カフェ開業のための事業計画書の書き方、テンプレを紹介

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/02/26  最終更新日: 2024/04/22

「落ち着いた空間のカフェ」や「ユニークな世界観をたのしめるカフェ」をオープンしたいという夢をお持ちの方も多いのではないでしょうか。夢をかなえるには、どのようなカフェ開業の準備が必要なのでしょうか。

カフェ開業の初期費用は、おおよそ700~1,000万円程度とされています。その費用をすべて自己資金でまかなうのはむずかしいため、融資などによる資金調達が必要となります。その際に必要になるのが事業計画書です。

当記事では、カフェの開業を予定する方のために、事業計画書の書き方とテンプレートを紹介しています。カフェの開業事例などもわかりやすく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
プロフィールを見る>>

事業計画書はなぜ必要なのか?

事業計画書とは、以下の3つを可視化したものです。

①「どのような事業を」

②「どのように運営して」

③「どのように収支を立てていくのか」

また、次の3つの理由から、カフェ開業のためには事業計画書が不可欠となっています。

参考:事業計画書とは?何を書けばいい?必要な12項目と3つのポイントについて解説!

資金調達のため

日本政策金融公庫が発行する「新規開業白書2023年版」によると飲食店の開業費用は中央値で735万円、平均値で883万円です。この金額をすべて自身で用意するのはむずかしいため、融資を利用する方が多くなっています。その際に必要となるのが事業計画書です。

融資を受けるための事業計画書では次のような事項を説明します。

  • 開業するあたっての思い
  • この事業に関する経験・実績
  • 経営者の強みとサービスや商品が魅力的である理由
  • 運営体制・運営計画
  • 収支の予測と調達したい資金額、その内訳

融資機関から「この事業をぜひ応援したい」「この事業計画なら返済が滞りなくおこなわれる」と思ってもらえる内容とすることが大切です。

事業計画の作成にあたっては、たった5分で成功する事業計画書かどうかをチェックできる事業計画作成ツールの利用がおすすめです。先輩経営者の経験を集めてデータ化し、事業の成功率を判定します。また、日本公庫に提出する創業計画書も作成可能です。

将来のビジョンを可視化するため

事業計画書を作成することで開業の準備や運営の方針が決まり、ビジネスの将来を可視化できます。

事業計画書の作成は、自分がカフェを開業したいと考えたきっかけや、頭のなかに描いている起業のためのアイデア・プラン・計画を可視化することにつながります。そのため、今後事業継続が困難な事態に陥ったときや、事業計画の見直しが必要になったときにいつでも立ち返ることができます。

また将来のビジョンを可視化することで、自分の考えに抜けや漏れがあることにも気づけるため、早期に手を打つことができます。

事業計画を共有するため

カフェに限らず、自分ひとりで開業することは困難です。

融資を受ける・受けないにかかわらず家族の理解を得るため、雇用をするため、不動産の契約をするために事業計画を伝えるシーンはたくさんあるでしょう。そのさいに事業計画書として可視化され、綿密な計画に裏打ちされた数値が示されていれば、説得力をもって相手と共有できます。

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カフェの事業計画書に必要な項目とポイント

事業計画書に必要となる項目やおさえるべきポイントについて、日本公庫の創業計画書にそって説明します。

創業計画書_ノーマル

出典:日本政策金融公庫「創業計画書」

参考:【記入例あり】飲食店向けの創業計画書の書き方とは?例文を使って徹底解説!

1.創業の動機

なぜいま創業するのかと質問されたら、明確に答えられるでしょうか。

「1創業の動機」では、事業をはじめるに至った背景や理由を明確にし、ビジネスの意義や将来の展望を示すことが求められます。

どのような経緯で創業への意志が固まってきたのか、市場のニーズやトレンドの変化に敏感に、カフェオーナーとしての価値を発揮できる優位性を持っているのかを説明します。そして地域社会においてどのような困りごとを解消できるのか、事業を継続して将来は何を実現したいのかを明記しましょう。

<よい例>

独立を目指してカフェで8年間勤務し、昨年バリスタの資格が取れたことと、叔父が所有物件で営んでいた居酒屋をたたむため、居抜きで譲り受けることが可能となった。付近に大学があるが飲食店が少ないため、学生の憩いの場として落ち着いた雰囲気の本とコーヒーを楽しめるカフェを提供したいと考えている。妻がつくる軽食も提供することで、客単価のアップと夫婦二人三脚での経営を目指したい。

参考:日本公庫の創業計画書【創業の動機】欄の良い例・悪い例

2.経営者の略歴など

審査担当者に、経営者のスキルや経験がカフェ事業の運営にいかに役立つのかをアピールしましょう。

略歴だからかんたんで構わないと思い、時系列順に学歴や職歴などを簡略的に書いてしまうかもしれません。しかし、この欄では経営者の信頼性と能力を示すことが求められるため、詳細に記述することが必要です。

<よい例>

平成◯年◯月 (株)〇〇入社 カフェチェーンでドリンク担当として3年間勤務

令和◯年◯月 〇〇(株)入社
副店長として採用・人材教育・仕入れを担当(5年)、この間にバリスタの資格を取得(〇年〇月)、調理師免許を取得(〇年〇月)、近隣の住民を集めてコーヒー教室の講師を務める(〇回開催)

この例は、融資担当者が、経営者のこれまでの経験で磨かれたスキルや知見が、新しいカフェの運営にいかに発揮できるかを想像しやすくする記述例です。信頼を強く感じられ、審査に通過できる確率を高めるでしょう。

参考:日本政策金融公庫の創業計画書【経営者の略歴等】の書き方と記入例

3.取扱商品・サービス

カフェで提供したいメニューを具体的に考えるさい、必要となるポイントが3つあります。

  1. だれに提供するのか(ターゲットの客層)
  2. いつ提供するのか(営業時間・調理の所要時間)
  3. どのように提供するのか(単価・方法)

メニューは、カフェビジネスのコンセプト設計において中心的な役割を果たします。

1だれに 2いつ
3どのように提供するかによって、メニューを具体的に決められるため、現実的な販売計画をつくれます。どのような客が、いつ来店し、どれくらいの時間滞在するのか、ひとりでいくらの売上げになるのかを試算できるからです。

メニューによって、カフェのコンセプトやイメージも決まります。取り扱う食材や食器、メニューカードのデザイン、内装や外装、インテリア、スタッフの服装、提供する時間帯、客の滞在時間による単価などが順に決まっていきます。

全体像が見えてきたら、予算に合うかどうかを検討します。もっとコストをおさえるべきか、逆に、滞在時間に合わせてメニューを豪華にするか、などを何とおりかシミュレーションすることが必要です。

また、近隣の同業他社の商品・サービスに対して自分のカフェに優位性があるのかも明確化する必要があります。

4.従業員

経営するうえで、人件費はなるべくおさえたいものです。

将来の見通しとして、どの程度の規模のカフェを経営したいのかを考えて、店舗の席数から規模を見積もります。客の数や料理数に対して、調理と接客担当者がそれぞれ何人いればうまく運営できるのかを計算しましょう。これには、スタッフや経営者の勤務時間、有給休暇や急な病気による欠勤なども考慮しておく必要があります。

従業員数は、項目8「事業の見通し」の「人件費」の欄にも記入します。具体的な数値を出しておきましょう。

5.取引先・取引関係など

開業後は、スムーズにコーヒー豆・食材・ドリンクなどを仕入れられなければなりません。仕入れ先の情報をすべてリスト化し、支払いサイクルなども明確にしましょう。

また、レンタルマット、花や観葉植物の交換、クリーニング、メンテナンス業者までを漏れなく書き出しておくことが、見落としのない収支計画をつくるコツです。

カフェでは、販売先が一般個人となるため、現金・クレジット・電子決済取引にわけて記入しましょう。入出金のタイミングについても明確にしておきます。外注先がない場合は、空欄にします。

6.借入れの状況

借入れ額は、カフェ事業に関するものだけではありません。個人の住宅ローン・車やバイクローン・教育ローン・カードローンについても、漏れなく記入します。審査では個人信用情報機関によってすべての借入れを調べられます。正しい金額を偽ることなく記載しましょう。

7.必要な資金と調達方法

カフェ開業や運営に、いくらの資金が必要なのかを理論立てて説明できるようにしましょう。

前述の財務計画(初期投資・資金計画・収支計画・利益目標)にもとづいて、具体的に計算した値から金額を割り出します。

すべての資金のうち、自己資金でどれくらいの割合カバーできるのかも計算します。

(自己資金の割合については、後述します。)

自己資金として認められる金額:
●預金通帳にコツコツと蓄積された金額
●保有資産を売却した資金
●退職金
●親や親族から贈与されたお金(これは自己資金に準ずるものとして見られます)
領収書・源泉徴収票など出所のわかる証拠書類を提示します。

タンス預金や見せ金は、自己資金として認められません。

開業資金だけでなく、事業を継続するために必要となる運営費も計算に含めておきます。これらに基づき申請する融資額を決めましょう。

8.事業の見通し(月平均)

事業計画書の「事業の見通し(月平均)」には、各項目の月々の平均値を記入します。

カフェでの月平均の売上を計算してみましょう。

(下記の月別収支計画書の記入例にしたがって数値を説明します。)

指標となる数字:
●座席数
●客単価(客ひとりの1回の購入金額)
●回転数(率)1日の客数を座席数で除した数
●営業日・営業時間

➀売上高の計算例
計算式
客単価×座席数×回転数×月の営業日数
ランチ(月~土)
●客席     25席
●客単価    ランチセット900円
●回転数    0.8回
●月の営業日数 日曜日定休で26日
売上高
900円×25席×0.8回転×26日=46万円

ディナー(月~木)
●客席     25席
●客単価    ディナーセット4,500円
●回転数
(月~木)0.6回(金・土)0.9回
●月の営業日数 月~木18日 金・土8日
売上高 月~木
4,500円×25席×0.6回転×18日=121万円
金・土
4,500円×25席×0.9回転×8日=81万円
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
売上高 合計 248万円 (創業後、6か月で軌道に乗ると想定)

原価率 35%(勤務時の経験から)

経費
人件費 従業員1人 20万円 専従者1人(妻)10万円

アルバイト3人 時給800円×14時間(3人の延べ時間)/日×26日=29万円
家賃 20万円

支払利息 700万円×年〇.〇%÷12%=2万円
そのほか 光熱費・広告宣伝費
50万円
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
経費合計 131万円

ランチとディナーの価格がちがう場合は、それぞれ計算し合計値を出します。
事業計画書に月別収支計算書を添付する時は、2つの書類のそれぞれの項目の数字を連動させます。

「計算の根拠欄」は、創業当初・6か月後・1年後などにわけて具体的に書きます。根拠は、じっさいの競合他社のリサーチやプレオープンなどの数字をもとに、整合性をもって説明できるようにしておきましょう。

出典:日本政策金融公庫 月別収支計画書 記入例

数字を計算する際のチェック項目は以下の通りです。

  1. 見積金額は相場と比較して妥当か。
  2. 売上の過大見積もりや費用の過小見積もりになっていないか。
  3. 相見積もりを取ったか。
  4. 事業開始後の運転資金(6か月〜1年程度)の赤字を補填する資金はあるか。
  5. 自己資金が少なく、借入依存の資金調達計画ではないか。
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カフェの事業計画例と利益率の算出方法

飲食店の廃業率は、他業種に比べて高いとされています。2023年6月の東京商工リサーチによれば、飲食業の倒産は前年度比73.7%増となり、コロナ禍で過去最多となった2020年につづいて多い数となる見込みです。

あまい見通しによる財務計画では、開業後すぐ資金繰りに窮することになりかねません。運転資金に余裕があるうちに、軌道に乗せるためにも、利益の算出方法を把握して、正確な見積もりをおこないましょう。

飲食店の利益率算出方法

カフェ運営で、重要な数字は売上総利益(粗利益)と営業利益です。

前述の月別収支計画書の金額を参考に、説明していきましょう。

売上総利益(粗利益)は、下記の式で計算します。

  • 売上高ー売上原価=売上総利益

まず、売上総利益の計算です。

価格900円のランチ
原価315円(原価率35%)
売上高900円ー315円=585円(売上総利益)

月別収支計画書の2月の例では
売上高248万円
売上原価87万円 売上総利益 161万円

利益率は次のように計算します。

  • 売上総利益÷売上高×100

上記の数字で考えれば、161万円÷248万円×100=約65%が利益率となります。

つぎに、営業利益を見てみましょう。

売上高からすべての経費を引いた金額を営業利益と呼びます。

  • 売上総利益(売上高ー売上原価)ー経費

価格900円のランチ
原価315円(原価率35%)経費が320円とすると
売上高900円ー315円ー320=265円(営業利益)

月別収支計画書の2月の例では
売上高248万円 売上原価87万円 売上総利益161万円 経費131万円 営業利益30万円

売上総利益と営業利益は、事業を継続できるかどうかの鍵となる重要な指標です。そのため、数字には明確な根拠が必要です。

参考:【記入例あり】飲食店向けの創業計画書の書き方とは?例文を使って徹底解説!

カフェの事業計画例

ここまでは、事業計画書の作成手順を解説してきました。ここからは、中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21から「自家焙煎珈琲と地元野菜が豊富な料理を楽しめるカフェ」の事業例を抜粋して紹介します。

「起業の動機」欄では、自分の熱い想いだけではなく、周りに喜んでもらえるような動機や、地元との連携が説明されています。そのため、独りよがりの理想論だけになっていない地に足のついた内容になっています。

「現状分析」欄ではポジショニングマップを使い、競合分析および競合に対する優位性が明確に述べられています。

店舗・施設計画において、出店エリアの数値データをもとにした状況分析をもとにした出店計画ができています。店舗の概要もしっかりと伝えられ、席数の算出までされています。

成功したカフェの開業体験談

どのようなコンセプトや目的で事業を進めると、成功できるのでしょうか。

次からは、ドリームゲートが取材したカフェの成功例を2つご紹介します。体験談を参考に、事業計画書の内容をブラッシュアップしてみましょう。

飽きのこない居心地のよさが人気のヌフ・カフェ

お気に入りのインテリアや雑誌、音楽を提供するコミュニティとして、次々とカフェで新しいライフスタイルをプロデュースしてきた武田康伸さん。

屋台村プロジェクト補佐として10軒以上の店舗をプロデュースし、1999年恵比寿で『ヌフ・カフェ』をオープン。以降は、半年に1店舗のハイスピードでカフェ開業を果たしています。武田さんのコンセプトは「自宅のリビングルーム」の居心地のよさをそのまま提供するカフェ。スタッフを介したコミュニティ空間ともいえるカフェのなかで、こだわりのアイテムをお客さまに提供します。

武田さんは、子どものころから『生きていくために大切だと感じる商品を扱いたかった。』としてます。ライフスタイルにかかわるすべての商品を取り扱うカフェ経営に興味を覚えたのが開業のきっかけとなったそうです。

武田さんのカフェでは、居心地のよさを感じながらコミュニケーションを楽しみ、居合わす人みんなが、アイデアを共有し合えるコミュニティとしてのカフェの実現をめざしています。

開業資金360万円。物件探しから、ひとりでできるDIYでのスタートでした。店のコンセプトに妥協を許さず、原宿・代官山・恵比寿で、集客を考えた人気エリアを選び、100店舗を下見した末に、予算にも合致した物件にたどり着きました。何があっても自分でどうにかするという強い覚悟が大切だったと語ります。

武田さんは、「スタッフが楽しく仕事ができる職場環境」と「スタッフもお客さまも飽きない居心地のよさ」にこだわっています。店内の絵画・BGMの種類や音量・レイアウトなど、ほんの小さなことでも毎日の変化を楽しめる空間をめざしています。

カフェ1号店開業のデータ
開業資金:360万円
物件取得費:100万円
内装工事:260万円

ドリームゲート「ヌフ・カフェなど若者の支持を集める有名カフェを次々にOPEN」より

懐石料理をアラカルトで味わえるカフェの店舗選び

伊藤ミナ子さんの実家は、1日3組限定の高級料亭、銀座『朝川』です。幼いころから飲食業に親しみ、高校時代のアルバイトでは、大手ファミレス・居酒屋・コンビニエンスストアの運営マニュアルを実体験した経歴を持つ伊藤ミナ子さんの『カフェ・アンバー』についてご紹介します。

若女将として修行後、2店舗目として「若い人に懐石料理を知ってほしい」というコンセプトでカフェ・アンバーを開業しました。料理はすべて朝川の板前がつくる和食です。美味しさと珍しさで人気を博しました。

店舗選びは、若者の食育の意味から渋谷のみに絞ったそうです。駅から徒歩10分以内、路面店以外の3つの条件がそろった物件はなかなかなく、あったとしても保証金が高くなります。しかし、カフェ・アンバーが入店することで、雑居ビルのイメージと集客力アップにつながると交渉し、みごとに予算内での契約に成功しています。

広告宣伝費の予算がなく、情報発信はHPのみ。街頭でチラシを配り、可能な限り雑誌メディアへリリースを送り続けるなか、雑誌『Hanako』へ掲載がきっかけで、メディアで大々的に紹介されるに至りました。

路面店を選ばなかったのは、「お客さまに選んでもらうカフェづくり」がしたいという想いから。『イメージした店に、イメージどおりのお客さまが来店するのが喜びです。』と、伊藤さんは語ります。一流の板前のつくる懐石料理をアラカルトで味わえる「日本に1軒しかないお店」として、若者に支持されるアンテナ店であり続けたいとしています。

カフェ開業データ
開業資金:1500万円
物件取得費:500万円
内装工事費ほか:1000万円

成功例を参考にして、準備が整ってきたら、じっさいに家族や友人を呼んでプレオープンをおこなってみましょう。シミュレーションをおこなうと、開業後に発生する問題点や、見落としていた準備にも気づけるため、よりスムーズな開業が可能です。

ドリームゲート「銀座の高級料亭の味を楽しめるカフェ / カフェ・アンバー」より

事業計画Q&A

カフェの事業計画をつくる際によくある質問を紹介します。。

販売についての検討項目について

Q. カフェ開業における販売計画は、どのような点を検討すればよいのでしょうか。

A. 検討すべき項目は、下記の表を参考にしてください。

意味 事業計画書で記入する箇所など
why なぜ 1.創業の動機・目的
who だれが 2.経営者の略歴 5.従業員などの予定(財務計画にもとづき、家族のみで経営するのか、スタッフを雇用するのか)
what なにを 3.取扱い商品・サービス事業内容、具体的なサービスメニュー
whom だれに/だれと ターゲットとする顧客を明確にする。客層により商品単価を計算する。4.取引先・取引関連など6.お借入れの状況 融資についての計画
where どこで 店舗のロケーション 立地条件によりターゲット・取扱い商品・販売方法を決定
when いつ 店舗の契約日・準備開始日(スタッフ求人&雇用日)開業予定日営業時間
how どのように 事業計画(セールスポイントやターゲット・市場や分析結果)販売形式(対面販売・セルフサービス・テイクアウト・通信販売も検討)販売方式(現金・掛け売り・電子決済・クレジット:締切日・支払日・入金日の確認)
how much いくら 7.必要な資金と調達方法サービス価格にもとづいた事業の見通し

資金計画のたて方

Q. カフェ開業にはいくら必要ですか。また、その調達方法を教えてください。

A. 必要な項目・金額と調達する方法を、下記の表にまとめました。

必要な資金 金額 調達方法 金額
設備資金
  • 店舗契約料(保証金家賃の6~10か月)・礼金(家賃の1~2か月・仲介手数料(家賃の1か月程度)
  • 内外装・看板・設備費(シンク・冷蔵庫・キッチンカウンター・オーブン・エアコン・キャッシャー・コーヒーマシーン・エスプレッソマシーン・棚)
  • 什器備品(テーブル・イス・調理器具・食器・カトラリー・本・花)
  • メニューカード作成費・オープニング広告宣伝費

万円

自己資金

万円

日本政策金融公庫 国民生活事業から借入

万円

運転資金
  • 店舗賃料(直近家賃の前払いが必要な場合も)
  • 水道光熱費
  • 食材仕入・経費支払(スタッフ給与など・広告費・通信費・消耗品費・雑費)

万円

そのほかからの借入(内訳・返済方法)

万円

合計

万円

合計

万円

日本政策金融公庫の創業計画Q&Aによれば、創業資金調達総額に占める自己資金の割合は24%となっています。また、開業から約1年で黒字となる企業は、全体の60%ほどです。創業計画Q&A|日本政策金融公庫

自己資金比率が低い借入依存の場合は、売上が伸び悩んだり、予想外の出費があった場合に、すぐに資金繰りが苦しくなるかもしれません。自己資金と借入金の割合がどの程度であれば、スムーズな返済と事業運営が可能かを入念に考えて、資金計画をたてましょう。

採算が取れる小規模カフェとは?

Q. カフェの売上を安定させて、採算が取れる理想のビジネスをつくるには、どのような計算が必要ですか。

A. 損益分岐点を計算して採算が合うかどうかを考えます。

損益分岐点の計算例を見てみましょう。

例として
売上高
100万円
固定費(費用が一定:家賃・人件費など)20万円
変動費(費用が変わるもの:仕入れ・手数料など)50万円
利益
30万円 とすると

損益分岐点売上高=20÷(1ー0.5※)=40
※変動比率(変動費÷売上高)
50÷100=0.5

この例では、損益分岐点は売上高40万円です。

つまり、売上が40万円を下回ると、採算が取れずビジネスが継続できなくなる可能性があります。

この対策としては以下の方法が考えられます。

売上をアップする方法:

●席数を増やす
●営業日・営業時間を増やす
●価格を上げる
●価格を下げて多く売る
●チラシ・SNSでの宣伝効果を上げる
●新聞・雑誌・メディアにリリースを送る
●メニューやサービスの改善

ただし、ひとつの対策だけで売上が向上するわけではありません。ターゲットとなる顧客の人数や滞在時間帯、人気メニューなど全体のバランスを見ながら改善する必要があります。

物件が未定の状態で事業計画書は作成できる?

Q. 店舗の物件がまだ決まっていなくても、事業計画を作成できますか?

A. 物件が未定では、諸条件が具体化できず、事業計画書を作成することは困難です。

収支計画を正確に計算できないため、創業計画が固まらず現実的な事業計画書は作成できません。立地条件など出店に重要な項目を決定した後、売上予測や経費予測を立ててはじめて完成するからです。

ただし、物件が決まらない状態でも、候補のなかからおおまかな出店場所エリアのリサーチができます。人の往来の数や、周辺にある会社規模や住宅などの環境を調べ、どのようなお客さまをターゲットとするか、営業時間帯はいつが適しているかなどある程度ビジネスのイメージをつかむのです。

近隣の競合店のようすから概算を予測してみると、出店候補の絞り込みがしやすくなるでしょう。他社のメニューやサービスの質を比較しながら、自分の事業では何を特徴として出すのが最適なのかにも気づけます。採算がとれる売上金額から逆算して、物件の条件を絞ることも可能です。

なるべく安く開業するなら?

Q. 開業費用を安くおさえる方法はありますか?

A. ビジネスは、小さくはじめて大きく育てるのが理想です。費用をできる限りおさえる方法を考えてみましょう。

  1. 居抜き物件を活用居抜き物件とは、以前の契約者の店舗がそのまま使える場所です。カフェやコーヒースタンドなどの居抜き物件で条件が合えば、設計・内外装工事などカットできる費用が大きくなります。
  2. DIYで改装費用をミニマムに業者に依頼せずに塗装や壁紙の張替え、メニューカード、看板の自作など自分でできるものがないかを考えてみましょう。
  3. 移動式・自宅でのカフェを検討車による移動販売のカフェスタンド、自宅の一部を利用した小規模なカフェも視野にいれることで費用をおさえられます。
  4. 備品は購入とリースを比較して決定耐用年数や使用頻度を計算して、購入とリースを比較検討しましょう。カフェマシーンやオーブン・食洗器・業務用冷蔵庫などの備品は、リースを利用すれば初期費用をおさえられます。しかし、長期使用する場合は割高になったり、機能的に古くなって買い替えが必要になったりする場合もあります。リース期間中は交換ができない・解約に違約金がかかるなどの条件もあるため、デメリットも考慮して慎重に決めましょう。
  5. コンセプトを熟考居心地のよさを実現する店舗へのこだわりで、内外装や家具・備品の価格が高くなることも想定されます。予算額を超える場合は、実現可能なコンセプトになるよう見直すとともに、各種融資を利用できるかどうかも調べてみましょう。

許認可は必要なの?

Q. 小さなカフェなら、手続きなく手軽にいつでもはじめられますか?

A. カフェの規模や営業形態にかかわらず、開業には所轄の保健所から「飲食店営業許可証」の交付を受けることが必要です。事業計画のなかに、日程を織り込んでおきましょう。

飲食店営業の許可申請までの手順は、以下を参考にしてください。

店舗物件の契約

  1. 内外装業者の契約
  2. 保健所への事前相談
  3. 食品衛生責任者の選定(栄養士や調理師免許がない場合は、食品衛生責任者講習を予約・受講します)※なお、責任者は兼務できないため、1店舗に1人必要。
  4. 内外装工事後の保健所の検査(➀衛生的な建物か:清掃・防火・水はけなど
    ②衛生的な設備か:食器棚やゴミ箱の状態・トイレの場所や数・照明の明るさなど)
  5. 防火管理者の選定と避難計画の提出(30人以上が収容できるカフェの場合
    要件に応じた管理者講習を消防署などで受講)
  6. 営業許可申請

※詳細は、各規定を確認しましょう。

そのほかにも、営業の形態などにより申請が必要なものがあります。

  1. 開業届(税務署)
  2. 深夜酒類提供飲食店営業届(警察署)
    お酒をカフェ内で提供するためだけには申請は必要なし。ただし、深夜(0時ー6時)に提供する場合は、営業の10日前までに申請。
  3. 酒類小売業免許申請(税務署)テイクアウトで酒類を販売する場合
  4. 菓子製造業許可申請(保健所)パンやお菓子のテイクアウト販売の場合

許可されるまでの日数を考えて、カフェオープンに間に合うように、計画的に申請をおこないましょう。

5分でわかる成功事業計画書

5分で自動判定可能な事業計画書の作成サポートツールをためしてみましょう。

自動診断ツールは、数字を何とおりにも書き換えられるため、パターンを変えて事業計画のシミュレーションをかんたんに体験できます。重要な意思決定の前に、何度も試算を重ねて、慎重に事業計画書を完成させましょう。

事業計画書の中心となる財務計画を5分でかんたん作成。しかも、過去に健全経営をおこなってきた多くの先輩経営者たちの蓄積データから、作成した事業計画でビジネスが成功するかどうかをスピーディに判定してくれます。

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