日本公庫で借りられる運転資金について目安や使い道などくわしく解説

執筆者:ドリームゲート事務局
公開日: 2024/06/04  最終更新日: 2024/08/02

事業を運営するうえで、運転資金は欠かせません。
しかし、売上が安定していない時期や、設備投資など大きな出費があるタイミングでは、資金繰りが悪化してしまうことも多々あります。

そんな時に役立つのが、日本政策金融公庫の運転資金融資です。
民間の金融機関とは異なり、低金利で長期の返済期間が設けられていることが特徴です。
創業時や創業後の経営が不安定な時期でも前向きに融資を検討してもらえます。

本記事では、日本政策金融公庫で借りられる運転資金について、くわしく解説します。
運転資金に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
(株)エムエムコンサルティング
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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1.運転資金とは

事業をスタートするときに必要な開業費用には、設備資金と運転資金の2種類が存在します。一般的には、内外装工事費や設備などの費用が設備資金です。一方で人件費や家賃など、継続して支払うのが運転資金になります。すこし分かりづらいケースもあるため、ここでくわしく説明します。

設備資金と運転資金では、返済期間や利率が異なることがあるため、しっかりと把握しておきましょう。

1)運転資金と設備資金の違い

事業をはじめる際に必要となる資金は、大きく2つに分類されます。

設備資金 経理上、固定資産に分類されるもの

■有形固定資産

事業をはじめるために必要な設備や備品など、形をもち目に見える資産が該当します。

■無形固定資産

大規模なコンピュータシステムやソフトウェアなどの形のない資産で、特許権やのれん代・FC加盟金なども含まれます。

■投資そのほかの資産

有形および無形固定資産に当てはまらないもので、関連会社への出資金や、投資用に購入する株式などが該当します。

運転資金 事業を継続していくために必要なランニングコストです。具体的には「原材料費、人件費、家賃、光熱費、広告宣伝費」などが含まれます。

上記で考えると「10万円未満のパソコン」などは、消耗品として一括で経費処理するため運転資金に入りそうです。しかし、日本公庫の融資ではそこまで厳密に確認されず、設備資金として認められることが大半です。

くわしくは、当記事の監修者である上野さんのYouTube動画をご覧ください。

2)運転資金の使い道

運転資金は、事業を運営するために必要な資金です。具体的には以下のような費用になります。

原材料費 商品やサービスをつくるために必要な材料費
人件費 従業員の給与
家賃 事務所や店舗の家賃
光熱費 電気代、水道代、ガス代
広告宣伝費 商品やサービスを宣伝するための費用
消耗品費 ビジネスにおいて使用する消耗品や消耗性のある資材に関連する支出のうち、購入価格が10万円未満か、法定耐用年数が1年未満のもの

月々必要なランニングコストを計算する必要がありますが、原材料費などは売上とも連動するため、まずは売上見込みを計算します。

例)飲食業のランニングコストや売上見込みの計算方法

①売上高

平均単価1,000円×日客数100名×稼働日数20日=月売上200万円

②原材料費(売上原価・仕入高)

月売上200万円×原価率30%=月原材料費60万円

③そのほかのランニングコスト

・人件費30万円

・家賃20万円

・光熱費10万円

・広告宣伝費5万円

・消耗品費+そのほか5万円

④月々のランニングコスト

②60万円+③70万円=130万円

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3)運転資金に含まれないもの

運転資金は、企業が日常的な事業活動をおこなうために必要な資金です。これには、前述のように「原材料費・人件費・家賃・光熱費・広告宣伝費・消耗品費」などが含まれます。

しかし、運転資金には含まれないものもあります。それらは主に設備投資に関連する費用です。たとえば、新しい機械の購入、工場の建設や拡張、不動産の購入などの一時的な大きな出費が該当します。これらは設備資金と呼ばれ、運転資金とは区別されます。設備資金は、長期的な投資であり、企業の生産能力や事業の拡大を目的とするものです。

また前述のように、厳密には10万円以上の備品で固定資産に計上するものは設備資金として扱われるため注意してください。同じ備品でも、10万円未満など経費で処理する運転資金、10万円以上で固定資産に計上するものは設備資金となります。

4)運転資金はどのくらい必要か

必要な運転資金の額は、事業の種類によって異なりますが、一般的には、ランニングコストの3ヶ月~6ヶ月分程度といわれています。事業を軌道に乗せるまでに6ヶ月程度は必要とされているため、それに連動する形です。

必要な運転資金は、飲食業などの現金商売では3ヶ月程度と短めです。しかし、売上が入金されるまでに数ヶ月かかるようなソフトウェア開発業などのビジネスモデルの場合には、6ヶ月程度と長めの傾向にあります。

事業をはじめたばかりのころは、売上よりも経費の方が多くなるため、運転資金が不足しやすくなります。そのため、開業後6ヶ月間は運転資金が不足しないよう、十分な資金を準備しておくことが重要です。

2.日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、小規模事業者や中小企業などの事業発展と、国民生活の安定に資することを目的とした金融機関です。

政府全額出資の政府系金融機関であり、民間の金融機関とくらべて利率が低く、返済期間も長い傾向にあります。一般的な銀行では借りにくい創業融資も積極的におこなっており、創業を強力に支援しています。

1)日本公庫の融資はいくらまで借りられる?

日本公庫の融資限度額は、融資制度によって異なります。

新規開業資金 新型コロナウイルス

感染症特別貸付

女性、若者/シニア

起業家支援資金

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 8,000万円(別枠) 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金20年以内

運転資金10年以内

※ともに据置期間を5年以内

設備資金20年以内

運転資金20年以内

※ともに据置期間を5年以内

設備資金20年以内

運転資金10年以内

※ともに据置期間を5年以内

利率 基準利率(要件を満たせば特別利率の適用も可能) 基準利率

(ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率マイナス0.5%、4年目以降は基準利率)

特別利率A(土地にかかる資金は基準利率)

参考:日本政策金融公庫「主要利率一覧表」

2)日本公庫の融資申請手続きについて

日本公庫の融資を申請するには、以下の手順が必要です。

①事前相談

電話でも相談できますが、できれば管轄支店で事前相談しておくと、あとの手続きがスムーズにすすみます。

②融資制度を選ぶ

事前相談などを参考に、事業内容や資金ニーズに合った融資制度を選びます。

③必要書類を準備する

融資制度ごとに必要な書類を準備します。

④申込み

インターネット申込みなら24時間365日いつでも可能です。ただし、疑問点や提出書類がよく分からない場合には、窓口申込みがよいでしょう。

⑤融資担当者との面談

申込みから1~2週間程度で融資担当者との面談がおこなわれます。申込み時に不足した書類や、追加書類が必要になるため、しっかりと準備しておきましょう。

⑥審査

面談と必要書類の提出が完了すれば、融資審査がおこなわれ、1~2週間程度で結果がわかります。書類の不足や不備があると、時間がかかってしまうため注意が必要です。

⑦融資実行

審査に通過すれば、必要書類を提出した後に融資金が入金されます。書類手続きや確認事項にすばやく対応すれば、申込み後2週間から1ヶ月で融資が実行可能です。

⑧返済スタート

融資金が入金されて1~2ヶ月後から返済開始です。資金繰りの関係で返済開始を遅らせたい場合には、「返済据置の制度」もあるため、かならず事前に相談しておきましょう。

【申込み時の必要書類】

■創業計画書または企業概要書
■本人確認書類(運転免許証またはパスポート・マイナンバーカードなど)
■見積書など(設備資金の場合)
■直近2期分の確定申告書(創業融資の場合には源泉徴収票2年分など)
■許認可証(飲食店などの許可・届出などが必要な事業を営んでいる方)
■そのほか日本公庫が求める書類

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3.日本公庫から借りる運転資金の目安は月商の3ヵ月分

日本公庫から借りられる運転資金の目安は、月商の3ヶ月分といわれています。月商が100万円であれば、運転資金として300万円借りられることになります。

ただし、これはあくまでも目安であり、事業規模や運転資金ニーズによって異なります。

日本公庫の新規開業資金において、創業時に運転資金として借りられる金額は、最大4,800万円までとなっています。しかし、じっさいには事業を6ヶ月以内に軌道に乗せることを前提に考えることが必要です。そのため、創業時に借りられる運転資金の目安は月商の3ヶ月分となります。

4.日本公庫の融資制度

日本公庫の融資制度は、民間金融機関とくらべて「低金利、長期の返済期間、無担保・無保証人」など有利な条件で借りやすいことが特徴です。

また一般の銀行では敬遠されがちな、創業融資も積極的におこなっているため、開業希望者にとって強い味方といえます。

1)一般貸付

日本公庫の代表的な融資制度が一般貸付です。一般貸付は設備資金と運転資金の両方に利用できるもっとも汎用性の高い融資制度となっており、ほとんどの業種の中小企業の方が利用可能です(業種や経営内容などによっては利用できない場合もあります)。

融資限度額 4,800万円(特定設備資金7,200万円)
返済期間 設備資金10年以内(うち据置期間2年以内)

運転資金5年以内で、とくに必要な場合には7年(うち据置期間1年以内)

特定設備資金20年以内(うち据置期間2年以内)

利率 基準利率

2)新規開業資金

新規開業資金は、創業前後の方を対象に設けられた融資制度です。一般貸付よりも返済期間も長いため、創業時に必要な資金を借りやすいのが特徴です。また要件を満たせば、特別利率の適用も可能となっています。

2023年3月31日までの新規開業資金の融資限度額は3,000万円(うち運転資金は1,500万円)でした。しかし、2023年4月以降は7,200万円に大幅増額され、さらに使いやすくなっています。

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金20年以内

運転資金10年以内

※ともに据置期間5年以内

利率 基準利率

※要件を満たせば特別利率の適用も可能

3)新型コロナウイルス感染症特別貸付

新型コロナウイルス感染症特別貸付は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者向けに設けられた融資制度です。一般貸付よりも利率が低く、返済期間も長いため、資金繰りに困っている事業者におすすめです。

融資限度額 8,000万円(別枠)
返済期間 設備資金20年以内

運転資金20年以内

※ともに据置期間5年以内

利率 基準利率

※ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率マイナス0.5%、4年目以降は基準利率

4)企業活力強化資金

企業活力強化資金は、中小企業の事業再構築や合理化などを支援する融資制度です。条件を満たせば一般貸付よりも低い利率が適用され、返済期間も長いため、事業再構築や合理化への投資を検討している企業に最適です。

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金20年以内

運転資金7年以内

※ともに据置期間2年以内

利率 条件により基準利率・特別利率A・特別利率B・特別利率C

5)挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、スタートアップや新事業展開に取り組む事業者を対象とした融資制度です。スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生などに取り組む方の財務体質強化や、ベンチャーキャピタル・民間金融機関などからの資金調達の円滑化を支援しています。

融資限度額 7,200万円(別枠)
返済期間 5年1ヵ月以上20年以内
利率 条件によって異なります

参考:日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」

6)マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者の経営改善を支援する融資制度です。利率が低く、無担保・無保証人でも資金を借りられます。

融資限度額 2,000万円
返済期間 設備資金10年以内(うち据置期間2年以内)

運転資金7年以内(うち据置期間1年以内)

利率 特別利率F

5.日本公庫の融資審査通過のポイント

日本公庫の融資における審査通過のポイントは、融資に落ちる理由を把握し、しっかりと対策をしておくことです。シンプルですが、これがもっとも効果的なポイントになります。

とくに創業融資では、ビジネスの実績がないため、「事業計画」「信用情報」「事業経験やビジョン」が審査通過に大きな影響をおよぼします。

1)事業計画

事業計画は、融資審査においてもっとも重要な要素となります。とくに創業融資では、事業実績がないため、事業計画書の内容で融資審査をおこないます。融資を通過するためには、「説得力のある数値で示された収支計画」や「無理のない事業計画」が必要です。

事業計画書には、以下の内容を盛りこむようにしましょう。

事業の概要 事業内容、事業目的、ターゲット顧客などを具体的に説明します
市場分析 市場規模、競合状況、顧客ニーズなどを分析します
収支計画 売上高、経費、利益などを予測します
資金計画 資金の使途、返済計画などを説明します
経営陣の経歴・経験 経営陣の経歴や経験を説明します

はじめて事業計画書を作成する場合には「何を書けばよいかわからない」という方が大半でしょう。手間と時間がかかり説得力のあるビジネスプラン作成は至難の業です。

事業計画書の作成にお悩みであれば、ドリームゲートが提供する「事業計画書作成サポートツール」がおすすめです。かんたんな質問に答えるだけで、成功した先輩経営者のデータなどを参考にした、事業計画書が作成できます。

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2)信用情報

信用情報とは、クレジットやローンの契約や申込みに関する情報のことです。客観的な取引事実を登録した個人情報となります。

クレジットカードの支払い遅延や借金の滞納をした場合には、信用情報に5~10年記録されてしまい、融資などが受けられなくなります。いわゆるブラックリストに記載された状態になるため、十分に気をつけましょう。

信用情報は、融資審査において重要な要素となるため、支払いの遅延や滞納をしないように注意しましょう。

具体例)

■銀行融資などの遅延・滞納
■消費者金融などの遅延・滞納
■クレジットカード支払いの遅延・滞納
■スマホ代金の遅延・滞納
■住宅ローンなどの遅延・滞納
■自己破産などの債務整理

税金や公共料金の遅延・滞納は、基本的には信用情報には記載されません。しかし、日本公庫の融資では預金通帳などで支払いが確認されるため、滞納しないように注意してください。

3)事業経験やビジョンのアピール

事業経験やビジョンを、熱意をもって明確にアピールすることも重要です。面談においては、事業経験や事業ビジョンをわかりやすく説明し、どのような熱い想いで開業するのかを伝えるようにしましょう。

とくに長い実務経験がある業種で開業する場合には、審査が有利になるケースが多いためしっかりとアピールしましょう。

6.日本公庫 運転資金に関するよくある質問

日本公庫では公式ホームページ上で「よくある質問」を公開しています。これから融資申込みされる方にとっては、非常に役に立つ内容になっているため、一部をご紹介いたします。

Q1)すでに公庫から運転資金を借りています。新たに設備資金を借りることはできますか?

はい、可能です。日本公庫では、設備資金と運転資金をあわせて借りることができます。ただし、融資額の上限は、各融資制度やお客様の事業状況によって異なります。

Q2)個人事業主です。融資を受ける際の運転資金には個人の生活費を含めることができますか?

いいえ、運転資金には個人の生活費(個人事業主分の給与・人件費など)は含められません。運転資金は、事業に使う資金だけが対象になります。

Q3)運転資金の返済期間はどのぐらいですか?

運転資金の最長返済期間は、融資制度によって異なりますが、7年~20年以内です。一般的には、審査のうえ3年〜7年で決まるケースが多くなります。

Q4)設備資金として借りた金額をすべて使わずに運転資金に回すことは可能なのでしょうか。

いいえ、設備資金として借りた金額を運転資金に回すことはできません。設備資金で借りた資金を、運転資金で使うと契約違反になるため、十分に注意してください。

7.日本政策金融公庫で運転資金を調達するには

事業を成功させるためには、しっかりとした事業計画書を作成することが大切です。事業計画書は、融資審査においても非常に重要な役割を果たします。

しかし、事業計画書作成は、多くの時間と労力を必要とします。そこでおすすめなのが、ドリームゲートの「事業計画書作成サポートツール」です。

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