開業前の経費・開業費について徹底解説

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2026/04/05 

起業を決意してからじっさいに事業を開始するまでの間には、事務所の契約や備品の購入、市場調査など、想像以上に多くの資金が必要になります。たとえば、ITスキルを活かして地域密着型のサービスを展開しようと考えている方にとって、これらの支出がどこまで経費として認められるかは、その後の資金繰りを左右する極めて重要な問題です。税務上の判断を誤ると、せっかく準備した資金が想定外の税金によって圧迫されるリスクも否定できません。

そこで本記事では、開業前に支払った費用を適切に処理し、賢い資金調達につなげるための具体的な基準について、専門的な視点からくわしく解説します。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.開業費とは・かかるお金の目安

新しく事業をはじめるにあたって、準備段階で発生する費用には大きく分けて「創立費」と「開業費」の2種類が存在します。これらは会計上、支出した年度に一括で経費にするだけでなく、数年にわたって分割して計上することも可能な「繰延資産」という特殊なグループに分類されるものです。

参考:【開業準備リスト】を個人事業主と会社設立に分けて完全解説

1)創立費の定義

創立費とは、株式会社や合同会社などの法人を設立するために直接必要となった事務的な費用のことを指します。具体的には、定款作成の際に支払う公証人への手数料や、登記の際に国へ納める登録免許税、さらには登記手続きを代行してもらう司法書士への報酬などがこれに該当します。これらは法人の器をつくるためのコストであり、個人事業主として開業する場合にはこの項目は発生しません。

2)開業費の定義

一方で開業費は、個人事業主や法人が、事業をじっさいに開始するまでの間に支出した準備費用のことです。たとえば、店舗の賃貸借契約を結ぶための手数料や、集客のための宣伝活動、事務用品の購入費などが含まれます。

IT関連の事業であれば、システム開発の調査費用や専用ソフトの購入費も、この開業費に含まれることが一般的です。創立費や開業費は「任意償却」といって、税法上の償却期間内(原則5年)であれば、利益が出たタイミングで自由に経費化できるため、起業家にとって非常に有利な制度となっています。

2.経費にできる開業費

開業費として認められる範囲は広く、適切に領収書を保管しておくことで、将来の利益が出た際の税負担を大きく軽減できます。とくにITサービスや地域密着型ビジネスを検討している場合、どのような項目が該当するのかを具体的に把握しておくことが求められます。

参考:経費を学べばいいことが待っている

1)広告宣伝費

ビジネスの認知度を高めるための広告宣伝費は、開業費の代表格です。ホームページの制作費用やロゴのデザイン料、チラシの印刷代、看板の設置費用などがこれにあたります。インターネット広告の出稿費用やSNSの運用代行費も含まれるため、デジタル集客を軸にするなら、その初期費用もしっかり計上しましょう。

地域密着型のサービスであれば、近隣住民へのポスティング費用やタウン誌への掲載料なども開業費の一部となります。これらは将来の売上をつくるための投資として、広く認められる傾向にあります。

2)備品購入費

事業に使用する机や椅子、棚といった家具のほか、電話機やシュレッダーなどのオフィス用品も経費にできます。ITスキルを武器にするのであれば、モニターやキーボード、マウス、外付けハードディスクといった周辺機器をそろえる機会も多いはずです。これらの周辺機器も細かく積み上げれば大きな金額になるため、漏れなく集計することが大切です。

ただし、後述するように1個あたりの取得価額が10万円未満であることが条件となります。セットで購入した場合は、そのセット全体の金額で判定されることもあるため、見積書の単位にも注意を払いましょう。

3)事務用品費

開業準備中は、名刺の作成や封筒、筆記用具、コピー用紙などの消耗品を大量に購入するケースが少なくありません。これらは、一つひとつは少額ですが、開業前に準備したものであれば、すべて開業費としてまとめて処理することが可能です。

領収書を整理する際には、これらが私用ではなく事業準備のために購入されたものであることを明確にしておくことが、税務調査の際などの安心材料につながります。また、印鑑の作成費用なども、事業用として発注したものであれば立派な事務用品費に含まれます。

4)賃借料

個人事業主であれば、事業開始までの家賃も開業費として認められます。IT系の仕事で自宅の一部を事務所とする場合、その使用面積に基づいた按分計算によって、自宅家賃の一部を開業費に含めることも可能です。

ただし、敷金のように将来返還される予定のお金は経費ではなく資産として扱われるため、契約書の明細をよく確認して、どの項目が経費化できるのかを区別しておくべきでしょう。契約時の火災保険料なども、開業前の期間分であれば開業費に含めることができます。

5)交通費

物件探しや打ち合わせ、仕入れ先への訪問などで発生した電車代やバス代、タクシー代、ガソリン代なども経費に含めることができます。領収書が出ない交通機関を利用した場合は、出金伝票を作成して「いつ、どこへ、何の目的で」移動したのかを記録しておく必要があります。

地域密着型サービスの場合、エリア内のニーズ調査などで頻繁に移動が発生するため、これらの記録を習慣化しておくことが、将来的な経費の正当性を証明する裏付けとなります。ETCの利用履歴なども、事業に関連するものであれば有効な証憑となります。

6)調査・研究費

事業を成功させるための市場調査費用や、専門知識を習得するための書籍代、セミナー参加費なども開業費として計上可能です。IT業界は技術の進歩が早いため、最新のプログラミング言語の学習や、地域ニーズを探るためのマーケティング調査には相応のコストがかかるものと推察されます。

これらの支出は、事業の土台をつくるための先行投資として認められるため、学習用の教材や有料のレポート購入費、あるいは競合他社のサービスを体験するための調査費用なども大切に保管しておきましょう。

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3.経費にできない開業費

なんでも経費にできるわけではなく、税務上「開業費」として扱うことができない支出も存在します。ここを混同してしまうと、後の確定申告で否認されるリスクがあるため、慎重な判断が求められるポイントです。

1)開業後に継続的に発生する費用

開業費はあくまで「準備のため」の費用であるため、事業がスタートした後に経常的に発生する性質のものは含まれません。具体的には、水道光熱費や通信費、商品の仕入れ代金、従業員への給与などが挙げられます。

これらは開業後の通常の経費(販売管理費や売上原価)として処理すべきものであり、任意償却ができる開業費の枠組みには入れられないというのが税務上の原則的な考え方です。ただし、開業前の段階でテスト的に仕入れた少量のサンプル費用などは、調査費として認められる余地があります。

2)事業と直接的に関係のない費用

もっとも基本的な基準ですが、プライベートな支出は当然ながら経費になりません。家族との食事代や私的な旅行代、趣味で購入した物品などは、いくら領収書があっても認められないのです。起業準備中は公私の区別が曖昧になりがちですが、税務署の視点では「その支出が売上をつくるために本当に必要だったか」が厳格に問われます。

ITスキルの習得であっても、事業内容とまったく無関係なジャンルの学習費用などは、事業関連性が乏しいと判断される可能性が高いでしょう。友人との会食であっても、それが具体的な顧客紹介やアドバイスを受けるためのものであれば会議費として検討できますが、客観的な説明が求められます。

3)10万円以上するもの

開業準備中に購入したものであっても、1個あたりの金額が10万円を超えるPCやサーバー、高価格な什器などは開業費には含まれません。これらは「固定資産」に該当するため、開業費として認められないしくみになっています。

固定資産となった場合は、その資産ごとに定められた耐用年数に応じて、数年にわたって、減価償却費として経費化していくことになります。たとえば30万円のハイスペックPCを購入した場合、それは一度に開業費として処理するのではなく、資産として計上し、4年などの期間で少しずつ費用に落としていくのが正しい会計処理です。

例外として、青色申告者の場合は30万円未満であれば一括で経費にできる特例もありますが、それは「開業後の経費」としての処理となります。基本的には10万円という境界線が開業費か固定資産かを分ける大きな基準になると覚えておいてください。この判断を誤ると、初年度の利益計算が大きく変わってしまうことになります。

参考:Vol.02 うまく活用したい固定資産の調達方法~レンタル・割賦購入編~

4.開業費はいつまで遡って経費にできるか

開業前に使ったお金をいつまで遡って請求できるのかという点については、多くの起業家が疑問に思う部分です。法律上の規定と、実務上の妥当性の両面から見ていきましょう。

1)明確な制限はない

驚かれるかもしれませんが、税法上、開業費をいつまで遡れるかについての厳密な期間制限は設けられていません。しかし、実務上は開業日の数ヶ月前から1年前までが一般的とされており、それ以上古いものについては注意が必要です。

あまりに昔の支出だと、それが現在の事業のために直接支出されたものなのか、単なる個人の趣味だったのかの判別が難しくなるためです。3年も5年も前の領収書を持ち出しても、事業との関連性を論理的に説明するのは非常に困難であり、税務署から否認されるリスクが極めて高まると考えられます。

2)じっさいに仕訳を実施するタイミング

開業費を会計ソフトなどに入力し、仕訳を確定させるタイミングは大きく2つあります。ひとつは開業日当日に、それまでにかかった費用をすべて集計して「開業費」という勘定科目で計上する方法です。もうひとつは、最初の決算時にまとめて整理する方法ですが、管理のしやすさを考えれば、開業時に一度すべての領収書を精査して合計額を算出しておくのが賢明といえます。

このときに、各領収書の内容を一覧にした開業費明細を作成しておくと、将来の税務調査の際にも落ち着いて対応できます。領収書の束を放置せず、早めにデータ化しておくことが、正確な資金管理への第一歩となります。

5.開業資金の経費判断は事業計画書作成ツールがおすすめ

どのような費用が経費になり、どれくらいの資金が必要になるのかを整理するためには、頭のなかだけで考えるのではなく、具体的な数字として可視化することが不可欠です。

ドリームゲートの事業計画書作成ツールを使えば、ブラウザだけで説得力のある事業計画をつくれます。資金調達や収支シミュレーションに必要な項目が網羅されているため、どの支出が開業費として妥当なのかを整理する際にも非常に役立つはずです。作成した計画書は、金融機関からの融資審査でも大きな武器となります。無料で使えるので、まずは試してみましょう。

将来の不安を解消し、自信を持って一歩を踏み出すためには、確かな基準に基づいた準備が欠かせません。今回ご紹介したポイントを参考に、ご自身のビジネスに合わせた最適な経費設計を進めてみてください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
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