創業時の資金調達の方法とそれぞれの特徴を徹底解説
起業という夢を実現するためには、綿密な事業計画と並んで、それを実行するための資金調達が不可欠です。しかし、実績のない創業期における資金調達は決して容易ではありません。
本記事では、起業を志す皆さまが、それぞれの事業フェーズや状況に合わせて最適な資金調達方法を選択できるよう、その種類と特徴そしてメリット・デメリットを解説します。創業時の資金調達は、その後の事業成長を大きく左右する重要な要素です。慎重かつ戦略的に資金調達を進めるために、本記事が皆様の一助となれば幸いです。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次
1.創業時の資金調達方法と特徴
創業期には、事業を立ち上げ、軌道に乗せるための運転資金や設備投資など、さまざまな資金需要が発生します。これらの資金を確保するための手段は多岐にわたり、それぞれに特徴が存在します。
以下では、代表的な資金調達方法として「自己資金」「融資」「補助金・助成金」「出資」「クラウドファンディング・ビジネスコンテスト」を取り上げ、それぞれのメリットとデメリットを解説します。
1)自己資金
最初に検討すべきは、ご自身で用意できる自己資金です。これは、事業をはじめるうえでもっとも基本的かつ重要な資金源となります。金融機関からの融資を検討する際にも、自己資金の比率は審査において重要な要素となり、一般的に総必要金額の30%以上が望ましいとされています。
メリット
自己資金の最大の利点は、すぐに利用できることです。また、他人からの干渉を受けることなく、返済の義務や、株式の譲渡による経営権の希薄化もありません。事業計画の自由度が高く、迅速な意思決定が可能です。
デメリット
一方で、自己資金には資金規模に限界があるというデメリットがあります。大規模な事業展開を計画している場合や、初期投資が高額になる場合には、自己資金だけでは賄いきれない可能性もあるでしょう。事業がうまくいかなかった場合には、個人の資産を失うリスクもともないます。
2)融資
金融機関からの融資は、自己資金だけでは不足する場合に有力な選択肢となります。とくに、創業支援制度などを活用すれば、比較的低金利で資金調達できる可能性もあります。
メリット
融資のメリットは、出資とは異なり、経営権を維持できる点です。また、創業支援制度を利用することで、通常よりも有利な条件で融資を受けられる場合があります。
デメリット
しかし、融資には元本と利息を合わせた返済義務が発生します。また、融資を受けるためには金融機関の審査を通過する必要があり、創業初期で実績がない場合には、審査が厳しくなる傾向があります。
3)補助金・助成金
国や地方自治体などが提供する補助金や助成金は、原則として返済が不要な資金調達手段です。創業期における設備投資や人件費、販路開拓など、特定の目的のために活用できます。
メリット
補助金・助成金の最大のメリットは、返済の必要がないことです。また、公的機関からの支援であるため、事業の信頼性向上にもつながる可能性があります。
デメリット
補助金や助成金は、申請書類の作成や手続きが煩雑であり、受給までに時間がかかる場合があります。
また、補助金は競争率が高く、必ずしも採択されるとは限りません。一方、助成金は要件を満たせば基本的に受給できますので、事前に内容を確認し、該当する場合には積極的に検討しましょう。
4)出資
投資家から資金提供を受ける出資は、返済義務がないため、資金繰りの負担を軽減できる可能性があります。また、資金だけでなく、投資家からの経営支援や人脈などの非資金的なサポートも期待できます。
メリット
出資によって、返済不要で大きな資金を調達できる可能性があります。また、投資家によっては、事業の成長に必要なノウハウやネットワークを提供してくれることもあります。
デメリット
一方で、新株発行による出資を受けると、持分比率の低下によって株式が希薄化する可能性があります。そのため、出資を受ける際には、投資家の意向が経営に影響を与える可能性も考慮する必要があります。
5)クラウドファンディング・ビジネスコンテスト
近年注目を集めている資金調達方法として、クラウドファンディングやビジネスコンテストがあります。クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める方法です。ビジネスコンテストは、事業計画を発表し、優秀と認められた場合に賞金や出資を受けられる可能性があります。
メリット
これらの方法は、少額からでも広く資金を集められる可能性があります。また、事業のPRやファン獲得にもつながるというメリットもあります。
デメリット
クラウドファンディングでは、目標金額に達しない場合は資金が得られないこともあります。また、プロジェクトの内容や進捗状況を公開する必要があります。
ビジネスコンテストは、入賞しなければ資金調達につながらないだけでなく、準備に時間と労力がかかる点にも注意が必要です。
2.創業時に自己資金で資金調達する手段
自己資金は、創業におけるもっとも基本的な資金源であり、外部からの制約を受けにくいという利点があります。ここでは、創業時に検討できる自己資金の調達手段について解説します。
1)貯蓄
日々の生活費や将来のために積み立ててきた貯蓄は、創業資金のもっとも直接的な源泉となります。計画的に貯蓄をおこなうことで、事業開始時の経済的な不安を軽減できます。
2)資産の売却
所有している不動産や株式、自動車などの不要な資産を売却することで、まとまった資金を確保できます。ただし、売却には時間や手間がかかる場合があるため、計画的に進める必要があります。
3)贈与を受ける
親族や知人から事業資金として贈与を受けることも、自己資金を増やす手段のひとつです。ただし、贈与税などの税金が発生する可能性があるため、事前に税理士などに相談することをおすすめします。
3.創業時に受けられる融資の種類
創業期は実績がないため、融資を受けるのが難しい場合がありますが、創業者向けの特別な融資制度も存在します。ここでは、創業時に利用できる主な融資の種類について解説します。
1)政府系金融機関
日本政策金融公庫は、創業融資制度を設けており、実績のない創業者にとって非常に重要な資金調達の選択肢となります。担保や保証人が不要な場合もあり、実績で判断されない創業融資は、積極的に検討すべきです。
また、商工会議所や商工会の推薦を受けることで、金利などが優遇されるマル経融資(小規模事業者経営改善資金)を利用できる可能性もあります。
2)信用保証協会保証付融資
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の金融機関からの借入れを保証する公的機関です。信用保証協会の保証が付くことで、金融機関は融資をおこないやすくなります。
創業初期においては、信用保証協会の保証付き融資から始まることが一般的です。保証料はかかりますが、返済実績を積むことで、将来的に信用保証なしのプロパー融資につながる可能性もあります。ただし、代表者の連帯保証や個人資産の提出を求められることが多い点に注意が必要です。
3)信用金庫・信用組合
信用金庫や信用組合は、地域に密着した金融機関であり、小規模事業者に対して柔軟な対応が期待できます。ただし、事業の地域性が重視されるため、事業所が所在する地域の信用金庫・信用組合との関係構築が重要です。
融資額は比較的少額で、金利はやや高めになる傾向があります。
4)制度融資
制度融資は、地方自治体と金融機関が連携して、信用保証協会の保証付きで提供する融資制度です。自治体によっては利子などの一部を補助する制度もあります。ただし、条件や手続きが複雑で、地域密着性が求められることが多いです。
4.創業時に受けられる補助金・助成金
補助金や助成金は、創業時の資金調達において非常に魅力的な選択肢です。ここでは、創業時に活用できる主な補助金・助成金について解説します。
1)創業助成金
創業助成金は、新たに創業、または創業間もない個人や中小企業を対象に、事業立ち上げに必要な設備投資や広告費などの初期費用の一部を助成する制度です。募集時期や助成金額は制度によって異なるため、最新情報を確認する必要があります。
2)小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化などを支援する補助金で、ホームページ作成費用やチラシ作成費用などが対象となります。定期的に募集があり、比較的採択されやすい補助金のひとつです。
3)若手・女性リーダー応援プログラム助成事業
自治体によっては、若手や女性の起業家を対象に、創業初期の費用や事業運営に必要な経費を助成する独自の支援制度を設けている場合があります。お住まいの地域や事業内容に合わせて、利用できる制度がないか確認してみましょう。
4)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者がおこなう革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資などを支援する補助金制度です。大規模な設備投資をともなう事業の場合には、積極的に検討したい制度です。
5)キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための助成金制度です。正社員化や処遇改善などをおこなう際に活用できる場合があり、人材採用や育成に関わる費用の一部を補助してもらえる可能性があります。
5.創業時に受けられる出資
出資は、返済義務のない資金調達方法であり、投資家からの経営支援も期待できます。ここでは、創業時に出資を受けられる主な相手について解説します。
1)ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルは、高い成長が見込まれる未上場企業に対して出資をおこなう投資会社です。多額の資金調達ができる可能性がありますが、事業の成長性や将来性が厳しく評価されます。
2)エンジェル投資家
エンジェル投資家は、個人で創業間もない企業に出資をおこなう投資家です。ベンチャーキャピタルに比べて投資規模は小さいことが多いですが、起業家に対してメンターのような役割を果たすこともあります。
3)社員持株会
社員持株会は、従業員が自社の株式を保有する制度です。従業員のモチベーション向上や企業への帰属意識を高める効果があり、資金調達の手段のひとつとなる場合もあります。
4)他企業からの出資
事業シナジーが見込まれる他企業から出資を受けることもあります。資金調達だけでなく、事業提携や販路拡大につながる可能性もあります。
6.そのほかの資金調達方法
上記以外にも、創業時に検討できる資金調達方法があります。ここでは、クラウドファンディングとビジネスコンテストについて解説します。
1)クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人から少しずつ資金を集める方法です。購入型、寄付型、投資型などさまざまな種類があり、事業の特性や目的に合わせて選択できます。資金調達だけでなく、事業の認知度向上やファン獲得にもつながる可能性があります。
2)ビジネスコンテスト
ビジネスコンテストは、事業計画を発表し、その内容を競うイベントです。優秀な事業計画には賞金や出資が提供されることがあります。資金調達だけでなく、メンターからのアドバイスや、ほかの起業家とのネットワーク構築の機会も得られます。
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本記事では、起業時のさまざまな資金調達方法について、それぞれの特徴、メリット・デメリットをくわしく解説しました。「自己資金」「融資」「補助金・助成金」「出資」「クラウドファンディング・ビジネスコンテスト」など、多様な選択肢のなかから、ご自身の事業規模や状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
ただし、起業を成功させるためには、明確で実現可能性の高い事業計画書が不可欠です。資金調達をおこなう際にも、金融機関や投資家に対して事業の将来性を示す重要なツールとなります。
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