創業融資の運転資金は何か月分が妥当か?【元日本公庫融資課長が監修】

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/01/30  最終更新日: 2024/01/31

創業融資を申請する際、運転資金の計画は重要なポイントとなります。運転資金とは、設備資金以外で事業を行ううえで必要な資金のことを指し、創業後の初期経費や日常の運営費などが含まれます。しかし、日本政策金融公庫の融資申し込み時に創業計画書に記載する運転資金は、何か月分が適切か悩まれる方は少なくありません。

そこで、本記事では、創業融資における運転資金の適切な記載についてくわしく解説します。創業計画書の作成や融資申請に携わる方々が、事業の安定運営を考え抜き、適切な運転資金を計画できるように解説します。運転資金についての正確な知識を身につけ、融資申請の成功を目指しましょう。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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運転資金は何か月分が妥当?

日本政策金融公庫創業計画書

運転資金の借入は、一般的に3か月分程度が妥当と考えられています。事業が軌道に乗るまでには、6か月程度かかることが一般的です。創業計画書には6か月分の運転資金を記載し、そのうち3ヵ月分程度を借入できると考えておくと良いでしょう。6か月程度で軌道に乗らない事業は、成功しないビジネスモデルと見なされることがあるため注意してください。

創業後7か月目で単月黒字になるビジネスモデルを想定してみましょう。この場合、1か月目の赤字額よりも6か月目の赤字額は、大幅に少なくなっているはずです。これらを合計してみると、3か月分程度の運転資金が必要になるということです。

創業計画書に運転資金を記載する際には、根拠のある数字であることが重要です。具体的な経費項目を確認して、これらを1か月あたりの金額として一つひとつ算出し、事業が安定するまでに必要な運転資金を計算して記載しましょう。

創業融資を受ける際には、公庫などの金融機関に対して、運転資金の必要性と計画を説明する必要があります。そのため、創業計画書には、正確な数字を記入することが非常に重要です。事業のスタートを成功させるためにも、根拠のある金額を用いて計画を立てることを心がけましょう。

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運転資金とは

運転資金とは、事業をおこなううえで必要となる資金のことを指し、大きくは「変動費」と「固定費」に分かれます。変動費は、事業活動の規模や売上高の変動に応じて増減する費用です。一方、固定費は、事業を運営するために必要な毎月生じる費用であり、とくに綿密な計算が必要です。

変動費 月の営業実績や売上高に比例して発生する費用

例)材料費・仕入費、外注費、消耗品費、運賃など

固定費 月の営業実績や売上高に関係なく毎月発生する費用

(売上がゼロでも発生する費用)

例)人件費、家賃、リース代、広告宣伝費、管理費、保険料、減価償却費など

1)人件費

人件費は、会社が従業員に対して支払う給与や福利厚生費、交通費などを指します。事業を運営するうえで避けては通れない費用であり、従業員が働いた対価としての給与はもちろん、給与や賞与以外に提供する福利厚生費用も含まれます。

社会保険料や退職金の積立など、法令や社内規則に基づく必要経費も忘れてはなりません。加えて、従業員が通勤するための交通費をはじめとした各種手当が発生し、こうした費用の適正な管理が、人材の確保やモチベーションの維持にも繋がるため重要な費用となります。

2)事務所や店舗の維持費

事務所や店舗の維持費は、会社が事業をおこなうために必要な場所の維持費用を指し、事務所や店舗の家賃が代表例です。家賃は地域によって大きな差が出るため、立地と経済性を考慮した決断が求められます。

水道光熱費は日常のオペレーションに直結する経費で、節水や省エネ対策をおこないつつ、快適な労働環境を維持する工夫が必要です。また、急な故障や設備の更新に備えて、修繕費もしっかり計上することが肝心です。

3)仕入れ

仕入れは、商品や原材料を購入するための費用です。製品や商品を提供するためには、材料や商品の仕入れが不可欠です。仕入れ値の交渉、品質の確保、保管状態の管理など、仕入れに関する多角的な視点が求められます。

ときには外部の専門業者への発注(外注費)が必要な場合もあります。正確なコスト計算と円滑な取引を実現するシステムの構築は、コスト削減にも繋がるため、しっかりと計画を立てたうえで計上しましょう。

4)備品

備品は、企業の日常業務を遂行するために必要な、消耗品や事務用品などの購入費用です。たとえば、オフィス用品や工具、清掃用具などが備品に該当します。事務所や店舗運営においては、日々消費される消耗品や事務用品の出費は見過ごせません。

定期的な在庫管理と購入チャネルの最適化により、効率的な資金利用を図るべきです。無駄な支出を減らすためにも、価格の比較検討とともに、長期的な視野に立った発注計画が重要となります。

5)広告宣伝

広告宣伝費は、企業が商品やサービスを顧客に知らせるためにおこなう広告活動にかかる費用です。ホームページの構築費用やチラシの制作、さらに各種メディアを通じた広告展開など多様な方法が存在します。販売キャンペーンのために使う費用も、広告宣伝費に計上します。

ターゲット層を明確にしたマーケティング戦略のもと、費用対効果を見極めた宣伝活動が求められます。適切なプロモーションは、販売増加への実りある投資となるでしょう。

6)通信

通信費やソフトウェア使用料などは、企業が業務を円滑に遂行するために必要な費用です。現代ビジネスでは通信費も欠かせない経費のひとつで、インターネット接続料や携帯電話の通信費、ソフトウェアの使用料などがこれにあたります。

とくに、クラウドサービスの利用が増えている今日では、使用料の細かなチェックが必要です。また、店内で流すBGMの著作権使用料なども忘れてはならないポイントです。

7)販売

製品や商品を顧客に届けるためには、販売活動が不可欠です。オンラインショップの場合は、Webサイトの運営コストや決済手数料、物流費などが生じます。

また、梱包材購入費や配送経費は、とくにEコマースビジネスでは大きなウエイトを占めることがあります。効率的な物流システムとコスト管理が成功への鍵となります。

8)その他

企業活動には、見過ごしやすいが確実に必要となる経費が存在します。たとえば、事業所得税や、会議や研修のための費用なども、適正な運営には欠かせません。こうした「その他」の項目にも目配りをすることで、予期せぬ出費にも対応が可能となります。

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【創業計画書】運転資金の記入の仕方

創業計画書における「運転資金記入のポイント」と「運転資金の記入で間違いやすい項目」について解説します。運転資金は事業の安定した運営に直結する重要な要素になるため、正確な数字を把握し、適切に計画を立てることが求められます。

参考:日本政策金融公庫「創業の手引(創業計画書の記入例)」

1)運転資金記入のポイント

まず、運転資金の記入において注意すべきポイントは、設備資金と合計して「必要な資金」と「調達資金」の金額が一致していることです。つまり、事業を進めるうえで必要な資金の総額を正確に把握し、それをどのように調達するのかを明確に示す必要があります。

また、運転資金の金額は「事業の見通し(収支計画)」との整合性も重要です。「事業の見通し」では、事業の収入や支出を見積もり、利益や損失を予測します。運転資金の記入も、この収支計画と整合性が取れるようにする必要があります。つまり、事業が安定するまでに必要な運転資金を正確に算出し、収支計画の範囲内で資金を調達することが重要です。

2)運転資金の記入で間違いやすい項目

運転資金の記入においては、間違いやすい項目が存在するため注意が必要です。

まず、店舗の敷金や保証金などは、「設備資金」に該当するため注意してください。一方で、家賃や礼金は運転資金に含まれます。事業が安定するまでの期間における、家賃や礼金の支払いに必要な資金を運転資金として記入しましょう。

さらに、運転資金には生活費やプライベートな支出は含まれません。創業時に必要な資金は、事業を安定させるための資金であり、個人の生活費やプライベートな支出は、別途計画する必要があります。また、個人事業主の場合、事業主の給与は経費に該当しないため注意が必要です(個人事業主には給与という概念がないため)。

運転資金の計算方法

創業計画書作成時における運転資金は「収支計画」や「返済計画」をもとに、適切な金額を計算する必要があります。

まず、収支計画を作成します。これは、事業の収入と支出を明確にするための計画です。収入は主に売上から見込まれるものであり、支出は仕入費用や人件費、広告宣伝費などの運転資金に関わるものです。収支計画を作成することで、事業の収益性や収支のバランスを把握できます。

収支計画を策定するうえでもっとも重要なことが、売上予測です。これは、事業の将来の売上を予測するものです。収支計画を考える際には、売上予測が、実現可能性の高い計画にするために重要です。市場の需要や競合状況などを考慮し、売上の見込みを計算することで、事業の成長性や収益性を見積もることが可能となります。

併せて返済計画を考えます。創業融資を受ける場合、返済期間や金利などの条件が設定されます。これらの条件を考慮し、事業の収益をもとに返済計画を作成します。返済計画を作成することで、借入れの返済に必要な金額を把握可能です。

以上の計画などをもとに、運転資金を計算します。創業計画書には、運転資金の計算方法を明確に記載し、公庫担当者に説明する必要があります。第三者が理解できるように分かりやすく書くことを心がけましょう。

参考:日本政策金融公庫「創業の手引(収支計画・返済計画・売上予測)」

日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫は、創業を夢見る起業家たちへ充実した支援を提供しています。具体的な資金調達手段として創業融資を活用でき、これには手厚い条件や金利優遇などの特徴があります。

とくに、新しくビジネスをはじめる方々を対象にした「新創業融資制度」や「新規開業資金」が一般的です。充実した支援体制のもと、スムーズに事業立ち上げがおこなえるようなサービスが提供されています。

1)新創業融資制度

日本政策金融公庫では、創業・スタートアップを支援するために「新創業融資制度」を提供しています。この制度は、新たに事業をはじめる方または事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象としており、「無担保・無保証人」でも利用可能なため、安心して融資を受けることができます。

ただし、適正な事業計画を策定し、当該計画を遂行する能力が十分あることが条件となります。そのため、創業計画書の提出や事業計画の内容確認、創業資金総額の10%以上の自己資金などが必要です。

参考:日本政策金融公庫「新創業融資制度」

2)新規開業資金

新規開業資金では、創業する業種や創業時の年齢、性別などさまざまな条件に応じた融資制度を提供しています。新たに事業をはじめる方またはおおむね事業開始後7年以内の方を対象としており、「女性・35歳未満の若者・55歳以上のシニア」などの条件を満たす場合には金利優遇など、有利な条件での利用が可能です。

「担保を不要とする融資制度」や「経営者保証免除の特例制度」などの併用も可能です。詳しくは公庫窓口や専門家に相談してみましょう。

参考:日本政策金融公庫「新規開業資金」

創業計画書作成ツールの活用

創業計画書は、融資を受ける際には必須の書類です。事業のビジョンが明確になり成功率がアップするため、融資を受けない場合にも作成が推奨されます。しかし、創業計画書作成は難しく、はじめて作る際には何から手を付けたらよいか戸惑う方も少なくありません。そういった場合には、創業計画書作成ツールがおすすめです。

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創業計画書を作成することで、自分のアイデアやビジョンを整理し、具体的な計画を立てることができます。また、経営者や従業員、関係先が計画を共有することも容易となります。さらに、創業計画書は、補助金申請時の添付資料や、金融機関への融資申込時に必要な書類となるため、作成しておけばさまざまな場面で活用可能です。

事業計画書の作成サポートツールを活用することで、創業の準備をスムーズに進めることができます。自分のアイデアを整理し、成功への道筋を明確にするためにも、創業計画書作成ツールの利用を積極的に検討してみましょう。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
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