日本政策金融公庫の創業融資とピッチブックのポイント

QUESTION:日本政策金融公庫の創業融資とピッチブックのポイント
先月、高齢者の見守り・生活支援事業を立ち上げ、法人登記を完了しました。現在、日本政策金融公庫の創業融資を検討しており、事業内容を詳細に説明する追加資料としてピッチブックの作成を進めています。
以下の点について重点的にご意見をいただけますと幸いです。
①ピッチブック作成のコツ
②日本政策金融公庫が融資の際に重視するポイント
③当事業の市場性や成長性について
④その他、事業運営に関するアドバイス
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願い申し上げます。
ANSWER:日本政策金融公庫が融資の際に重視するポイントを解説します
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①ピッチブックの作成について
ピッチブックでは「売上計画の実現可能性の根拠」が重要です。
売上予測は、実際にやってみなければわからない部分が大きいため、それを補う工夫が求められます。たとえば、テストマーケティングを実施し、「実際にこれだけ売れました」という実績を示すことで、説得力が大きく向上します。
②日本政策金融公庫が融資の際に重視するポイント
公庫からの融資における最大の課題は、「高額な融資が受けにくい」という点です。これは企業の事業計画に左右されるものではなく、公庫の創業融資は制度上「7,200万円まで」と定められています。
しかし実態としては、担保なしの場合の平均融資額は500万円〜600万円程度で、非常に高い評価を受けても上限はおおむね2,000万円です。したがって、公庫のみで7,000万円以上を調達するのは現実的に困難です。
高額資金を必要とするスタートアップは、資金調達の中心を投資でまかなうほうが実現性は高くなります。たとえば、ある企業は約1.5億円を調達しましたが、その内訳はVC等からの出資が1.2億円、日本政策金融公庫から1,000万円、銀行二行から計2,000万円でした。
相談者様も同様に、公庫単独で大半を調達するのは難しいため、まずはVC等へのアプローチをおすすめします。特に大手VCや銀行系VCからの出資が決まれば、公庫や民間金融機関からの融資が受けやすくなり、「資本性ローン」の活用可能性も広がります。
資金調達の順序としては、①VC等からの出資 → ②日本政策金融公庫や銀行からの融資、が理想です。出資を受けずに融資のみを利用する場合は金額が小規模になりやすく、1,500万円〜2,000万円程度でスモールスタートできる場合は、その後の収益拡大を経て追加融資を受ける流れが有効です。
③当事業の市場性や成長性について
大きな可能性がある一方で、最終的には「やってみなければわからない」という評価になると予想されます。なぜなら、高齢者の支援ビジネスに多くの起業家が参入しているものの、成功事例が少ないためです。そのため、金融機関やVCは「実現可能性」を重視します。客観的評価を高めるには、テストマーケティングなどで実績を積み重ね、根拠を示すことが重要です。
④その他、事業運営に関するアドバイス
資金面と同様に、人材面の課題も事業成功の鍵となります。起業メンバー間の結束や、スタッフ・業務委託メンバーを含めたチームマネジメントが重要です。プロジェクトメンバーの役割を明確にし、代表取締役は経営責任者としてマネジメントに専念しましょう。