「創業融資」制度とは?日本政策金融公庫の新創業融資制度について徹底解説。

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2022/08/24 
これから創業して融資を受けたいとお考えの方のなかには
「融資の申込みってどうやって準備するのだろう?」
「どのくらいの融資を受けられるのか?」
など、不安に思われている方も多いと思います。
創業融資は、定められた要件を満たして準備すれば、はじめての方でも問題なく借入れできますが、そのためには自分が利用する融資制度の内容を理解しておく必要があります。
この記事では、創業融資においてもっともお勧めといえる日本政策金融公庫の創業融資制度について、その仕組みや種類、融資を受けやすくするポイントについて解説いたします。

 

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次

起業時に活用できる日本政策金融公庫の融資制度は?

創業者の方が利用できる融資には、日本政策金融公庫の新規開業資金があります。

創業融資(新規開業資金)

日本政策金融公庫の代表的な創業者向け融資として、「新規開業資金」があります。
これは創業者のほぼすべての方が利用できる制度であり、融資限度額は7,200万円と大きく、また「新創業融資制度」に合致すると3,000万円まで無担保・無保証で借入れできるようになります。

新規開業資金

新たに事業をはじめる方、または事業開始後おおむね7年以内の方が新たに事業をはじめるため、または事業開始後に必要とする設備資金と運転資金に利用することができます。
融資限度額は7,200万円と大きいため、ほとんどの資金需要に対応が可能です。金利は原則的に基準金利となりますが、無担保無保証人の新創業融資制度を希望する場合には、新創業融資制度の金利が適用されます。※融資上限額は無担保・無保証で新創業融資制度と併用するのであれば3,000万円まで、返済期間は、設備資金20年以内、運転資金7年以内(いずれも据置期間2年以内)となります。

女性、若者/シニア起業家支援資金

新たに事業をはじめる方、または事業開始後おおむね7年以内の方のうち女性または35歳未満か55歳以上の方が利用できる融資制度です。
融資限度額は7,200万円ですが、そのうち運転資金については4,800万円が上限となります。金利は特別金利が適用されるため、新規開業資金と比べてやや優遇されています。
返済期間は、設備資金20年以内、運転資金7年以内(いずれも据置期間2年以内)となります。
以前は独立した融資制度でしたが、令和4年度から新規開業資金の一部として扱われるようになりました。

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新創業融資制度とは

新創業融資制度は、新規開業資金などとあわせて利用することで、無担保・無保証で利用できるようになる特別な融資制度です。

創業融資(新創業融資制度)の概要

概要①資金の使途

新たに事業をはじめるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金

概要②融資限度額

3,000万円(うち運転資金1,500万円)

概要③返済期間

各資制度に定める返済期間以内
※具体的な期間は、ベースとなる融資制度により異なります。

概要④担保・保証人

原則不要。

創業融資(新創業融資制度)の特徴

特徴①無担保かつ無保証人で融資を受けられる

新創業融資制度を利用すると、原則、無担保・無保証人で融資を利用できます。また、法人については、代表者が連帯保証人にならないことを選択するができます。
ただし、融資額が大きい、計画のリスクが高いという場合には、まれに担保や保証人を求められることがあります。

特徴②金利が変動する

新創業融資制度では、およそ1か月に1回、金利の見直しが行われるため、どのタイミングで利用したかにより適用される金利が変わります。
しかし固定金利制のため、融資実行時の金利のままずっと返済できます。

特徴③ほかの融資制度と組み合わせて利用する

新創業融資制度はそれ単体で独立した融資ではなく、新規開業資金などの創業者向けの融資制度を無担保・無保証で利用できるようにするために作られた一種の枠のようなものです。
そのため、新創業融資制度を利用する場合には、必ずベースとなる創業系の融資と併用して利用する必要があります。

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創業融資(新創業融資制度)の条件

条件①新たに事業をはじめる人か、事業開始後税務申告を2期終えていない人
新創業融資制度を利用できるのは「新たに事業をはじめる方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」となります。
ここでいう2期とは2年ではないことに注意が必要です。
たとえば、個人事業の場合の決算期は12月末と一律に決まっているため、仮に10月に開業した場合、はじめの年度は約3か月で終了してしまいます。
条件②創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる人
上記の条件に該当する方のうち「新たに事業をはじめる方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方」は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を保有している必要があります。
たとえば、創業に必要な資金額が1,000万円の場合なら100万円以上の自己資金があることが申込みの条件となります。
他から借りたお金やタンス預金、出どころの不明なものなどは自己資金の対象となりませんので注意が必要です。

創業融資(新創業融資制度)のメリット・デメリット

新創業融資制度には、メリットだけでなくデメリットも存在します。メリットだけに目を奪われるのではなく、デメリットについてもしっかり理解しておきましょう。

創業融資(新創業融資制度)の3つのメリット

新創業融資制度には次のような3つのメリットがあり創業者の方でも利用しやすいものとなっています。

①無担保、無保証人

新創業融資制度は、原則的に担保・保証人不要で利用できます。
ここでいう「保証」とは通常は第三者による保証人を意味しますが、一般的な融資では代表者が連帯保証人となる必要があります。新創業融資制度では代表者も保証人とならないことができるのが大きな特徴です。

②融資実行までが早い

新創業融資制度の申込みから資金が入金されるまでの期間は、約1~2か月程度です。通常の融資よりも比較的、融資実行までの期間が短いと言えます。

③融資上限3,000万円(うち、運転資金1,500万円)

融資限度額は3,000万円と大きくほとんどの資金需要に応えることができますが、運転資金は1,500万円が上限です。
たとえば運転資金が1,000万円の場合は、設備資金で利用できる枠は2,000万円までとなります。

創業融資(新創業融資制度)の3つのデメリット

①審査に通過しないと融資は受けられない

新創業融資制度では、通常の融資と同様、公庫による審査が行われるため、この審査に合格した人でないと利用できません。
新創業融資制度の審査では、事業計画書の提出だけでなく、公庫の融資担当者との面談も行われます。

②希望する額の融資を受けられないこともある

融資の審査に合格した場合でも、必ずしも希望額全額の融資がされるとは限りません。計画の内容や自己資金の額によっては、希望額よりも減額されることもあります。

新創業融資制度と新規開業資金の違い

新規開業資金が単体での融資制度であるのに対して、新創業融資制度はあくまでも創業系融資を無担保単体で利用するための特別な枠です。
そのため、新創業融資制度は単体で利用することができません。
また、新規開業資金は、事業開始後おおむね7年以内の方を対象としたものですが、新創業融資制度は事業開始後税務申告を2期過ぎるまでが利用期間の限度です。2期を超えてしまっている場合には、新規開業資金の利用はできても、新創業融資制度は利用できなくなることに注意が必要です。
また、融資限度額については、新規開業資金が最大7,200万円であるのに対し、新創業融資制度では3,000万円となるため、この額を超える場合には無担保・無保証での利用ができなくなります。
担保・保証人については、新規開業資金は、法人の場合は代表者の連帯保証が必要です(個人事業は創業者本人が借主となり、原則として保証人は不要)。無担保・無保証人での利用を希望する場合は、新創業融資制度を併用する必要があります。

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創業融資に関するよくある質問

公庫の創業融資については、次のような質問がよくされます。いずれも、融資制度に関する基本的な知識ですので、自分の認識に間違いがないかを確認しておきましょう。

法人設立のための資本金の払い込みにあてる資金の融資は受けられますか?

新創業融資制度は、法人設立のための資本金への融資は対象外です。法人を設立して創業する場合は、設立登記後の法人が融資の対象となります。

個人での融資申込みするのと法人で申込みするのでは、どちらが審査で有利など、違いはありますか?

融資申込みについて、個人と法人とで大きな違いはなく、法人では登記事項証明書が必要となる程度です。融資を受けるうえでどちらが有利ということはありません。

創業予定地が未定ですが、申込みできますか?

創業するエリアが決まっていない場合、資金計画が定まらず、収支計画においても立地条件等を踏まえた売上予測や経費予測が立てられないため、創業計画書を作成することができません。
申込みは、創業予定地を決めてから行う必要があります。

融資の申込みはどちらの支店にすればよいのですか?

個人の申込みの場合は創業予定地を管轄する支店、法人での申込みの場合は、法人登記上の本店所在地を管轄する支店が申込みの窓口となります。
ただし、申込み前の相談については、近くの支店でも可能です。

公庫へ創業融資を申込んでから融資が決まるまでに、どれくらいの期間がかかりますか?

公庫のホームページでは「平均として3週間程度」と案内されていますが、約1か月程度の時間を見込んでおいた方がよいでしょう。
また、融資決定後には、公庫との契約手続きや入金手続きが必要となるため、申込みから融資の入金までにはトータルで約1~2か月程度の時間が必要になると考えた方がいいでしょう。

自己資金はいくらあれば融資を受けられますか?

公庫が融資先の創業企業を対象として実施した調査(「新規開業実態調査」)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で3割程度となっています。
なお、一般的には融資が出やすい金額の目安としては、自己資金額の3~4倍程度とされています。

担保・保証人なしでも融資を受けることはできますか?

新創業融資制度を併用すれば、最大3,000万円まで、無担保・無保証人で融資を受けられます。

創業にあたって必要な届け出があるか教えてください。

個人・法人ともに税務関係と社会保険関係の届出が必要です。

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創業にあたって必要な許認可について教えてください。

これから行う業種により必要となる許認可や届出はさまざまですが、たとえば、飲食店の場合は、保健所の営業許可が必要ですし、酒類販売業では、税務署の免許が必要です。
許認可等を取得しないと営業ができなくなるものが多いため、創業前に自分の事業にはどのような許認可が必要なのかを確認しておきましょう。

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自己資金なしでも創業融資(新規創業資金)を受けられるのか?

新創業融資制度では、1/10以上の自己資金があることが申込みの条件となっているため、この要件を満たせない場合には、原則的に融資の申込みはできません。しかし、以下の7つの要件のいずれかに該当する方については、自己資金がなくとも申込みができます。

自己資金なしの例外ケース①勤務先の企業と同じ業種の事業で開業するケース

現在、勤務している企業と同じ業種の事業をはじめる方で、現在の企業に継続して6年以上勤務している方が対象となります。
飲食店に6年勤務しており、近いうちに自分で飲食店の開業をする予定の方

自己資金なしの例外ケース②大学等で修得した技能にもとづいて開業するケース

大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上勤務している方で、その職種と密接に関連した業種の事業をはじめる方が対象となります。
大学で生物分子学を学んだ後、2年間化学系の会社の研究部に勤務し、その後にそのノウハウを活かして創業する方

自己資金なしの例外ケース③認定特定創業支援等事業を受けて開業するケース

認定特定創業支援制度とは、市区町村など自治体が民間の創業支援機関等と連携して研修等を実施し、それを国が認定するものです。この制度を利用して創業者が認定を受けることで、新創業融資制度における自己資金が不要となる他、会社設立時の登録免許税が軽減されるなどの優遇を得られます。
市町村から認定特定創業支援制度を取得し、介護事業などを行う予定の方

自己資金なしの例外ケース④協調融資を受けて事業をはじめるケース

協調融資とは、ひとつの融資について、日本政策金融公庫とほかの金融機関(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫または信用組合)が共同して融資する仕組みです。
この場合は、ひとつの事業計画書を両方の金融機関へ提出します。
2,000万円の融資について、日本政策金融公庫に1,400万円を、制度融資を利用して信用金庫に600万円を申し込む方

自己資金なしの例外ケース⑤技術・ノウハウ等に新規性が見られるケース

事業プランについて技術・ノウハウ等に新規性が見られる方は、自己資金なしで申込みができます。ただし、この場合には、公庫が定める一定の要件を満たす必要があります。
自分で開発した生産時間を短縮できるノウハウを使って創業する方

自己資金なしの例外ケース⑥新商品等の研究・開発のため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方

新商品の開発や研究には一定の時間が必要となるため、6か月以上の時間を要し、かつその研究等により3事業年度以内に収支の黒字化が見込まれる方については、自己資金が不要です。
ただし、6か月以上の時間がかかるだけでなく、それにより3事業年度以内に収支の黒字化が見込めることを事業計画書で示す必要があります。
新たな計算ソフトの開発に8カ月が見込まれるが、開発後2年以内に収支の黒字化が見込める方

自己資金なしの例外ケース⑦「中小企業の会計に関する基本要領」を適用予定のケース

「中小企業の会計に関する基本要領」とは、小規模事業の経理を前提として作成された会計基準のひとつで、通常の会計基準よりも簡易に、少ない手間で会計記帳ができます。
この会計基準に準拠して会計処理をしている企業は自己資金がなくとも申込みができます。ただし、基準の適用がされているかどうかについて、後日、公庫から確認がされることがあります。

コロナ禍では創業融資(新規創業資金)は受けにくいのか?

融資を成功させるためには、売上げの見込みがある、すでに顧客が確保できているなどの要素が必要ですが、現在のコロナ禍においては、売上げや客足が減少している企業が多く、これからの事業環境についても積極的なビジョンを描きにくい状況にあります。
しかし、コロナにより売り上げが低迷している場合でも利用しやすい融資があります。それが「新型コロナウイルス感染症特別貸付」です。
本貸付では、一定期間の売上が5%以上低下している場合には、通常の企業だけでなく、創業者であっても利用できます。
ただし、創業者については、業歴が3ヵ月以上あることが条件となるため、開業前の方や開業して間もない方は利用できません。
創業者の売上減少の基準は、3つのパターンから選ぶこととなりますが、基準の内容を理解できていないと正しい計算ができません。
また、申込書の書き方にも注意すべきポイントがあるため、「自分が基準を満たすのか?」や「どのようなことに注意して書けばよいのか?」について専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

まとめ

創業融資は、しっかりと準備をすれば、誰もが利用できるものです。
とくに日本政策金融公庫の新創業融資制度は、低金利、無担保・無保証人で利用できるので、創業者の方には利用しやすいでしょう。
しかし、新創業融資制度の申込みには、「利用期間が決まっている」、「一定の自己資金が必要」といった条件があるため、これらの要件をよく確認して行う必要があります。
創業計画書の作成では、的を絞った、根拠のある計画を作ることが、結果に大きくかかわってきます。
ドリームゲートでは、ブラウザ上の操作で創業計画書が作れ、エクセルでダウンロード可能な「事業計画書サポートツール」を無料で提供していますので、事業計画書がうまく作れないという方は、ぜひ、お試しください。

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