融資が決まる、事業計画書の書き方【元日本公庫の融資課長が監修】
融資を受けるには事業計画書が不可欠です。
しかし、何を書けばよいかわからない方も多いのではないでしょうか。
創業計画書や事業計画書、企業概要書など似たような書類が存在することで、なおさら難しく感じてしまいます。
事業計画書は融資を受ける際に必要となりますが、じっさいの事業運営にとっても非常に重要な書類です。
ビジネスプランが明確になり、事業の成功率がアップする効果も確認されています。
今回の記事では、融資獲得にむけた事業計画書の書き方のコツやポイントなどを解説します。
また、事業計画書の記入例やテンプレートなど、ダウンロード可能な書式や便利なサポートツールも紹介します。
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ブラウザ上の操作で事業計画を作成、創業計画書もエクセルでダウンロード可能
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次
事業計画書とは
事業計画書とは、ビジネスのアイデアや利益を生み出す方法を明確化し、計画をまとめたものです。通常、融資の申請に必要なものとされますが、入念に練り上げられた事業計画書はビジネスの目標達成や成功に向けた指標となります。
創業計画書・事業計画書・企業概要書は、いずれもビジネスプランを明確化するものですが、つくるタイミングや内容が異なります。
創業計画書 | 事業計画書 | 企業概要書 |
これから事業をはじめる人・事業をはじめて間もない人が対象の、日本政策金融公庫の融資申請書類。創業時につくる事業計画書を「創業計画書」といいます | 事業の見直しや資金調達が必要になったときに作成する。ビジネスモデルや経営戦略の見直しや、売上や経費などの実績と今後の見立てなどをまとめたもの。 | すでに事業をおこなっており1期以上決算を終えている人が、日本政策金融公庫の融資に申込む際の申請書類 |
事業計画書が必要な理由
事業計画書は融資を受けるために必要な書類ですが、ビジネスにおいてもさまざまな効果があります。
起業において、事業計画書は経営者にとって重要な役割を果たし、ビジネスの方向性を示す羅針盤となります。感覚に頼っていた事業内容も、事業計画書のテンプレートに落としこむことで、抜け漏れや矛盾点が明確になります。また、どのようなスケジュールで何を実行すべきかが明確になるため、事業成功に向けた確率を高めることが可能です。
資料:中小企業庁委託「小規模事業者の事業活動の実態把握調査(2016年1月)」
1)融資獲得のため
審査される項目を事業計画書の作成時に熟考することで、面談がスムーズにいき融資獲得につながります。また、わかりやすく作成することで、融資担当者への説明も効果的におこなえます。
2)イメージを具体的かつ明確にするため
初めは紙に書き出すなどして、漠然としたイメージだったものを少しずつ具体化します。事業計画書の項目に沿って作成することで、アイデアがより具体的かつ鮮明なビジョンへと変わります。
3)事業ビジョンを共有するため
もともとは代表者の頭の中にあったビジネスアイデアを紙に書き出し「見える化」することで、他者と事業ビジョンを共有できます。事業ビジョンを社内共有することで会社のブランディングを促進でき、外部関係者と共有すればビジネスパートナー獲得や資金調達も可能になります。
4)事業成功の可能性を高めるため
作成した事業計画書を第3者にチェックしてもらうことでブラッシュアップが可能です。また、計画がより鮮明になることで、成功につながるプランができあがります。
参考)
事業計画書とは?何を書けばいい?必要な12項目と3つのポイントについて解説!
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
テンプレートから見る事業計画書記入例(創業計画書)
創業時の資金調達には、日本政策金融公庫の創業融資がおすすめです。起業時の実績のない事業者でも、日本政策金融公庫なら積極的に融資を検討してもらえます。
日本政策金融公庫から創業融資を受ける際の必要書類のひとつが、創業計画書(創業時の事業計画書)です。日本政策金融公庫では、9業種の創業計画書の記入例も公開していますので、参考にして作成しましょう。
1)創業計画書の項目ごとの書き方
創業計画書の記入例を参考に、9つの項目について説明します。
①創業の動機
起業する上での背景や動機、具体的な事業計画や諸準備、セールスポイントや社会貢献性などを明確にした計画書を作成します。加えて、家族などの理解を得ていることや、事業が社会に与える影響をどのように考えているかをアピールします。
②経営者の略歴等
新規事業を開始する前には、その業界や業種における経験が欠かせません。そのことを伝えるには、過去の勤務先や担当していた業務、役職、そして実績についても具体的に振り返り、明記する必要があります。さらに、過去の事業経験や事業に活かせる資格、知的財産権などもくわしく記載しましょう。
③取扱商品・サービス
できるだけ詳細な記載を心がけましょう。商品やサービスの具体的な特徴が明確に記載されているほど、企業のこだわりや情熱を印象づけることが可能です。書き切れない場合は、別紙に記載して添付することも検討してください。自社の強みや、競合他社に対する優位性を明確に示すことで、ビジネスとして成り立つ計画であることをアピールできます。
④従業員
人件費の計算には、従業員の人数が必要不可欠であり、事業計画においても重要な要素です。人件費の根拠欄に従業員の具体的な数を書きますので、整合性がとれるように記述しましょう。
⑤取引先・取引関係等
ここでは、安定した販売先や仕入先があることをアピールします。販売先が個人の場合には、現金決済やクレジットカード決済、電子決済に分けて書きましょう。外注を行わない場合は、該当欄を空欄にします。
⑥お借入の状況
記入漏れなどがないよう気をつけて記載しましょう。事業の借入れに限らず、住宅ローン、自動車やバイクローン、教育ローン、またクレジットカードローンなどの個人的な借入れもすべて記載します。未記入でも「個人信用情報」をチェックされますので、必ずすべての借入れを記載しましょう。
⑦必要な資金と調達方法
必要な資金は、適切に計画された金額でなければなりません。また、必要な資金に見合った自己資金の用意も極めて重要です。
日本政策金融公庫の新規開業資金の場合、自己資金の要件はありませんが、じっさいには20%~30%程度の自己資金が望ましいでしょう。自己資金は、預金通帳で確認できるものに限定され、一時的に借り入れただけの見せかけの資金や手元に置いてある現金(タンス預金)は、自己資金に含まれませんのでご注意ください。
参考)
資金調達の際、設備資金に対する根拠としては見積書が求められ、運転資金に対しては詳細な説明書類の提出が必要です。可能な限り具体的に必要書類を準備し、事前に見積書などを取得しておきましょう。
⑧事業の見通し(月平均)
「月別収支計画書」を添付する場合は、創業計画書との整合性が取れるように記載します。計算の根拠欄については、創業当初と1年後といった期間ごとに明確かつ具体的な記述が求められます。数字の根拠は必ず確認されるため、説明の準備をしておきましょう。
⑨自由記述欄
そのほかの特筆すべき点や、創業計画書の総括などを書きます。起業に対する強い情熱など、最後に伝えたい重要な点を述べることがポイントです。
2)創業計画書作成のポイント
頭の中の曖昧な考えを現実的なものに具現化することは容易ではありません。とくに、創業計画書をつくる場合は、さらに困難を感じるかもしれません。このような場合、「6W2H」のフレームワークを利用することで、考えをよりまとめやすく、計画書にオリジナリティを出すことができます。
創業時はまだ実績がないため「②経営者の略歴等、⑦必要な資金と調達方法、⑧事業の見通し(月平均)」の内容は、とくに重要です。書ききれない場合には、別紙の補足資料に表やグラフを使って、具体的かつわかりやすく記載しましょう。
参考1)
創業の動機のポイントについて、上野氏のYouTubeで解説しています。
参考2)
創業計画書のテンプレート解説と、項目ごとの記載ポイント
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
- 12業種・4188社の経営者と比較し、あなたの事業計画の安全率を判定
テンプレートから見る事業計画書記入例(企業概要書)
企業概要書とはすでに事業をおこなっていて1期目の決算を終了している際に、日本政策金融公庫に融資を申込むときの必要書類です。日本政策金融公庫では企業概要書の記入例も公開していますので、参考にしてください。
1)企業概要書項目ごとの書き方
企業概要書の記入例を参考に、6つの項目について説明します。
①企業の沿革・経営者の略歴等
企業の沿革は、同社のプロフィールを示す重要な要素です。個人事業主として創業した場合は、その年月を記載し、法人格を取得した場合は、設立年月を時系列に沿って列挙することが望まれます。また、会社の移転、2店舗目や支店の開設など、会社が経験した転機についても、この項目に記載しましょう。
経営者の経歴には、最終学歴からこれまでの職務経歴に加え、携わった業務内容や習得したスキルなどを記載します。単に勤務先の履歴を並べるだけではなく、業務でどのような成果を残したのか、具体的な事例を示すことが重要です。
②従業員
現在就労している従業員数を記載します。新規採用された従業員でも、3ヵ月以上継続して雇用する予定がある場合については、従業員数に算入します。
③関連企業
代表者が別法人を経営しているケースや、配偶者が経営している会社など、関係が深い企業がある場合に記載します。
④お借入の状況
銀行や消費者金融、カードローンやキャッシングなどの借入れがある場合には、必ずすべて記載しましょう。どちらにしても「信用情報機関」ですべて調査され発覚します。記入漏れがあると「信用できない」と判断され、融資審査でマイナスになってしまいます。
⑤取扱商品・サービス
この項目はできる限りくわしく記載しましょう。客単価や売上シェアなど具体的な数値が必要です。「企業概要書」の中で、もっとも確認される項目になりますので、できれば別紙を用意してわかりやすく記載しましょう。
⑥取引先・取引関係等
会社の取引関係において、販売先、仕入先、外注先のシェア率を記載し、会社名、取引年数、回収・支払の条件などを記載します。一般個人向けの場合には、「一般個人」と記載します。
これらの取引先との関係が長期的である場合や、シェア率が高い場合には、売上の見込みが高くなる傾向があります。このような点を強調してアピールしましょう。
2)企業概要書作成のポイント
企業概要書は、創業動機がなく企業の沿革が中心の計画書となります。資金調達の項目もありませんが、融資面談の際には必要資金額や使用目的を説明できるようにしておきましょう。提出書類として、直近2年分の確定申告書・決算書が必要です。
企業概要書は記載欄が少ないため、補足資料を求められることがあります。融資面談時には、必要資金の使い道などをくわしく説明しなければならず、どちらにしても説明資料が必要になることが大半です。
事業計画書で必ず押さえておくべき4項目と記載ポイント
事業計画書の書き方は決まっていませんが、重要なポイントをおさえておくと、わかりやすく説得力のあるものになります。事業計画書で必ずおさえておくべき項目について、かんたんに説明します。
1)経営者の略歴
経営者の略歴について必ず記載しましょう。記載のポイントは前述の創業計画書と同様になります。経営者のプロフィール、過去の実績や経験、保有資格や特許の有無などを記載します。
個人の経歴や履歴においては、勤務経験だけでなく、その経験を通じて今後の事業でどのように活かせるかを含めて記述することを推奨します。
2)事業目的や背景
事業背景および目的については、同事業を通じて社会貢献がいかなる方法で達成可能か、社会における問題点や課題をいかに解決できるかに重点を置いて書くとよいでしょう。これにより、当該商品やサービスが、社会にとって不可欠であることが認識されます。創業者個人の情熱よりも、社会背景に焦点を当てた方が望ましいとされます。
3)事業内容
「事業概要、商品やサービス、ターゲット」「市場分析し競合他社の情報収集をもとに自社の強みをアピールすると同時に弱みに対する対策」などをわかりやすく記載しましょう。事業の内容について述べる際には単に飲食店や商品の販売をおこなうことだけでなく、具体的に「どのような商品を、どの層の顧客に、どのような販売方法・提供方法」で売り出していくのかを明確に記載することが望ましいです。たとえば、提供する商品の数やサービス内容、店舗内のレイアウト図、専用メニューの紹介などを資料として添付することで、より明瞭に説明できます。
4)資金計画
創業計画書の「事業の見通し(月平均)」に該当する収支計画と、資金計画(短期・長期・自己資金など)について、具体的に説明できるように記載します。収支計画は、各月について個別に作成するようにしましょう。顧客数の予測、平均取引金額、月次の売上高、必須の経費、税金などを分析します。最終的にどの程度の利益を見込めるかについての予測表は、最低でも3年分作成してください。
収支計画によって、月単位の数字の流れや相関が明確に理解できるようになり、売上高や利益の推移なども容易に把握できます。公庫や金融機関は、貸し倒れを防ぐため、融資の返済能力をキャッシュフローで確認しています。資金が不足することがないように、資金計画を詳細に策定しましょう。
かんたんに事業計画書を作成するためには
事業計画書は、多くの項目を記入する必要があり、そのための調査や資料収集にも多大な時間が必要となります。また売上達成の根拠を説明する資料も求められ、慣れていない方にとっては、大変な労力がかかります。
そんな場合には、事業計画書をかんたんに作成できる「事業計画書作成ツール」の活用をおすすめします。フォーマットに基づいて入力することで、5分で数値が正しいか判断可能です。また、業種に応じたより詳細な項目を入力することで、日本政策金融公庫の創業計画書も作成できます。
事業計画書作成ツールは融資を検討している方や、信頼性が高く無駄のない事業計画書を作成したい方にとって、非常に役立つツールといえますので、ぜひご活用ください。
- 累計8万人が利用!質問に答えるだけで「事業計画書・数値計画書」が完成
- 日本政策金融公庫の創業計画書も作成でき、融資申請に利用できる
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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