事業計画に必要な収支予測の立て方と収支計画書の書き方
事業を成功させるためには、綿密な計画が不可欠です。そのなかでも事業計画書と収支計画書の作成がとくに重要です。
収支計画書は、将来的な収入と支出を予測し、資金繰りの見通しを立てるための基礎となります。
これにより、事業運営におけるリスクを最小限に抑え、安定した経営を実現することが可能です。そのため正確な収支予測が求められます。
当記事では、収支予測の立て方と収支計画書の書き方についてくわしく解説します。
はじめての方に収支計画書の作成は難しいことが多いため、かんたんに作成できるオンラインツールもご紹介します。参考にしてください。
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元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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目次
1.収支計画書とは
収支計画書とは、将来的な収入と支出を予測するための重要な書類であり、事業計画における収支予測部分の基礎となります。
収支計画書は、売り上げがどのくらいになるか、利益がどれくらい出るかを見積もり、将来の現金の動きを明確にするための書類です。具体的には、事業がどれくらいの利益を生むか、どの程度の経費がかかるかを予測し、それに基づいて事業運営戦略を立てるためのツールとして機能します。
1)収支計画書が必要な理由
収支計画書が必要な理由は多岐にわたりますが、資金調達の際には、必須の書類となります。銀行や投資家からの融資を受ける際には、事業の収益性やリスクを評価するための材料として収支計画書が求められます。収支計画書によって、どの程度の資金が必要か、返済計画はどうなっているかを明確に示すことが可能です。
また、収支計画書は、事業プランが短期的および中長期的に無理なく進行できるかを判断するための重要なツールでもあります。事業の収入と支出を予測することで、必要な資金額が明確になり、適切な資金調達が可能です。さらに、資金の使い道を明確にすることで、支出の予測が立てやすくなり、無駄なコストを削減するための対策を立てることができます。
2)収支計画書がブラウザ操作で作れるツール
収支計画書の作成は専門的な知識が求められるため、初心者にとっては難しい作業となるケースが多いのが実状です。しかし、ドリームゲートの事業計画書作成サポートツールを使えば、ブラウザ操作だけで、かんたんに収支予測を作成できます。このツールは、ユーザーが入力したデータに基づいて、自動的に収支計画書を作成するため、専門的な知識がなくても高精度な収支予測が可能です。
ドリームゲートのツールは、直感的な操作性と業種ごとのデータを備えており、初心者でも短時間で収支計画書を作成できます。これにより、事業計画の立案がスムーズに進み、資金調達や事業運営も効率的におこなえるようになります。ぜひ、このツールを活用して、正確で信頼性の高い収支計画書を作成し、事業の成功を目指してください。
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2.収支予測に必要な項目
収支予測を正確におこなうためには、いくつかの重要な項目を慎重に予測する必要があります。これにより、将来の収支バランスを把握し、資金繰りやコスト管理を効果的におこなうことが可能となります。
ここでは、収支予測に必要な具体的な項目を解説します。
・売上高
・売上原価
・固定費
・入出金
・借入金返済
1)売上高
売上高は、商品やサービスによって得られる売上総額で、事業の収入の基本となる項目です。売上高を予測する際には、季節ごとの繁閑の差による売上の変動を考慮することが重要です。
たとえば、飲食業では、年末年始や夏休みなどの繁忙期に売上が増加する一方で、閑散期には売上が減少する傾向があります。これらの季節的な変動を正確に予測し、収支計画に反映させることで、資金繰りの計画をより現実的に立てることが可能です。さらに、過去の売上データや市場調査を活用し、精度の高い予測値を設定することも重要です。
2)売上原価
売上原価は、商品やサービスを提供するために直接かかるコストであり、収支予測のなかでも重要な要素です。売上原価は、売上高に比例して増減する変動費で、材料費、製造費、外注費などが含まれます。
同業他社の平均的な原価率や粗利率を調べたうえで、自社の売上原価を予測すれば、予測精度が高まり効果的です。売上原価を正確に把握し、売上高とのバランスを考慮することで、健全な収支計画の立案が可能となります。
たとえば、製造業では原材料費や人件費が主な売上原価となり、サービス業では外注費や消耗品費が主なコストとなります。
3)固定費
固定費は売上に関係なく発生する費用を指し、代表的なものには、家賃や人件費、水道光熱費、リース料などがあります。これらの費用は、事業の規模や業種によって額は異なりますが、どの事業でも一定の固定費が発生します。
固定費を正確に予測し、収支計画に組み入れることで、安定した経営が可能となります。固定費を管理することで、事業運営におけるリスクを低減し、経営の安定性を高めることができます。たとえば、家賃や人件費は毎月一定額が発生するため、これらを正確に把握しておくことが重要です。
4)入出金
入出金の管理は、事業運営において非常に重要な要素です。収入としての売上金と、支出としての経費や仕入れ代金などを正確に予測し、収支計画に反映させる必要があります。
これにより、資金の流れを把握し、適切な資金繰りをおこなうことができます。入出金の予測は、資金繰り表やキャッシュフロー計画を通じておこなわれ、事業運営の安定性を確保するために不可欠です。
5)借入金返済
借入金返済は、事業を運営するために融資を受けた場合に必須となる項目です。借入金の返済計画には、元本返済額と利息が含まれます。正確な返済計画を立てることで、資金繰りの将来的な見通しが立てやすくなります。
これらの項目を正確に予測し、収支計画書に反映させることで、事業運営の安定性を高めることができます。しっかりとした収支予測をおこない、将来のリスクを管理するために、これらのポイントを押さえておくことが重要です。
3.収支計画書の書き方【5ステップ】
収支予測に必要な5つのステップは、以下のようになります。各ステップの内容をしっかりと把握して、精度の高い収支計画書を作成できるようにしましょう。
1)売上高の算出
2)売上総利益を算出する
3)固定費の洗い出し
4)借入れの返済額と利息
5)損益予測
参考:ドリームゲートの事業計画書作成ツールで作成した「収支計画書」
1)売上高を算出する
売上高の算出は、収支計画書作成の最初のステップです。具体的な例として、美容室や飲食店などの飲食サービス業を考えてみましょう。
まず、美容室の売上高を予測する場合、1日の来店客数や平均単価をもとに計算します。たとえば、1日に20人の顧客が来店し、平均の施術料金が5,000円だとすると、1日の売上高は100,000円になります。これを月単位に換算すると、100,000円 × 30日 = 3,000,000円となります。
飲食業の場合も同様に、1日の客数や平均注文単価を元に計算します。たとえば、1日に50人の顧客が来店し、1人当たりの平均注文額が1,500円なら、1日の売上高は75,000円になります。これを月単位で計算すると、75,000円 × 30日 = 2,250,000円となります。
このように、売上高は事業の収入の基本であり、季節や繁忙期の影響を考慮して予測することが重要です。予測が現実的であるほど、じっさいの運営に近い計画を立てることができます。
2)売上総利益を算出する
次に、売上総利益を算出します。売上総利益の算出には、売上原価を算出する必要があります。売上原価とは、商品やサービスを提供するために直接かかるコストのことです。
たとえば、美容室の場合、売上原価には使用するシャンプーやトリートメントの費用、スタッフの人件費などが含まれます。これらのコストを合計し、売上高から引くことで売上総利益が算出されます。
具体的には、売上高が3,000,000円で、売上原価が1,000,000円とすると、売上総利益は3,000,000円 – 1,000,000円 = 2,000,000円となります。
飲食業では、売上原価として原材料費や調理器具の維持費などが含まれます。たとえば、売上高が2,250,000円で、売上原価が900,000円とすると、売上総利益は2,250,000円 – 900,000円 = 1,350,000円となります。
売上総利益を正確に算出することで、事業の収益性も正確に把握できるようになり、経営戦略を立てるための基礎を築くことができます。
3)固定費をすべて洗い出す
固定費は、売上に関係なく発生する費用であり、計画において重要な役割を果たします。固定費には、家賃、人件費、水道光熱費、リース料などが含まれます。
これらの費用を漏れなく洗い出し、収支計画に組み入れることが必要です。たとえば、美容室の場合、家賃が200,000円、人件費が500,000円、水道光熱費が30,000円、リース料が20,000円とすると、月の固定費は750,000円になります。
飲食業の場合も同様に、家賃、人件費、水道光熱費、リース料を含めた固定費を正確に計算します。また、見落としがちな固定費として、荷造運賃、旅費交通費、減価償却費、ライセンス料、消耗品費、支払保険料、通信費、接待交際費、研修費、支払手数料などがあります。これらの固定費をすべて洗い出すことで、より正確な予測が可能です。
4)返済額と利息の見通しをたてる
借入金がある場合は、返済額と利息の見通しを立てることが必要です。借入金の返済計画には、元本返済額と利息が含まれます。日本政策金融公庫の「返済シミュレーション」などを活用して、月々の返済額や利息の見通しを確認しましょう。
たとえば、借入金が1,000,000円で年利が2%の場合、借入金と金利を入力するだけで、毎月の返済額や総利息を把握できます。これにより、返済の負担を予測し、資金繰り計画に反映させることができます。
5)損益予測
最後に、損益予測をおこないます。損益予測では、売上総利益から固定費を引いた額が、利益または損失となります。これにより、収支計画が現実的かどうかを判断できます。
たとえば、美容室の総利益が2,000,000円で、固定費が750,000円の場合、利益は2,000,000円 – 750,000円 = 1,250,000円となります。一方、収支が赤字になる場合は、対策が必要です。
損益予測を月ごとにおこない、閑散期や繁忙期の影響も考慮することで、より現実的な計画が立てられます。これにより、事業運営のリスクを低減し、計画どおりの収益を確保するための戦略を立てることができます。
4.収支計画書作成時のポイント
収支計画書を作成する際には、以下の4つのポイントを押さえておくことが成功へのカギとなるため、確実に把握しておきましょう。
1)月別収支計画書を3年分作成する
収支計画書を作成する際、単に1年間の計画を立てるだけでなく、月別の収支計画書を3年分作成することが推奨されます。これにより、短期的な問題だけでなく、長期的な事業ビジョンの傾向も把握できます。
たとえば、初年度は市場の動向を見ながら軌道修正をおこなう一方で、2年目や3年目には安定した収益を目指す戦略を立てることが可能になります。月別の計画を立てることで、季節ごとの変動や突発的な支出にも対応しやすくなり、より現実的で実行可能な計画を作成できます。
2)固定費を見直す
事業が始まると、固定費を削減することは難しくなってしまいます。そのため、収支計画の段階で固定費の見直しをおこなうことが重要です。
たとえば、家賃の交渉や、オフィスのレイアウト変更、通信費や光熱費の見直しなど、削減可能な部分を探しておくとよいでしょう。また、事業を始める前に、不要な固定費や効率化できるコストを見つけておくことで、安定した収支を確保する手助けになります。事業運営が始まる前に、可能な限り固定費の削減策を講じることで、後の負担を軽減できます。
3)適正な粗利率か確認する
粗利率(売上高総利益率)の設定は、収支計画書のなかでも重要な要素です。粗利率が高いと、売上高が少なくても固定費をカバーしやすくなります。逆に、粗利率が低いと、売上高が高くても固定費の負担が重くなり、利益が圧迫される可能性があります。粗利率は、売上原価と売上高のバランスを考慮して設定する必要があります。
たとえば、飲食業界では原材料費の比率が高くなりがちですが、粗利率を高めに設定することで、収益性を確保することができます。粗利率を高めるには、原材料費を抑える、値段を高くするといった方法が考えられます。事前に市場調査をおこない、業界の平均粗利率と比較して適正な数値を設定することが大切です。
4)業種特性も織り込む
最後に、業種特性を収支計画に織りこむことも重要です。たとえば、飲食業や美容室などのサービス業は、立ち上げ時に売上が安定しない場合があります。また、季節ごとに売上の変動があるため、繁忙期や閑散期を予測に含める必要があります。
こうした変動を考慮に入れずに収支計画を立てると、じっさいの収支と計画に大きなズレが生じる可能性があります。売上が不安定な時期や予期しない支出が発生する可能性もあるため、固定費が変わらないことを念頭に置きながら、柔軟で現実的な計画を立てることが求められます。
これらのポイントを押さえた収支計画書を作成することで、事業の安定性と成長の可能性を最大限に引き出すことができます。事前の準備と計画が、事業運営成功の基礎となるため、慎重に予測しましょう。
5.適正な収支予測にはツール利用がおすすめ
収支計画書の作成には、サポートツールを利用することをおすすめします。たとえば、ドリームゲートの事業計画書作成サポートツールを使えば、ブラウザ操作だけで収支予測を作成可能です。このツールを活用することで、収支計画書の作成がスムーズにおこなえるだけでなく、予測の精度も向上します。
ドリームゲートのツールでは、成功した先輩経営者の収支予測データを業種ごとに反映した収支計画を立てることが可能です。また、自分が作成した収支予測が適正かどうかの診断もできるため、非常に役立ちます。しかも、無料で使えるため、まずは一度使ってみましょう。
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