個人間中古車売買サービスで業界革新を狙う若き起業家の挑戦

公開日: 2015/03/19  最終更新日: 2019/11/22

株式会社トロイカ

代表:大橋 賢治

事業内容 クルマに特化した個人売買サイト「CARTOGO(カートゥーゴー)」の運営。
所在地 東京都港区北青山
事業計画書の安全率 8.07
(928位/1万位中)

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冒頭

クルマに特化した個人売買サイト「CARTOGO(カートゥーゴー)」をリリースしたばかりの株式会社トロイカ。「車とインターネット」をテーマに2006年に創業。初年度は売上1億円を突破するものの、自社事業へのこだわりから、あえて売上の見えない新規サービスに挑戦。途中、事業の一部を売却するなどして、変化の激しいネット業界を生き抜き、2012年8月にはこれまでにない個人間中古車売買のサービス「CARTOGO」を満を持してリリース。不断の挑戦を続ける創業者の大橋氏に、開業から現在に至るまでの話しをインタビューしてきました。

1:事業内容
個人売買サイト「CARTOGO(カートゥーゴー)」で業界に革新を。開業時に仕掛けたサービスからは撤退し、新たな挑戦へ。

トロイカは2006年2月に創業した「車とインターネット」をテーマにしたベンチャーです。もともと私は個人で衣料品などの輸入販売を手掛けていましたが、2005年頃にいろいろとリサーチしているなかで、「ネットでも中古車が売れる時代になってきたのでは?」と直感して起業しました。

トロイカを創業して最初に始めた事業は、SNSをベースにした中古車販売事業でした。これは正直あまりうまくいかず、撤退しています。他にもいくつか事業を展開していましたが、現在のメインは個人間の中古車販売サービス「CARTOGO」です。これは、ユーザーは自分の売りたい車を登録して、一方で買い手である個人が手を挙げて、その仲介をするというものです。仲介手数料は3~4%で、今はサービスしたばかりなのでキャンペーンとして無料にしています。

ここまでは他のオークションサービスと変わらないのですが、当社独自の強みとしては、独自のノウハウで収集している相場情報と業者への販売ルートがあることです。

中古車の買い取り価格の相場というのは、実はとても不透明でした。そこで、その情報を流通させてオープンにすることで、ユーザーサイドに立脚した買い取りサービスが作れるのではないか、と考えてサービスを開発しました。

中古車の相場情報をオープンにすることで、ユーザーは業者に安く買いたたかれることがなくなり、より高く売れる可能性があります。「普通の業者にもっていくより、10万円高く売れるかも」というわけです。

相場情報そのものは「相場の星」というサイトで公開しています。プロモーション費用やSEO費用はほとんどかけていないのですが、中古車の売買価格を調べると、このサイトが上位に来ます。

中古車関連の検索キーワード・マーケティングは猛烈な競争で、SEMだと1ワードあたりの単価が非常に高く、まともにやっていたら一カ月で何千万円もの広告費がかかります。

それを当社のようなベンチャーがコストをかけずに伍していけるのも、ユーザーに支持されるサービス・情報を展開しているからだと自負しています。

もうひとつ、当サービスのユニークな仕組みとしては、個人からの買い手がつかない場合は、当社で買い取りをしているという点です。相場情報を集めるうえで、業者間のネットワークも構築していて、全国に約2000社ほどのネットワークがあります。ここに中古車の買い取り依頼を流すと買い手がつくようになっています、こうした流れがあるので、ユーザーから買い取りを出来るという仕組みです。

ユーザーからしてみれば、一度の登録すれば確実に売れるという状況にしたことで、通常のオークションサイトに比べて、利便性が高いサービスになっています。
個人間での売買手数料と出店料、そして買い手がつかなくなった場合の業者流通時の手数料などが当社の収益源です。

2:創業プロセス・苦労したこと
イタリアで仕入れた古着が5倍で飛ぶように売れた。中古売買の面白さに目覚め、中古車販売事業で創業1年目で売上1億を突破!

私が起業に至るまでの経緯ですが、大学時代は中古車販売店でバイトしていた経験があり、中古車販売の分野には詳しかったのと、ちょうどネットバブルの最中だった2000年前後にソフトバンクの子会社で働いていたので、インターネットビジネスの可能性は肌で感じていました。そうした経験から「車とインターネット」というテーマが自然と自分の中で出来ていきました。

2002年には会社を辞めて、地元である名古屋に戻って個人事業を始めました。その当時やっていたのは、古着やダメージジーンズ、まだ日本で取り扱いの少なかったDolce&Gabbanaなどのブランド品をイタリアで買い付けて、ヤフーオークションなどで売るというものでした。これが面白いように売れましたね。買値の5倍くらい売れたので、とても儲かりました。今で言うと、BUYMA(バイマ)さんのバイヤーの様なやり方でしたね。

だいたい仕入れてから2週間で売りさばけたので、在庫がなくなったらまたイタリアに飛んで買い付けて…という日々でした。しかし、突然買い付けができなくなりました。妙な日本人が大量に古いジーンズやらブランド品を大量購入していくので不審がられたのか、どうやら日本で大人気だということが、向こうにばれてしまったんですね(笑)。それでこの輸入ビジネスは辞めました。

それで、次に始めたのがWebサイトの制作業です。ただ、これはさほど儲かるビジネスではないので、他に何かないかとリサーチしていきついたのが、学生時代にバイトもしていた中古車ビジネスです。

「車とインターネット」というテーマで株式会社トロイカを起業。資本金205万円でスタートしました。当時、自分でかき集められたお金が205万で、そのすべてを資本金にしました。中途半端な金額ですが、当時は資本金の意味もあまりわからず、とにかく走りながら考えるといった感じでした。

最初に手掛けた事業はSNSベースの中古車販売サービスですが、これがうまくいきませんでした。一方で中古車を業者から仕入れてオークションや自前サイトで売るという、ECモデルの事業も展開していました。こちらは順調で、売上そのものは1億円以上になりました。私自身、目利きをして高く売るというのが、たまたま上手くいったのかもしれませんね(笑)。

中古車の利ザヤは10~30%。価格が高いほど利益率は低く10%〜15%程になります。中心価格帯はだいたい100万円前後なので、一台売ると30万円くらいは稼げます。なので、個人で売買仲介していても十分に儲かります。実際、国内に何千社と中古車販売業者があるのは、そうした理由もあると思います。

3:成長の軌跡
EC型事業からあえて撤退。いばらの道を進む。

しかし、ECモデルの事業からはあえて撤退しました。ビジネスとしての面白さや、本当にやりたかったインターネットを活用した新しいビジネスに集中したかったのが、その理由です。

実は他に「InMyBag(イン・マイ・バック)」というサイトも立ち上げていました。これは「カバンの中身をシェアする」というコンセプトのソーシャル・コマースサービスで、実際に有名人を取材してカバンの中身を公開してもらって、その中の商品をネットで売るというものです。これは結構話題にもなって成功したのですが、これも他社に売却しました。そうして、クルマ×ネットのサービスに集中する環境を作りました。

結果的に、2年目と3年目は大赤字になってしまいました。売上も1億から2000万円前後にまでダウンしましたが、事業売却した資金もあったので、会社としては持ちこたえられました。

新サービスをリリースした2年目は事業を急速にスケール(最大化)する必要があったので、VC(ベンチャーキャピタル)さんからも出資を受けました。

そうして事業を継続して、2008年頃に大規模な増資の話しが来ました。資金調達に必要な事業計画書等の提出を求められたのですが、私自信が事業計画を作る為の軸となる数値や、ビジネスモデルの方向性に迷いがあり、どうしても自分が自信を持って提出できる事業計画が作れなかったので、「迷いがあるのに資金調達するなど到底無理だ」と思い、ファイナンス活動を中止しました。

誤解を恐れずに言いますが、当時は今と比べVCさんも積極的に投資を実行しており、あのタイミングで事業計画を提出し、プレゼンを行えば資金調達はできていたと思います。しかし事業としての結果は何も変わらず、ただ資本金が増え、株主さんも増え、代表者としての大きな責任も増え、今の状況よりも厳しい状況になっていたのではないかと思っており、ファイナンス活動を中止した決断は正しいかったと、今は心から思います。

そこからは、徹底したコストカットを行いました。当時借りていた青山の15坪・家賃20万の事務所は引き払い、月1万5千円のレンタルオフィスに移って、スタッフも7名居たところを、2名まで減らし、会社としてはとても厳しい状況でしたね。そうして、毎月の運転資金を極限まで削って、新しいサービスの開発に取り掛かり、2012年の8月にCARTOGOをリリースしました。

増資をせずコストカットして経営体質を筋肉質にしたことは、結果として大正解だったと思います。売上がしっかりと立つまではランニングコストを抑える事がベストだと思ってます。まだ中古車をネットで売買するというのは敷居が高いと思いますが、確実に流れは私が狙っている方向に来ていると感じてます。

実際、ユーザーの声を聞くと中古車をネットで売買することに「漠然とした不安」を感じている方が多いのです。しかし、インターネットサービスならではのメリットや利便性は、他には代えがたいものがあります。中古車に付きまとう「品質」という点でも、当社で独自に修理工場を案内したり、あるいは保険をつけるなどしてカバーしていけると考えています。

そもそも日本製の車はとても丈夫で、めったなことでは壊れません。もっともっと流通しても良いと考えています。

4:お金に関する考え方

自計化のきっかけ・・・

会計については、会計事務所に任せていましたが、今は自分で会計ソフトをつかってやっています。これもコストカットの一環ですね。税理士の先生には、申告書や決済書の時だけお世話になっています。

自分で数字をすべて管理していることで、経営の状態は完全に把握できています。増資の話しがあった時も、経営上の数字の把握力、先々の見通しを精緻にできたおかけで、コストカットしていくという重要な経営判断ができたと思います。当たり前かもしれませんが、PL、BS位は確実に理解できる程度の知識は必須だと考えてます。毎年の株主総会でも私は議長を務めますが、その際に決算報告についてもしっかりと説明をする必要があるので、自分で積極的に会計業務に携わる事で、ここ2年位は自信を持つことができるようになりました。

新しいことに挑戦するためには厳密な見通しは必須・・・

開業時、実はあまり精密な計画は立ててませんでした。それで、2年目、3年目の大赤字という見通しの甘さから、窮地に至ったと反省をしています。
 現在はワーストケースとベストケースの2種類のシナリオを3年分作って経営しています。うまくいかないことをどれだけ想定できるか、さらにいえばいつまでお金が持つかを厳密に計れるスキルは、ベンチャー経営者にとっては必須だと思います。

開業計画サポートツールについて・・・

こうしたツールがあるのは知りませんでした。Excelなどで作るPL/BSなどより直感的に操作が出来て、面白いですね。Excelで数字を作れることも必要ですが、なにせ味気ないので苦手な人も多いと思います。まずは手軽にシミュレーションして数字の感覚をつかむことは重要ですね。

編集部より・・・

今回のインタビューでは、大橋氏に開業当時のことを振り返ってもらい、その数字を元に開業計画サポートツールで計画書を作成してみたところ、安全率が8.07という高い数字になった(ちなみにランキングは928位/1万位中)。「開業リポート2012」の調査では、Web・モバイル業界の健全企業の安全率は7.57となっている。

「Web・モバイル」業界の事業計画書のサンプルを見る

※この計画はインタビュー時の内容を元に構成したもので、実際の経営上の数字とは異なります。

5:メッセージ
焦る必要はない。独立はいつでもできる。会社で学ぼう。

これから起業する方にお伝えしたいのは、起業や独立はいつでもできるということです。それよりも、会社という組織にいる間にいろいろなことを学ぶというのは、とても大事です。新卒で入って研修を受けて、さまざまな仕事を体験させてもらう…これはすごいことです。独立した後に同じようなことを学習・経験をしようと思えば、時間もコストもとてもかかります。なので、まずは会社に入って仕事をたくさんおぼることが大事だと思います。

これは、自分自身の経験から身にしみて思った事です。私自身、3年ぐらいしか会社にいませんでしたが、もっといろいろと勉強してから独立すれば良かったと後悔してます。

あとは人脈。これも会社にいる間に作れる財産の一つです。経験と人脈はビジネスを進めるうえでの貴重な財産です。

起業するのに、焦る必要はありません。