事業に適さない場合や、又貸しなどの場合は、融資の減額や見送りの理由となることがあります。信用金庫など地域密着型の金融機関では、バーチャルオフィスやシェアオフィスでの創業融資が認められないケースもあります。事前に物件の契約内容や利用規約をしっかりと確認しておきましょう。
⑧リスケジュールの経験がある
過去に借入金の返済条件を変更(リスケジュール)した経験がある場合、返済能力に不安があると判断され、新たな融資を受けることが難しくなることがあります。
3.創業融資で減額されたときの対処法
もし創業融資で希望額よりも減額されてしまった場合でも、諦める必要はありません。状況に応じて、いくつかの対処法を検討することができます。
1)ほかの金融機関で追加融資する
日本政策金融公庫以外にも、信用保証協会の保証付きで、信用金庫や地方銀行から創業融資を受けることが可能です。それぞれの金融機関で審査基準や融資制度が異なるため、複数の金融機関に相談してみるのもひとつの手段です。
2)スモールスタートして半年後に再度申請
一度融資で減額された場合、すぐに再申請しても結果が変わらない可能性が高いです。まずは減額された範囲内で事業を開始し、半年程度の事業実績を積んでから、再度融資を申込むことを検討しましょう。実績を示すことで、金融機関の信頼を得やすくなります。
3)補助金や助成金を検討する
国や地方自治体などが実施している補助金や助成金は、返済の必要がない資金調達手段です。創業期に活用できる制度がないか調べてみましょう。ただし、補助金や助成金は審査に時間がかかる場合があるため、早めの情報収集と申請準備が必要です。
4)クラウドファンディングやビジネスコンテストを活用する
クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人から少しずつ資金を集める方法です。また、ビジネスコンテストで入賞すると、賞金や投資を受けられる可能性があります。これらの手段は、資金調達だけでなく、事業のPRにもつながるというメリットがあります。
5)専門家に相談する
創業融資に詳しいコンサルタントや税理士などの専門家に相談することで、減額理由の分析や、今後の資金調達戦略について具体的なアドバイスを受けることができます。専門家の知識や経験を活用することで、より効果的な対策を講じることが期待できます。
6)経営力向上計画の認定を受ける
中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けることで、信用保証協会の保証枠が拡大されたり、金利が優遇されたりする場合があります。融資枠が不足している場合は、この制度の活用を検討するのも有効な手段です。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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