成功企業の経営者が、その業界で起業した理由

公開日: 2015/03/15 

実は、異業種参入の成功確率も意外と高い

 下の円グラフを見てほしいは、自分が起業を決めた業界に参入した理由を聞いた結果を、健全企業と非健全企業とで分析したものだ。起業を目指す皆さんは、どのような理由で創業事業を決めるだろうか。「これまでの経験が生かせる分野だから」「趣味や特技を生かせるから」というイメージが強いのではないだろうか。

 もちろん、そのような選択をして、結果、成功に結び付けた先輩起業家も多い。強みを生かすということは、大きな差別化につながるのだから。

しかし、ここでは別の視点で結果に注目してみたい。これまでの経験や趣味・特技を理由に起業した比率が、全体の66ポイントに対して、健全企業では55ポイントと、11ポイントのマイナス。さらに、成長が見込める、社会が求める分野という理由の比率は、全体の25ポイントに対して、健全企業では37ポイントと、12ポイントのプラスである。

では、非健全企業の結果はどうか。これまでの経験や趣味・特技を理由に起業した比率が、65ポイントに対して、健全企業では55ポイントと、10ポイントのマイナス。さらに、成長が見込める、社会が求める分野という理由の比率の28ポイントに対して、黒字化企業では37ポイントと、9ポイントのプラスである。

起業は、継続させることが大前提のチャレンジである。創業経営者が成功するためには、自分の経験や特技などよりも、成長分野、社会性などの視点で事業参入する分野を見極め、選択することも大切なのだろう。

業種別に見た、異業種参入率

下の表は、9業種に見る、健全企業と、非健全企業の異業種参入率である。その結果、特定の業界にユニークな傾向が見られた。顕著なのが、飲食業界だ。健全企業の異業種参入率は62.1ポイントだが、非健全企業は47.8ポイントと、14.3ポイントの差があるのだ。

意外と思われるかもしれないが、飲食業界は、異業種参入のほうが成功しやすいといえそうだ。それはなぜか? 飲食業界はご存じのとおり、歴史の古い産業である。しかし、味の均一化やデフレ化への飽き、健康志向の高まりなどもあって、従来の業界常識に習わない新しい飲食店のスタイルが、消費者から求められているのだろう。

先の「参入した理由」の結果からも読み取れるように、「社会から求められている」という視点で挑戦することで、古くからある伝統産業であっても、隠れた新たなチャンスマーケットを開拓することができそうだ。

繰り返しになるが、起業は、“継続が大前提”であり、原則である。だからこそ、継続という視点でチャレンジする業界を選択すること。そして、常に“安全率”を高めることを忘れず、経営から発信される数字をしっかりチェックする“自計家”を目指す。このことを忘れずに、起業への第一歩を踏み出してほしい。