シニア起業と創業融資の実態
定年退職を迎え、これまでの経験とスキルを活かして第2のキャリアとして起業を選ぶシニアが増加しています。しかし、新たな事業をスタートさせるにあたり、資金調達は避けて通れない課題です。とくに「創業融資」は、シニア起業家にとって事業を軌道に乗せるための重要な鍵となります。
そこで本記事では、創業融資の特徴からシニア起業家が利用できる具体的な制度、そして退職金を自己資金とする際の注意点まで、実践的な情報をくわしく解説いたします。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次
1.創業融資の特徴
創業融資とは新しく事業をはじめる方や、事業開始後間もない方を対象とした融資制度の総称です。
1)事業実績がなくても利用しやすい
通常の融資は、過去の売上や利益などの事業実績に基づいて審査されますが、創業融資はこれから始まる事業の将来性や、創業者自身の経歴・熱意を重視する点が大きな特徴です。
2)無担保・無保証人の制度が多い
たとえば日本政策金融公庫の創業融資は、個人の資産を担保に取らない、あるいは経営者個人が連帯保証人になる必要がない制度が用意されています。
3)金利が低く、返済期間が長い傾向がある
日本政策金融公庫の創業融資は、国の政策として起業を後押しする目的も含まれているため、一般的な民間金融機関の融資と比較して低金利に設定されていることが多くあります。また、返済期間も長期にわたることが多く、事業が安定するまでの間、月々の返済負担を軽減できる点も魅力といえるでしょう。
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2.シニア起業家が利用できる融資制度
シニア起業家を支援する融資制度は充実しており、これらを活用することで有利な条件で開業資金を調達することが可能です。ここでは、代表的な3つの融資制度について説明します。
1)日本政策金融公庫
シニアにかぎらず開業資金を調達する際に、もっとも推奨されるのが日本政策金融公庫です。政府系金融機関であるため、民間の金融機関よりも柔軟な審査基準と、長期・低利な融資条件が期待できます。
融資制度のなかでもとくにシニア起業家に関連が深いのは、「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」でしょう。新たに事業を始める方または、事業開始後おおむね7年以内の方のうち、55歳以上の方が対象となる制度です。
この制度を活用することで、通常よりも有利な金利や、担保・保証に関する要件緩和を受けられる可能性が高まります。日本公庫の融資は、ほかの制度と異なり、全国どこでも(沖縄県は沖縄振興開発金融公庫になります)申込みが可能で、事業計画の策定段階から専門的な相談に乗ってもらえる点も大きなメリットです。
2)各自治体の創業支援融資事業
国とは別に、地方自治体が地域経済の活性化を目的に、独自の創業融資制度を設けています。その代表例が、東京都の「女性・若者・シニア創業サポート2.0」です。東京都内で創業する意欲のある「55歳以上の方」を対象に創業資金を支援する制度で、最大1,500万円までの融資が可能です。
類似の制度は、横浜市や埼玉県、茨城県など、多くの自治体で見られます。これらの地域特有の制度を利用する利点は、単に融資を受けられるだけでなく、融資の前提として自治体や地域の支援機関による「経営のサポート」も受けられる点にあります。事業計画書の作成支援や、創業後のフォローアップなど、はじめての起業で不安を抱えるシニアにとって、心強いサポートとなるでしょう。
これらの自治体の事業は、制度じたいは都道府県や市区町村が運営しますが、じっさいに融資を実行するのは、その地域の信用金庫や信用組合などの金融機関になります。また、多くの場合、融資には「その地域の信用保証協会の保証」が必要となります。
信用保証協会が公的な保証をすることで、金融機関は融資がしやすくなり、結果として創業者側は担保や保証人を立てずに資金を調達できるようになるしくみです。自治体の制度を利用する際は、まずご自身の地域の制度を確認し、指定された金融機関や支援窓口に相談することが第一歩となります。
3)信用金庫・信用組合
信用金庫や信用組合は、地域住民や中小企業を主な取引先とする金融機関です。そのため、地域密着型であるという特性から、その地域での事業計画や創業者自身の人物像をきめ細かく評価してくれる傾向があります。
大手銀行と比較して、創業期の小規模な融資にも積極的であり、シニア起業家に対して独自のローンを提供している場合もあります。たとえば、東京都の昭和信用金庫の「しょうわ女性・若者・シニア創業ローン」のように、特定の世代や属性をターゲットにした商品を提供しており、公的な制度と並行して検討する価値があります。
これらの金融機関は、地域に根差した情報やネットワークを持っているため、融資だけでなく、事業の紹介や取引先の開拓など、実務的な面でのサポートも期待できる可能性があります。シニア起業家は、まずご自身の事業拠点の近くにある信用金庫・信用組合を訪ねて相談してみることをおすすめします。
3.シニア起業家が利用すべきほかの資金調達方法
創業融資のほかにも、返済不要の資金や、出資を募る形で資金を調達する方法があります。これらを組み合わせることで、事業の立ち上げ資金をより盤石なものにすることが可能です。
1)助成金
助成金とは、主に厚生労働省が管轄し、特定の政策目的(雇用、能力開発など)に合致した事業活動をおこなった場合に支給される資金です。もっとも大きな特徴は、原則として「返済が不要」である点にあります。
- 両立支援等助成金
- キャリアアップ助成金
- 雇用関係助成金
上記のような助成金があり、とくに雇用関連のものは、起業にともない従業員を雇用する計画があるシニア起業家にとって、大きな資金源となり得ます。
2)補助金
補助金とは、主に経済産業省などが管轄し、特定の政策目標(生産性向上、新規事業展開、IT導入など)を実現するための事業計画に対して補助される資金です。
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業承継・M&A補助金
- 中小企業省力化投資補助金
シニア起業家が新しい技術や設備を導入する際に活用できるものが豊富にあります。とくに小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化の取り組みを支援するものであり、多くのシニア起業家にとって申請しやすい補助金です。
3)クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を募る手法です。シニアに特化したプラットフォームは少ないものの、「シニア世代のチャレンジ」や「人生の集大成としての事業」といった社会的テーマやストーリーを掲げることで、共感を呼び、成功を収める例が増加しています。
4)ビジネスコンテスト・コンペ
地方自治体や民間企業、ベンチャーキャピタルなどが主催するビジネスコンテストやコンペティションも、資金調達のひとつの手段です。シニア起業家に特化した部門を設けているイベントもあり、入賞することで賞金を得られるほか、メディア露出や投資家との接点を得る絶好の機会となります。
5)そのほかのシニア支援
「一般社団法人日本シニア起業支援機構(J-SCORE)」など、シニア起業家を対象とした相談やセミナー、情報提供をおこなう支援団体も存在します。これらの組織を通じて、専門家によるアドバイスや、同じ志を持つ仲間とのネットワークを構築することは、事業成功の確率を高めるうえで非常に有益です。
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4.シニア起業が創業融資を実施する際の注意点
シニア起業家が創業融資の審査を有利に進め、事業を成功に導くためには、若年層の起業家とは異なる特有の注意点を押さえておく必要があります。
1)自己資金比率は大切だが退職金をすべて使わない
金融機関は融資の際、事業主がどれだけ自己資金を出しているかを重視します。この自己資金比率が高いほど、事業への本気度が高いと評価され、融資を受けやすくなるのです。しかし、シニア起業家の場合、退職金をすべて事業資金に投入するのは極めて危険です。
事業が軌道に乗るまでには時間がかかるため、老後の生活資金を最低限確保しておくことが、万が一に備えたリスクヘッジとして不可欠です。事業に使うのは、あくまで生活に影響が出ない範囲にとどめるべきでしょう。
2)経験を生かしながらも新しい技術を受け入れる
長年の職務経験は、シニア起業家の最大の強みですが、その経験に固執しすぎると、現代のビジネス環境から取り残されるリスクがあります。
生成AIのような新しいテクノロジーは、少人数での効率的な事業運営を可能にします。古くからの人脈や専門知識を生かしつつも、新しい技術やデジタルツールを積極的に受け入れて活用する姿勢を示すことが、事業計画の将来性を高めるうえで重要です。
3)体調管理を怠らない
若いときのように無理が効かないのがシニア世代の現実です。体調を崩して事業がストップしてしまえば、融資の返済計画にも影響を及ぼしかねません。事業計画を立てる際には、自身の体力や健康状態に配慮した無理のないスケジュールを組むことが求められます。
また、体調に問題があると、金融機関からの信用を得るうえでも不利に働く可能性があるため、日ごろから健康管理に努め、引退後の生活を意識した事業のゴールを見据えることが大切です。
4)開業前~開業後3カ月以内に申請する
創業融資申込みのタイミングは非常に重要です。開業前は、事業計画の実現性や事業への熱意で融資を獲得できる可能性があります。一方で開業後しばらく経ってから申込むと、すでに発生した実績、赤字の状況などを厳しく見られてしまい、融資が否決される可能性が高くなります。
5)減額されても融資を受ける
創業融資は、申請した希望額どおりに満額融資されるとは限らず、事業計画や自己資金の状況に応じて減額されることがあります。創業融資の平均的金額を考慮すると、500~800万円程度を目安に申込むのが適切な戦略です。
融資は一度きりの取引ではないため、もし減額を提案されたとしても、事業が継続する限り長期的に金融機関との関係が続きます。一度でも融資を受けて良好な返済実績を作っておけば、事業拡大時の追加融資や、別の金融機関との取引が格段に楽になるため、提案された減額後の金額でも事業を始められるなら融資を受けるべきでしょう。
参考:開業資金はいくら必要?相場から資金調達方法まで徹底解説
5.はじめての創業融資は事業計画書作成サポートツールがおすすめ
シニア起業家にとって、事業計画書の作成は創業融資の成否を分けるもっとも重要なステップのひとつです。しかし、はじめての起業で専門的な書類を一から作成するのは大きな負担となります。そこでおすすめしたいのが、事業計画書作成サポートツールです。
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